大阪万博。盛況が伝えられていますが、それを陰で支えるのがアクセスです。万博のアクセスは2通りありますが、西側のアクセスの一翼を担うJR線の臨時列車に着目しました。

復習:エキスポライナーとは?
最初にエキスポライナーの概要を紹介します。
- 運転区間:新大阪-桜島
- 運転間隔:毎時1本目安
- 停車駅:大阪、ユニバーサルシティ
図1. 新大阪駅と桜島駅の位置関係(googleマップより引用)
最初に新大阪駅と桜島駅の位置関係を示しました(図1)。桜島駅はJRゆめ咲線の駅であり、通常は15分間隔です。また、通常の電車は西九条-桜島の折り返し運転であり、大阪駅方面にも直通しません。ただし、朝は5分~10分間隔で運転され、夕方ラッシュ時は15分に2本(半数は大阪駅方面に直通)運転されます。
大阪万博開幕にあたり、アクセスの利便性向上のため、新大阪や大阪と直結するエキスポライナーを運転しています。特別な料金は不要で、予約も不要の気軽に乗れる列車です。個人的に思う注意点は以下の通りです。
- 新大阪駅ののりばは、おおさか東線用ホームであり、神戸線や京都線ホームではない
- 大阪駅ののりばは、おおさか東線や天王寺方面の特急のりば(いわゆるうめきた地区の地下ホーム)であり、大阪環状線ホームでない
- 大阪環状線とゆめ咲線の分岐点の西九条は通過する
これは、運転経路を考えればごく自然です。新大阪駅と大阪環状線を結ぶ線路は従来の大阪駅を通らず、大阪駅の地下ホームを通ります。また、この経路はおおさか東線とつながっており、新大阪駅のホームも異なります。さらに、配線の都合上、西九条駅ではホームのない線路を通ります。そのため、西九条は通過扱いです。
これは私のように線路や運転ダイヤばかり考えて生きている者にとっての「自然」であり、鉄道を移動手段以上の何かと意識しない方々にとっては「自然」ではないでしょう。

図3. 新大阪と桜島に関係の深い場所の路線図(JR西日本公式サイトより引用後加工)
運転経路を黒色で簡単に示しました(図3)。このあたりの線路は複雑であり、路線図に掲載されていない線路があることを把握すると、一見「不自然」な経路も納得できます。
なお、万博のアクセス手段は西ゲートがシャトルバス(主に桜島駅)、東ゲートが地下鉄中央線であり、シャトルバスの輸送力に限界があることもあり、東ゲートのほうが便利でしょう。入場待ちで並ぶかどうかはまた別問題ですが…。
実際に桜島から大阪まで乗る
御託はこの程度にして、実際に桜島から大阪に向かいましょう!

写真2. 桜島駅の様子
桜島駅の様子です(写真2)。

写真3. 駅からのシャトルバスの案内もある
駅からのシャトルバスの案内もありました(写真3)。

写真4. 桜島側の1両は特別なラッピング車
桜島側の1両は特別なラッピング車です(写真4)。

写真5. 大阪万博を意識させる方向幕
大阪万博を意識させる方向幕です(写真5)。

写真6. 運転室仕切壁は通常仕様
運転室仕切壁は通常の仕様です(写真6)。

写真7. 車内も特別仕様
車内も特別仕様です(写真7)。何やら特別な電飾が施されています。この様子は動画のほうが伝わりやすいでしょう。そこで、何回か動画に収録しました。
動画1. 万博を感じさせる演出
万博を感じさせる演出です(動画1)。
動画2. 花火を意識させる演出
この演出は万博に終わりません。花火を意識させる演出もあります(動画2)。

写真8. JRゆめ咲線の本線から離れる(桜島行きで撮影)
桜島を発車して1駅、ユニバーサルシティに停車し、ある程度の乗客を乗せます。しかし、座席の半数が埋まるかどうかです。15時台に桜島を出る便とあって、退場には中途半端な時間帯のためでしょう。そうこうするうちに、西九条に近づき、JRゆめ咲線の本線から離れます(写真8)。

写真9. 西九条に停車!
そして、途中の西九条に停車しました(写真9)。大阪方面の関空快速に道を譲るの?でも、地下に入るエキスポライナーと高架線をそのまま走る関空快速では干渉しません。

写真10. くろしお号とすれ違う
くろしお号とすれ違います(写真10)。西九条から大阪まで単線です。そのため、定期列車の特急を優先し、西九条で停車しているのです。

(参考)写真11. 反対方向では野田付近で環状線周回電車と並走
参考までに反対方向では野田付近で環状線周回電車と並走しました(写真11)。
動画3. 別の演出もある
別の演出もありました(動画3)。
動画4. 地下区間でも演出がある
地下区間でも演出がありました(動画4)。

写真12. 大阪のうめきたホーム
大阪駅の通称「うめきた」ホームに着きました(写真12)。このホームにはホームドアはないのですか…。

写真13. 降りる乗客は意外と多い
降りる乗客は意外と多いです(写真13)。大阪環状線の混雑とは無縁でユニバーサルシティと大阪駅を直結するという意味で意外と重宝されているのかもしれません。でも、ここが従来の大阪駅の北西に離れた立地と理解している人はどれだけいるのだろう?

写真14. 最新鋭を感じさせる改札
最新鋭を感じさせる改札です(写真14)。無条件でこの「最新鋭」を味わえるわけでなく、何らかの登録作業などが必要であり、「最新鋭」の限界も感じる場面です。
エキスポライナーに乗ってみて

写真15. 単線区間を地下から地上に上がる(桜島行きで撮影)
今回、期間限定で輸送革命を生じさせたエキスポライナーに乗ってみました。大阪環状線内の混雑を避けられる存在であり、ユニバーサルシティと新大阪駅を直結していることから、ユニバーサルスタジオジャパンの遠来からの来訪者にとっても重宝する列車でしょう。
車内は凝った演出もあり、うめきた新駅に発着することから、「最新鋭」を感じました。車内の演出は乗車体験、万博の気持ちを盛り上げるという意味で良いものでした。しかし、乗客が最も求めていることは、高頻度で直結することではないでしょうか。場合によっては、おおさか東線の大阪発着を全列車桜島発着に延長するだけでもニーズは満たせます。そのシナリオでは、全列車に凝った演出というのは無理なことです。
15分間隔のおおさか東線列車を全て桜島に延長することは、単線区間が残存する現時点では難しいです。しかし、なにわ筋線が完成すれば、特急群はこの区間を通らずに延長運転も可能でしょう。「最先端」「珍しい」ものがちやほやされる傾向にありますが、地味ながら利便性が高いほうがより求められるでしょう。そのような性質を有するエキスポライナーに乗ってそのようなことを感じました。