呉線を経由する瀬戸内海の美しい風景を楽しめるという触れ込みの観光列車etSETOraが走っています。素晴らしい内装と風景を楽しみました。

写真1. 独特の外観のetSETOra
復習:観光列車etSETOraの概要
最初に観光列車etSETOraの概要を紹介します。

図1. 観光列車etSETOraの走行経路(おでかけネットより引用)

図2. 観光列車etSETOraの運転時刻(おでかけネットより引用)
- 区間:広島-福山
- 所要時間:1日1往復
- 運転日:原則として金曜~月曜(火曜~木曜は運休)
- 種別:普通列車グリーン車
etSETOraは広島と福山を結ぶ観光列車です。特急列車らしい速度は出していないため、快速扱いとして運転されます(広義の普通列車扱い)。ただし、車内設備は特別であり、そのような意味でグリーン車扱いとして運転されます。したがって、乗車する区間の運賃のほかにグリーン券が必要です。
表2. 普通列車グリーン車の料金(JR東海公式サイトより引用)

※快速マリンライナーなどJR四国に入る列車、JR東日本の東京地区の普通列車は別体系
参考までにetoSETOraは青春18きっぷでは乗れません。etSETOraはグリーン車指定席、青春18きっぷで乗れるのはグリーン車自由席に限定されているため、グリーン車指定席のetSETOraに乗れないのです。
福山と広島へは3,680円と案内されています。新幹線利用(自由席で4,510円)であれば25分~40分で行けるため、830円を節約するために2時間以上余計に時間をかけてこの列車を選択する必要もないでしょう。
公式サイトには往路/復路と書かれていますが、往路だけ/復路だけの利用ももちろん可能です。また、制度上は1駅のみの利用も可能です。もっともこのような豪華な観光列車に1駅間しか乗らないのはもったいないとも思いますが。


写真群1. etSETOraの内装
etSETOraの内装も示します(写真群1)。1号車(左側)がブラウン系、2号車(右側)がグリーン系の色が使われます。色彩学の言葉を借りると、いずれの車両もシックな配色でしょうか。
いずれもボックスシートを中心とした座席配列で、ゆったりとした配置のためか40人ぶんしか座席がありません。デッドスペースも多いので、そこに数席座席を増設したら良いと考えてしまいます。
主に車内販売を担当するアテンドさんは乗車していますが、運転上はワンマン運転です。これはある意味低コストで運転するための工夫に見え(アテンダントさんは運転業務や車掌業務はやらない)、専門職は運転士1人のみという次世代型の観光列車でもあります。その副作用として、車内で指定席を発売しません。飛び乗りができないということです。
etSETOraという名称はラテン語のエトセトラとSETOをかけた造語です。私なら、「リゾート瀬戸内」という名称にするでしょうから、このあたりのJR西日本のセンスは独特のものを感じます。
etSETOraに実際に乗る
御託はこの程度にして、実際に乗ってみましょう!
Stage1. 車内の観察
私は暖色が好みですので、1号車を選択しました。

写真2. 1号車の様子
1号車の様子です(写真2)。これは先頭側からドア(1号車と2号車に片側1つずつ)に向けてみたものです。

写真3. 運転席側を眺める
運転席側を眺めます(写真3)。もともと一般型気動車として製造された車両を改造したという経歴があるためか、運転室仕切壁は窓が小さめです。先頭よりは記念撮影用のプレートがありました。余剰スペースの活用法としては良いとは思います。

写真4. 改造車の宿命で山側は座席割と窓割が合わない
改造車の宿命で山側は座席割と窓割が合いません。

写真5. ボックスシートの様子
海側のボックスシートの様子です(写真5)。

写真6. 海側は座席割と窓割が一致している
海側は座席割と窓割が一致しています(写真6)。山側までこのような手が加わっていないのは、費用の関係でしょうか。

写真7. 座席視点からの車内
私はカウンター席に陣取りました。その視点から車内を眺めます(写真7)。明度の低い茶色が採用されており、クラシカルな雰囲気も漂います。

写真8. 2号車の様子
2号車の様子です(写真8)。1号車とうってかわってフレッシュナチュラルな内装です。福山停車中に撮影しましたが、アテンダントさんが指定席券の有無を確認するために待機しています。だからアテンダントさんが2人いたの?
1号車も共通ですが、シートの背もたれは低く設定され、デッキも省略し、車内の見通しを確保しています。

写真9. 2号車の様子
2号車の様子です(写真9)。こちらはボックス席のかわりに4人でテーブルを囲む配列が採用されています。

写真10. 2号車の様子
2号車の様子を別の角度から撮影しました(写真10)。

写真11. 2号車にはトイレが設置されている
2号車にはトイレが設置されています(写真11)。

写真12. トイレの中
トイレの中の様子です(写真12)。シンプルで清潔感のある空間です。

写真13. 1号車の販売カウンター
1号車には販売カウンターがあります(写真13)。車内販売はなく、飲みものなどはここで買います。

写真14. ドアにはステップがある
改造車の宿命か、ドアにはステップがあります(写真14)。

写真15. USB充電専用の電源
USB充電専用の電源です(写真15)。通常のコンセントで良いような…。

写真16. 海側の窓は手が加えられている(福山で撮影)
海側の窓は手が加えられ、眺望を確保しようという意気込みを感じます。前面窓も拡大して前面展望も提供したほうが良いような…。

(参考)写真17. 前面の窓が大きい列車の例(岡山駅で撮影)

写真18. 山側の窓は改造前の窓割のまま
山側の窓は改造前の窓割のままです(写真18)。

(参考)写真19. 改造前の車両のイメージ(益田で撮影)
改造前の車両のイメージです(写真19)。

写真20. 記念撮影用のボード
記念撮影用のボードです(写真20)。改造元の車両のドア部分より運転席よりを活用したのでしょうか。
Stage2. 車窓を楽しむ
実際の車窓を楽しみましょう!

写真21. エトセトラ広島行きの表示
エトセトラ広島行きの表示です(写真21)。この列車は広島支社の車両で運転されますが、糸崎-広島でなく福山始発です。尾道観光の需要を取り込もうとすると福山発着が自然であり、同じ会社なので少しだけ岡山支社に越境することは問題ないのでしょう。

写真22. etSETOraが入ってきた
etSETOraが入線してきました(写真22)。アテンダントさんに指定席券を見せて車内に入ります。

写真23. 福山を発車!
福山を発車しました(写真23)。駅員さんが手を振っています。数少ない観光列車だからか気合が入っています。

写真24. 福山の市街地を走る
福山の市街地を走ります(写真24)。

写真25. 田園風景を走る
田園風景を走ります(写真25)。

写真26. 東尾道を通過!
東尾道を通過します(写真26)。このあたりは住宅も多い幹線軸であり、風光明媚さはあまりありません。

写真27. 瀬戸内海が見える
瀬戸内海が見えます(写真27)。etSETOraらしい車窓です。

写真28. 尾道の市街地が見える
尾道の市街地が見えます(写真28)。

写真29. 尾道に停車!
尾道に停車しました(写真29)。ここである程度乗ってきました。
ただし、多くの人が次の列車を待っています。臨時列車だから難しいとはいえ、ホームに自動券売機があれば「飛び乗り」需要も期待でき、列車の採算性が向上するでしょう。

写真27. 尾道を発車!
尾道を発車しました。この列車は14:38に尾道を出発し、広島に17:25に着きます。一方、後続の普通三原行きに乗り、三原で普通広島方面行きに乗りかえると広島には16:56に着きます。急ぐ場合は三原で新幹線に乗りかえると広島に16:07に着きます。それだけ尾道と広島を移動する際の実用性は低いということです。

写真28. 漁港が広がる
漁港が広がります(写真28)。

写真29. オーシャンビューが広がる
オーシャンビューが広がります(写真29)。

写真30. 糸崎に運転停車!
糸崎に運転停車します(写真30)。ここまでが岡山支社管内、ここから広島支社管内(糸崎駅そのものは岡山支社管内)と変わるため、運転士さんが交替しました。

写真31. 高架線に上がる
高架線に上がります(写真31)。

写真32. 三原に停車!
三原に停車します(写真32)。ホームの反対側には呉線の普通呉行きが停車しています。

写真33. 三原を発車!
三原を発車しました(写真33)。ここまでは山陽本線、ここからは呉線を走ります。

写真34. 沼田川を渡る
沼田川を渡ります(写真34)。

写真35. 瀬戸内海沿いを走る
瀬戸内海沿いを走ります(写真35)。この日は晴れていなかったので、華やかさに欠ける風景になってしまいました。

写真36. 瀬戸内海沿いを走る
瀬戸内海のオーシャンビューを眺められます(写真36)。島が多く、少し進むと海の様子が変わるので飽きにくく、観光列車に向いている風景と思います。

写真37. 車窓のための停車
車窓のための停車です(写真37)。

写真38. エトセトラの観光停車を示す看板
運転士に観光停車を示すための看板が設置されていました(写真38)。サービスの再現性を高くし、誰にでも良質な体験をしてもらうことを意図していることがわかります。

写真39. 波打ち際も見える
波打ち際も見えます(写真39)。

写真40. 大久野島に向かう船が発着!
大久野島に向かう船が発着する港があります(写真40)。

写真41. 忠海に停車!
大久野島はうさぎの島ということで知名度があり、そこに向かう観光客の利便性を図るためか、忠海に停車します(写真41)。

写真42. 発電所が見える
海沿いの風景を堪能していたら、急に大きな建物が見えました(写真42)。発電所であり、現在のインフラとして重要な建物です。石炭火力発電ではありますが、最新技術を駆使し、二酸化炭素の排出量を最小限にしていると聞きます。

写真43. のどかな風景を走る
のどかな風景を走ります(写真43)。

写真44. 竹原付近の風景
竹原付近の風景です(写真44)。

写真45. 山がちな場所を走る
山がちな場所も走ります(写真45)。

写真46. 安芸津に停車!
安芸津に停車します(写真46)。首都圏に住んでいると、「西武はあきつ駅、JRは新あきつ駅だから、JRあきつ駅はない」なんて話しますが、実際にはJRあきつ駅はあります。もっとも、首都圏の会話では秋津を指し、それに対し(口頭だから漢字を示していないとはいえ)安芸津を出すのは、社会性という意味で問題があるかもしれません。

写真47. 海が少しだけ見える
呉線が風光明媚な路線といえど、海が見える区間はそこまで多くありません。そのなかで、このような風景は貴重なほうでしょう(写真47)。

写真48. 海が見える
海沿いに広がる集落沿いに列車は進みます(写真48)。

写真49. 海と島と集落
海と島と集落のコラボレーションです(写真49)。

写真50. 山間部に入る
山間部に入ります(写真50)。

写真51. youmeマートが見える
国道沿いにyoumeマートがあります(写真51)。

写真52. 都市圏らしい風景
都市圏らしい風景です(写真52)。とはいえ、このあたりの呉線は1時間に1本あるかないかというレベルです。

写真53. 急に海が見えた
と思うと、急に海が見えることもありました(写真53)。

写真54. 広付近の風景
広付近の風景です(写真54)。広からは本数が増え、日中でも30分間隔が約束されます。ここで雨が降ってきました。前半の風光明媚な区間では雨が降っていませんでしたので、悪いシナリオは回避できたと解釈することにします。

写真55. 川を渡る
川を渡ります(写真55)。

写真56. 呉に停車!
最後の停車駅、呉に停車しました(写真56)。ここから毎時3本に増え(ただし快速通過駅は毎時1本)、すっかり都市圏らしい風景になりました。

写真57. 造船業が盛んな呉市
呉市は造船業が盛んです。それを感じさせる景色です(写真57)。

写真58. かるが浜に運転停車!
かるが浜に運転停車しました(写真58)。呉から広島までは毎時4本運転区間でありながら、単線なので、観光列車etSETOraといえど普通や快速に道を譲りながら走ります。
販売カウンター終了ということや雨、そして周囲の都会的な風景もあって、車内はけだるい空気が漂います。しかし、まだ45分くらい残っているのです。

写真59. 海沿いも走る
ただし、救いなことは海沿いを走る区間もあり、車窓に変化を望める点です。

写真60. すっかり都会的な光景
すっかり都会的な光景に変わりました(写真60)。

写真61. 矢野の風景
もう矢野まで進みました(写真61)。

写真62. 広島の市街地に入る
広島の市街地に入りました(写真62)。

写真63. マツダスタジアム付近を通過
マツダスタジアム付近を通過しました(写真63)。

写真64. まもなく広島に到着!
まもなく広島に到着します(写真64)。

写真65. 広島に到着!
広島に到着しました(写真65)。

写真66. 発車案内は快速岩国行きでしかない
広島に到着したら、もう用はないとばかりに発車案内は次発の快速岩国行きの案内だけを表示していました(写真66)。
観光列車etSETOraに乗ってみて

写真57. 観光列車らしく販売カウンターに多くの人が集まる
今回は、福山から広島への移動にあえて観光列車etSETOraを利用しました。観光列車らしい車内、風光明媚な沿線などの見どころがあり、それなりに楽しめました。ただし、向かい合わせの座席、速度の遅さは気になりました。
このような理想像はありますが、現在でも通年で運転できるようにワンマン運転によるコスト削減、そして乗りやすい快速扱いによる比較的リーズナブルな価格、アクが強くなく万人受けする車内、風光明媚な区間における徐行運転、と観光列車の1つの到達点に達しているとも感じました。
個人的には「おもてなし」を前面に押し出す列車(に限らずサービス全体)は苦手であり、etSETOraのように放ってくれる列車は性に合っていました(こちらが会話を欲する乗客であれば、アテンダントさんによる接客はあるとは思います)。これからも長く継続し、多くの人が気軽に楽しめる存在であってほしいと感じました。
果たして前後はどこに行ったのでしょうか?
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観光列車etSETOraを楽しむ:現在地
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★今回の旅行の全体像は25年GW瀬戸内旅行のまとめに記載しています。