ツェルマットへのアクセスの一般的な方法となるフィスプでの乗りかえ。この方法の概要をまとめるとともに、実際の車窓を堪能しました。

写真1. フィスプを発車したMGB鉄道の列車
復習:フィスプからツェルマットへのアクセスとフィスプ乗りかえの利便性
最初にフィスプとツェルマットの移動方法を簡単に示し、フィスプでの乗りかえについて紹介します。
図1. フィスプ(visp)とツェルマット(zermatt)の位置関係(googleマップより引用)
両者の位置関係を示しました(図1)。MGB鉄道で36km、所要時間は1時間15分前後です。運転間隔は毎時2本であり、ツェルマットの発車間隔はおおよそ30分間隔であり、フィスプの発車間隔は34分/26分の交互です。すなわち、30分間隔と見積もって問題ないでしょう。
きれいな30分間隔にできなかったり、テッシュまでの20分間隔のシャトル列車に合わせた20分間隔にできないのは、山奥で単線区間が主体のためです。もしも複線にできるのであれば、ツェルマット-フィスプを20分間隔、ツェルマット-テッシュのシャトル列車を20分間隔とし、両者を使えるツェルマット-フィスプを10分間隔(=自動車利用者を10分以上待たせない)とすることも可能だったでしょう。
さて、そのフィスプですが、国鉄列車との連絡駅です。

図2. フィスプ駅の位置と長距離列車の系統(スイス国鉄公式サイトより引用)
そのフィスプ駅の位置と長距離列車の系統図を示しました(図2)。フィスプにはチューリッヒ、バーゼル、ベルン、ローザンヌ、ジュネーブといったスイスの主要都市からの直通が運転されています。とりわけ、ベルンには毎時1本~毎時2本(毎時1本の時間帯と毎時2本の時間帯が交互)、ローザンヌとジュネーブには毎時2本の長距離列車が運転されます。
それでは、接続状況を簡単にまとめます(表1~表4)。
表1. ベルン方面→ツェルマットの接続状況
| 方面 | ベルン | フィスプ | フィスプ | ツェルマット |
| チューリッヒ | 8:07 | 9:04 | 9:11 | 10:17 |
| バーゼル | 9:07 | 10:04 | 10:11 | 11:17 |
| バーゼル | 9:34 | 10:31 | 10:37 | 11:50 |
| チューリッヒ | 10:07 | 11:04 | 11:11 | 12:17 |
※以下同様のパターンを2時間単位で形成
このようにベルン方面からの長距離列車とそれなりに良好な接続を取っており、ベルンから2時間15分程度で行けるようになっています。チューリッヒやバーゼルからだと60分余り所要時間を加える格好です。
2時間に3本というやや変則的なダイヤなのは、チューリッヒ-ベルンの毎時1本の系統、バーゼル-ベルンの毎時2本の系統を、インターラーケンとこちら側に等分に割り振っているためです。利便性向上を意識するのであれば、ベルン-ブリークのIRを2時間間隔で増発し、ベルン-フィスプ-ブリークを毎時2本に増発したほうが良いでしょう。
なお、ベルンをはじめとするスイス各地ではタクトタイヤが実施されており、ベルンで各方面からの接続が取られています。すなわち、チューリッヒやバーゼルからベルンに向かう別系統も運転されており、ここで当該の系統に乗りかえることも可能です。そのため、チューリッヒ直通が2時間間隔といえど、チューリッヒ-ベルンの別系統(毎時2本運転)に乗ることで、ベルンで5~10分程度の乗りかえ時間でフィスプに向かうことができます。
表2. ジュネーブ方面→ツェルマットの接続状況
| ジュネーブ | フィスプ | フィスプ | ツェルマット |
| 6:24 | 8:54 | 9:11 | 10:17 |
| 7:05 | 9:24 | 9:37 | 10:50 |
こちらは比較的単純で毎時2本の長距離列車と毎時2本のMGB鉄道の組み合わせです。フィスプでの待ち時間15分程度です。スイスにしては出来がやや悪いとも感じますが、ジュネーブ-ローザンヌでの線路容量の制約などがあるのでしょう。

写真2. フィスプで乗りかえ可能なベルン方面行きがECの例
表3. ツェルマット→ベルン方面の接続状況
| ツェルマット | フィスプ | フィスプ | ベルン | 方面 |
| 16:06 | 17:21 | 17:27 | 18:25 | バーゼル |
| 16:37 | 17:47 | 17:54 | 18:53 | バーゼル |
| 17:37 | 18:47 | 18:54 | 19:53 | チューリッヒ |
| 18:06 | 19:21 | 19:27 | 20:25 | バーゼル |
こちらも往路と同様に乗りかえ時間は7分程度と接続は良好です。なお、フィスプ17:27発はICでなくECですが、始発がブリーク(国内)かミラノ方面(他国)かの違いであり、スイス国内利用の場合は特に違いはありません。
表4. ツェルマット→ジュネーブ方面の接続状況
| ツェルマット | フィスプ | フィスプ | ジュネーブ |
| 16:06 | 17:21 | 17:36 | 19:55 |
| 16:37 | 17:47 | 18:09 | 20:35 |
こちらは往路と同様、15分程度の待ち時間があります。スイスにしては出来が悪いダイヤと感じますが、長距離列車が30分間隔で設定されているだけ、上出来と評価できるかもしれません。なお、イタリアとジュネーブのECが設定されていますが、こちらは通過します(ベルン方面-ミラノ方面のECは停車)。
MGB鉄道そのものは運賃は高めですが、スイストラベルパスやユーレイルパスグローバルが有効であり、鉄道パス類を使っていれば追加負担額は0です。
ツェルマットからフィスプまで実際に列車に乗る
御託はこの程度にして、実際に乗ってみましょう!乗ったのは16:06発でした。

写真3. ツェルマットに停車中のRE42系統のブリーク行き
ツェルマットに停車中のブリーク行きです(写真3)。往路と同様、Komet電車による運転です。
今回乗車した電車の内装について紹介しています。
編成両数はかなり長く(8両編成と記憶しています)、1等車であれば座れます。

写真4. ツェルマットを発車!
ツェルマットを発車しました(写真4)。

写真5. 山間部を走る
ここからフィスプまでは山間部の風景が展開します(写真5)。

写真6. 渓流が見える
渓流が見えます(写真6)。

写真7. 周囲が開けてきた
周囲が開けてきました(写真7)。

写真8. 街が広がる
街が広がります(写真8)。

写真9. 広い駅構内
広い駅構内です(写真9)。ツェルマットからテッシュの間はシャトル列車が運転されており、自動車利用者も鉄道を使います。そのシャトル列車のりばが広がります。

写真10. テッシュに停車!
テッシュに停車します(写真10)。ここまでは20分間隔のシャトル列車も運転されますが、ここからは30分間隔の一般列車と毎時1本あるかないかの氷河急行が走る区間となり、列車本数は半減します。

写真11. 平らな土地を走る
テッシュ付近はやや開けており(写真11)、ここに大規模な駐車場を設置できた理由も理解できます。

写真12. スイスらしい風景を走る
スイスらしい風景を走ります(写真12)。

写真13. 起伏はある
起伏がある区間もあります(写真13)。ツェルマットやスネガを堪能した身にとってはふもとののどかな風景に感じますが、それでも起伏がある区間を走ることには変わりません。

写真14. 険しい地形を走る
険しい地形を走ります(写真14)。

写真15. カーブを走る
カーブを走ります(写真15)。前に列車の姿も見え、改めてこの列車がある程度長い編成を組成していることがわかります。

写真16. 駅に停車!
駅に停車しています。ここはどこでしょうか。

写真17. ヘルブリッゲンだった
ヘルブリッゲンでした(写真17)。ツェルマットとフィスプの中間よりややツェルマット寄りです。

写真18. ログハウスも見える
ログハウスも見え、スイスらしさを感じます(写真18)。

写真19. 動物も見える
動物も見え、ここもスイスらしさを感じます(写真19)。

写真20. 徐々に下っていく
カーブとともに徐々に下っていきます(写真20)。

写真21. 集落が現れる
集落が現れます(写真21)。

写真22. ザンクト・ニクラウスに停車!
ザンクト・ニクラウスに停車します(写真22)。山間部でも人が乗ってきます。ツェルマットへの移動需要が非常に高く、このような中間駅でも毎時2本の乗車チャンスがあり、ツェルマット以外で宿泊するのも良いかもしれません。

写真23. 山間部を走る
山間部を走ります(写真23)。ここだと谷方向を見渡せます。

写真24. 渓流が見える
渓流が見えます(写真24)。

写真25. 反対方向の列車が見える
反対方向の列車が見えます(写真25)。行き違い列車待ちが発生するのは単線の宿命です。

写真26. 新しい車両によるツェルマット行き
新しい車両(MGB Orion)によるツェルマット行きです(写真26)。

写真27. 深い谷を眺める
深い谷を眺めます(写真27)。

写真28. 深い谷を眺める
深い谷を眺めます(写真28)。このような地形を建設するため、全線複線というのは無理な相談でしょう。

写真29. やや開けてきた
やや開けてきました(写真29)。

写真30. ラックレール区間に入っていた
いつの間にかラックレール区間に入っていました(写真30)。MGB鉄道のフィスプ-ツェルマットは旧勾配があるので、一部区間はラックレールがあります(同区間でもラックレールがない区間のほうが多いです)。

写真31. 重なった山々が見える
重なった山々が見えます(写真31)。

写真32. うねうね走る
勾配を緩和するためにカーブを取りながら走ります(写真32)。

写真33. 高規格道路も見える
人里に近づき、高規格道路も見えてきました(写真33)。

写真34. そろそろ降りる準備
そろそろフィスプです。降りる準備をして待ちます(写真34)。

写真35. フィスプに到着!
フィスプに到着しました(写真35)。

写真36. 国鉄ホームから眺めるMGB鉄道駅
国鉄のホームから先ほどまで乗っていた列車を眺めます(写真36)。

写真37. 国鉄駅から眺める
国鉄駅から変則的な増結を眺めます(写真37)。

写真38. ブリークに向かって発車!
ブリークに向かって発車しました(写真38)。
MGB鉄道に乗ってみて

写真39. 絶景が広がる車窓
今回、MGB鉄道でツェルマットからフィスプまで利用しました。山間部の美しい風景、ベルン、チューリッヒ方面の接続を考慮したダイヤ、比較的多い本数、全員着席可能な潤沢な編成両数。スイスらしいサービス水準の高さを感じました。また、風光明媚な車窓は旅行の思い出の良いアクセントでもありました。
チューリッヒなどの都市部からも離れておらず、「行きやすい」と感じるツェルマット。ヨーロッパ旅行の目的地の1つに選択しても良いと感じました。
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