ベルギーで最も利用の多いブリュッセル中央駅。戦後に新設された連絡線に建設された区間の新設駅という事情もあり、規模が大きくない駅ですが、好立地です。そんなブリュッセル中央駅を探検しました。

写真1. ブリュッセル中央駅の入口
復習:ブリュッセルのターミナル駅の概要とブリュッセル中央駅
最初にターミナル駅事情とそのなかでのブリュッセル中央駅の位置づけを紹介します。
ブリュッセルのターミナル駅事情
まず、ブリュッセルのターミナル駅について簡単に紹介します。
図1. ブリュッセル北駅とブリュッセル南駅の位置関係
まず、ブリュッセル北駅とブリュッセル南駅の位置関係を示しました(図1)。北駅は1846年に、南駅は1862年に開業したいずれも歴史のあるターミナル駅です。
しかし、これらの両駅はブリュッセルの中心部にはなく、ブリュッセルを介する行き来も不便な状況でした。それを改善するべく、北南接続線が建設されました。簡単にいうと北駅と南駅を連絡する線路(地下区間もあり)を建設し、その間に中間駅を建設するというものです。
その結果、ブリュッセル中央駅が建設されました。大きな駅が街はずれに建設されて、その周辺が都市化したのではなく(東京、新宿、大阪などの現代の日本のターミナル駅も開業当初は都市化されていませんでした)、都市の中心部付近に駅が建造されたという経緯があります。このような経緯があるため、ブリュッセル中央駅は比較的コンパクトなのです。
歴史的経緯によりコンパクトな駅です。そのためか、国際列車のように停車時間が必要な列車を停車させるほどの余裕がなく、国際列車は通過します。国際列車を含めたブリュッセルの玄関駅はブリュッセル南駅です。
利用者視点では国際列車はブリュッセル南駅(ICEなどの一部列車は北駅利用可能、オランダ方面は北駅と中央駅も利用可能)、国内列車はブリュッセル中央駅(南駅や北駅も利用可能だが中心部との距離はある)という使い分けです。
ブリュッセル中央駅の概要
次にブリュッセル中央駅の概要を紹介します。
- 名称:Gare de Bruxelles-Central(フランス語)、Station Brussel-Centraal(オランダ語)
- 路線:ベルギー国鉄、地下鉄1号線・5号線(ブリュッセル中央駅では共用の1系統)
- 規模:3面6線(国鉄)+2面2線(地下鉄)
図2. ブリュッセル中央駅の位置(googleマップより引用)
ブリュッセル中央駅の位置を示しました(図2)。グランプラスと王宮の間に位置しており、観光名所にも近い場所です。
ベルギーではフランス語とオランダ語を主に使っており、首都ブリュッセルは両言語を使う場所です。そのため、正式名称もGare de Bruxelles-Central(フランス語)、Station Brussel-Centraal(オランダ語)の2通りです。
ブリュッセル中央駅は前述の通り、北南連絡線の途中駅です。北南連絡線そのものは3複線で建設されており、ブリュッセル中央駅は3面6線です。ある意味単純な配線です。南北方向の国鉄線とほぼ直交する形で地下鉄線が通っています。

図3. ブリュッセル中央駅付近の様子(STIB-MIVB公式サイトより引用)
ブリュッセル中央駅付近の様子です(図3)。立派な建物が多いことやバス路線もそれなりにあることもわかります。

図4. ベルギー全土の路線網
ベルギー国鉄の公式サイトに掲載されていた路線図です(図4)。ブリュッセルはベルギーの中心にあり、各方面の列車が発着します。多くの方向にIC(特急相当と解されるが実際は民鉄の無料特急相当)が平均30分間隔で出発し、このほかにRやSも同程度運転されます。
ブリュッセル中央駅を実際に歩く
御託はこの程度にして、ブリュッセル中央駅を実際に歩きましょう!

写真2. 駅前のリングが目立つ
駅前に「リング」があります。これはやや遠くからわかりやすいですね!

写真3. リングの一角にブリュッセル中央駅の表示がある
「リング」の一角にブリュッセル中央駅の表示がありました(写真3)。隣国ドイツでは中央駅だけの表示ですが、ここブリュッセルではブリュッセル中央駅の表示です。例によってフランス語とオランダ語の表示が共存しています。

写真4. ブリュッセル中央駅の構内図
ブリュッセル中央駅の構内図です(写真4)。3層構造でホール階、コンコース階、そしてホーム階です。ブリュッセル中央駅の公式サイトには駅構内図はありません。迷うほどの規模はありませんが…。

写真5. 別の方向からもリングが目印
別の方向からもリングが目印です(写真5)。
では入ってみましょう!
0Fの様子

(参考)写真6. ブリュッセル中央駅のホール階
まずは0Fの様子です。参考に構内図を切り取りました(写真6)。

写真7. 天井が高い!
天井が高いです(写真7)。

写真8. 天井が高い!
天井が高く、石造りということもあり高級感があります(写真8)。発車案内もあり、目的の列車がどのホームから発車するのかがわかります。

写真9. 広い空間に見える
天井が高く、広い空間に見えます。立地の厳しい中心部であっても、0Fに駅舎を建設し、広さを利用客に感じさせようという努力が伝わります。

写真10. 地下1Fに吸い込まれる
地下1Fに吸い込まれる人々です(写真10)。実用的なコンコースは地下にあり、地上階はあくまでも入口に過ぎません。
地下1Fの様子

(参考)写真11. ブリュッセル中央駅の地下1F
ブリュッセル中央駅の地下1Fの構内図です(写真11)。南北方向のコンコースがあり、3つのホームにつながっています。

写真12. 地上階への階段
地上階への階段です(写真12)。多くの人はこの階段を通り、駅の外とコンコースを行き来します。

写真13. ホームにつながる
ホームにつながります(写真13)。オステンド行きのICの発車表示があります。

写真14. ホームにつながる
ホームにつながる階段です(写真14)。階段もそう広くなく、コンパクトに設計された駅です。

写真15. 地下1Fのコンコースはあまり広くない
地下1Fのコンコースはあまり広くありません(写真15)。

写真16. コンコースには店がある
そこまで広くないとはいえ、首都の中央駅です。店は多いです(写真16)。

写真17. 店の多いコンコース
コンコースは店が多く、見たところスーパーマーケットや飲食店がありました。とはいえ、「最低限」の規模です。ベルギーは全般に本数が多く、個々の利用者の視点では駅に滞留するほどの時間もありません。

写真18. コンコースの様子
コンコースの様子です(写真18)。向こう側が明るいですね!

写真19. 南側にやってきた
南側にやってきました(写真19)。こちらは地下でありながら吹き抜けがあります。種を明かすと、Place de l'Albertine(Maison de l'Âne)の地下です。

写真20. 南側に出入口がある
南側にもひっそりと出入口があります(写真20)。

写真21. ひっそりと階段がある
階段の幅が狭く、多くの人が行きかう場所でないことが伝わります。こちらは芸術の丘に近く、観光客には便利ですので、穴場的な通路です。

写真22. 狭いながらもつながる
狭いながらもコンコースにつながっています(写真22)。このように多くの場所へのアクセスが整備され、どの方角から最短距離でアクセスできるように努力することは良いことに感じます。
ホームの様子
ホームの様子はどうでしょうか。

写真23. エスカレータの様子
エスカレータの様子です(写真23)。上るときに背後を撮影しました。

写真24. エスカレータの様子
昇るときの様子を撮影しました(写真24)。

写真25. ホームの様子
ホームの様子です(写真25)。非常に簡素なホームです。首都の中央駅といってもそう規模が大きくありません。基本的にブリュッセル中央駅で折り返す列車はなく、運転上の拠点は南駅にあると理解できます。

写真26. ルクセンブルク方面からの列車が到着!
ルクセンブルク方面からのICが到着しました。ルクセンブルクからは毎時1本運転され、途中のナミュールからは毎時2本運転されます。

写真27. ルクセンブルク方面からの列車はブリュッセル南行き
ルクセンブルク方面からの列車はブリュッセル南行きです。そのため、ここでは空いていました(写真27)。ルクセンブルクからブリュッセル市内に到達したら、市街地の東側を大回りし、北駅、中央駅、南駅の順に向かうため、中央駅を経由してから南駅に向かうのです。

写真28. 反対方向もやってきた
反対方向もやってきました(写真28)。時刻から推測するに、アントウェルペン行きのICでしょうか。

写真29. 別の列車がやってきた
別の列車がやってきました(写真29)。北南連絡線はてっきり方向別の3複線と思っていましたが、線路別のようです。確かにこの右側の5番線から南駅方面のオステンド行きが発車していました。

写真30. 別の列車がやってきた
別の列車です(写真30)。正面に行先表示がなく、やや不親切に思います。別の写真を見るとブリュッセル空港方面の列車でした。毎時7本運転され、最大18分待ちに見えます。

写真31. 後ろに機関車が連結されている
後ろに機関車が連結されています(写真31)。

写真32. S1系統がやってきた
S1系統がやってきました(写真32)。Sは都市近郊の近郊列車でRがローカル列車と訳されることが多いですが、アントウェルペンへはRの運転がなく、Sが30分間隔で運転されます。ベルギー第2の都市方面は本数が多く、ICも毎時2本(やや迂回する系統も含めると毎時4本)、ユーロスターも毎時1本運転されます。

写真33. ホーム中央に停車!
ホーム中央に停車します(写真33)。

写真34. 乗り降りが多い
乗り降りも多いです(写真34)。

写真35. 落書きだらけの古豪もやってきた
落書きだらけの古豪もやってきました(写真35)。

写真36. 古豪は落書きだらけ!
古豪は落書きだらけでした(写真36)。

写真37. 古豪は客車列車!
古豪は客車列車でした(写真37)。
このようにあらゆる方向への列車がやってきます。ベルギーの特徴としては土曜・休日は本数が減りますが(撮影したのはいずれも平日です)、ブリュッセルを通る多くの系統が集まる、この区間の本数が多いことには変わりなく、立地ともに便利でしょう。
地下鉄のブリュッセル中央駅
地下鉄もブリュッセル中央駅に乗り入れています。

写真38. やや北側の地下鉄駅まで歩く
やや北側の地下鉄駅まで歩きます(写真38)。

写真39. 途中は仮設通路になっていた
途中は仮設通路になっていました(写真39)。1号線と5号線への案内があります。

写真40. 地下鉄の駅に到着
地下鉄の駅に到着しました(写真40)。

写真41. 人々がホームに降りる
人々がホームに向かいます(写真41)。ここは上下線でホームが分かれていますので、ホームを間違えないようにせねばなりません。

写真42. ホームの様子
ホームの様子です(写真42)。本当の中心街に位置し、やや山の手エリアに近いためか、夜間でも不安を感じませんでした。

写真43. 夜間の駅に電車が入る
夜間の駅に電車が入りました(写真43)。ベルギー国鉄と異なり、右側通行です。

写真44. 西方向の電車がやってきた
西方向に向かう電車がやってきました(写真44)。
ブリュッセル中央駅を訪問して

写真45. ブリュッセル中央駅付近は優雅な雰囲気
今回、ブリュッセルの観光名所も近いこともあり、ブリュッセル中央駅を利用しました。狭い立地であり、ターミナル駅という雰囲気はありませんでした。しかし、利用者にとっては過度に広い駅よりもコンパクトな駅のほうが利用しやすいです。この点は欧州のターミナル駅というよりも名鉄名古屋駅のような雰囲気を感じました(名鉄名古屋駅よりは広いですが)。
ブリュッセル北駅やブリュッセル南駅は駅こそ広いものの、市街地から遠く、治安面も不安が残ります。そのような意味で、駅が狭くとも観光地などに近い好立地な場所に中央駅を設置し、便利な場所にダイレクトアクセスできるようにしたことは、先見の明があると感じました。
一方、ICEやユーロスターといった国際列車は通過してしまいます。別の言いかたをすると、ブリュッセル中央駅からベネルクス三国外にアクセスできません。これはせっかくの立地の中央駅が台なしです。南駅で南方向に折り返すフランス方面は通らないのでやむを得ないでしょう。また、出入国管理が必要なイギリス方面はそこまでの用地がないのでこれもやむを得ないでしょう。
しかし、ドイツ方面の列車やオランダ方面の列車(列車によってはブリュッセルを通る、フランス-ベルギー-オランダ方面もある)はせっかく中央駅を通っているのに、通過するのはもったいなく感じます。3複線なのですから、停車させてもダイヤ上の余裕は0でないように感じます。まずはこのような取り組みで、ドイツ、オランダ、フランスからも部分的にブリュッセル中心部のダイレクトアクセスを可能にすると、他交通機関との競争力が増すでしょう。

図5. 妄想新線の書き込み(OpenRailwayMapより引用後加工、青線が国鉄、赤線が妄想新線)
願わくば、ブリュッセル市の東側とブリュッセル中央駅を結ぶ短絡線を整備(図5)、そのうえでその短絡線をブリュッセル中央駅に延長、出入国管理区域を設け(新線を2面4線にする)、国際列車も含めてブリュッセル中央駅に集約し、首都中心部にある「中央駅に行けば何とかなる」体制を整えてもらいたいものです。
重要ホテルはお決まりですか?中央駅から地下鉄でも行くことができ、キッチンとランドリー付きのこちらのホテルもおすすめです。
果たして前後はどこに行ったのでしょうか?
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ブリュッセル中央駅の表情を探る:現在地
★ブリュッセル観光のまとめはブリュッセルの街歩き観光のまとめ(気温も記載)をご覧ください!
★本旅行記については、24年夏旅行のまとめで全体像(予算、日程、感想、そして次回への改善点)をまとめています。