ブリュッセル。EUのへそともいえる場所です。そのブリュッセルは欧州の都市らしく、多様な交通手段が発達しています。そんなブリュッセルの都市交通に親しみました。
写真1. ブリュッセル中央駅に到着する地下鉄
ブリュッセルの市内交通の概要
ブリュッセルには以下の交通機関が発達しています。
- 地下鉄(プレメトロも含む)
- 路面電車
- バス
- 国鉄
それぞれに長短はありますが、以上4つの交通機関が整備されています。
4つすべての交通手段を使いこなすのがベストですが、それもなかなか難しいでしょう(土地勘や知識が必要になる)。そこで、優先度順に交通機関を示します。
重要ブリュッセルはフランス語とオランダ語を両方使う都市です。そのため、駅名も双方の言語が使われています。Park(フランス語)/Parc(オランダ語)程度の違いであれば良いですが、Arts-Loi、Kunst-Wetという違いだと難易度が上がります。私はそうと知らず、ブリュッセルに着いて最初の下車駅にここを選びました。
写真2. まぎらわしさでは上位と思われるArts-Loi、Kunst-Wetの組み合わせ
地下鉄(メトロ)
まず、地下鉄の路線網をある程度把握すると良いでしょう。正確には4路線しかありません(中心部はそれぞれ集約されるので、事実上2系統)。以下の4つです。
- 2号線と6号線:中心部では環状経路、中心部からやや離れた部分の環状運転
- 1号線と5号線:中心部では東西軸を通る
これだけでは行き来が不便な場面もあるでしょう。そこで有効なのがプレメトロ(地下区間も走る路面電車)です。プレメトロもいくつかの系統がありますが、中心部を南北に通る4号線と10号線(2024年9月29日に3号線から10号線に変わった)も把握すると観光にも有用でしょう。
図1. ブリュッセルの地下鉄と一部のトラムの路線網(STIB-MIVB公式サイトより引用)
ブリュッセル首都圏交通の公式サイトより路線図を引用しました(図1)。略号が2つありますが、例によって、フランス語表記(Société des transports intercommunaux de Bruxelles)とオランダ語表記(Maatschappij voor het Intercommunaal Vervoer te Brussel)が併記されているためです。
中心部外縁の環状軸、中心部の東西軸の各地下鉄、そして中心部南北軸のプレメトロの3系統を把握すれば、観光を軸とする中心部の移動は最低限何とかなるでしょう。
路面電車(トラム)
次に把握したいのが路面電車です。路面電車は中心部と郊外に路線網を広げています。観光という断面では、王宮付近を通る91系統と92系統が最も重要でしょう。ただし、観光であれば街歩きを兼ねて歩いて移動するという最強の手段がありますので、路面電車も使えれば使うという意識でじゅうぶんでしょう。
私は地下鉄でブリュッセルに多少慣れてからトラムに挑戦するという2段階体制で挑みました。路面電車だけの路線図はなく、下記のバスを含めた路線図を入手しました。次の章で記します。
バス
最も小回りが利く交通手段がバスです。地球の歩き方先生でさえバスの路線図を示さず、上級者向けの交通手段かもしれません。
例えば、グランプラスの南側から王宮を通り、環状道路方面に向かう95系統があります。王宮付近は坂道が多く、バスを上手に使うと歩く距離を削減でき、非常に有用です。
国鉄
ベルギー国鉄(SNCBまたはNMBS)もブリュッセル近郊に路線網を伸ばしています。フランス語表記ではSNCB、オランダ語表記だとNMBSです。
その国鉄もブリュッセル地区の近郊輸送を担っています。ただし、ブリュッセル地区を運転するSは毎時2本の系統が多く(多くの系統が重なる区間は本数が多い)、東京のJR線のように5分間隔で来るとは考えないことです(ベルギー国鉄の公式サイトより時刻表をご覧ください)。
その国鉄でもブリュッセル北駅-ブリュッセル中央駅-ブリュッセル南駅の南北連絡線区間はIC(日本の快速~特急に相当)、RやSが数多く運転されており、ここに限れば本数も多いです。ベルギー国鉄ではICも含め、特急料金は不要ですので、ICを含め都市内交通として活用できます。
ただし、注意が必要です。ブリュッセル北駅-ブリュッセル中央駅-ブリュッセル南駅を結ぶ系統は多くありますが、ブリュッセル南駅と中央駅の間のブリュッセルChapelle駅(オランダ語表記ではKapellekerk駅)はS1の半数(毎時1本)、中央駅と北駅の間のブリュッセルCongrès駅(オランダ語表記ではCongres)はS1(毎時2本)しか停車しません。しかも土曜・休日は(時刻表を見る限り)両駅は通過します。
平日はSだけでも毎時10本確保されているのですから、全列車を各駅停車として運転すれば乗車チャンスはかなりのものになると思いますが、日本とは感覚が異なるのでしょう。
基本的に南駅-中央駅-北駅の相互間の行き来に使う交通手段として考えたほうが良さそうです。
図2. ブリュッセル全体の路線図(STIB-MIVB公式サイトより引用)
最後に全体の路線図を示します(図2)。これが完全な路線図ですが、このすべてを使いこなすにはかなりの土地勘が必要でしょう。それでも、この程度の交通網があることを把握すると、滞在場所近くの便利な交通手段を把握することに役立ちます。
ブリュッセル市内交通の運賃
写真3. ごつい自動改札を通る
ここまであえて利用料金についての説明を省略しました。それは、市内交通は一体となっており、バスや地下鉄で運賃の違いがないことです。東京に例えると、山手線と都営地下鉄で運賃面の違いはなく(田端(JR)巣鴨(都営)春日がまるで1社完結のように利用できるということ)、1回の乗車で必要な運賃が決まるということです。
1回の乗車で2.7ユーロで、1日券で8.5ユーロです。では、3回の乗車までであれば1回券を購入し、4回以上が見込まれるときは1日券を購入するのが良いのでしょうか。これも1つの答えです。しかし、4回以上乗るか事前にわかったら苦労しません。
さらに良い方法があります。コンタクトレスカードで乗ることです。タッチ決済可能なクレジットカードで乗ることです。この方法だと1回2.2ユーロで、1日の上限が8.5ユーロと何も考えずに紙のチケットより安いことです。
STIB-MIVBネットワーク全体で非接触型決済ができます。つまり、デビットカード、クレジットカード、スマートフォン、スマートウォッチを使用して、直接ご旅行を認証することができます。
片道運賃は€2.20です。これは紙のチケットよりも安いです。銀行カード、スマートフォン、スマートウォッチを、非接触型のロゴが表示されている認証機の前にかざして認証します。各接続で同じカードまたはスマートデバイスを検証します。最初の検証から60分以内の接続は無料で、1日あたりの最大額は€8.00です。これは、同じ日に4回目の旅行から1日の制限に達し、追加の旅行ごとに無料になることを意味します。
STIB-MIVB公式サイトより引用
このような単純なシステムなので、本記事で詳細に記す必要がないのです。「コンタクトレスカードなど持っていない」という人は参考に【エポスカード】が有力な選択肢です。
ブリュッセル市内交通に実際に親しむ
御託はこの程度にして、実際にブリュッセル市内交通に親しみましょう!
Stage1. 地下鉄(プレメトロ含む)
多くの人が最初に乗るのが地下鉄でしょう。
写真4. 改札がない駅もある
改札のない駅もありました(写真4、ブリュッセル中央駅の1号線と5号線ホーム)。ここでもきちんとタッチします。
写真5. ホームに1号線がやってきた
Arts-Loi(Kunst-Wet)に1号線の電車がやってきました(写真5)。比較的新しい車両でした。
写真6. 1号線の電車が停車中
1号線の電車が停車中です(写真6)。
写真7. 車内もきれい
車内もきれいです(写真7)。ただし、いすはモケットがないプラスチックむき出しです。掃除のしやすさを重視したのでしょうが、ちょっと簡素な印象です。中心部を通りますが、そこまで混んでいる印象は持ちませんでした。
写真8. 2号線や6号線には古豪もいた
2号線や6号線では古豪も活躍していました(写真8)。このときは乗客の乗れない回送としてやってきました。
写真9. 古豪の車内
古豪の車内です(写真9)。さきほどの新鋭だけでなく、プラスチックむき出しの座席は古豪から続く伝統のようです。
写真10. 国鉄線と並走する区間もある
郊外区間では地上を走ります。国鉄線と並走する区間もありました(写真10)。
写真11. 郊外区間の風景
郊外区間の風景です(写真11)。観光客があまり行かない、真のブリュッセルという光景のかもしれません。
写真12. 環状路線と東西軸の交点、Arts-Loi、Kunst-Wet
東西軸と環状軸の交点の駅の様子です(写真12)。よく見ると、2号線や6号線のほうが浅く、1号線や5号線のほうが深い位置にあります。都市の駅らしく、人々があわただしく行き交っています。
写真13. 環状軸にも新しい車両が運用される
その環状軸にも新しい車両が運用されています(写真13)。
写真14. 新型の車内はロングシート
古豪はボックスシートでしたが、新型はロングシートです(写真14)。都市内交通であれば乗り降りしやすいロングシートのほうが適切でしょう。
写真15. 南駅に停車中のプレメトロ
南駅にプレメトロの3号線が停車していました。このときは8月でしたので、10号線はなく3号線の時代でした(9/23に10号線に変わっています)。
写真16. 路面電車風情のホームと車両
プレメトロは路面電車のホームと車両です(写真16)。新しい車両のデザインはシルバーとゴールドが使われている点は、地下鉄と共通です。
写真17. 南駅のホーム
南駅のプレメトロのホームです(写真17)。現在の車両が停車する場所だけ低床ホームになっていることがわかります。興味深いことに、南駅のメトロとプレメトロは方向別ホームです。
写真18. 南駅のホームは立体構造
南駅のホームは立体構造です(写真18)。京王電鉄の調布のような構造といえば伝わるでしょうか。
写真19. 南北軸のプレメトロはそれなりに混雑
南北軸のプレメトロはそれなりに混雑していました(写真19)。南駅と北駅というブリュッセルの長距離ターミナルを結ぶほか、証券取引所付近などの中心部を通るという路線環境ゆえでしょう。車内の狭さが目立ちます。
路線の数は多くないものの、多彩な表情が堪能できるブリュッセルの地下鉄でした。
Stage2. 路面電車(トラム)
地下鉄は確かに便利ですが、中心部では地下を通り、車窓という楽しみには欠ける部分があります。そのような意味で、路面電車で移動することも良いでしょう。
写真20. 王宮付近を走る路面電車
南北軸のプレメトロと、東側の環状軸の間に路面電車の91系統や92系統があります(写真20)。王宮付近は観光名所でもあり、この路面電車を使う機会もあるでしょう。
写真21. 路面電車がやってきた
路面電車がやってきました(写真21)。
写真22. 路面電車の車内
路面電車の車内です(写真22)。
写真23. 路面電車の座席はクッション付き
路面電車の座席はプラスチックむき出しではありませんでした(写真23)!
写真24. 案内表示も2か国語
案内表示も2か国語です(写真24)。次の駅もオランダ語とフランス語で異なり、まぎらわしいでしょう。
写真25. ブリュッセルの風景が広がる
ブリュッセルの風景の中を走ります(写真25)。
写真26. ブリュッセルの風景を眺める
ブリュッセルの風景を眺めます(写真26)。
写真27. 古豪の姿も見られる
Poelaertでは古豪の姿も見られました(写真27)。
写真28. 古豪の姿
古豪の姿です(写真28)。
Stage3. バス
このほかの交通手段としてバスもあります。王宮付近を東西に縦貫するバス路線があり、この系統を活用しました。
写真29. グランプラスの南側に位置する停留所
グランプラスの南側に位置するBeursです(写真29)。本数はそれなりに多いです。
写真30. グランプラスの南側を走る
グランプラスの南側を走ります(写真30)。
写真31. グランプラスの南側を走る
グランプラスの南側を走ります(写真31)。
写真32. 王宮付近を走る
王宮付近を走ります(写真32)。
写真33. ブリュッセルは坂道が多い
ブリュッセルは坂道が多いです(写真33)。
写真34. 連接車だった!
連接車でした(写真34)。
写真35. Trône(Troon)に到着!
Trône(Troon)に到着しました(写真35)。地下鉄2号線(6号線)との連絡ができ、ここから多くの人が乗ってきました。このあたりは副都心的な場所であり、ここから自宅に向かう人もいるのでしょう。
ブリュッセルの都市交通に親しんで
写真36. ブリュッセル中央駅は国鉄も地下駅
今回は市内観光などを通じ、ブリュッセルの都市交通に親しみました。東京に比べ、地下鉄の路線数は多くありませんが、かわりに路面電車が発達していました。
また、プレメトロという斬新な概念が導入されており、路面電車以上地下鉄未満という位置づけの交通機関です。交通機関はその交通路に対する適切なモードが求められます。ブリュッセルの地下鉄などの混雑率は常識的に見えました。そのような意味では、ブリュッセルの都市交通は適切な設計といえましょう。
一方、物足りない部分も感じました。それは中心街を通る高架鉄道がないことです。高架鉄道によって都市をある程度の高さで見渡すことは、都市構造を理解する一助となります。趣味的な観点でしかありませんが、高架鉄道もあればより良いと感じたのです。
重要ホテルはお決まりですか?中央駅から地下鉄でも行くことができ、キッチンとランドリー付きのこちらのホテルもおすすめです。
果たして前後はどこに行ったのでしょうか?
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ブリュッセルの市内交通に親しむ:現在地
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