2025年ダイヤ改正の東上線ダイヤを探る

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急行増発がうたわれた2025年の東上線ダイヤ改正。その詳細を探りました。

写真1. 日中時間帯の快速急行は利用が多くないものの残存

2025年東上線ダイヤ改正の概要

東武鉄道が大きくうたっているのは、以下の通りです。

  • 朝ラッシュ時の準急の増発(普通からの振替)
  • 夕方ラッシュ時の準急の増発
  • 日中時間帯の急行を毎時4本から毎時6本に増発(準急からの振替)

朝夕と日中時間帯において目玉としている速達列車の違いが興味深いです。

2025年東上線ダイヤ改正の変化点を探る

写真2. 2023年ダイヤ改正以前の快速急行は志木に停車していた(2021年に撮影)

2013年ダイヤ改正での快速新設、2023年ダイヤ改正でのパターン組み換えほどの変更点はありません。あくまでも2023年ダイヤ改正での不具合を是正するという意味合いが強いです。そのため、本記事では変更点に限ってまとめます。

朝ラッシュ時の準急の増発

朝ラッシュ時に準急が増発されます。このため、朝ラッシュ時の川越から池袋までの有効列車が増発されています(表1)。

表1. 平日朝ラッシュ時の川越から池袋までの有効列車一覧

従来は池袋着断面で7:45~8:30の有効列車は急行が約11分間隔に過ぎませんでした(ふじみ野で追い抜いた準急は池袋まで逃げ切り、次の急行の約2分前に到着)。これだと乗客が集中するのか、朝ラッシュ時ピークに限り、川越から池袋まで先着する準急が設定されました。ただし、増発の準急の前後の急行はスピードダウンしています。

これは普通の運転間隔変更が原因です(表2)。

表2. 朝ラッシュ時の普通の運転間隔比較

8:11着が減便されることに合わせ、8:03着を3分後にスライドさせています。これにより11分のダイヤホールが生じることを防いでいます。池袋8:03着の直後には8:05着の準急、8:07着の急行が続行していました。これが3分後にずれたので後続の準急急行が後にシフトし、急行の所要時間が増加しました。

また、池袋着8:00の普通は中板橋での急行待避をやめ、待避時間ぶんが早まりました。この犠牲となったのは従来7:56着だった急行です。それが7:56着から7:59着にシフトした原因です。8:10ごろの普通の運転間隔を平準化させるためには、ここのダイヤを変えるべきではありませんでした。それでも当該の普通の中板橋待避をやめたのは、普通減便に対する補償という意味でしょうか。

この時間帯の普通が15分に2本相当が許容されるのであれば(2023年ダイヤ改正における準急の上板橋停車にはこのような意味もありましょう)、いっそのこと11分サイクルを放棄することも手です。急行を15分間隔、準急を15分に2本、そして成増以南運転の普通を15分に2本、そして遠方の速達性確保のために地下鉄直通の急行を15分間隔という格好です(池袋発着の準急に接続)。場合によっては、半数だけ地下鉄直通急行と準急を入れ替えても良いでしょう(図1)。

図1. 東上線の朝ラッシュ時のダイヤパターン案(私案、朝霞通過、上板橋停車の急行を通勤急行と称しました)

日中時間帯の急行増発

日中時間帯は準急の半数を急行に振り替え、池袋-川越市の急行の20分のダイヤホールを10分に短縮しました。かわりに志木-川越市の急行通過駅は従来の毎時8回の乗車チャンスから毎時6回の乗車チャンスに減少しました。とはいえ、急行通過駅であっても12分以上のダイヤホールは生じず、利便性に配慮した形です。

時刻表から作成したダイヤイメージを示します(図2、図3)

図2. 東上線の日中ダイヤ下りイメージ(時刻表を基にOuDiaSecondで再現)

図3. 東上線の日中ダイヤ上りイメージ(時刻表を基にOuDiaSecondで再現)

地下鉄直通の快速急行は従来通り運転され、川越市以北では急行が30分に2本、快速急行が30分間隔、両者合わせ約10分間隔という点は変わりません。急行川越市行きは快速急行の直前を走行、川越市始発の急行池袋行きは快速急行の直後を走行します。したがって、ふじみ野では一部の普通が快速急行急行の双方を待ち合わせます。

肝心の池袋と川越の有効列車を確認します(表3)。

表3. 池袋と川越の有効列車比較

従来は池袋断面で13分のダイヤホールがありましたが、これが10分に短縮されます。とりわけ、13分のダイヤホール後の列車は乗りかえが必要だったことが乗りかえ不要の有効列車が10分間隔で発車するという事実は大きいです。一方、下りの快速急行利用の所要時間が1分増えています。これは準急が1分繰り上がったことにより、乗りかえ駅が和光市から朝霞台に変わり、朝霞停車ぶんが加算されたためです。

上りも直通が約10分間隔に統一される事実は大きいです。ただし、川越市以北で快速急行を軸とする10分間隔にすることを重視し、川越市以南で急行は10分等間隔にはなっていません。また、上りの快速急行準急の接続駅は従来通り和光市のままです。軒並み所要時間が2分増加している点が気になります。これは急行の成増から池袋までの所要時間が12分かかっている点が影響しています。急行の池袋発車が末尾0分、その続行が末尾1~3分とあり、急行の発車を待ってから急行を到着させているのでしょう。

現状では上りの快速急行は和光市で4分も停車しています。これを2分にカットし、全体的に2分繰り下げることは可能でしょう。池袋着時刻を現状維持とすれば、成増から池袋までのスピードダウンは解消されます。また、110km/h運転とし、全体的に所要時間を短縮すると良いでしょう。

また、今回のダイヤ改正では日中時間帯の湘南台直通は維持されました。湘南台直通によって、和光市-志木の本数が無駄に毎時1本増えることになり、(速達列車の間に2本の普通が入ることによって後続の速達列車との間隔が詰まってしまうことが原因になり)結果として速達列車のスピードダウンを招いてしまいます。実際に湘南台直通の利用は低いこともあり、この不具合の是正も期待しましたが、それはかないませんでした。

上りについては、時刻調整が相次ぐ残念なダイヤになってしまいました。ある意味だらしないダイヤとも表現でき、残念に感じます。

湘南台発着の短縮したほうが良い別の理由

本記事では東武東上線に焦点を当てています。そのため、本記事の範囲外となりますが、東横線側の事情からも湘南台直通を東上線や和光市発着にしないほうが良い理由があります。

現在の東横線ダイヤは横浜方面の急行が30分に2本運転されています。半数は渋谷発着、もう半数は副都心線直通です。渋谷発着は先発の特急のわずか3分後かつ新宿三丁目からの有効列車にカウントされないこともあり、新宿三丁目から横浜方面への運転間隔がばらつきます。

これを是正するためには、東横線の急行は和光市発着に統一することが最も自然です。そのため、湘南台直通は副都心線の池袋発着にするとおさまります。東上線から新横浜に向かう人はそう多くないように見え、相鉄側の視点で見ると新宿三丁目まで直通することが肝心で、それ以北は相鉄側としてみたら優先順位は低いでしょう。

最大多数の最大幸福を考慮すると、2022年ダイヤ改正以前の池袋-菊名の各駅停車を急行に格上げしたうえで、相鉄直通としたほうが良いのです。それを実現するには、東上線と相鉄の直通電車はそぐわないのです。

夕方ラッシュ時の準急増発

2023年ダイヤ改正で夕方ラッシュ時の準急を毎時4本から毎時3本に削減しました(乗客が多い18時台のみ毎時4本を維持)。そのため、池袋発毎時30分~毎時59分の速達列車を散らしました。これでも毎時49分の急行と毎時02分の急行は13分のダイヤホールが発生します。この救済で18時台だけ毎時51分の準急が設定されていました。

乗客が戻ったという判断なのか、救済の準急が17時台と19時台にも設定されました。これにより、17:00~20:00については速達列車の本数は復帰しています。毎時51分発の準急は志木でTJライナーの通過待ちがあります。これを複々線区間で待ち合わせる(同区間は内側線を走行)ことにすれば、池袋の発車時刻を4分程度繰り下げることができます。そうすれば、池袋断面で速達列車の11分のダイヤホールが7分に縮まります。

準急の増発は非常に喜ばしいことが大前提ですが、ダイヤを組み換え、ダイヤホールの解消と速達化もご考慮いただきたいものです。今後は日中時間帯と同様、急行の10分間隔化も必要でしょう。とりわけ、従来の急行通過駅の朝霞に停車するようになり、準急急行への振替もしやすくなったという背景もあります。

25年東上線ダイヤを解析してみて

写真3. 夕方の池袋駅の情景

2025年の東上線ダイヤは全般的に速達性向上が意識されました。また、2023年ダイヤで減便された夕方の準急が復帰したという喜ばしい側面があります。

とはいえ、詳細に見ると従来のダイヤから極力変えないことを意識したためか、上りを中心にスピードダウンした側面も見られます。また、視点を東横線に広げると相鉄線-東上線の設定がダイヤ設定上の足かせとなってしまっている面も否定できません。これは東急側の「渋谷発着急行を設定したい」という要望をかなえつつ、東武側の「東上線から新横浜直通を設定したい」という要望をかなえた部分最適化を意識し過ぎたように見えます。

ダイヤはあくまでも前提条件となる要望を満たすためにつくられます。具体化された要望を実現するための歪みは否定できません。特定の要望をかなえるために全体最適化が犠牲になる場合の部分最適化が必要か否か、そのようなことまで考えてしまいました。まさに一点豪華主義は全体の悪魔ということです。これからはそのような発想も必要でしょう。

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