東京、大阪以外で唯一通勤電車の10両編成運転が行われている中央線名古屋地区。2022年3月ダイヤ改正によって8両編成への統一も計画されています。その10両編成の混雑状況を確認しました。
写真1. クロスシートの313系は名古屋よりに連結されることが多い
中央線(名古屋地区)の朝ラッシュ時の混雑状況まとめ
中央線(名古屋地区)の大曽根-千種の混雑状況は以下の通りです。
- (私の見た範囲では)7:40~8:39の60分間が最混雑時間帯である
- 上記の中でもピークは大曽根発車時点で7:55~8:24(名古屋到着時刻で8:10~8:40)ごろである
- 快速のほうがやや混んでいるが、そこまで顕著な違いはない
- 編成の中間よりが混んでいて、両端部は空いている
詳細は以下の章で示します。
お断り
本記事では、東京の中央線と区別するために(実際にはつながっている路線なのですが)、あえて「名古屋地区」と付けることにします。
混雑調査の概要
今回の混雑調査の方法を紹介しましょう。この記事では、定点観測を行い、一定時間の全列車を対象にして各車両の混雑を目視で確認しています。これはプロも行っている調査方法です。
簡単に調査方法を紹介しましょう。一部の個人サイトでは混雑状況を書いているところもありますが、調査方法や混雑指標の言及がないのでう~んと考えてしまうところがあります。そのようなことを踏まえて、弊サイトではきちんと方法を示します(さすがー)。
弊サイトでは混雑ポイントという概念を導入しております。その概要を示します(表1)。
表1. 混雑ポイントの概要
せっかくなので、120ポイント~160ポイントの様子をご覧いただきましょう(写真2-4)。いずれも個人情報を守ることを目的に、画質を落としています。
写真2. 混雑ポイント120ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)
写真3. 混雑ポイント140ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)
写真4. 混雑ポイント160ポイントの様子(写真3と異なり、ドア部分が圧迫されていることがわかります)
今回は大曽根発車後の様子を確認しています。最混雑区間は新守山→大曽根ですが、中央線名古屋地区で最も利用の多いのが大曽根→千種です。今回は利用の最も多い区間を選定しました。
中央線(名古屋地区)の混雑データ
今回は、76分間の状況を確認しました。世界広しといえども、ここまできっちりやる人はごく少数でしょう(それだけこの記事やこのサイトは貴重な存在)。
さて、実際の混雑状況を示します(表2)。
表2. 中央線混雑状況(朝ラッシュ時、大曽根→千種、現場調査結果、生データ)
※313系(クロスシート車)は太枠で囲った
このときの混雑率は86.9%でしたが、8:35以降は空いている傾向にありましたので、別途分析することにしましょう。
中央線(名古屋地区)の混雑状況の分析
写真5. 中央線(名古屋地区)の主力はロングシート車
さて、生データだけでは混雑状況がよくわからないこともあるでしょう。そこで、親切な私は混雑状況を詳細に分析いたします。
前提知識:朝ラッシュ時の中央線(名古屋地区)のダイヤパターン
混雑と鉄道ダイヤは大きく関係しています。そこで、中央線(名古屋地区)の朝ラッシュ時のダイヤを簡単に復習しましょう。
朝ラッシュ時はおおむね15分サイクルのダイヤです。15分に快速が1本、普通が2本の構成で、おおむね5分間隔です(後述する8両化でダイヤは変わります、後述します)。快速が中津川始発、普通は多治見始発と高蔵寺始発が交互です。原則は中津川始発快速→高蔵寺始発普通→多治見始発普通の順ですが、乗車チャンスを増やすために適宜始発駅を延長しています。
高蔵寺から名古屋までは快速が普通を追い抜くことはありません。快速の通過駅は4駅しかないので、快速と普通の役割は近いものがあるのです。
最混雑60分間の推定
一般にラッシュ時の混雑は最混雑時間60分を抽出します。では、どの60分が最も混雑しているのでしょうか。私が調査を開始した7:40から15分刻みで混雑率をまとめました(表3)。
表3. 中央線混雑状況(朝ラッシュ時、大曽根→千種、現場調査結果、時間帯ごと)
これを見ると、7:55~8:25の混雑が激しく、8:40ごろから急に空くことがわかります。確かに9:00の快速は混んでいますが、これは短い6両編成のためです。10両編成であれば58%程度となり、そこまで人が乗っているわけでないことがわかります。
今回の調査結果では、7:40~8:39が最混雑時間帯と結論付けることができました。確かに7:39発や7:34発を調査していないことはありますが、大きく変わることはないでしょう。
種別ごとの分析
では、種別による混雑の違いはあるのでしょうか。さきほどの60分間の範囲で分析しましょう(表4)。
表4. 中央線混雑状況(朝ラッシュ時、大曽根→千種、現場調査結果、種別ごと)
快速と普通で混雑状況に大きな差はありませんが、快速の直前の普通が若干空いています。快速は長距離運転なので、長距離通勤を集客するので混雑、快速の直後の普通は、快速通過駅の2駅で大きく集客するので混雑、というのがその理由でしょうか。
中央線(名古屋地区)は名古屋-高蔵寺は住宅が多く、それ以遠は多治見と中津川を除き住宅が少ないという地理条件もあり、近距離客が比較的多い傾向にあります。そのためか、始発駅や種別による混雑の違いが生じにくい路線条件なのかもしれません。
車両による混雑の違い
では、車両による混雑の違いはあるのでしょうか。ピーク60分間の車両ごとの混雑状況を分析してみました(表5)。
表5. 中央線混雑状況(朝ラッシュ時、大曽根→千種、現場調査結果、種別ごと)
明確な号車表示はありませんでしたが、名古屋よりを1号車として(315系電車ではそのように案内される)表記しています。これを見ると、4~8号車が混みがちで、特に5~7号車が混んでいます。一方で、1号車と10号車が空いています。
315系投入による変化の考察
写真6. 315系電車が投入される(名古屋駅のポスター)
JR東海では315系電車を投入し、8両編成に統一する計画があります。車両投入に先立ち、2022年3月ダイヤ改正で8両編成に統一されます。現在の朝ラッシュ時は10両編成が主体ですが、これも含めて8両編成になるのです。10両編成から8両編成に変更になるということは、当然ながら輸送力が減ってしまい、サービス低下です。
とはいえ、JR東海はそのサービス低下を許容しませんでした。そのため、10両編成で運転されている7:29~8:46の間は3本増発し、輸送量を保っています(6両編成の7:04着と7:08着は8両編成にしたうえで7:06着に統合していますが)。
輸送量の変化をまとめましょう(表6)。
表6. 中央線(名古屋地区)の輸送力の変化
トータルでは8時台は2両ぶん減少していますが、輸送力そのものは減らないはずです。現在の10両編成は4両+4両+2両にしろ、3両+3両+4両にしろ、中間に運転台が4つ入っています。運転席1つ当たり少なく見積もっても0.075両ぶんの定員減少ですから、列車1本あたり0.3両ぶん減少してます。315系8両編成は中間運転台がありませんから、1列車あたり0.3両ぶんの増加となります。8時台の10両編成は9本設定されていますので、同じ輸送力という建前でも実質的には2.7両ぶんの増加となるのです。
ここまで長々と述べましたが、10両編成から8両編成にするかわりに増発されることで、実質的な輸送力減少はないことになります。現在の10両編成では混雑が分散されておらず、8両編成にすることで混雑が分散することが期待できます。特に、混雑する5号車~7号車(8両化後は4号車~6号車に対応するのか?)は大幅な混雑緩和が見込まれます。
こうして、8両編成にすることでかえって輸送改善がみられます。快速の所要時間が3分増加しますが、130km/h化することで改善することを期待しましょう(大曽根の停車時間が長い感覚もありましたので、停車時間削減も良い策でしょう)。