ドイツでも主要駅にランキングされるケルン中央駅。この駅はベルギー方面の高速列車も発着するなど、国際色も感じさせる駅です。そんなケルン中央駅を楽しみました。

写真1. 建物そのものは意外とシンプル
復習:ドイツの鉄道網におけるケルン中央駅の地位
まず、ドイツの鉄道網におけるケルン中央駅の地位を確認します。
図1. ケルン中央駅の位置(googleマップより引用)
最初にケルン中央駅に位置を示しました(図1)。ケルンの中心部のやや東側に位置する通過式の駅です。フランクフルト中央駅などとは異なり、頭端式の駅ではありません。これは、ケルン中央駅で進行方向を変えることが不要で、列車運行上のメリットは大きいです。
では、ケルンはドイツの鉄道網でどのような地位を占めているのでしょうか。

図2. ドイツ国内の長距離列車網(ドイツ鉄道公式サイトより引用)
ドイツの長距離列車網を示しました(図2)。これを見ると、ケルン(Köln)は多くの系統が集まっていることがわかります。南北軸の路線の北の拠点であり、ルール地帯とベルリンを結ぶ東西軸の西の拠点です。

図3. ドイツ国内の長距離列車網(ドイツ鉄道公式サイトより引用後加工)
ドイツの長距離列車網の南北軸(黒色)と東西軸(赤色)を示しました(図2)。南北軸の西の北端、南北軸の西端に位置するのがケルンです。ドイツ鉄道の路線図ということもあり、他国の都市にはそこまで言及されていませんが、ブリュッセル(ベルギー)やアムステルダム(オランダ)への窓口ともなっており、外国への窓口としての役割を果たしています(本地図では省略されていますが、ブリュッセルの先のパリに直結ユーロスターもケルンに乗り入れます)。
ただし、1つ注意が必要で、フランクフルト方面はケルン中央駅のほかにケルンメッセドイツ駅発着便も存在します。
図4. ケルンメッセドイツ駅の位置(googleマップより引用)
これは、ケルン中央駅付近の配線が関係します。

図5. ケルン付近の路線図(OpenRailwayMapより引用後加工)
フランクフルト方面の高速新線はライン川右岸です。そして、さらに北側のデュッセルドルフ方面もライン川右岸です。一方、ケルン中央駅はライン川左岸です(図5)。そのため、ケルン中央駅を通る便はここで進行方向を変える必要があります。したがって、一部の便はケルン中央駅を通らないのです。
もちろん、ケルン中央駅発着便やさらに西側(ブリュッセル方面)に向かう便であればケルン中央駅で進行方向を変える必要はありませんから、ケルン中央駅を通ります。

図6. フランクフルト-デュッセルドルフの新経路(提案、OpenRailwayMapより引用後加工)
ケルン中央駅を通る別経路を提案しました(図6)。こうすれば、中心街に近いケルン中央駅から乗車することができます。
ともかく、現状はフランクフルト方面の高速新線は以下の通りの運転です。
- フランクフルト中央駅-ケルン中央駅:毎時1本
- フランクフルト空港駅-ケルン中央駅:毎時1本
- フランクフルト中央駅-ケルンメッセドイツ駅:毎時1本
フランクフルト方面は運転系統がやや複雑な印象ですので、別途解説しました。
もちろん、長距離列車だけでなく、中距離列車と近距離列車も運転されます。

図7. ノルトラインヴェストファーレン州の路線図(ドイツ鉄道公式サイトより引用)
長距離列車を除いた州の路線図を示します(図7)。ケルンは州の南のほうに位置します。特にケルンの北側のデュッセルドルフ方面は多くの系統が運転されます。
ケルンからデュッセルドルフ方面は2系統ありますので、「東回りが毎時15分と毎時45分発車、西回りが毎時00分と毎時30分に発車。長距離列車が毎時2本で毎時00分と毎時30分に発車」という等間隔のパターンダイヤを期待したくなりますが、そのようなダイヤを組む芸の細かさはありません。これがJRの新快速などと異なる点です。あくまでも毎時1本の系統が集まって運転本数が多い、というのが実態に近いです。
また、近距離列車のSバーンも運転されます。

図8. ケルン地区の近距離列車(S-bahn)の路線図(VRSの公式サイトより引用)
その路線図を示しました(図8)。この路線図を見ると、ケルン中央駅前後は全ての系統が集まっています。
ケルン中央駅そのものに乗り入れませんが、ケルン中央駅近くには路面電車も乗り入れます。その路線図も示します。

図9. ケルンとボンの路線図(VRSの公式サイトより引用)
ケルン中央駅近くにはBreslauer Platz / HbfとDom / Hbfがあります(図9)。どちらも中央駅そのものには直結しておらず、やや離れています。日本で例えると、多摩都市モノレールの「立川北」「立川南」と分散しているイメージでしょうか。
ここまで細かく述べましたが、ケルン中央駅はドイツ全土の輸送上の拠点であるばかりか、中距離輸送、都市圏輸送、都市内輸送いずれの役割があるということです。
ケルン中央駅の構造
では、ケルン中央駅の構造はどのようなものでしょうか。駅の構造そのものは意外と単純です。

図10. ケルン中央駅の構造(ドイツ鉄道公式サイトより引用)
大聖堂側の出入口と反対側の出入口があり、6面11線です(図10)。ドイツ有数のターミナルですが、意外と狭いです。うち10番線と11番線はSバーン用(一部のRBもやってくる)のホームです。つまり、中距離列車と長距離列車で5面9線を使っています。
欧州のターミナル駅といえば、荘厳な駅舎による頭端式ホームというイメージがありますが、ことケルン中央駅は通過型ということもあり、日本のターミナル駅のようです。比較的狭い駅に次々と列車がやってくる点も日本に近く、親しみが沸くかもしれません。
ケルン中央駅を歩く
御託はこの程度にして、実際にケルン中央駅を歩いてみましょう!
駅構内の観察
まず、駅構内を観察します。

写真2. 中央駅(HAUPTBAHNHOF)の案内しかない
ドイツの中央駅の特徴ですが、中央駅という案内しかありません(写真2)。ケルンにいることは明快なので、ケルン中央駅と表示しないということでしょうか。これは日本人の私には戸惑います。

写真3. 駅に入ったところ
駅に入ったところです(写真3)。電光掲示板があり、全列車の発車時刻と発車番線が表示されています。日本のように路線ごとに掲示してくれるとわかりやすいですが、欧州はこのスタイルです。
運休列車については地の色が変わって表示され、その点はわかりやすいです。日本の場合、運休の場合は表示されないこともありますので、その点は親切です。
ここから見える案内所はチケット関連は取り扱っておらず、基本的な案内だけです。

写真4. 地下鉄の入口がある
地下鉄の入口があります(写真4)。こちら側には店もあります。

写真5. 反対側を眺める
反対側を眺めます(写真5)。本来はこの画面の奥のほうに窓口がありますが、このときは工事中で別の場所にありました。

写真6. 券売機も多く設置される
券売機も多く設置されています(写真6)。券売機で多くの用事を済ませることができます。

写真7. 通路を歩く
ドイツの駅には改札はなく、駅に入ったらそのまま通路が続きます(写真7)。

写真7. 通路に店もある
通路に店もあります(写真7)。駅の連絡通路としても利用されており、街を歩く人も通るとあり、買い物の需要はあるでしょう。

写真8. 店も多い
ほかにも店があり、街のひと区画として成立している様子が伝わります(写真8)。

写真9. 各ホームの発車案内
各ホームにも発車案内があります(写真8)。ここは6番線と7番線ですが、両番線の列車を一括で案内しています。1つのホームで1時間に5本の列車、意外と少ないです。私が乗ろうとした13:47発が運休ですか…。

写真10. 窓口がある
ケルン中央駅はドイツでも有数のターミナル駅です。そのため、窓口があります(写真10)。

写真11. 窓口に入る
このときはトラブル(列車運休による代替便の手配)がありましたので、窓口に立ち寄りました(写真11)。大きな駅には窓口があり、その点は心強いです。最後は人によるサポートが必要です。

写真12. 窓口では番号札を取って待つ
窓口では番号札を取って待ちました(写真12)。

写真13. 奥のホームはSバーン用
奥のホームはSバーン用です(写真13)。ケルンメッセドイツ駅へは10番線です。先述の通り、10番線の列車は全てケルンメッセドイツ駅に向かいます。
列車を眺める
駅構内を散策したら、次は列車の観察です。

写真14. ICEとユーロスターの競演
ICEとユーロスターの競演です(写真14)。手前に見えるのはICE 4です。ユーロスターはフランスのTGV、ICE 4はドイツのICEということで、フランスとドイツの競演ともいえます。
撮影時刻から推定するに、手前のICEは12:55発ICE2407列車のハンブルク始発ミュンヘン行きです。これはハンブルク中央を8:45に出発し、ケルンを12:55に発車、ミュンヘンに18:09に到着というロングラン列車です。
奥のユーロスターはパリ北駅行きです。ケルンを12:43に出発し、パリには16:06に着きます。空港での手続きや空港内での移動を考えると、航空機にじゅうぶん対抗できます。ケルンからパリまでのユーロスターは1日4往復(平日は1日5往復)で、2時間間隔のケルン-ブリュッセルのICEとともにブリュッセルまでの輸送も担います。
ケルンからブリュッセルまでの移動について、ICEを基準にするとユーロスターが入らない時間帯もあり、そこは2時間のダイヤホールが発生します。そこはICEを増強し、毎時1本体制にするべきでしょう。

写真15. 多くの乗客を迎え入れるベルリン行き
2番線にはベルリン行きがやってきました(写真14)。ケルンからベルリンまでは毎時1本運転されており、半分はハムでデュッセルドルフからの編成と連結します。この運用の場合、ICE 2が充当されることが多いです。もう半分はハムを通過し、デュッセルドルフ編成との連結はありません。この列車の直後にデュッセルドルフ始発のベルリン行きが続行します。この場合、ICE 2以外も充当され、今回はICE 1による運行です。
ケルンからベルリンまでは毎時1本ペースですが、これに6時間間隔でノンストップ列車が設定されています。このノンストップ運用も含め、ボン始発が設定されています。ボンからケルンまでは延長運転という感覚が強く、空いていました。

写真16. ホームのドーム屋根が美しい
ホームのドーム屋根が美しいです(写真16)。
改めてみると、ベルリン中央駅行きではなく、東駅行きです。これはベルリン中央駅のホームが2面4線(長距離線の東西方向)少なく、折り返しが困難なためです。

写真17. 南側からICEがやってきた
Sバーンホームにも立ち入りました。南側(東側)からICEがやってきました(写真17)。ここは複々線で多くの長距離列車をさばく(Sバーンは複線が用意されている)ので、列車が遅れるポイントになると聞きます。これがフランクフルト-ケルン間を結ぶ列車の一部がケルン中央駅に入らない理由とされます。名古屋鉄道や京浜急行電鉄なら問題なくさばきそうな気がしますが、それだけ日本の鉄道会社は異様なオペレーションなのでしょう。

写真18. 駅の利用者も多い
駅の利用者も多いです(写真18)。そして本数の多いICE。病みつきになりそうです。

写真19. Sバーン用ホームから駅を眺める
Sバーン用ホームから駅を眺めました(写真19)。何だか自分が偉くなった気分です。決して私がえらいわけでなく、Sバーン用ホームはホームが高いのです。

写真20. 駅裏の光景
ケルン中央駅は大聖堂があるほうが表側で、こちらは裏側です(写真20)。新しい建物も多いように感じます。

写真21. Sバーンが発車した
Sバーンが発車しました(写真21)。S6系統も不思議な系統で、ケルンの北側のデュッセルドルフ方面からやってきて、また北側に進みます。全区間乗り通し利用は想定外でしょうが、西方向の終着駅を変えれば良いのに、と部外者は感じてしまいます。

写真22. RB25系統がやってきた
RB25系統がやってきました(写真22)。ケルンの東方向の郊外からやってきて、中央駅の次駅で終着となる系統です。

写真23. 豪快な逆段差!
高いSバーン用ホームに床が低い中距離型の車両がやってくるとどうなるのでしょうか。その様子を撮影しました(写真23)。ホームよりも車両のほうが床が低い「逆段差」が生じました。こうなるのであれば、1番線~9番線の床が低いホームに発着させれば良いと思いますが、それをしない理由は?

写真24. 各ホームに発車案内がある
ホームにも発車案内がありました(写真24)。これは乗りかえ列車のホームを知るには非常に便利です。

写真24. 中距離列車がやってきた
中距離列車がやってきました(写真24)。ラインラントプファルツ州の路線図を公表している会社のrolph社の塗装です。ということは、南方向に向かう系統なのでしょう。
と思い、改めて時刻と系統図から調べてみると、コブレンツ(Koblenz)からライン川右岸線を通り、ケルン経由でメンヒェングラートバッハ(Mönchengladbach)に向かうRB27系統です。乗り通す乗客も想定されておらず、ケルンを中心に2つの系統を結んだ、という側面が強いでしょう。

写真25. Sバーンはそれなりに新しい車両がやってくる
Sバーンをいくつか撮影しましたが、新しい車両が多かった印象です。この車両は423形という車両です。クロスシートが主流で、欧州の都市圏輸送車両の標準という印象です。

(参考)写真26. ドイツ南部で見かけた425形(フリードリヒスハーフェンで撮影)
ドイツ南部でも同じような車両を見た気がしますが、これは425形という別物です(写真26)。
ケルン中央駅に滞在して

写真27. ベルリン行きに多くの人々が乗りこむ
今回、乗りかえの都合でケルン中央駅に立ち寄りました。多彩な列車が頻繁に運行され、まさに拠点という印象を持ちました。
さらに、国家間を結ぶ長距離列車から都市圏電車まで揃い、多種多様な輸送形態、そしてその輸送手段をつかう人々を目にしました。そう、多くの人に使われているということです。
(ケルン中央駅前後で多くの系統が交錯しダイヤ乱れの元となるという側面はありますが、)限られた土地で多くの列車を運行するという、ある意味効率の良い運転がなされていました。願わくば、ケルンメッセドイツ駅しか通らないフランクフルト方面-デュッセルドルフ方面の系統をここ中央駅を経由させ、「中央駅に行けばどこにでも行ける」輸送形態にしていただき、中央駅への信頼性を高めていただきたいものです。そして、突発的なダイヤ変更時であってもそれを維持いただきたいと感じました。
重要本記事で詳細に解説しますが、ドイツの鉄道に関する内容を一通り、そして詳しく解説した書籍を出版いたしました。同人誌の流通ルートで販売していますが、いわゆる萌え絵は一切なく、一般的な同人誌に嫌悪感を示す人でも抵抗ない内容・体裁になっています。
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果たして前後はどこに行ったのでしょうか?
(←前)ケルン大聖堂と周辺散策
ケルン中央駅を楽しむ(路線図や構内図を収録、24年夏):現在地
ケルンからリエージュまでの列車旅(トラブルとその対処法も収録、24年夏)(→次)
★本旅行記については、24年夏旅行のまとめで全体像(予算、日程、感想、そして次回への改善点)をまとめています。