ある意味、同じ都市圏でもあるケルン(Köln)とボン(Bonn)。これらの2都市の移動はそこまで大変ではありません。今回はその2都市を結ぶ穴場列車に乗りました。

写真1. ケルンに到着したICEのベルリン行き
復習:ボンとケルンの位置関係
最初にボンとケルンの位置関係を紹介します。
図1. ケルンとボンの位置関係(googleマップより引用)
両者の位置関係を示しました(図1)。距離は30km程度とそう離れていません。本記事では詳細には紹介いたしませんが、路面電車の16系統と18系統が両者を20分間隔で結んでいるほどです。
では、両都市のアクセスはどのような手段があるでしょうか。

図2. ドイツの長距離列車の運転系統
ドイツ全土の長距離列車の運転系統図です(図2)。ケルンとボンに関係する箇所に四角で囲いました。

図3. ケルンとボン付近の拡大
それを拡大しました(図3)。図の中央付近にケルン(Köln)があり、その下にボン(Bonn)があります。ケルンは英語表記だとCologneと表記されますので、英語で検索する際にKölnではなくCologneが出てきても違う都市と認識しないようにしたいです。
そのケルンとボンの間はライン川左岸線のIC(またはICE)が1時間間隔で運転されています。そのほか、ケルン-ベルリンのICE(毎時1本の主要駅停車型+6時間間隔の速達便)のいくつかが延長運転されています。この延長運転便はボン-ベルリンを結ぶ役割を担い、ある意味西ドイツ時代の首都と現在の首都を結ぶ役割を担っているといえましょう。
このほか、地域輸送の列車も運航されています。その路線図を示します。

図4. ノルトラインヴェストファーレン州の路線図(ドイツ鉄道公式サイトより引用)
長距離列車を除いた州の路線図を示します(図4)。ケルンは州の南のほうに位置し、ボンはさらに南に位置します。主要なものは2系統あり、それぞれ1時間間隔、合わせて30分間隔です。中距離列車だと所要時間は42~46分程度、長距離列車だと所要時間は20分程度です。
なお、ドイツ鉄道とVRS(地域の輸送サービスを担う会社)の双方のサイトから安いほうや早いほうを選ぶ必要などありません。いずれのサイトを選択しても双方を合わせた最適な列車を表示するのです。これには驚きました。
実際にボンからケルンまで移動する
御託はこの程度にして、実際に乗ってみましょう!今回は穴場的な列車として、ボン始発のベルリン行きを選択しました。主要なターゲットはケルンからベルリンですので、ボンからケルンに限れば空いているのです。上野東京ラインの品川-東京に乗るのに、東海道線-宇都宮・高崎線系統に乗るのではなく、品川発着の常磐線に乗るようなものですね!

写真2. ベルリン東行きのICE
ベルリン東行きのICEです。ICE 1の11両編成(客車は9両編成)による運転です。ケルン-ベルリン系統はICE 2による連結運転(途中でデュッセルドルフ系統と連結)と鉄道ジャーナル先生に教わった人には衝撃ですが、これには理由があります。
もともとケルン-ベルリン、デュッセルドルフ-ベルリンはそれぞれ毎時1本運転され、途中のハムで連結されていました。しかし、現在は併結運転は(かつての)毎時1本から2時間間隔に半減され、2時間に1回はケルン-ベルリンの系統とデュッセルドルフ-ベルリンの系統が続行(ハノーファー断面で9分間隔)し、かつての連結パターンは半減しています。連結しないパターンではICE 2に運用を限定する必要もないので、ICE 1が使われたというわけです。

写真3. ICE 1の先頭部(最後部)
せっかくなので、最後尾も撮影しました(写真3)。
行先がベルリン中央ではなくベルリン東になっているのは、ベルリン中央駅の長距離用ホーム(東西方向)が2面4線しかなく、折り返しのために東駅まで延長運転しているのが実態です。

写真4. 1等車の様子
その様子です(写真4)。

写真5. ボン中央駅のホーム
ボン中央駅のホームです(写真5)。同じ方向にICEが停車していますが、何だったのでしょう?

写真6. ボンを発車!
ボンを発車しました(写真6)。

写真7. ボンの中心部を眺める
ボンの中心部を眺めます(写真7)。

写真8. 横に線路が見える
横に線路が見えます(写真8)。こちらは路面電車の線路でしょうか。

写真9. 次はケルン
ICやICEだとボンからケルンまでノンストップです(写真9)。この日はベルリン動物園駅にとまらない扱いになっていましたが、通常はとまるの?確かにベルリン動物園駅周辺はベルリン中央駅や東駅周辺より発展しており、とめたほうが便利なことは間違いありません!

写真10. 郊外に入る
ボンとケルンの間は30kmありますが、その間はずっと都市化されておらず、このようにのどかな風景も展開します(写真10)。
「外国に踏切はない」なんてこと聞いたことがある人もいると思いますが、それは現実と異なることがわかる風景でもあります。

写真11. 麦畑が広がる
麦畑が広がります(写真11)。麦秋という言葉がある通り、夏場は麦の収穫時期です。

写真12. 貨物駅が広がる
貨物駅が広がります(写真12)。ここはライン川左岸線、ドイツ西部の南北軸ということを改めて理解します。ところで、ICEはこのライン川左岸線を通らず、もっと山あいの高速新線を通るはずですが、現実にはこのICEは在来線を通っています。
種を明かすと、ずっと先のハノーファーから高速新線を通るため、ICEなのです。ICEは新幹線でなく高速新線を通る列車という長所を上手に活用し、そのネットワークを広げています。北陸新幹線も同様の発想であれば、敦賀での乗りかえなど発生しなかったでしょう。

写真13. ケルンの市街地が見えてきた
ケルンの市街地が見えてきました(写真13)。ライン川左岸線はケルンの市街地を迂回するように回ります。

図5. ケルン付近の走行経路(OpenRailwayMapより引用)
走行経路を簡単に示しました(図5)。迂回路が多くてわかりにくいですが、ボン方面は左下です。そして、ケルン中央駅はライン川沿いにあります。その経路を矢印で示しました。

写真14. 線路が分岐する
多くの線路が分岐します(写真14)。

写真15. 方向を変える
ここまで北向きに進んだ列車は東向きに変えます(写真15)。ここではわかりにくいですが、西向きへの短絡線(ケルン中央駅を通らない)が分岐します。

写真16. 近郊列車が見える
近郊列車が見えます(写真16)。

写真17. ケルン中央駅に入線!
ケルン中央駅に入線します(写真17)。

写真18. ICE 4とユーロスターの競演!
ICE 4とユーロスターの競演です(写真18)。ドイツとフランスの競演といえる光景です。欧州がつながっていることを実感する瞬間です。

写真19. ケルンから多くの人が乗りこむ
ケルンはドイツで第4の都市です。そして、ベルリンはドイツの首都で人口も最も多いです。そのようなことから、ここケルンから多くの人が乗りこみます(写真19)。やはりボンからケルンまでに限定された穴場列車だったのでした。
ボンからケルンまでのICEに乗車して

写真20. ICEだと食堂車付きが保証されていてその点は素晴らしい
ボンからケルンまでのICEはとても空いていて快適でした。そのため、この日で最も快適な移動時間を過ごせました。一方、ケルンからは混んでいたように見え、輸送力の無駄とも感じてしまいました(ICE 2の客車は7両編成からICE 1の客車9両編成に増強されていますが)。
ケルン-ボンの列車はカットし、そのぶんをケルン-ベルリンの増発(最速達タイプを1日3往復から1日4往復に増強)するほうが大多数の幸福にかないます。ただし、これはボン直通の放棄がともないます。日本では基本的に定時運転なので、列車を乗りかえるリスクは少ないですが、ドイツ鉄道は日本ほどの定時運転確保は期待できません。そうすると、(乗りかえの失敗リスクがない)直通列車志向になることもわかります。他方で定時運転確保には直通の放棄はそれなりに必要です。
この乗車から定時運転確保の必要性を改めて実感したのでした。
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果たして前後はどこに行ったのでしょうか?
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ボンとケルンの間のICEでの移動:現在地
ケルン大聖堂と周辺の散策(→次)
★本旅行記については、24年夏旅行のまとめで全体像(予算、日程、感想、そして次回への改善点)をまとめています。