東海道線静岡地区の普通列車の旅(熱海→浜松)

記事上部注釈
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東海道線静岡地区。多くの普通列車が運転される一方、速達列車の運転はあまりなく、在来線で移動する人にとっては難所と感じられる箇所です。では、実際の様子はどうなのでしょうか。

写真1. 沼津に停車中の普通静岡行き

復習:東海道線静岡地区の概要

まず、静岡地区の路線図を示しましょう(図1)。地図表示と異なり東側の熱海が左側・西側の浜松が右側で表記されていますが、これは起点側を左に示すという慣例があるためです。

図1. 東海道線静岡地区の路線図(Vegefirst - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, による,wikipediaより引用)(浜松-豊橋も書かれていますが、大垣車が中心という理由で同区間は本記事では触れません)

東海道線静岡地区の概要

  • 区間:熱海-浜松
  • 距離:152.5km
  • 所要時間:2時間半程度
  • 駅数:34(熱海、浜松含む)

一般に、熱海から浜松の152.5kmを東海道線静岡地区と呼ぶことが多いです。ただし、wikipediaの路線図にも表れているように、浜松-豊橋の36.5kmを含むこともあります。

熱海と浜松を含み34駅あり、その間の所要時間は(数少ない直通で)2時間30分程度です。快速やホームライナーも設定されていますが、その本数は少ないです(三島-静岡の快速は深夜時間帯の運転です)。

ただし、そのサービスレベルは決して低くありません。基本的に20分間隔で運転されますし、その平均速度(厳密には評定速度)も60km/hと遅くありません。また、静岡駅に近い場所(興津-静岡-島田)は地方都市圏としては異例の10分間隔で運転されています。

運行形態はやや興味深く、以下の構成です(日中の基本パターン)。

  1. 熱海-静岡-島田:20分間隔(2と重なる興津-静岡-島田は10分間隔)
  2. 興津-静岡-浜松:20分間隔(1と重なる興津-静岡-島田は10分間隔)
  3. 三島-沼津:60分間隔(実際は1と重なり、同区間は5~20分間隔、一部は三島-沼津-富士)
  4. 掛川-浜松:60分間隔(実際は2と重なり、同区間は10~20分間隔、たいてい豊橋直通)

静岡地区東半分を走る熱海-静岡-島田の20分間隔と、静岡地区西半分を走る興津-静岡-浜松の20分間隔が基本となっています。需要の多い静岡駅付近(興津-静岡-島田)は両者が重なり、10分間隔で運転されます。

このほかに三島-沼津と掛川-浜松は1時間に1本ぶん列車が追加されます。これは、静岡駅付近ほどでないが、乗客がある程度見込めれるためです。人口の多い浜松市付近が人口の少ない静岡市付近よりも本数が少ないのは一見疑問に感じます。これは、(平地の少ない)静岡市の市街地が東海道線沿いに広がるのに対し、(平地の多い)浜松市の市街地が東海道線沿いに広がっていないためでしょう。

なお、熱海-島田と三島-沼津の組み合わせのかわりに、熱海-沼津と三島-島田が運転される組み合わせのときもあります。これは静岡地区の東端の熱海駅が(東海道線静岡地区を管理するJR東海でなく)JR東日本の管理であり、多くのJR東海だけの都合でダイヤを決定できず、熱海-三島の運転時刻がややずれてしまうためと推定します。

なお、主要駅間の所要時間は以下の通りです(表1)。

表1. 主要駅間の所要時間

静岡浜松
熱海75分
新幹線で35分
150分
新幹線で64分
沼津53分130分
富士34分108分
静岡71分
新幹線で26分
島田27分44分
掛川45分
新幹線で15分
26分
新幹線で11分
※新幹線停車駅は約30分で運転されるこだま号の所要時間も掲載(1時間間隔のひかり号は記載せず)
※興津より西(由比以西)-島田より東(金谷以東)は乗りかえ時間も必要であるが、本表には含まず

ある程度遠い駅間だと所要時間がかかります。これに対し、JR東海側は「新幹線をご利用ください」という本音があるように感じられます。


313系ロングシート車

211系ロングシート車

写真群1. 静岡地区の車両のイメージ

また、車両はごく少数の例外(※)を除き、オールロングシート車です(写真群1)。3両編成~8両編成ですが、多くは3両編成か5両編成です。混雑する時間帯は立つこともあります。

※2023年1月時点では、373系(回転リクライニングシート車)、313系8000番台(転換クロスシート車)、313系0番台、313系1000番台(2つとも名古屋地区で運用される、日中は掛川以西の区間運転の一部にあり)、313系3000番台(ボックスシートあり)、JR東日本車(熱海以東に直通、沼津以西の定期運用は皆無、ボックスシートあり)が例外の車両

車両運用については熱心なファンがまとめてくれています東海道線静岡地区運用情報というサイトです。

実際に静岡地区の普通に乗る

御託はこの程度として、実際に乗りましょう。私は、以下の組み合わせとしました。

  • 熱海→静岡:1431M(熱海8:02→静岡9:20、211系3両+313系3両)
  • 静岡→浜松:747M(静岡9:21→浜松10:32、313系8000番台3両)

ステージ1. 熱海→静岡

熱海から静岡までの移動は6両編成でした。静岡地区の列車は短編成ですが、朝にかかるように時間帯を設定すれば、5両編成か6両編成に当たり、座席を確保できる確率は上がります。それもあり、朝に静岡地区を通り抜けることにしたのです。

写真2. 熱海で発車を待つ普通静岡行き

その普通静岡行きです。7:58以前は空席が多数で、(7:59に下り列車が到着し、そこからの乗りかえ客が移動する)8:00ごろに空席が埋まりました。

本当は先頭のかぶりつき席(助手席側)を確保したかったのですが、先客がいましたので、運転席側に陣取りました。

写真3. 熱海を発車!

熱海を発車しました(写真3)。温泉街ということもあり、建物は多いです。2000年ごろの熱海は衰退していたと聞きますが、現在は盛り返しているとも聞いています。

写真4. 来宮を通過!

来宮を通過します(写真4)。来宮は伊東線のみホームがあり、東海道線にはホームがありません。ここに駅を設置しても良さそうですが、会社境界(熱海駅構内なのでJR東日本管轄)になるなど複雑な事情があり、駅を設置しないのかもしれません(伊東線で足りるという理由もありましょう)。

写真5. 丹那トンネルを走る

丹那トンネルを高速で走ります(写真5)。長いトンネルであり、地上は険しい山道が続きます。そのため、熱海と三島をつなぐ道路が貧弱であり、この区間の鉄道利用客が多いとも聞きます。

写真6. 三島に向かって坂を下る

トンネルを抜けてすぐに函南に停車します。函南から三島に向かって坂を下っていきます。

写真7. 坂を下る

坂を下ります(写真7)。多くの人は東海道線静岡地区を「ロング地獄」と敬遠する傾向にありますが、その風景に美しいものがあります。

写真8. 沼津に停車!

そうしているうちに沼津に停車しました(写真8)。ここで6分間停車します。それならば、熱海発車時刻を繰り下げれば良いのに…。左に見える列車は東京行きでも宇都宮行きや高崎行きでもなく、小田原行きです。小田原行きに10両編成も必要でしょうか?

写真9. 沼津を発車!

沼津を発車します(写真9)。

写真10. 直線区間を走る

直線区間を走ります(写真10)。沼津から富士までは直線区間が多く、かなりきびきび走ります。

写真11. 住宅街を走る

住宅街を走ります(写真11)。この先、浜松まで(静岡や浜松の駅周辺以外は)都会とも田舎ともいえない風景を走ります。静岡県が日本の平均像であり、モデルケースとして活用されるというのも納得できます。

写真12. 新幹線をくぐる

新幹線をくぐります(写真12)。品川から吉原までは新幹線は山側を通っていましたが、ここで位置関係が逆転するのです。

写真13. 富士に停車!

富士に停車します(写真13)。沼津と静岡の中間駅では最も存在感が大きい駅です。ここで多くの人が降り、車内は空いてきました。富士から興津まで本数が少ないのも納得できます。

写真14. 富士川を渡る

富士川を渡ります(写真14)。ちょうど上り列車がやってきます。乗客がそれなりに多い時間だからか、5両編成です。

写真15. 富士川に停車

富士川に停車します(写真15)。現在は普通列車が主体ですが、かつては優等列車が多く走っていました。その名残で待避線がある駅もそれなりに存在します。

写真16. 山が迫っている

「富士から空いた」と書きましたが、それもそのはずです。線路の近くまで山が迫り、駅周辺に建物が少ないのです(写真16)。山が美しく感じます。

写真17. 道路が迫る

海側に視線を移すと、道路が迫ってきました(写真17)。

図2. 由比付近の地図(googleマップより引用)

これは地図を見ると納得できます(図2)。山が海岸に迫り、その隙間に鉄道や道路が集中しています。

写真18. 由比に停車!

由比に停車します(写真18)。

写真19. 海沿いを走る

海沿いを走ります(写真19)。高速道路で視界を遮られますが、高速道路もまた社会に必要なインフラです。

写真20. 清水に停車!

清水に停車します(写真20)。ここで多くの乗客が乗りこむと想定していましたが、6両編成の先頭という条件か、混雑はそこまで変わりません。

写真21. 東静岡を発車!

清水、草薙と市街地の中を走り、ついに静岡手前の東静岡を発車しました(写真21)。

写真22. まもなく静岡に到着!

まもなく静岡に到着です(写真22)。静岡は2面4線の駅で、引上線を活用して下り線と上り線のホームが分離されています。これは利用者にとっては便利で、向かうホームを迷う必要はありませんし、乗りかえも同じホームで階段の乗り降りは不要です。

ステージ2. 静岡→浜松

静岡では1分接続です。ただし、前述の通り同じホームでの乗りかえですので、静岡での1分乗りかえは全く問題ありません

写真23. 3両編成の車内はほぼ満席

3両編成の車内はほぼ満席です(写真23)。「乗り得なクロスシート車運用」ということで集中しているのでしょうか?

写真24. 静岡を発車!

静岡を発車しました(写真24)。2面4線の駅にしては意外と複雑な配線をたどります。

写真25. 安倍川を渡る

安倍川を渡ります(写真25)。写真がブレているので、速度が速いことが伝わると思います。

写真26. 安倍川に停車!

安倍川に停車します(写真26)。比較的新しい駅に見えます。それもそのはず、長距離輸送が主体の時代にはこの駅はなく、短距離輸送も担いだした1985年に開設された駅です。

写真27. 住宅地を走る

住宅地を走ります(写真27)。静岡駅の東側よりも住宅地が広がるという特性のためか、こちらのほうが利用者は多めで、朝ラッシュ時には8両編成(2023年1月時点で浜松6:45→静岡8:07)が存在します。逆方向は最大6両編成(浜松のラッシュ時対応で7両編成があるが)です。

写真28. 用宗に停車!

山がやや迫ってきました。用宗に停車します(写真28)。

写真29. トンネルに入る

トンネルに入ります(写真29)。

写真30. トンネルを出ると平坦な場所を走る

トンネルを出ると、再び平坦な場所に移ります(写真30)。

写真31. 焼津に停車!

そんな焼津に停車します(写真31)。

写真32. 住宅街を走る

住宅街を走ります(写真32)。そんななか、普通沼津行きとすれ違います。

写真33. 直線が多い

東海道線は大幹線だからか、直線が続きます(写真33)。

写真34. 藤枝に停車!

藤枝に停車します(写真34)。首都圏の民鉄の駅周辺を思い起こさせる風景で、街も発展しているように見え、静岡と浜松の間で最も利用が多い駅というのも納得できます。

写真35. 上りとすれ違う

上りとすれ違います(写真35)。平均10分間隔運転区間ですから、頻繁にすれ違います。

写真36. 島田に停車!

島田に停車します(写真36)。静岡都市圏輸送はここで終了し、ここから再度20分間隔です。

写真37. 大井川を渡る

大井川を渡ります(写真37)。

写真38. 金谷に停車!

金谷に停車します。静岡から島田までと異なり、のどかな風景の駅です。

写真39. のどかな風景を走る

島田から掛川まではのどかな風景を走ります(写真39)。

写真40. 茶畑が広がる

茶畑が広がります(写真40)。確かに静岡といえばお茶のイメージがあります。

写真41. 菊川に停車

菊川に停車します(写真41)。このあたりのお茶は菊川茶なのですか!

写真42. だんだん開けてきた

だんだん開けてきました(写真42)。

写真43. 掛川に停車!

掛川に停車します(写真43)。向こうに電車がとまっていますが、掛川発の区間運転です。時刻表を見ると、区間運転の前後の間隔を22分程度にまで開き、区間運転と合わせて10~19分間隔に調整しているように見えます。

ここでいくつか席が空きましたので、クロスシートに着席しました。

写真44. 住宅街を走る

住宅街を走ります(写真44)。ただし、静岡から島田よりも建物の密度は低いように見えます。

写真45. 田園風景も広がる

田園風景も広がります(写真45)。熱海からこのような風景は意外と少なかったようにも見えます。

写真46. もっと開けた場所もある

もっと開けた場所もありました(写真46)。

写真47. 開発中の住宅地がある

開発中の住宅地がありました(写真47)。何なのでしょうか?

写真48. 御厨に停車!

御厨に停車しました(写真48)。2020年開業の駅で、高輪ゲートウェイと同期の駅です。新しい駅とともに街づくり…、そんな場所なのでしょう。

写真49. 磐田に停車!

磐田に停車します(写真49)。ここもそれなりに発展している場所です。

写真50. 天竜川を渡る

天竜川を渡ります(写真50)。長野県の諏訪湖からはるばるここまでやってきます。

写真51. 天竜川に停車

浜松の手前の天竜川に停車します(写真51)。古い駅ですが、郊外に新設された駅という風情もあります。

写真52. 上り6両編成にも乗っている

上りとすれ違いましたが、座席が埋まるくらい乗っています(写真52)。6両編成でこの程度乗っているのはなかなかのものです。

写真53. 高架に上がった

高架に上がりました(写真53)。浜松も2面4線の駅ですが、乗りかえに階段を使うことが多く、静岡ほど便利ではありません。

写真54. 浜松に到着!

立ちがやや目立つ列車は浜松に到着しました(写真54)。下り列車を乗りかえる人が向こうのホームに見えます。

東海道線静岡地区に乗ってみて

写真55. この内装の評判はあまり良くないらしいが…

東海道線静岡地区に乗ってみました。感じたことは以下の点です。

  1. 意外と途中駅での乗り降りが多い
  2. かといって長距離乗る人も見かける
  3. 本数の少ない区間は乗客も少ない傾向であった
  4. 走りがキビキビしており、移動にストレスはあまり感じない

途中駅の乗り降りが多く、「多くの利用者がある駅と別の駅を乗り通す」わけではないと感じました。このような輸送実態の場合、普通の本数が多く、乗り降りしやすいロングシート車は適切と実態に合っていると思いました。キビキビ走っており、通過駅がなくともストレスはそこまで大きくありません。また、地方にしては破格の本数が確保されており、利便性も相当高いです。

ただし、乗り通す人もそれなりにいるようにも見られ、普通の本数が多く、乗り降りしやすいロングシート車ばかりというのもニーズに100%応えられるわけではない、とも感じました。

そして、乗客が少ない区間は本数も少なく、輸送量に応じてダイヤを細かく調整し、均一なサービスを実現していると実感しました。

まとめると、短距離輸送に最適化されており、中・長距離輸送のニーズを拾い切れていないということです。例えば、30分サイクルのダイヤとし、以下の構成はどうでしょうか。

  • 快速(熱海-沼津の各駅、富士、清水、静岡、焼津、藤枝、島田-掛川の各駅、袋井、磐田、浜松)を30分間隔(クロスシート車もあり)
  • 普通(熱海-島田、三島-浜松、興津-浜松、掛川-浜松)を各30分間隔(ロングシート車)

こうすれば、多様なニーズに応えられるでしょう。自動車からのシフトを狙うとなれば、この程度の輸送改善を行って欲しく感じます。

前後を読みたい!

(←前) 東海道線普通列車グリーン車の旅(品川→熱海)

東海道線静岡地区の普通列車の旅(熱海→浜松):現在地

東海道線での浜松と豊橋の移動(次→)

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