近鉄電車の伊勢地区の拠点駅、宇治山田。この宇治山田は歴史ある駅舎がそびえ立っています。そんな宇治山田駅を歩きました。

写真1. 宇治山田駅は和風でない!
復習:宇治山田駅の概要
宇治山田駅の概要を簡単にまとめます。
- 路線:近鉄山田線、近鉄鳥羽線
- 規模:3面4線
- 位置:三重県伊勢市岩淵2-1
図1. 宇治山田駅の位置(googleマップより引用)
宇治山田駅は伊勢市にある近鉄の駅です。とだけ書くと普通の駅のように見えますが、伊勢神宮(内宮)の最寄駅と書くとその意義の重さに気づかされます。近鉄ではお召し列車が運転されていますが、ひとえに伊勢神宮の最寄駅の宇治山田に向かうという面が強いです。
また、伊勢神宮は江戸時代から日本人が行くべきところとされ、事実上旅行を禁止していた江戸幕府でさえ行くことを認めていました。そのような日本人にとって特別な場所の最寄駅という事実こそ重要です。
一定期間、近鉄の終点として君臨していましたが、鳥羽線が開業し、途中駅となりました。このときに終点の称号は変換しましたが、逆に伊勢神宮から志摩半島方面への中継地点としての役割を新たに担いました。
現在も構内はそう難しくありません(図2)。

図2. 宇治山田駅の構内図(近鉄公式サイトより引用)
改札は原則1か所、ホームの数も多くありません(図2)。もともと宇治山田が終点だった名残で、1番のりばと2番のりばは行き止まり式です。通常の駅は中2線または外2線が本線、ほかが副本線の配線をとることが多いことを考慮すると、特異な配線とわかります。
宇治山田駅を楽しむ

写真2. 宇治山田駅の外観
宇治山田駅の外観です(写真2)。洋風の駅舎です。

写真3. 欧州の駅舎の例(ブダベスト東駅、2019年に撮影)
参考に欧州の駅舎の例を示しました(写真3)。建設当時はオーストリア・ハンガリー王国のハンガリー王国内に建設されました(現在のハンガリー)。

写真4. 駅舎内の様子
駅舎内の様子です(写真4)。西洋レトロとも呼べる内装です。伊勢神宮という日本の心のふるさとの最寄駅にもかかわらず、和風の駅舎でないのが興味深いです。

写真5. 駅舎内は広いスペースがある
駅舎内は広いスペースがあります(写真5)。団体客が多い駅という性質上、広いスペースが設けられているのでしょうか。

写真6. 券売機などがある
券売機などがあり、液晶モニターによる発車案内が備わっています(写真6)。レトロな駅舎であってもそのあたりは現代の標準に合わせています。

写真7. 臨時の階段がある
臨時の改札口とそれに続く階段があります(写真7)。天井も比較的高く、西洋の駅舎を感じさせます。

写真8. 西洋の駅舎は天井がもっと高い
まあ、本物の西洋の駅舎は天井がもっと高いことはここでは触れないことにします(写真8)。

写真9. 改札機はQRコード対応の最新式
改札機はQRコード対応の最新式です(写真9)。小さなところは現代の標準に合わせる、それが例えレトロさを売りにしている駅舎でもです。

写真10. 発車案内もあり迷わない
発車案内もきちんと整備され、ホームに迷いません(写真10)。

写真11. 2番のりばと3番のりばへの階段
2番のりばと3番のりばへの階段です(写真11)。

写真12. のりばごとの行先が表示される
のりばごとの行先が表示されています(写真12)。名古屋方面と京都方面は、(近鉄)名古屋駅と京都駅に向かいますが、「大阪 神戸」方面というのは関西民鉄らしい表現です。近鉄電車で行けるのは大阪上本町や大阪難波の駅であり、大阪駅そのものには行けません。大阪、京都、神戸は駅名ではなく、都市名です。この場合は大阪市や神戸市に行けるという表現です。
神戸方面はごくまれに走る臨時列車以外は設定はありません。それでも線路は神戸までつながり、近鉄管内から神戸(神戸駅ではなく神戸三宮駅)に向かう電車が設定されているので、案内としては良いのでしょう。

写真13. 4番のりばに停車中のしまかぜ
タイミングが良かったのか、4番のりばにしまかぜがやってきました(写真13)。
動画1. しまかぜの発車風景
しまかぜの発車風景を撮影しました(動画1)。

写真14. 2番のりばに到着の普通電車
2番のりばに到着の普通電車です(写真14)。夕方は宇治山田以北は毎時3本、宇治山田以南は毎時2本ですので、調整のために宇治山田折り返しが発生します。

写真15. 2番のりばの付け根
2番のりばの付け根です(写真15)。電車が停車中のホームが2番のりば、その右に位置するのが1番のりばです。さらに右手に見えるのは駅直結のバスのりばの跡です。このような設備がせっかくあるのですから、伊勢神宮方面のバスを駅に横付けし、異なる交通機関どうしの接続を改良してもらいたいです。

写真16. 諸外国の道路交通と鉄道の接続が良好な例(チューリッヒ中央駅で撮影)
スイスにはシームレスに接続する例があります(写真16)。

写真17. 急行が到着!
急行が到着しました(写真17)。以前よりも宇治山田発着の急行は減少し、となりの五十鈴川発着が増えています。

写真18. 急行が発車!
急行が発車しました(写真18)。宇治山田にやってくる急行は名古屋方面の毎時1本のみの時間帯が多いです。大阪線急行が宇治山田にやってくる機会はかなり少なく、伊勢中川での乗りかえが中心です。伊勢中川での接続時間は長くても10分程度というのが救われますが、特急誘導といわれても仕方ないでしょう。

写真19. 特急がやってきた
特急がやってきました(写真19)。名古屋方面と大阪方面に毎時1本以上の特急が運転され、宇治山田断面で特急の本数は多いです。

写真20. ホームの伊勢市よりはカーブ
改めてホームの伊勢市よりを眺めます。急カーブがあることがわかります(写真20)。伊勢市や宇治山田は全列車停車駅なので、ここを通過する列車はなく、スピードアップの障壁にはならなさそうですが、山田線や鳥羽線の線形の良さを見ると、ここの急カーブは意外に映ります。

写真21. アーバンライナーもやってくる
アーバンライナーもやってきます(写真21)。この列車は賢島よりがレギュラーシートですので、大阪方面からの列車です。アーバンライナーは名古屋-大阪難波の位置に揃えられていますので、伊勢中川以南では名古屋系統と大阪系統で編成の向きが逆なのです。
宇治山田駅を歩いてみて

写真22. アーバンライナーも空いていた(大阪よりは混んでいたのかもしれません)
宇治山田駅。伊勢神宮に近いこともあり、駅舎そのものは贅沢な造りでした。そして、「日本人の心のふるさと」の最寄駅とはいえ、和風の駅舎でないのがちょっと特異に思えました。
そんな駅舎の豪華さと裏腹に、急行は毎時1本、特急の本数こそ多いものの、(平日の夕方という事情はあれど)「にぎわっていて混んでいる」という様子とはほど遠く、都市部から離れつつある立地の鉄道の利用が多くないという事実も突き付けられました。平日でも伊勢神宮付近の駐車場は満車表示があったように記憶しており、その落差も印象に残りました。
確かに自動車交通の利便性にはかなわないでしょう。そして、都市から遠い場所でも近鉄電車は利便性が比較的高いのも事実です。それだけに、バスとの連携など、やれることがあるのでは、とも感じました。過去にはバスとのシームレスな接続を実現できていたのですから。