ボンの市内交通(都市交通)に親しむ(運賃制度や路線図も詳細に解説)

記事上部注釈
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西ドイツ時代の首都、ボン。現在も中都市ということもあり、市内交通はそれなりに発達しています。そんなボンの市内交通を楽しみました。

写真1. 郊外区間ののどかな住宅街を走る66系統(ホームの高さに注目!)

復習:ボンの都市交通

親しむ前にボンの都市交通の概要を紹介します。

ボンとケルンの都市交通のつながり

ボンの市内交通を語るうえではケルンの都市交通も見逃せません。

図1. ケルンとボンの路線図(VRSの公式サイトより引用)

ケルンとボンの都市交通の路線図を示します(図1)。ケルンとボンはそれなりに離れていますが、市内交通は連続しています。ケルンは人口100万人、ボンは人口30万人です。これだけ見ると、ケルンが中心都市、ボンは衛星都市という印象になりますが、ボンは首都機能があり、単純な衛星都市というわけでもありません。

ケルンとボンは34km程度離れており(ドイツ鉄道基準)、トラムとドイツ鉄道(他国でいう国鉄相当)が並走しています。日本の感覚だと対国鉄を意識して急行や特急を走らせそうですが、協調性を考えているのか、あくまでも各駅停車のみの運転です。

ケルンとボンの都市間輸送を考えたわけではなく、ケルンの都市圏交通とボンの都市圏交通が重なった結果、両者の都市圏交通が重なったと考えると良さそうです。

例えば、VRSのサイトでボン中央駅とケルン中央駅/教会の経路を検索すると以下の結果です。

図2. ボン中央駅とケルン中央駅/教会の検索結果(VRS公式サイトより引用)

このようにトラムを全く使わない検索結果も表示されます。都市圏輸送はドイツ鉄道にまかせ、トラム自身は都市内輸送に特化する姿勢が伝わります。

ボンの都市交通の運賃制度

ボンの都市交通とケルンの都市交通は直通していることもあり、欧州の都市にしては珍しく単純な運賃制度ではありません。ゾーンごとに運賃が分かれています。

運賃制度の要点は以下の通りです。

  • ゾーン(通過自治体数)によって運賃は決められる
  • 1回券4回券24時間券があり、その価格はゾーンごとに異なる
  • ヨーロッパではバリデーションが必要な場合があるが、ここでは1回券や24時間券はバリデーション済である。

ゾーン制度

図3. VRSのゾーン分け一覧

VRSのゾーン分け一覧です(図3)。これが運賃に影響します。どういうことでしょうか。

VRSの料金エリアは、個別の料金エリアに分かれています。エリアは、いずれの場合も1つの都市または自治体に対応します。都市または自治体内では、1a(またはケルンまたはボンの都市内は1b)のチケットが必要です。旅で通過する都市や町が多ければ多いほど、必要な価格レベルは高くなります。

これらの自治体ベースの価格レベルに加えて、短距離旅行の短距離運賃もあります。これにより、バスと電車で最大4駅まで移動できます。
(例外:RE、RB、Sバーン、および高速バスは短距離運賃では使用できません!

ご旅行に必要な料金レベルについては、こちらをご覧ください。

VRSの時刻表情報を介して:
これを行うには、オンラインの時刻表情報に出発地と目的地を入力し、可能な接続を確認します。さまざまな旅行オプションに加えて、目的地に到達するために使用できるチケットの価格レベルに関する情報も受け取ります。

VRS公式サイトより引用

つまり、出発駅と目的駅を運賃検索システムに入力し、該当するゾーンを調べなさい、ということです。例えば、先ほどのケルンとボンの移動であれば4ゾーンという結果です。これはトラムのみならずドイツ鉄道に乗る場合も共通です。

1回券と24時間券

ゾーンごとの運賃は以下の通りです。

まず、1回券です。

表1. VRSの1回券の運賃一覧(VRS公式サイトより引用)

意外と高く、近距離であっても2.42ユーロもします。日本人の感覚でいうと(為替相場にもよりますが)初乗り運賃が388円するということです。観光客などで3回以上乗るのであれば、後述の24時間券を使うほうが割安です。

つぎに、24時間券です。そう!1日券ではなく24時間券です。1日目の午後と2日目の午前中に使うということも可能で、その点は非常にリーズナブルです。

表2. VRSの1回券の運賃一覧(VRS公式サイトより引用)

5人用の7ゾーンのモバイルがかなりの高額になっていますが、ドイツ語ページを見ると54.12ユーロと常識的な金額でした。英語版を見る人は少ないと見え、指摘もないのでしょう。

1回券も含め、モバイルのほうが安い設定です。これは自動券売機などの維持費用を節約でき、かつ細かな金額を設定できるためと理解しています。

私が見た限り、クレジットカードのタッチ決済によるシステムは導入されていませんでした。ベルギーやオランダだと都市内交通でこのようなシステムが導入されていますが、ここに導入するのも難しいのでしょうか。

もう少し詳しいことは運賃制度の解説ページドイツ語版の冊子に記載されていました。これによると以下の通りです。

表3. 各運賃制度の詳細(運賃制度の解説ページドイツ語版の冊子から引用後加工)

これを見ると、複数人数の24時間券がかなり割安です。5人で行動(同一列車に乗るなどの行動が求められましょう)する際の24時間券(1bエリア)は17.2ユーロです。もしも4回乗車するとすると、1人1回当たり0.86ユーロと(為替相場にもよりますが)日本の感覚で138円とそれなりに安いです。

バリデーションについて

欧州では乗車前にバリデーションが必要とされます。では、ボンの市内交通だとどうでしょうか?

VRSの運送会社では、4枚券を除くすべての券売機からのチケットはすでにバリデーションされており、すぐに使用できるように設計されています。バリデーションなしのチケットは、営業所で事前に購入できます。

At the VRS transport companies, all tickets from the ticket machines – with the exception of 4-ticket tickets – have already been validated and are intended for immediate use. You can purchase unvalidated tickets in advance at the sales offices of the transport companies.

VRS公式サイトより引用

簡単にいうと、1回券24時間券券売機で購入した場合はバリデーションということです。窓口で購入する場合や(券売機であっても)4回券の場合はバリデーション済ではありません。

ボンとその周辺の路線図

最後にボンとその周辺の路線図を示します。

図4. ボンとその周辺の路線図(VRSの公式サイトより引用後加工)

ボンの都市交通の路線図を示します(図4)。ゾーンをこの路線図に書き加えると親切だと思いますが、それをやらないのはなぜでしょうか?

なお、Uと書かれている駅は地下にあり、都市の中心部では地下鉄、郊外では路面電車として運転されています。

これで実用上の情報は終了です!

ボンの市内交通に親しむ

実用上の情報はこの程度にして、ボンの市内交通に親しみましょう!

66系統に乗る:南の郊外へのアクセス

私が利用したのは、ケーニヒスヴィンターの登山鉄道に乗るためのアクセスでした。

写真2. Bertha-Von-Suttner-Pl./Beethovenhaus電停の様子

市内中心部のマルクト広場かつ私の宿泊場所最寄りの電停の様子です(写真2)。

写真3. 低床ホームがある

低床ホームがあります(写真3)。一部の電車はここを通過します。どうしてでしょうか?

写真4. 高床ホームがある

そう、高床ホームがあります。系統ごとに車両が分けられ、それに応じたホームがあるのです。なかなか複雑なシステムです…。

写真5. 高床車両と低床車両の出会い

このように両者の車両が出会うとわかりやすいでしょうか(写真5)。

写真6. ゾーンが示される

駅にはゾーンが示される案内板がありました(写真6)。

写真7. 自動券売機がある

自動券売機がありました(写真7)。券売機(または窓口)で有効なチケットを買わずに、検札で指摘されると罰金が取られます。そのため、券売機できちんと購入することは必須です。私は間違えて1aのチケットを買ってしまい、近くの窓口で確認したら、2aだよと言われました。よって窓口で買いなおしました(払い戻しは不可でした)。

後知恵ですが、この日はユーレイルグローバルを使っていました。ボン市内まで乗れるところまで乗り、ボンから外れる区間だけドイツ鉄道を使えば買いなおす必要はありませんでした…。

写真8. 車内はボックスシート中心の配列

車内はボックスシート中心の座席配置です(写真8)。都市圏交通ですので、乗り降りしやすいロングシートでも良さそうに思いますが、それは日本の常識なのでしょう。

写真9. 液晶表示がエラー表示

液晶表示がエラー表示になっていました(写真9)。これに好奇心のまなざしを向けていたら、向かいの席の女性に笑われました。最初はいかにも東洋人の人に対して心配したのでしょう。

写真10. ボンの中心部を走る

ボンの中心部を走ります(写真10)。この先はさらに都会的な風景を堪能できるのでしょうか?

写真11. 地下区間に入る

地下区間に入りました(写真11)。ボン中央駅から南側は地下区間です。日本では地下鉄と路面電車は別個の交通機関として分類されていますが、ドイツなどの欧州では地下鉄と路面電車の垣根はありません。都電荒川線にも見習ってほしい(新宿や浅草への直結)と思いますし、東急世田谷線も地下線を駆使して中目黒まで伸びれば良いのに…。

写真12. ボン中央駅に停車!

ボン中央駅に停車します(写真12)。地下鉄だけでも2面4線の立派な駅です。

写真13. 郊外にやってきた

郊外にやってきました(写真13)。再び地上に出ます。

写真14. 反対方向の電車とすれ違う

反対方向の電車とすれ違います(写真14)。そういえば、ボン中央駅以南の地下区間からは低床車対応のホームはありません。地下区間には低床車が来ないのです。

写真15. ライン川を渡る

ライン川を渡ります(写真15)。このあたりのライン川は平地を流れる河川です。

写真16. ケーニヒスヴィンター

ケーニヒスヴィンター市内に入りました(写真16)。

写真17. のどかな住宅街を走る

のどかな住宅街を走ります(写真17)。

写真18. ケーニヒスヴィンターに到着

ケーニヒスヴィンターに到着しました(写真18)。googleマップにはKönigswinterと書かれていますが、実際にはKönigswinter Fähreです。行先にKönigswinterと書かれている電車はここまでは行きません。ここは末端部分ということもあり、20分間隔でした(Königswinterまでは10分間隔でした)。

写真19. 終点までもうひと走り

終点までもうひと走りです(写真19)。

写真20. 駅の雰囲気

こんな雰囲気です(写真20)。だいぶ郊外の雰囲気です。ここまでそれなりに速い走りでした。

ボン中央駅の様子

ボン中央駅を観察する機会に恵まれました。

写真21. 中央駅の駅名標

中央駅の駅名標です(写真21)。ボン中央駅の表示でなく、中央駅のみの表示です。路面電車は都市内交通であり、中央駅の前に都市名を冠さないのがセオリーです。でも、この路面電車はケルン中央駅も通るけどこれで良いの?

写真22. 中央駅は2面4線の配置

中央駅は2面4線の配線です(写真22)。

写真23. 中央駅の雰囲気

中央駅の雰囲気です(写真23)。朝だったためか、人は多くありません。

写真24. 夕方のボン中央駅

夕方のボン中央駅です(写真24)。人が多いです。

写真25. ホームの雰囲気

ホームの色づかいが現代的です(写真25)。黒系を多用しています。彩度の高いベンチも良いアクセントです。

写真26. ジークブルク行きの66系統

ジークブルク行きの66系統です(写真26)。10分間隔で運転されており、高速新線のICEの停車駅まで連絡する意図もあるのでしょう。

写真27. 始発のケルン方面行きがやってきた

始発のケルン方面行きがやってきました(写真27)。ホーム上折り返しではなく、引上線でも使うのでしょうか?

写真28. ケルン方面行きが停車中

ケルン方面行きが停車中です(写真28)。ボンとケルンを結ぶ系統は2系統(16系統と18系統)がありますが、こちらはボン中央駅以北のみ運転し、西側を経由する18系統です。

写真29. エスカレータが伸びている

エスカレータが伸びています(写真29)。地下駅という割には優雅な造りな気がします。

写真30. 駅直結のスーパーマーケット

駅にはスーパーマーケットが併設されています(写真30)。旅行には強い味方です。

写真31. 地上には路面電車のりばとバスのりばがある

地上には路面電車とバスが乗り入れます(写真31)。

写真32. 低床車がドイツ鉄道の駅舎前を通過

こちらには低床車が乗り入れます(写真32)。

ボンの都市交通に親しんでみて

写真33. 郊外から乗った電車(写真1)が中央駅では地下鉄然としている

意外と複雑な運賃システムや路線網が形成される、ボンやケルンの都市交通。路線網が複雑で距離も長い一方、種別は各駅停車だけと都市内交通に特化している面も見られます。これは、(特にケルンとボンの間は)並行してドイツ鉄道があり、中距離輸送はそちらに任せている点が見られます。

そのような意味で、都市内輸送と都市間輸送を別の交通モードとして認識している点を感じました。これは、地下鉄から民鉄、そして新幹線まで「電車」と称する日本とは異なる点です。ある意味、日本とは異なる厳格な区分けで、頭が固いと感じる部分もあります。

他方で路面電車と地下鉄の境界があいまいで、変幻自在に路面電車と地下鉄を操る姿も目撃しました。これは、日本にはない頭の柔らかさです。

このように、ある側面では日本の頭のかたさを、別の側面では日本の頭の柔らかさをそれぞれ感じることができました。この点に気づくことが旅行のおもしろさかもしれません。

重要

本記事で詳細に解説しますが、ドイツの鉄道に関する内容を一通り、そして詳しく解説した書籍を出版いたしました。同人誌の流通ルートで販売していますが、いわゆる萌え絵は一切なく一般的な同人誌に嫌悪感を示す人でも抵抗ない内容・体裁になっています。

前後を読みたい!

果たして前後はどこに行ったのでしょうか?

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