「ことでん」のターミナルの瓦町駅。地方民鉄では珍しい4方向に向かえる駅です。そのような瓦町駅を歩きました。

写真1. 立派な瓦町駅
補足本記事では高松琴平電鉄のことを基本的に愛称の「ことでん」と称することにします。
復習:ことでんの路線網と瓦町駅
最初にことでんの路線網と瓦町駅の概要を紹介します。
- 所在地:香川県高松市常磐町1-3-1
- 路線:高松琴平電鉄(琴平線、長尾線、志度線)
- 規模:3面5線
図1. 瓦町駅の位置(googleマップより引用)
瓦町駅の概要を示しました(図1を含む)。高松駅(ことでんでは高松築港駅が相当)が港に近い、ある意味街はずれの場所にあるのに対し、瓦町駅は高松の市街地に近い場所に位置します。
その瓦町駅は立派な商業施設を併設しています。もともと百貨店が入居していましたが、百貨店そのものの低迷という事情もあり、現在はFLAG瓦町が同居しています。

図2. ことでんの路線図(公式サイトより引用)
ことでんの路線図を示しました(図2)。瓦町駅は地方民鉄では珍しい3路線が乗り入れる路線です。地方民鉄で2路線以上が分岐する駅そのものが珍しいですが、3路線で4方向となるとだいぶぜいたくな印象です。伊予鉄道の松山市駅は3路線が伸びていますが、3方向でしかありません。伊予鉄道も松山市駅や古町駅も路面電車を含めると4方向になりますが…。印象は高松築港-琴電琴平の琴平線、高松築港-長尾の長尾線系統があり、瓦町-志度の志度線が分岐する様相です。
その瓦町駅は3路線で3面のホームを使っており、長尾線系統は交換不可能な1面1線、琴平線と志度線は1面2線です。ただし、志度線はやや離れており、高松築港方面に向かうには乗りかえが必要です。
瓦町駅を実際に歩く
御託はこの程度にして、実際に瓦町駅を歩きましょう!

写真2. 瓦町駅の外観
西側(市街地側)から瓦町駅を眺めます(写真2)。元百貨店の立派な商業施設もあり、高松駅や高松築港駅よりも立派な駅に見えます。

写真3. 駅前の様子
駅前の様子です(写真3)。駅前広場も整備されています。ただし、人通りが少ない点は気になりましたが…。

写真4. 通路の様子
通路の様子です(写真4)。地方民鉄としては人通りは多いほうかもしれませんが、ここまで立派な駅だと人通りはかえって少ないように感じてしまいます。ここだけ見ると、大手民鉄の拠点駅のようにも見えます。

写真5. 改札口の様子
改札口の様子です(写真5)。自動改札が導入され、ここも大手民鉄のように見えますが!

写真6. 自動改札には投入口はない
自動改札機をよく見ると、乗車券の投入口はありません(写真6)。そう、自動改札対応の乗車券はありません。大手民鉄は合理化が磁気券→ICカードと段階があるのに対し、ことでんは磁気券の段階を飛ばしてICカード導入となったためです。大手民鉄も磁気券をQRコードに置き換えることで、磁気券の投入口を廃止しようとしています。そのような意味では、ことでんは最先端です。

写真7. 改札内から改札口を見る
改札内から改札口を眺めます(写真7)。瓦町FLAGには直結しておらず、通路を経由する必要があります。駅直結の商業施設を建設したという経緯があるのであれば、商業施設併設の改札口があっても良いと思います。

写真8. 志度線に向けて通路が伸びる
志度線ホームに向かって連絡通路があります(写真8)。商業施設を併設する「瓦町駅改良」で志度線ホームは他の路線のホームより遠ざかってしまったのです。

写真9. 連絡通路に動く歩道
連絡通路に動く歩道があります(写真9)。もっとも2021年以降3年半以上動いていません。動く歩道につかう電気エネルギー節約によるSDGs貢献(17のゴールの7つ目)、歩くことによる利用者側の健康増進(じつはSDGsの17のゴールの3つ目に含まれる)というメリットがあります。
もっとも、利用者側がこの乗りかえに嫌気がさし、自動車利用に切り替えた場合はSDGsとは逆行してしまうリスクがあり、何よりも利用者側にとっては「歩かされる」ことになり、総合的には好ましくありません。

写真10. 志度線ホーム
志度線ホームです(写真10)。

写真11. 志度線は基本的に24分間隔
志度線は基本的に24分間隔です。24分間隔というのは覚えにくいので、20分間隔に短縮して欲しく思います。

写真12. 志度線ホーム直結の改札もある
志度線ホーム直結の改札もあります(写真12)。目の前にホームがあるのに立派な駅ビルを経由させられるのはストレスが溜まります。この簡単な改札口によって、そのストレスを発生させないことは地味に重要なことです。

写真13. 瓦町駅のホームの様子
瓦町駅のホームの様子です(写真13)。琴平線のホームが1面2線、長尾線のホームが1面1線の合計2面3線が見えます。高松築港方面が1番線と3番線から発車するのは不親切に思います。
来る電車が短編成なことを別にすれば、ある程度の多さの利用者がホームで電車を待っている姿は都市鉄道らしさを感じます。この光景だけを見ると、大手民鉄の駅とも思えそうです。

写真14. ホームの発車標
ホームにも発車標があります(写真14)。やはり1番線の発車標には3番線からの高松築港行きが表示されません。これは不親切です。地方民鉄の駅ホームで発車標があるだけ親切という解釈も可能ですが…。

写真15. ホームの階段を眺める
ホームから階段を眺めます(写真15)。

写真16. 琴平線普通が停車中
琴平線の普通が停車中です(写真16)。車掌乗務である程度の乗客も乗っており、都市鉄道らしさを感じます。

写真17. 片原町→瓦町の前面展望
さて、長尾線からの高松築港行きがなぜ3番線からの発車なのでしょうか。前面展望でこの疑問を解消することにします。これは片原町から瓦町の様子です(写真17)。高松築港から瓦町は複線区間です(実際の複線区間は1駅先の栗林公園までです)。

写真18. 瓦町の手前で長尾線の線路が分岐
瓦町の手前で長尾線の線路が分岐しています(写真18)。

写真19. 瓦町発車後の前面展望
次に瓦町→栗林公園の前面展望です(写真19)。琴平線の琴電琴平方面の線路から長尾線への線路がありません。このため、長尾線系統は全て3番線からの発車なのです。もっとも、引上線を本線に転用することで分岐器を設置することは可能そうです。さらにいうと、瓦町駅改良工事の際に利便性向上に気がまわらなかった高松琴平電鉄側の失敗とも評価できます。
瓦町駅を歩いてみて

写真21. 人でにぎわう中心部へは徒歩圏内
今回、夕食をとるために瓦町駅を利用しました。そこで見た姿は地方民鉄にしては立派な駅でした。とりわけ、11階建ての商業施設のなかに駅がある姿は大手民鉄にも引けを取りません。また、ビル内のホームでそれなりの密度で利用者が電車を待つ姿は、都市鉄道らしさを感じました。
しかし、商業施設に出入りする人の姿は多くないように見え、地方都市ならではの厳しさも見えます。今となっては、商業施設は「立派すぎた」かもしれません。2019年度の瓦町駅の乗降客数は15000人程度です。他方、2023年度の山形駅の乗降客数は19200人相当、青森駅の乗降客数は11000人相当と見積もられます。これら両駅には駅ビルが設置されていますが、いずれも商業施設は5階建て相当です。これを考えると、(1階当たりの面積数は考慮していませんが)11階建ては過分と見積もられましょう。
後知恵ですが、商業施設の規模を適正化し、そこで浮いた資金を志度線と高松築港方面の乗りかえ利便性や、高松築港方面の発車ホーム統一などに回せば、ことでんの収支は現在より安定していたでしょう。さらにいうと、高松築港駅を高松駅直結にすることで、JRとの連携も強化され、ネットワーク性の向上にもつながったでしょう。
このようにインフラが過大すぎてもかえって持て余すことを改めて実感しました。そして、過大すぎるインフラの一方、(会社が持つ資金は限界があるため)別の部分が貧弱になってしまうというアンバランスさも見えます。
立派な駅の光と影を見た気分でした。
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