四国の玄関口、高松。ここ高松から松山までは1時間間隔で特急が運転されています。この特急は途中で四国第5の都市であり、同じく四国の玄関口の今治を通ります。今回は2つの玄関口の区間を特急で移動しました。

写真1. アンパンマンコンテンツによるファミリー層獲得を感じる
復習:高松と今治の移動方法

写真2. 岡山から特急(右)を待たずに発車する特急多度津行き(左)
(参考)図1. 高松と今治の位置関係(googleマップより引用)
最初に高松と今治の移動方法を紹介します。
表1. 高松と今治の移動方法概要
手段 | 予讃線特急 |
所要時間 | 1時間55分程度 |
運転間隔 | 毎時1本 |
正規料金(指定席料金、通常期) | 5,580円 |
最安料金(スマートえきちゃん) | 3,890円 |
予讃線特急の概要を示しました。所要時間は2時間かからない程度、運転間隔は毎時1本です。150kmに満たない移動距離で5500円もかかるのはちょっと高いとも感じます。ただし、スマートえきちゃんを使うと、スマえき Sきっぷ利用で通年で3,890円と割安です。1人の片道から利用可能なので、乗車券を通しにすることや座席指定を利用したい、という条件がなければこの方法が最も良いでしょう。
予讃線は毎時1本、最大8両編成の輸送力しかありません(毎時2本にはできましょうが、列車交換が増えてしまい大幅なスピードダウンになる)。そのため、通常期は岡山発着5両+高松発着2~3両を併結しています。ただし、繁忙期は岡山発着が5両でも足りないため、7両~8両全車両が岡山発着に振り替えられます。
そのぶん高松-多度津に臨時特急が設定されます(宇多津、丸亀、多度津で同じホームで乗りかえ可能)。特急列車は1列車ごとに特急料金が課されますが、この施策はJR四国の都合でやるため、もちろん特急料金は通算です。また、もともと宇多津での分割/併合の時間を取っているので、乗りかえにともなう所要時間の犠牲もありません。
ともかく、繁忙期は乗りかえが発生するということです。前述の通り、それにともなうデメリットは最小限になるように配慮はされています。
補足特急いしづち号と特急しおかぜ号の走行経路を紹介します。

図2. 特急いしづち号の走行経路(JR四国公式サイトより引用)

図3. 特急いしづち号の走行経路(JR四国公式サイトより引用)
- 特急しおかぜ:岡山-松山
- 特急いしづち:高松-松山(宇多津で特急しおかぜと連結)
岡山、高松、松山は直線状で結ばれておらず、三角状に分布しています。すなわち、1本の列車が岡山-高松-松山と結ぶことはできません。そこで、別系統の列車が設定されています(岡山-高松は別の快速が平均30分間隔で設定されます)。両者は宇多津で合流しますので、合流地点の宇多津で連結しています。これが高松-松山と岡山-松山の列車が設定されている理由です。
現実には新幹線で連絡することで関西地区と結びつきのある特急しおかぜ号のほうが利用が多く、実態としては特急しおかぜ号に高松発着の2両~3両がつながれているというものです。
特急で高松から今治までの実際の移動
さて、実際に特急で高松から今治まで移動しましょう!
Stage1. 特急いしづち(高松→宇多津)

写真3. 四国いちの幹線でも2両編成でも足りてしまう
このときは繁忙期でしたので、いしづち号としおかぜ号を宇多津で乗りかえました。多度津で乗りかえることを奨励されていますが、宇多津や丸亀で乗りかえても特急料金は通しであり、かつグリーン料金も同額でちょっと長い時間ぶんグリーン車に乗れるためです。
高松駅に立つと、2両編成の特急松山行きが待っていました。繁忙期でも2両で足りてしまうあたり、四国内の厳しさを感じます。先代の8000系は3両編成でしたが、現代の8600系は2両編成に変えられています。

写真4. 多度津行きと乗りかえ案内
多客期はおなじみとはいえ、松山まで行くと思っていた特急が多度津行きなのは戸惑う人もいるでしょう。

写真5. 2両編成なのに8号車!
事情をよく知らない人は、「2両編成なのに8号車!」と驚くでしょう(写真5)。(繁忙期以外は)連結する特急しおかぜが1号車~5号車、こちらいしづち号は6号車~8号車で、7号車が抜けているのです。

写真6. 先頭は6号車
先頭は6号車です(写真6)。

写真7. 落ち着いた内装
落ち着いた内装です(写真7)。無機質すぎず、かつ派手すぎずという色づかいの車内です。特急うずしお号に類似の車内に感じます。

写真8. 指定席はカバーがかけられている
1両まるごと指定席というのは供給過剰です。そのため、8号車の指定席区画は一部分です。指定席区画にはカバーがあり、指定席であることがわかります(写真8)。

写真9. 空いているいしづち号
それにしても連休中といえども、空いています(写真9)。照明部分にスリットがあり、直接照明ながら、ある程度の雰囲気を演出できます。

写真10. 窓回りを眺める
窓回りを眺めます(写真10)。

写真11. 座席背面を眺める
座席背面を眺めます(写真11)。背面テーブルなどがあります。特急列車の普通車としてはオーソドックスです。

写真12. 足のせがある
足のせもあります(写真12)。車体軽量化が求められる車体傾斜車両としては珍しいのではないのでしょうか。

写真13. 電源も確保
電源も確保されています(写真13)。

写真14. 高松に快速が到着!
高松に快速が到着しました(写真14)。本州直結だとよく利用されています。

写真15. 高松を発車!
高松を発車しました(写真15)。

写真16. 高松の市街地から徐々に離れる
高松の市街地から徐々に離れます(写真16)。
動画1. ブンブン飛ばす
特急いしづちには「流して走る」という概念が存在せず、最初からブンブン飛ばします(動画1)。これこそ特急の真髄です。

写真17. のどかな風景を走る
のどかな風景を走ります(写真17)。

写真18. 徐々に家が増える
徐々に家が増えてきます(写真18)。

写真19. 坂出に停車!
坂出に停車します(写真19)。わずか13分でしたが、もう21.3kmも移動しています。この区間の表定速度は98.3km/hに達します。

写真20. 坂出を発車!
坂出を発車しました(写真20)。

写真21. 本州方面からの線路が合流
本州方面からの線路が合流しました(写真21)。あちらのほうが直線なのですが、宇多津通過列車でもポイント通過時に45km/h制限があり、詰めの甘さを感じる国鉄設計です。

写真22. 宇多津に到着!
宇多津に到着しました(写真22)。

写真23. 特急2列車が表示される
特急2列車が表示されます(写真23)。

写真24. 特急多度津行きが発車した
特急しおかぜ号の到着を待たず、特急多度津行きは発車しました(写真24)。丸亀や多度津に先着するようにし、高松-松山の乗客を極力多度津まで乗せ、そのぶん岡山-多度津に別の乗客を乗せようという意図でしょう。
Stage2. 特急しおかぜ(宇多津→今治)

写真25. アンパンマン列車の特急しおかぜが入線してきた
アンパンマン列車が入線してきました(写真25)。この特急から先発の特急には乗りかえられません。先発の特急が待つと、(特に丸亀は待避線はなく)後続のこのしおかぜ9号の発車が遅れ、所要時間が長引くのです。

写真26. グリーン車の車内
グリーン車の車内です(写真26)。JRの多くの会社の特急列車グリーン車では常識の横2列+1列の横3列配列です。

写真27. 余計な装飾のないシンプルな車内
余計な装飾のないシンプルな車内です(写真27)。

写真28. どっしりとした座席
どっしりとした座席です(写真28)。

写真29. 足のせもある
足乗せもあります(写真29)。

写真30. 最前部はテーブルがある
最前部にもテーブルがあります(写真30)。

写真31. 読書灯も備わる
読書灯も備わります(写真31)。

写真32. 最前列からの展望
最前列からの展望です(写真32)。これこそ特急しおかぜのグリーン車の醍醐味と思います。デッキをはさむと前面展望性は落ちてしまうので、(定員の少ない)グリーン車側であれば客用ドアは不要には感じます。

写真33. 宇多津を発車!
宇多津を発車しました(写真33)。

写真34. 丸亀に停車!
丸亀に停車します(写真34)。規模こそ小さいですが、四国でも有数の利用者を誇る駅です。

写真35. 川を渡る
坂出から続いてきた高架区間も終わり、地上に下ります。そして、川を渡ります(写真35)。

写真36. まもなく多度津に停車
まもなく多度津に停車します(写真36)。

写真37. 多度津に側線が多い
多度津は側線が多いです(写真37)。

写真38. 上り列車がやってきた
上り列車がやってきました(写真38)。多度津から先は単線区間になるので、複線区間の末端ですれ違うのは理にかなっています。遅れを波及させないためには、若干ながら時刻をずらしても良いかもしれませんが。
理想通りにいけば、30分走行した伊予三島ですれ違うことになります。

写真39. 多度津を発車!
多度津を発車します(写真39)。ここまでは高知方面の列車も同じ経路を通ってきましたが、多度津からは土讃線が分岐し、松山方面だけの列車が通ります。

写真40. 多くの車両がとまっている
予讃線と土讃線の分岐駅という鉄道の要衝ということもあり、多くの車両がとまっています(写真40)。

写真41. のどかな風景が展開する
のどかな風景が展開します(写真41)。

写真42. 振り子車両らしく傾く
振り子車両らしく傾きます(写真42)。

写真43. 海が見える
海が見えます(写真43)。四国側から瀬戸内海を眺めると順光のため、美しく見えます。

写真44. 海が見える
瀬戸内海は島が多いので、単なる水面というより変化があっておもしろいです(写真44)。

写真45. 海が広がる
瀬戸内海が広がります(写真45)。観光列車であればこの区間を徐行するのでしょうが、わが特急は速度が至上命題ですので、そのような措置はなく全速力で通過します。

写真46. のどかな風景が展開する
のどかな風景が展開します(写真46)。
動画2. 観音寺手前の走行風景
観音寺手前で速度を出します(動画2)。主要駅前後はある程度開けていて、曲線半径も大きく、速度も出しやすいためでしょうか。

写真47. 観音寺に停車!
観音寺に停車します(写真47)。基本的に駅舎側のホームに発着し、駅利用者の便宜をはかっています。このような細かな「利用のしやすさ」を積み重ねることは重要です。

写真48. のどかな風景が展開
のどかな風景を走ります(写真48)。四国地方は田舎というイメージがありますが、瀬戸内海沿いは平地もあり、人口や産業がある印象です。

写真49. 海岸沿いを走る
海岸沿いを走ります(写真49)。このあたりが香川県と愛媛県の県境付近です。

写真50. まもなく川之江!
まもなく川之江です(写真50)。

写真51. 川之江に停車!
川之江に停車します(写真51)。

写真52. 民家も多い
民家も多いです(写真52)。このあたりは四国中央市です。四国の道路網の拠点ということもあり、道路網の脅威も感じます。

写真53. 貨物駅が見える
貨物駅が見えます(写真53)。

写真54. 伊予三島に停車
伊予三島に停車します(写真54)。ここで行き違いがあり、停車駅で列車交換をするという上手なダイヤです。それだけに、これ以上の増発やスピードアップには限界が見えます。

写真55. 住宅も多い
伊予三島を出ても住宅が多いです(写真55)。

写真56. 海が遠目に見える
海が遠目に見えます(写真56)。

写真57. カーブがうねうね続く
カーブがうねうね続きます(写真57)。

写真58. 山あいに入る
山あいに入ります(写真58)。今治までずっと平地が続くと想定していたので、意外な車窓に感じます。

写真59. 山あいを抜ける
山あいを抜けます(写真59)。

写真60. 住宅が増えてきた
住宅が増えてきました(写真60)。

写真61. 川を渡る
川を渡ります(写真61)。

写真62. 新居浜に停車!
新居浜に停車します(写真62)。愛媛県第3の都市、四国でも第5位の都市ですが、それらしさをあまり感じません。新居浜の市街地は分散傾向にあり、駅からも離れているためです。

写真63. 新居浜を発車!
新居浜を発車しました(写真63)。

写真64. 住宅街を走る
住宅街を走ります(写真64)。

写真65. 伊予西条に停車!
伊予西条に停車します(写真65)。

写真66. 高松都市圏輸送用の7200系電車が見える
高松都市圏輸送用の7200系も見えます(写真66)。観音寺以東で運用されているイメージでしたので、(知識として知っていたとはいえ)伊予西条で見かけると違和感があります。

写真67. 伊予西条を発車!
伊予西条を発車しました(写真67)。

写真68. 農業がおこなわれる
農業がおこなわれている場所もあります(写真68)。

写真69. 壬生川に停車!
壬生川に停車します(写真69)。伊予三島から壬生川までの所要時間は35分、かつ伊予西条だと所要時間が25分なので、その間で行き違いします。しおかぜ9号としおかぜ18号の場合は、しおかぜ18号が待っていました。

写真70. 住宅は比較的多い
温暖な気候のためか、平地には民家も多いです(写真70)。

写真71. 広がる風景を走る
広がる風景を走ります(写真71)。

写真72. 遠くに瀬戸内海が見える
遠くに瀬戸内海が見えます(写真72)。いつの間にか雲が多くなってきました。

写真73. 住宅が増えてきた
住宅が増えてきました(写真74)。

写真75. 川を渡る
川を渡ります(写真75)。

写真76. 今治に到着!
今治に到着しました(写真76)。多くの人が降りる様子が見え、予讃線の特急において今治は外せない停車駅とわかります。

写真77. 今治でも8両編成が限界
そのような主要駅の今治でさえ、8両編成が限界です(写真77)。
予讃線の特急に乗ってみて

写真78. 車体を傾けて曲線通過速度を上げて「遅く走らない」ことを実現
今回、走りが素晴らしいと定評のある、予讃線の特急に乗りました。ダイヤの都合で前半は8600系、後半は8000系という2種類の車両の乗り比べも試せました。
今回乗車した特急しおかぜ9号の単線区間(多度津→今治)の表定速度は87.4km/h(高松と今治だと79.8km/hとやや劣る)と全国的に見ても高い水準です。これは単線の行き違い待ちはほとんどなし、標準停車駅のみという恵まれた条件ではあります。また、走りもなかなかのもので、速達性に特化した走りという印象でした。逆にいうと、現状がかなり限界であり、これ以上の水準を望むことは難しいです。
これを打開するには線路を新しくするしかありません。
例えば、川之江-伊予三島を複線化、伊予三島-新居浜(山越えがあり線形が悪い)に新線を建設(160km/h程度出す)、壬生川付近を複線化することで今治以東の現状の行き違い待ちを廃止できます。さらに複線区間で上下列車を交換するダイヤとすれば、3分続行で特急列車を2本走らせることも可能です。こうすれば、多客期でも高松発着を別系統で運転できますので、新線建設によるスピードアップによる乗客増加にも対応可能です(高松発着を岡山発着の輸送力の補助として活用)。高松発着を別系統とすれば、宇多津での分割/併合によるロスタイムも削減できます(高松発着は宇多津通過とすれば四国内のさらなるスピードアップにも貢献)。
ここで掲げた新線は3線軌条とし、将来的には四国新幹線に転用すれば二重投資を防げます。現行の予讃線特急はダイヤや車両の工夫は充分に感じますが、四国の屋台骨として少しずつでも輸送改善いただければと感じました。