ケルンからリエージュまでの列車旅(トラブルとその対処法も収録、24年夏)

記事上部注釈
弊サイトでは実際に利用したサービスなどをアフィリエイトリンク付きで紹介することがあります

ドイツ西部のケルンと、ベルギー東部のリエージュ。この間は高速列車が運行されており、利便性はそれなりです。この間の利用上の注意も含め、実際に体験しました。

写真1. リエージュに着いたICE

復習:ケルンとブリュッセルの移動手段

図1. ケルンとリエージュの位置関係(googleマップより引用)

ケルンとリエージュの位置関係を示しました(図1)。

リエージュはケルンとブリュッセルの間に位置し、両者を結ぶ列車が停車します。したがって、ケルンとリエージュの行き来を考える際は、ケルンとブリュッセルの移動手段を考えることと同様です。そこで、ケルンとブリュッセルの移動手段を簡単に紹介します。

表1. ケルンとブリュッセルの移動手段

所要時間1時間55分程度
運転間隔1時間~2時間間隔
ケルン側の駅ケルン中央駅
ブリュッセル側の駅ブリュッセル南駅
リエージュ側の駅リエージュ=ギユマン駅
注意点ICEは任意指定制
ユーロスターは全席指定制

簡単にまとめました(表1)。ケルンからリエージュまでは1時間5分程度です。(デュッセルドルフ方面-)ケルン-ブリュッセル-パリを結ぶユーロスターが1日5往復、(フランクフルト-)ケルン-ブリュッセルを結ぶICEが2時間間隔で運転されています。

ユーロスターはICEの1時間前(あるいは1時間後)に運転され、ICEの2時間間隔を基本とすると、ユーロスターが入る時間帯は1時間間隔、入らない時間帯は2時間間隔で運転されます。そのため、1時間間隔のパターンダイヤと油断すると、2時間のダイヤホールが発生し、あわててしまいます。このあたりはドイツ流のパターンダイヤとフランス流のランダムダイヤの狭間という印象です。

鉄道パスの取り扱いには注意が必要です。ICEは原則的に空席に乗車可能(国境では座席指定が必要な区間もある)、ユーロスターは全席指定制です。さらに、ICEの座席指定は全席に対応していますが、ユーロスターはパスホルダの枠内しか予約できません。つまり、鉄道パスを持っていてもユーロスターに乗れない場合があるのです。

記事執筆時点(9/15)で2日後の座席の空きをそれぞれのサイトで確認しました。

図2. ドイツ鉄道公式サイトで座席指定検索(1等)

ドイツ鉄道公式サイトで座席指定のみを検索しました(図2)。ICEだと座席を予約できるのに対し、ユーロスターだとそもそも座席指定だけの予約を受け付けていません。これは硬直的なシステムですね…。そして、座席指定なしでも乗れる(予約済でない座席に座れる)という気軽さです。

図3. ベルギー国鉄のパスホルダの座席予約

ベルギー国鉄のパスホルダの座席予約です(図3)。16:44発の列車は座席予約できますが、価格が高いです…。余談ですが、本記事執筆中にドイツ鉄道とベルギー国鉄の座席予約料金が異なることに気づきました。ドイツ鉄道は2等が5.2ユーロ、1等が6.5ユーロなのに対し、ベルギー国鉄は2等も1等も6.0ユーロです。したがって、ドイツとベルギーをまたがる列車の座席予約は、1等の場合はベルギー国鉄のほうが割安、2等の場合はドイツ国鉄が割安です。

そして、12:44発の座席は予約できません。やはり、人気列車で席が埋まっているのでしょうか?

図4. フルのチケットを検索

座席指定だけというけち臭いことを考えたのがだめだったのでしょうか?そう考え、ベルギー国鉄の予約ページを開きました。すると、さきまで予約できなかった12:42発のユーロスターも予約できます。

この例からわかるように、パスホルダの座席予約枠は限られています

なお、ICE(任意指定制)、ユーロスターやTGV(全席指定制)以外のベルギー国内を通る旅客列車は夜行列車を除き、全席自由席です。そのため、この場合は、アーヘン乗りかえによって移動できます。

ここまで長々と述べましたが、ICEのほうが融通の利くシステムであることがわかります(正規運賃だとユーロスターのほうが安いこともあります)。とにかく、2つのシステムの列車が共存するのがこの区間の特徴です。

余談ですが、ユーロスターが走るブリュッセル-アムステルダムにはICも走っており、こちらのICは全席自由席です。

補足

ここまで詳細に解説しました。公式サイトから予約できると思いますが、日本語で予約できないことに不安を感じる人もいるかもしれません。下記のサイトであれば、日本語で予約できるので安心です。


Omio:ヨーロッパ鉄道旅行交通予約サイト

また、その予約にはクレジットカードが便利です。

個人的にはエポスカード がおすすめです。

海外旅行に使えるカード:エポスカードで詳細を紹介しています。

ICEでケルンからリエージュに移動する

御託はこの程度にして、実際に乗ってみましょう!以下に示すようになかなか印象的な旅程となりました。

Stage1. 運休とリカバリー策

駅での衝撃から列車乗りこみまでを記します。

写真3. ICE344列車は6番線か7番線から発車

発車案内を見ると、ICE344列車は6番線か7番線から発車します。

ん?運休ですか?

この列車の指定席をあらかじめ予約していましたが、それがパーです。また、夏の繁忙期という事情か、アーヘンとリエージュの間は座席予約必須でした。そのため、座席を予約せねばなりません。このような場合は、窓口に相談が必須です。先方の都合で運休ですから、先方の責任で輸送を担う必要があります。欧州は顧客の権利を保護することを知っていましたから、ある程度強気でした。

窓口に駆け込んだ結果、以下の通りでした。

  1. 駅入口のカウンターでは予約変更などの作業はできず、奥の窓口で対応する必要がある
  2. 早めの行動が功を奏し、後続の列車の予約は可能だった
  3. ただし、このときドイツ鉄道からの座席予約メールの添付がicsファイルで開けず、駅員に料金を請求しかけられる
  4. メールにPDFファイルが添付されていないことに駅員が気づき(名前やクレジットカードを登録しているのでドイツ鉄道側の予約状況を確認)、先方が紙のチケットを発行

今でも思い出すと腹が立ちますが、ドイツ鉄道側の添付ファイル添付ミスにより、不当に料金を支払う羽目になりかけました。日本語の同様の記事にもこのような記載があり、ドイツ鉄道のサイトにもPDFファイルが送付されると明記されています。

Online ticket
An online ticket is a ticket booked online on int.bahn.de that is provided digitally in PDF format after purchase.
During a ticket inspection on the train, you can show the online ticket either on your smartphone, tablet or printed out. You can also use most offers as a mobile phone ticket in the DB Navigator app after booking online.

After booking an online ticket, you will also receive an e-mail with a PDF attachment. This gives you a receipt for each booking that you can then submit for expense claims or tax deductions, for example.

※以下翻訳

オンラインチケット
オンラインチケットとは、int.bahn.de でオンライン予約したチケットで、購入後にPDF形式でデジタル配信されるチケットです。
列車の切符検査では、スマートフォン、タブレット、または印刷したチケットでオンラインチケットを提示できます。また、オンライン予約後、DB Navigatorアプリでほとんどのオファーを携帯電話のチケットとして使用することができます。

オンラインチケットをご予約いただくと、PDFが添付されたメールも届きます。これにより、各予約の領収書が発行され、経費精算や税額控除などに提出できます。

ドイツ鉄道公式サイト(Digital ticket)より引用

念のため、公式サイトから情報を確認しましたが、PDFファイルが添付されるという記述がありました。

ともかく、かわりの座席指定が完了しました。これで一安心と思いきや、ケルン エーレンフェルト駅(Köln-Ehrenfeld駅)発とのことです。そう、ケルン中央駅にいても代替列車はやってこないのです!

図5. ケルン エーレンフェルト駅の位置(googleマップより引用)

そのため、Sバーンで移動させられる羽目になりました。

写真4. Sバーンの車内

そのSバーンの車内です(写真4)。意外と空いています。本数が多く、乗客が分散されるためでしょうか。

写真5. ケルンの郊外の駅に放り込まれた

ケルン郊外の駅に放り込まれました(写真5)。本当にこれで良いのでしょうか?

写真6. ユーロスターが通過する

ケルン中央駅方面行きのユーロスターが通過しました(写真6)。そう、このような長距離列車は通過するのです。

大荷物を持った乗客が待っており、自分が間違えていないという感覚を味わうことができました。ダイヤ上の都合があるとはいえ、ケルン中央駅から乗れるように配慮いただきたいです。

写真7. ICE14列車が現れた

ICE14列車が発車案内に現れました(写真7)。このあたりの案内は親切です。

写真8. ICEが通過する

ケルン中央駅方面行きのICEが通過しました(写真8)。

この間、雷雨があったりと待つ環境は決して良いとはいえませんでした。やはり、中央駅(駅構内に多くの飲食店がある)を通ることが求められます。

写真9. 結局38分遅れ

電光掲示板から消えたりしましたが、結局38分遅れで運転されます(写真9)。私は29号車(1等車)を予約しましたが、これを見ると最後尾です。

写真10. ICEがやってきた

ICEがやってきました(写真10)。この外観はICE 3neoですね!

Stage2. 車内の混雑と混乱

今回は列車に乗ってからも試練を強いられ、今回の旅行のハイライトとなりました!

写真11. 1等車ではない!

車両をよく見ると1等車ではありません!そう!編成が逆向きです。停車時間が多くないかもしれませんので、近くの車両から乗るしかありません…。

写真12. 車内は大混雑!

車内は大混雑です(写真12)。編成が逆向きであっても車内を移動できれば問題ありませんが、このような混雑です。移動もしんどいです。

移動の途中で立ち往生しました。マダムが座席に荷物を置き、彼女(Aさん)が通路をふさいでいたのです。そして、彼女に遠慮していた別の乗客(Bさん)が通路をふさぐという事態です。Bさんには後ろの乗客の代表という自覚をもっていただきたかったのです。

とりあえず、そのときの落ち度は以下の通りです。

  1. 1本列車が運休し、その列車ぶんの乗客が後続列車に集中した
  2. 後続列車が2時間後であり、間にユーロスターの設定がなく、3時間のダイヤホールが生じた(幸い運休列車の1時間前にユーロスターが設定されていたが)
  3. ダイヤホールが生じたにも関わらず、その列車が38分遅れ、さらに乗客が集中した
  4. このような混雑が生じるにもかかわらず、編成が逆向きで乗客が移動する状況をつくってしまった
  5. そのような混乱が生じたにもかかわらず、乗客が周囲に配慮しない行動をしていた

非常に多くの要因が重なったのがこのような印象的な旅程を産み出したのでした。諸悪の根源は勝手に運休したドイツ鉄道のオペレーションの悪さです。運休しても影響が出ないように1時間間隔の確保、運休の場合は代理列車を運転、という対応策を考えてもらいたいです。

このように21号車から29号車まで移動し、ようやく自席に着いたのでした(先客がいましたが、チケットを見せ、「This is my seat」といういつもの英語を発しました)。

Stage3. 優雅な道中

何とか自席に着くことができました。

写真13. 1等車はゆったりとしている

1等車は混乱もなく、ゆったりとしています(写真13)。

写真14. 田園風景を走る

田園風景を走ります(写真14)。

写真15. 16:47には着席していた

16:47には着席していました(写真15)。16:25ごろに出発してから22分後には着席していたことになります。

写真16. 線路は多い

進行方向左側を向いていますが(この席は進行方向と逆向き)、線路は多いです。この点は欧州の鉄道が優れている点に感じます。日本は山が多く、居住可能地域の人口密度が高く、土地を必要とする線路増設のハードルが高い側面もありましょう。

外の風景がやや変に見えますが、ICE neoは電波が通りやすい窓ガラスを採用しており、風景がやや犠牲になっています。

写真17. ドイツの車両が見える

ドイツの車両が見えました(写真17)。フランクフルトに到着後、ずっとこの塗装の車両を見てきましたが、もうすぐお別れです。

写真18. アーヘン停車中

アーヘンに停車中です(写真18)。17:39発のICEが運休ですが、これはケルン中央13:42発の折り返しでしょう。

写真19. アーヘンを発車!

アーヘンを発車しました(写真19)。アーヘンはドイツでも端にあり、隣はベルギー、そのような位置です。

写真20. ドイツ領内を走っている

今の位置を手持ちの電話機の地図アプリで確認しました。黒線が国境で、線の上がドイツ、線の下がベルギーです。今のところはドイツ領内です。

写真21. 国境付近を走行中

国境付近を走行中です(写真21)。本記事執筆時に地図を確認すると、線路はドイツ領内でした!

写真22. ドイツからベルギーに入る

ドイツからベルギーに入りました(写真22)。今回の旅行で初の陸上国境通過です!

写真23. 自然の風景は変わらない

ドイツからベルギーに入ったとはいえ、それは人間の生活様式のことです。樹木のような自然環境は変わりません。

写真24. 時速228kmで突っ走る

ベルギー国内の高速新線を228km/hで突っ走ります(写真24)。

写真25. 田園風景を走る

田園風景を走ります(写真25)。

写真26. 市街地に入ってきた

市街地に入ってきました(写真26)。白い壁が多いドイツと異なり、家々が赤茶色で別の国に入った実感がわきました。

写真27. 斜張橋がある

斜張橋があります(写真27)。このタイプの橋はベルギーではそれなりに見かけた記憶があります。

写真28. 車両が停車中

車両が見えます(写真28)。今までのドイツでは見かけなかったタイプの塗装です。

写真29. ベルギーの建物と列車

ベルギーの建物と列車です(写真29)。初ベルギーで異国に来た感覚があります。その驚きは記事を書いているときも思い出せるくらいです。

写真30. リエージュ=ギユマン駅に到着!

リエージュ=ギユマン駅に到着しました(写真30)。斬新な駅舎に最新型車両、未来的な空間です。今回はここで下車しました。

ICEはダイヤ上49分で駆け抜けますが、実はここリエージュからブリュッセルまではICが運転されており(平日は毎時2本、土曜・休日は毎時1本)、ブリュッセル南駅まで60分で向かいます。全席自由席のICといえど、そう遅くないのです。

ケルンからリエージュまでICEに乗ってみて

写真31. もう一方のユーロスターは(治安の良くない)フランスに合わせてか、(満員状態の生じない)全席指定席制(ユーロスターはフランス流の運営)

ケルンからリエージュまでの約1時間、ICEに乗りました。ドイツとベルギーの風景の違いも印象に残りましたが、何より印象に残ったのが、列車運休・同じ方向の3時間以上のダイヤホール・後続列車の遅れ・編成が逆向きによる車内移動というドラマの発生でした。

ハプニングこそ旅の醍醐味という価値観もありましょうが、(旅行者がハプニングを前向きにとらえることは決して悪くありませんが)ハプニングを招き入れるような運行は決して良いとはいえません。運休や遅れを可能な限り阻止し、編成が逆向きになるときの案内を強化、これらのオペレーションが1つでも守られていれば、このようなドラマは発生しませんでした。つまり、基本ができているかどうかです。

そのうえで、ユーロスターとICEを合わせて毎時1本確保し、かつIC(ドイツ国内はRE)を毎時1本確保(現在はアーヘン、リエージュ乗りかえ)すればベストシナリオと思いました。

他方で、混雑した車内は不快感はあったものの、危なさ、怖さのような感情を抱くことはありませんでした。そのような意味では、最低限のモラルが守られた国を旅行していたと改めて実感しました。

※この運休と列車遅延に起因する旅程の遅れについては、遅延補償金の対象でした。その様子をユーレイルグローバルパスの遅延補償金の申請に記しました。

重要

本記事で詳細に解説しますが、ドイツの鉄道に関する内容を一通り、そして詳しく解説した書籍を出版いたしました。同人誌の流通ルートで販売していますが、いわゆる萌え絵は一切なく一般的な同人誌に嫌悪感を示す人でも抵抗ない内容・体裁になっています。

前後を読みたい!

果たして前後はどこに行ったのでしょうか?

(←前)ケルン中央駅を楽しむ(路線図や構内図を収録、24年夏)

ケルンからリエージュまでの列車旅(トラブルとその対処法も収録、24年夏):現在地

リエージュ=ギユマン駅(Gare de Liège-Guillemins)に親しむ(→次)

★本旅行記については、24年夏旅行のまとめで全体像(予算、日程、感想、そして次回への改善点)をまとめています。

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