ライン川右岸線の列車旅(フランクフルト-ヴィースバーデン-コブレンツ)

記事上部注釈
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少し昔のドイツの鉄道といえば、ライン川に沿う列車が有名でした。そのライン川沿いの路線、実は2つあることはご存じでしたか?今回はそのライン川沿いで注目を浴びないほうに乗ってみました。

写真1. リューデスハイムを通るライン川右岸線

復習:ライン川沿いの鉄道の重要性と2つの経路

まず、ライン川沿いの鉄道の重要性や2つの路線があることについて触れます。

図1. フランクフルトとケルンの位置関係(googleマップより引用)

ライン川はスイスからドイツを経由し、オランダで北海に注ぐ国際河川です。そのため、「ライン川沿いの鉄道」というと、厳密にはスイス南東部からロッテルダム付近までの鉄道路線を列挙しなければなりません。しかし、一般にライン川沿いの鉄道としてイメージされるのは、観光名所とされるマインツとコブレンツの間です。また、反対側のヴィースバーデンとコブレンツの間ともされます。

もう少し広い範囲でとらえると、下流のケルンを結ぶ路線が該当します。左岸線はマインツ-ケルンが該当、右岸線はヴィースバーデン-ケルンが該当しましょう。左岸と右岸で起点の都市が異なるのは変な気がしますが、マインツとヴィースバーデンは対岸にある都市です。

いずれもフランクフルトを経由する列車が多く、現在の高速新線はフランクフルトとケルンを結びますので、本記事では左岸と右岸の起点をフランクフルトとして取り扱います(※)。

※フランクフルトはライン川沿いの都市ではなく、マイン川沿いの都市ですので、ライン川沿いの路線にフランクフルトを含めるのは本来は正しくありませんが、現代の旅客流動を考慮しました。

図2. ライン川沿いの鉄道路線網(OpenRailwayMapより引用)

それを踏まえ、ライン川沿いの鉄道路線網を示しました(図2)。これだとわかりにくい?

図3. ライン川沿いの鉄道路線網(OpenRailwayMapより引用後加工)

改めて関係する路線を示します(図3)。この両岸には鉄道路線が敷かれ、フランクフルトとケルンの間は2つのルートが確立されていました。スイスからオランダへの経路であり、ドイツ西部の拠点フランクフルトとドイツ最大の工業地帯のルール地区を結ぶという重要な役割を担っていました。

特に左岸側は昔からドイツを代表する列車が運行されていました。ケルンの北側はベルギーやオランダに通じており、国際列車が行きかうルートともなっていました。ライン川沿いはカーブが多く、高速走行に難があったため(色味が赤くなるほど高速走行可能なことを意味しています)、高速新線が別線で開業しました。

コブレンツの南側は本当に2本のルートがあるのかという疑問もわくでしょう。

図4. ライン川沿いの鉄道路線網(OpenRailwayMapより引用)

川沿いに2本が並行しているので1本の線に見えましたが、ちゃんと2本のルートがあります。さきほどはほぼ重なっていたので、1本に見えていたのでした。

図5. ライン川沿いの鉄道路線網(OpenRailwayMapより引用後加工)

例によってわかりやすく加工しました(図5)。

現在はフランクフルト-ケルンでは長距離列車は以下の通り運転されています。

  • 高速新線:フランクフルト中央駅-ケルン中央駅をダイレクトで結ぶICEを毎時1本で運転(そのほか、フランクフルト空港駅-ケルン中央駅を結ぶ列車、フランクフルト中央駅-ケルンメッセドイツ駅を結ぶ列車も各毎時1本運転)
  • 左岸線:マインツ-ケルン中央駅を結ぶIC(またはICE)を毎時1本運転。半数はマインツ以南はフランクフルト方面、もう半数はマンハイム方面(貨物列車の重要なルートとしての機能は維持)
  • 右岸線:ICやICEの運転は原則なし(貨物列車の重要なルートとしての機能は維持)

もちろん輸送の中心は高速新線であり、フランクフルトとケルンのターミナル駅にこだわりがなければ、毎時3本の乗車チャンスがあります(両中央駅を通ると方向転換の必要があり、所要時間が増すために両中央駅を通る列車は毎時1本に限られます、ただしケルンメッセドイツ駅はケルン中央駅の隣駅であり、両駅を結ぶ列車の本数もかなり多いです)。

マインツ、コブレンツ、ボンといった中都市があるためか、左岸線には長距離列車が運転されていますが、中都市のない右岸線には長距離列車は運転されていません。そのためか、旅行本には左岸線ばかり登場します。そこで、本記事では右岸線に焦点を当てようというわけです。

フランクフルトとコブレンツに実際に乗車する

左岸線、右岸線、高速新線の関係性について紹介したところで、実際にフランクフルトからコブレンツまで乗りましょう!

確認.フランクフルトからコブレンツまでの移動経路

フランクフルトとコブレンツは左岸線と右岸線のローカル列車が結んでいます。左岸線のローカル列車は2時間間隔(このほかにマインツ以北で毎時1本運転)、右岸線のローカル列車が1時間間隔です。このほか、左岸線の長距離列車が2時間間隔で運転されています。おおむね以下のダイヤで運転されています。2時間サイクルのパターンダイヤとも解釈できますので、ICEどうしの特定の2時間にしぼって表にまとめました(表1、表2)。

表1. フランクフルトからコブレンツまでの直通列車(2時間サイクル)

フランクフルトコブレンツ
左岸線ICE9:4211:11
右岸線RB9:5312:06
右岸線RB10:5313:06
左岸線RE11:0812:54
左岸線ICE11:4213:11

表2. コブレンツからフランクフルトまでの直通列車(2時間サイクル)

コブレンツフランクフルト
左岸線ICE10:4812:12
右岸線RB10:5213:04
左岸線RE11:0412:48
右岸線RB11:5214:04
左岸線ICE12:4814:13

フランクフルトをIC(またはICE)の11分後に発車したRBはコブレンツ時点では55分の差を付けられています。じつに44分の所要時間差です。ICEの所要時間が84分ですので、65%増しの所要時間です。これは右岸線経由で旅行しようという人が少ないわけです。

現在のREとRBの運転系統図を示します。

図6. ラインラント=プファルツ州の路線図(地域サイトから入手)

ライン川右岸線も経由するラインラント=プファルツ州の路線図です(図6)。これで左岸線のほうが運転系統が多いことがわかるでしょう。この路線図が親切なのは、隣接する州の大都市(ヘッセン州のフランクフルト、ノルトラインヴェストファーレン州のケルン)まで収録されていることです。

図7. ラインラント=プファルツ州の路線図(地域サイトから入手後に加工)

これだとわかりにくい?ライン川左岸線とライン川右岸線に関わる運転系統図を抜粋しました(図7)。厳密には右岸線はコブレンツを通りませんが、現代の運転系統はコブレンツを必ず通るようになっています。

Stage1. フランクフルトからヴィースバーデン

まず、フランクフルトからヴィースバーデンまでの乗車です。この区間は厳密にはライン川右岸線ではなく、マイン川沿いを走る路線です。RBが遅いといえど、フランクフルトからヴィースバーデンまでは停車駅が少なく、多くの駅はSバーンに委ねます。

写真2. RB10系統のノイヴィート行き

RB10系統のノイヴィート行きです(写真2)。

写真3. ノイヴィード行きは編成が短い

短い編成です(写真3)。州で最大都市のフランクフルトと州都のヴィースバーデンを結ぶRBが1時間に1本で足りるのかは疑問に感じますが、途中のリューデスハイムか次のアススマンスハウゼンまではRB10系統が毎時2本確保される時間帯も多く、かつSバーンが30分に2本確保されているので、毎時5本~毎時6本のことが多いです。

写真4. 1等車に陣取ってみたものの…

今後の旅程を考慮し、ユーレイルパスは1等車用を買い(もちろん2等車も利用可能)、1等車に陣取りましたが、車内設備は大きく変わりません。

写真5. 1等はボックスシート

1等はボックスシートでした(写真5)。1等車というのであれば、横2列+横1列を期待しましたが、空いていることが一番の特権のようでした。

写真6. 2等車もそれなりに快適そう

2等車もそれなりに快適そうです(写真6)。日本より低いホームに対応できるよう、床面は低いです。床面が高い場所は台車の上です。一斉にホームのかさ上げを実施し、床面の高い車両を導入するのが将来を見据えた理想論と思いますが、欧州は各国に直通し、ポルトガルから旧ソ連諸国まで足並みをそろえるのは難しく、車両側で対応するしかありません。

写真7. フランクフルトを発車

フランクフルトを発車しました(写真7)。

写真8. 車掌さんが検札にやってきた

車掌さんが検札に来ました(写真8)。ユーレイルグローバルパスのモバイルパスの確認画面を出して終了です。

写真9. フランクフルトの市街地を走る

フランクフルトの市街地を走ります(写真9)。

写真10. 最初の停車駅に停車

最初の停車駅に停車します(写真10)。このあたりまでは住宅が多く、フランクフルトの住宅街が広がっています。

写真11. のどかな風景に変わってきた

のどかな風景に変わってきました(写真11)。

写真12. のどかな風景が続く

のどかな風景が続きます(写真12)。

写真13. 住宅街もある

住宅街もあります(写真13)。

動画1. 走行中の様子(Take1、防音壁が多い…)

ライン川右岸線系統は遅いという先入観でしたが、意外と速度は出していました。その様子を動画でお届けします(動画1)。防音壁が多く、風景は楽しめない箇所がありますが、貨物列車が走るので騒音に気を遣ったためでしょうか。

動画2. 走行中の様子(Take2、防音壁が少ない)

再チャレンジしました。風景が見えやすい区間で、少しは臨場感は伝わったでしょうか(動画2)。

写真14. ヴィースバーデン中央駅に近づく

ヴィースバーデン中央駅に近づきます(写真14)。

写真15. 発展している様子はない

市街地の雰囲気は感じますが、発展している様子はありません(写真15)。それもそのはず、ヴィースバーデンの中心街は中央駅よりやや先に位置します。

図8. ヴィースバーデンの市街地

その位置関係を示しました(図8)。市街地の南側に頭端式の駅が位置します。

写真16. 乗客が待つ

多くの乗客が待っています(写真16)。

写真17. 多くの人が降りる

ヴィースバーデン中央駅に到着しました(写真17)。多くの人が降りました。やはりこの列車は乗り通す乗客は多くなく、ヴィースバーデンなどで乗客を入れ替えながら進むのです。

Stage2. ヴィースバーデンからリューデスハイム

私はコブレンツまで通しで乗らず、リューデスハイムで途中下車しました。そのため、Stage2ではリューデスハイムまで取り上げます。

写真18. ヴィースバーデン中央駅を発車!

乗客の多数を入れ替え、かつ進行方向を変えてヴィースバーデン中央駅を発車しました(写真18)。この利用状況であれば、ヴィースバーデンで進行方向を変えずに済む短絡線経由で運転する必要はなさそうです。通過流動は左岸線が担っていることも考慮するとこの思いはいっそう強くなります。

写真19. ヴィースバーデンの市街地を走る

フランクフルト方面の線路と分岐し、ヴィースバーデンの市街地を走ります(写真19)。Sバーンはヴィースバーデン中央駅までの運転のため、さっきまでの通過運転は消滅し、各駅にとまります。

写真20. のどかな風景が展開する

のどかな風景に変わってきました(写真20)。

写真21. 郊外の住宅地に停車

郊外の住宅地に停車します(写真21)。

写真22. エルバッハに停車

エルバッハに停車します(写真22)。ドイツの田舎らしい建物が並ぶ印象です。

写真23. のどかな風景に変わってきた

再びのどかな風景に変わってきました(写真23)。

写真24. エーストリッヒでライン川が見える

エーストリッヒでライン川が見えてきました(写真24)。

写真25. 田舎町を走る

田舎町を走ります(写真25)。

写真26. リューデスハイム直前でライン川を眺められる

リューデスハイム直前でライン川を眺められます(写真26)。実はこの先にもっとすごい風景が展開しますが、フランクフルトからリューデスハイムまで日帰り旅行で来るとその風景は味わえないのです。

写真27. リューデスハイムで途中下車

リューデスハイムで途中下車しました(写真27)。

Stage3. リューデスハイムからコブレンツ

リューデスハイムで途中下車しましたが、右岸線の旅を再開しましょう!

写真28. リューデスハイムでの乗り降りは多い

リューデスハイムはそれなりの観光地であることから、乗り降りはそれなりに多いです(写真28)。ライン川右岸線の誘客を兼ね、2時間間隔でもICを走らせれば鉄道利用客は増えるのでは?

写真29. ライン川沿いに進む

リューデスハイムから車窓のハイライトです。対岸に広がるのはビンゲンです(写真29)。

写真30. 貨物船が見える

ライン川は国際河川で、スイスと外海の連絡役を担っていることもあり、貨物船もそれなりに見かけます(写真30)。

写真31. 今度は観光船も見かけた

今度は観光船も見かけました(写真31)。

写真32. 山と川の競演

山と川の競演です(写真32)。

写真33. 田舎町を通る

田舎町を通ります(写真33)。

写真34. 城跡が見える

ライン川左岸線や右岸線の見どころといえば、古城群でしょう。その城跡の1つが見えます(写真34)。

写真35. ライン川を眺める

ライン川を眺めます(写真35)。

写真36. ロルヒに停車!

ロルヒに停車します(写真36)。

写真37. 対岸の風景を眺める

対岸の風景を眺めます(写真37)。

写真38. 川の中に島が見える

川の中に島が見えます(写真38)。

写真39. 前方に車両が見える

前方に車両が見えました(写真39)。4両編成の電車が見えます。

写真40. プファルツ城が見える

プファルツ城が見えます(写真40)。ここを見学しても良かったと思いますが、この日は月曜日で休館日でした。

写真41. Kaubに停車

そのプファルツ城近くの駅に停車します(写真41)。

写真42. 城跡が見える

左岸線側の城跡が見えます(写真42)。オーバーヴェセルの古城ホテルです。

写真43. 左岸線が見える

左岸線が見えます(写真43)。

写真44. ローレライを眺める

ローレライを眺めます(写真44)。

写真45. ザンクトゴアハウゼンに停車

ザンクトゴアハウゼンに停車します(写真45)。対岸のザンクトゴアと間違えないように注意が必要です。

写真46. 観光船の姿が見える

観光船の姿が見えます(写真46)。

写真47. 貨物船が見える

今度は貨物船が見えました(写真47)。

写真48. 風情ある田舎町

Kamp-Bornhofenです。風情ある田舎町です(写真48)。

写真49. オスターシュパイに停車!

オスターシュパイに停車します(写真49)。

写真50. 立派な城が見える

立派な城が見えます(写真50)。

写真51. 徐々に周囲が開けてきた

徐々に周囲が開けてきました(写真51)。

写真52. 線路が多い

線路が増えました(写真52)。コブレンツから東方向に向かう線路とライン川右岸線が交差するためです。ライン川右岸線の列車もいったん西に向かい、コブレンツに向かいます。つまり、厳密な意味ではライン川右岸線を乗り通すことはできないのです。

図9. コブレンツ付近の路線図(2023年入手のものを加工)

2023年に入手した路線図です(図9)。Niederlahnsteinからライン川右岸を北上する系統があります。

図10. コブレンツ付近の路線図(2024年入手のものを加工)

2024年に入手した路線図です(図10)。Niederlahnsteinからライン川右岸を北上する系統がなくなっています。そのため、NiederlahnsteinとKoblenz-Ehrenbreitsteinの間の右岸線(実際はコブレンツ中央駅方面の分岐点どうしだが)に乗ることは難しくなりました。臨時の迂回運転などに望みをつなげるしかありません。

写真53. ライン川を渡る

ライン川を渡ります(写真53)。

写真54. 2等は混んでいた

いつの間にか2等車は混んでいました(写真54)。RB10系統の全区間の30分間隔化またはICの増発を求めたいところです。

写真55. 2等の混雑状況

突発的な混雑なのでしょうか(写真55)。

写真56. コブレンツに到着!

コブレンツに到着しました(写真56)。コブレンツは南北軸のライン川左岸線と、東西軸のギーセン方面(東側)、トリーア(西側)の交差点でそれなりに発展しています。

ライン川右岸線を旅してみて

写真57. リューデスハイムを通るライン川右岸線

今回はあまのじゃくな精神で有名な左岸線でなく、右岸線に乗ってみました。左岸線に乗るよりも55分程度時間を要しますが、風景は良く、楽しい時間を過ごせました。左岸線は長距離列車で通過できますので、触れ合うチャンスは多いですが、右岸線は能動的に動かなければ乗れません。そのような精神で乗ってみて良かったと思います。

また、夏休みのためか混雑も認められました。観光客を自動車から誘致するために、リューデスハイムなどに停車しながらフランクフルトからケルンまでの右岸線経由のICを2時間程度の間隔で運転しても良いと感じました。

重要

本記事で詳細に解説しますが、ドイツの鉄道に関する内容を一通り、そして詳しく解説した書籍を出版いたしました。同人誌の流通ルートで販売していますが、いわゆる萌え絵は一切なく一般的な同人誌に嫌悪感を示す人でも抵抗ない内容・体裁になっています。

前後を読みたい!

果たして前後はどこに行ったのでしょうか?

(←前)フランクフルト中央駅に親しむ(構内図も収録!)

ライン川右岸線の列車旅(フランクフルト-ヴィースバーデン-コブレンツ):現在地

未執筆です!(→次)

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