スイス南部の国鉄のどん詰まりの駅、ロカルノ。ここで鉄路が途絶えるように見えますが、この先、イタリアまで景勝路線が通っています。そのチェンドヴァッリ鉄道に乗りました。

写真1. ドモドッソラの地下駅に到着(ロカルノ含めて地下駅)
復習:チェントヴァッリ鉄道の概要
最初にチェントヴァッリ鉄道について紹介します。
- 区間:ロカルノ(スイス)-ドモドッソラ(イタリア)
- 所要時間:約110分
- 距離:52km
- 運転頻度:2時間間隔が基本(場合によって1時間間隔あり)
- 価格:€24(2等)、€31(1等)(公式サイト検索結果、座席指定4€込み)
- スイストラベルパス:全線有効(イタリア国内区間も有効)

図1. チェントヴァッリ鉄道の経路(vigezzinacentovalli公式サイトより引用)
チェントヴァッリ鉄道は、スイスのロカルノとイタリアのドモドッソラを結ぶ鉄道です。山奥を通る鉄道のためか本数はそこまで多くなく、2時間に1本が基本です。基本は座席指定不要ですが、座席指定が必須の時期もあります(多客期は座席指定必須です)。座席指定が必須かどうかはユーレイルパスの予約画面ではわからず、公式サイトを確認することになります。

図2. 10/19の運賃一覧
10/19の運賃一覧です。スイス政府観光局のサイトにはパノラマ車の場合は追加料金(€1.5(または1.5CHF))が必要と書かれていますが、公式サイトの検索結果を信じると、1日3往復のパノラマ車に当たると€1.5(または1.5CHF)の追加料金が必要です。
私が乗車した8月は座席指定は必須ではありませんでしたし、7:50発はパノラマ車ではなく追加料金も不要でしたので、その点は幸いでした。
座席予約はユーレイルパスのアプリケーション上でも可能ですが、38CHFかかり合理的ではありません(公式サイトで座席指定ぶんだけを購入可能です)。また、乗車券類はスイス国鉄公式サイトより購入可能ですが、これも高価で合理的ではありません。これらの理由から公式サイトの情報を示しました。
最後に公式サイトに掲載されている時刻表を示します(表1~表8)。スイス側、イタリア側でそれぞれ区間列車が運転されていますが、時刻表は2つに分かれており、スイス側とイタリア側で該当する区間の時刻表を確認する必要があります(スイス側、イタリア側を1つにまとめれば良いのに…)。
表1. チェントヴァッリ鉄道(ロカルノ発、スイス側、その1)

表2. チェントヴァッリ鉄道(ロカルノ発、スイス側、その2)

表3. チェントヴァッリ鉄道(スイス側、その3)

表4. チェントヴァッリ鉄道(ロカルノ発、イタリア側)

表5. チェントヴァッリ鉄道(ドモドッソラ発、イタリア側)

表6. チェントヴァッリ鉄道(ドモドッソラ発、スイス側、その1)

表7. チェントヴァッリ鉄道(ドモドッソラ発、スイス側、その2)

表8. チェントヴァッリ鉄道(ドモドッソラ発、スイス側、その3)

列車本数はスイス側が圧倒的に多く、鉄道利用の利便性ではスイスがイタリアより優れている点を改めて実感します。
1つの鉄道会社の路線のように記しましたが、実際にはスイス側はFerrovie Autolinee Regionali Ticinesi(FART)が運営しており、イタリアではSocietà Subalpina Imprese Ferroviarie(SSIF)が運営しています。また、狭軌鉄道(軌間は1000mm)であり、国鉄系と独立した運行です。
ロカルノからドモドッソラまで実際に乗る
御託はこの程度にして、実際に乗りましょう!
Step1. ロカルノ駅の位置
今回はロカルノ駅から乗りました。ただし、ロカルノ駅は国鉄駅と独立した地下駅です。

写真2. 国鉄ロカルノ駅の光景
朝の国鉄ロカルノ駅の光景です(写真2)。この画角の方向に進むと東のベリンツォナ方面に向かいます。この左側にドモドッソラ方面へのホームにつながる通路があります。

写真3. FART駅への通路
FART駅への通路が見えます(写真3)。ユーレイルグローバルパスではLocarno Fartと入力すると良いでしょう。

写真4. ホームまでの距離がある
ホームまでの距離があります(写真4)。このときは何も考えていませんでしたが、左に停車しているのがパノラマ車でしょうか。

写真5. パノラマ車と低床車が連結される
スイス流の高床車と低床車の連結です(写真5)。バリアフリー化がうたわれる現代、低床車両は必須です。しかし、全車両を低床車両にすることは不可能な場合、低床車両を連結することでバリアフリー車両乗車チャンス100%を目指しているのです。

写真5. ドモドッソラ行きが停車中
ドモドッソラ行きが停車中です(写真5)。この鉄道はあまり情報がなかったので、混雑するのかどうかわらかず、座席確保のためにやや急ぎます。

写真6. 2等車でもそこまで混んでいない
不安は杞憂に終わり、2等車でもそこまで混んでいませんでした(写真6)。2等車でも上等そうなシートが並びます。国鉄駅からここまで2分12秒程度でした。
Step2. 1等車の車内
1等車の車内を紹介します。公式サイトでも紹介していた、新型車両でしょうか。

写真7. ステップを経て車内に入る
ステップを経て車内に入ります(写真7)。

写真8. 1等車の車内
1等車の車内です(写真8)。座席も立派な横3列配列であり、前日に乗った国際列車の1等車に見劣りしていないと感じます。配色はグレー系であり、統一感があります。

写真9. 1等車の2人がけ
1等車の2人がけです(写真9)。

写真10. 1等車の4人がけ
1等車の4人がけです(写真10)。テーブルもあり、居住性はなかなか高いです。

写真11. 1人がけのいす
1人がけのいすです(写真11)。一般列車としてはだいぶ上等な座席に感じます。

写真12. 座席予約状況を示す表示
座席予約状況を示す表示です(写真12)。車内が空いていることとこの後に座席指定した乗客に声を掛けられなかったことから、緑色は空席を示すのでしょう。

写真13. 座席にはコンセントも備わる
座席にはコンセントも備わります(写真13)。1時間50分を過ごすには快適な車内です。
Step3. ロカルノからドモドッソラまでの車窓
さて、車窓を紹介します。

写真14. ロカルノを出てしばらくすると地上に上がる
ロカルノ駅そのものは地下駅ですが、しばらくすると地上に上がります(写真14)。

写真15. 渓谷を渡る
渓谷を渡ります(写真15)。

写真16. 線路が分岐!
線路が分岐します(写真16)。こちらは引き込み線でしょうか。

写真17. ヴェルショ(Verscio)付近を走行中
ヴェルジョ付近を走行中です(写真17)。

写真18. 深い谷を走る
深い谷を走ります(写真18)。スイスには絶景路線がいくつかありますが、このような深い谷を走る列車はそこまで多くなく感じます。

写真19. 渓谷を渡る
渓谷を渡ります(写真19)。

写真20. インターニャ(Intragna)に停車!
インターニャに停車します(写真20)。

写真21. 深い谷が登場!
深い谷が再度登場しました(写真21)。

写真22. トンネルに入る
トンネルに入ります(写真22)。

写真23. 絶景が展開する
絶景が展開します(写真23)。

写真24. 古豪とすれ違う
古豪とすれ違います(写真24)。撮影時刻などを振り返ると、カメド(Càmedo)のようです。

写真25. 石橋が見える
石橋が見えます(写真25)。これも山奥を感じさせる風景です。

写真26. まもなくイタリアに突入!
そんな風景を見るうちにイタリアに入ります(写真26)。この瞬間をもって、スイス旅行はいったん休止となり、イタリア旅行は再開されました。

写真27. 渓谷を眺める
イタリアに入っても渓谷を眺める場面もあります(写真27)。

写真28. 急におだやかな風景に変わった
そう思ったら、おだやかな風景に急に変わりました(写真28)。

写真29. 立派な建物が見える
車窓に立派な建物がよぎりました(写真29)。

写真30. 駅にもイタリア国旗が見える
駅にもイタリア国旗が見えます(写真30)。

写真31. 次第に山が離れる
次第に山が離れます(写真31)。

写真32. 川を渡る
川を渡ります(写真32)。

写真33. 周囲が開ける
周囲が開けてきました(写真33)。先ほどの険しい渓谷を見てきた身には広々と映ります。

写真34. 高原の風情を走る
高原の風情を走ります(写真34)。

写真35. 住宅街を走る
住宅街を走ります(写真35)。

写真36. 昔の車両が置いてある
昔の車両が置いてあります(写真36)。

写真37. 駅の注意看板
駅には注意看板があります(写真37)。

写真38. スイスを思わせる雰囲気を走る
周囲にはスイスを思わせる雰囲気があります(写真38)。「スイスなので当たり前では?」と指摘されるかもしれませんが、ここはイタリアのピエモンテ州です。

写真39. スイス風の風景を走る
スイス風の風景を走ります(写真39)。

写真40. 周囲の民家がなくなってきた
再び周囲の民家がなくなってきました(写真40)。

写真41. 別荘地の雰囲気を走る
日本でいう別荘地の雰囲気のなかを走ります(写真41)。

写真42. カーブが続く
カーブが続きます(写真42)。このあたりが標高の最も高いところです。

写真43. 街が小さく見える
高い場所から街が小さく見えます(写真43)。

写真44. 森を走る
スイス側とは異なりますが、森のなかを走ります(写真44)。
動画1. 山あいを走る様子
この区間で山あいを走る様子を動画に収録しました(動画1)。

写真45. 森の向こう側に荒涼とした山が見える
森の向こう側に荒涼とした山が見えます(写真45)。

写真46. 教会が見える
立派な教会が見えます(写真46)。

写真47. ドモドッソラ側の風景
標高が最も高い場所を過ぎ、ドモドッソラ側を一望できます(写真47)。

写真48. カーブを走る
カーブを走ります(写真48)。

写真49. アルプスのふもとに広がるドモドッソラを見おろす
アルプスのふもとに広がるドモドッソラを見おろします(写真49)。

写真50. 反対方向列車とすれ違う
反対方向の列車とすれ違います(写真50)。

写真51. トーチェ川を渡る
トーチェ川を渡ります(写真51)。

写真52. トーチェ川を渡る
トーチェ川を渡ります(写真52)。

写真53. パノラマ車が見える
パノラマ車が見えます(写真53)。

写真54. イタリア側の鉄道会社の古豪が見える
イタリア側の鉄道会社の古豪が見えます(写真54)。

写真55. ドモドッソラに到着!
ドモドッソラに到着しました(写真55)。ロカルノ発車時点では空いていた車内もイタリア国内で徐々に乗客が増え、ホームには多くの人が降りました。

写真56. ここまでの相棒とお別れ!
ここまでの相棒とお別れです。
Step4. ドモドッソラでの乗りかえ
ドモドッソラも地下駅です。国鉄系とはやや距離があります。所定では9:40到着ですが、このときは約7分遅れの9:47到着でした。ユーロシティは9:48発、その後のREも9:58発と時間は多くありません。10分かかる立地だったら、とあせりを隠せません。

写真57. 人々が歩く
電車を降りたら進行方向向きに歩きます(写真57)。

写真58. すぐに階段が登場!
すぐに階段が登場します(写真58)。

写真59. ドモドッソラの国鉄系ホームに到着!
ドモドッソラの国鉄系のホームに到着しました(写真59)。列車を降りてここまで2分10秒でしょうか。逆に国鉄からの乗りかえの場合は、ホームのミラノよりに進んで地下道に乗りかえです。ジュネーブ行きECに乗りかえを急ぐ若者も見られましたが、あちらも遅れていたようで無事に乗りかえできていそうでした。
スイス国鉄車が停車していますが、ここはイタリアです。ダイヤはそこまで便利ではありません。アルプスを越えたブリークまで行けばベルン方面、ジュネーブ方面ともに毎時1本か2本は確保されていますが、イタリアのここだと2時間待ちはあり、さらにミラノ方面は4時間のダイヤホールもあるという状態です。
チェントヴァッリ鉄道に乗ってみて

写真60. 国鉄駅と微妙に異なる立地なことが戸惑うかもしれない(両端とも国鉄駅から3分以内の立地ではある)
今回、スイスとイタリアの行き来にチェントヴァッリ鉄道を使ってみました。日本人にはマイナーな存在なのか、日本人観光客は見かけませんでした。しかし、その車窓は美しく、深い谷や森林と荒涼とした山の対比など印象に残る風景でした。
他方、スイス国内で完結しないという事情もあってか、ダイヤはそこまで便利ではありません。ロカルノとブリークの行き来で使う手段でもありますが、途中でイタリアを通る点を忘れてはなりません。すなわち、待ち時間が多いときもあるということです。単に短絡ルートとして使うのではなく、その特性をしっかりと把握しないと思わぬトラップ(指定席が売り切れなど)にはまる可能性もあります。
後日にチェントヴァッリ鉄道についてまとめる際に、改めてそのような注意点も確認したのでした。
ここまで詳細に解説しました。公式サイトから予約できると思いますが、日本語で予約できないことに不安を感じる人もいるかもしれません。下記のサイトであれば、日本語で予約できるので安心です。
Omio:ヨーロッパ鉄道旅行交通予約サイト
また、その予約にはクレジットカードが便利です。
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