欧州の旅行ベストシーズンの考察(パリなど主要都市の気温も収録!)

記事上部注釈
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日本と気温が大きく異なるヨーロッパ。しかし、旅行の計画の際にその点を忘れてしまうことも多いです。そこで、気温面から考えたベストシーズンをまとめました。

写真1. 8月中旬の欧州の光景(ドイツ連邦共和国のリューデスハイムで撮影)

気温から考えたヨーロッパ(欧州)旅行のベストシーズン

非常に簡単にまとめると下記の通りです。

  • 気温だけの観点でいうと、6月~7月上旬がベストシーズンである
  • 長期休暇の都合を考慮すると、8月が現実的なベストシーズンである
  • ただし、8月だと南ヨーロッパ(イタリア、スペイン、ポルトガル地区)は暑い
  • ゴールデンウィークは南から北へ移動し、お盆だと北から南に移動すると比較的快適である

詳細は以下に記します。

各地の気温の推移

写真2. 熱波によって熱烈な歓迎を受けた(2019年にブダペストで撮影)

まず、各国の気温をまとめます。ここでは簡単のために首都についてまとめました。「このくらいの時期が良い」という点をまとめることが目的のため、あえて首都以外の場所は掲載していません。

補足

下記要領で調査しました。

  1. 気温データはWeather Sparkから出典とした
  2. それぞれの月の1日と15日について、過去の統計データから最高気温と最低気温をリストアップ
  3. 観光する時間帯は最高気温よりの時間帯が多いと予想し、1の最高気温と最低気温を1:3に内分する気温をその日付の平均気温と定義
  4. 東京の季節変化に応じ、「快適な気温」の上限と下限を定義(夏は暑さに、冬は寒さに、それぞれ慣れる、慣れの意味から、12/1、3/1、6/1と9/1については一般的な季節より前の季節と定義した)
  5. 3の「快適な気温」からの差異を求め、「とても暑い」「暑い」「快適」「涼しい」「やや寒い」「寒い」「とても寒い」として指標化

※4の指標の定義は便宜上、以下の通りとしました。例として10/1時点での(快適上限は24℃、快適下限は20℃)各指標に合致する気温も併記しました。

  • とても暑い:快適上限より5℃以上高い気温(29℃超える気温)
  • 暑い:快適上限~快適上限より5℃高い(24℃~29℃)
  • 快適:快適下限~快適上限(20℃~24℃)
  • 涼しい:快適下限-3℃~快適下限(17℃~20℃)
  • やや寒い:快適下限-6℃~快適下限-3℃(14℃~17℃)
  • 寒い:快適下限-11℃~快適下限-6℃(9℃~14℃)
  • とても寒い:快適下限より-11℃以下(9℃未満)

南ヨーロッパ地区

写真3. 7月のイタリアの様子(ローマテルミニ駅、知人提供)

本記事ではイタリア、スペイン、ポルトガル、ギリシャが対象です。一般にイタリアやスペインは地中海性気候に分類され、夏は砂漠のような気候です。

マドリード(スペイン)の気温

マドリード(スペイン)の気温分布です。内陸だけあって夏は暑く、冬は寒い傾向です。旅行に適したシーズンは6月と9月です。5月と10月もそれなりに快適です。

表1. マドリードの気温

ローマ(イタリア)の気温

ローマ(イタリア)の気温分布です。イタリアは南北に長いですが、ローマはその中間に近く、イタリアを代表する数値といっても良いでしょう。旅行に適したシーズンは5月~10月(7月下旬~8月上旬を除く)です。1月と2月は東京より若干温暖です。

表2. ローマ(イタリア)の気温

リスボン(ポルトガル)の気温

リスボン(ポルトガル)の気温分布です(表3)。厳密にはリスボンは海に面していませんが、大西洋にほど近く、全般的に気温変動が穏やかです。5月~10月だと快適に旅行できます。夏は暑いですが、8/1付近を避ければ問題ありません。また、12月~3月は東京よりも温暖な点も見逃せません。

表3. リスボン(ポルトガル)の気温

アテネ(ギリシャ)の気温

アテネ(ギリシャ)の気温分布です(表4)。ローマより南に位置し、ローマより温暖です。旅行のベストシーズンは5月と10月です。12月~3月は日本より温暖な点も見逃せません。

表4. アテネ(ギリシャ)の気温

西ヨーロッパ地区

写真4. 夏でも快適なオステンド(ベルギー王国、2024年に撮影)

本記事ではイギリス、フランス、ベルギー、オランダが対象です(ドイツ、スイス以東は中央ヨーロッパに分類いたします)。ヨーロッパを緯度で分類した場合、中程度の場所です。

ロンドン(イギリス)の気温

ロンドン(イギリス)の気温分布です(表5)。西ヨーロッパでも北よりに位置し、寒冷さを感じさせます。ベストシーズンは7月~9月です。

表5. ロンドン(イギリス)の気温

パリ(フランス)の気温

パリ(フランス)の気温分布です(表6)。先述のロンドンより温暖さを感じます。8月がベストシーズンですが、6月~9月であれば問題ありません。なお、フランスは南北に長く、パリは北側に位置します。バルセロナのような南部地区の場合、気温はもう少し高いです。旅行先によっては、本記事のマドリードやローマもご参照ください(例えば両者の中間の気温を算出するなど)。

表6. パリ(フランス)の気温

ブリュッセル(ベルギー)の気温

ブリュッセル(ベルギー)の気温分布です(表7)。ベストシーズンは7月~9月です。

表7. ブリュッセル(ベルギー)の気温

アムステルダム(オランダ)の気温

アムステルダム(オランダ)の気温分布です(表8)。ベストシーズンは7月下旬~8月です。ブリュッセルより北に位置するだけあり、やや寒冷です。

表8. アムステルダム(オランダ)の気温

中央ヨーロッパ地区

写真5. 5月上旬のスイスは肌寒い(2023年にシヨン城で撮影)

本記事ではドイツ、スイス、オーストリア、チェコ、ポーランド、スロベニアが対象です(ハンガリーやスロバキアは近隣のウィーンで説明できると考えました)。西ヨーロッパ地区と緯度は大きく変わりませんが、西ヨーロッパと比較し北大西洋海流による影響が薄れ、東に向かうにつれて大陸性気候の性格が強くなるとされます。

ベルリン(ドイツ)の気温

ベルリン(ドイツ)の気温分布です(表9)。ベストシーズンは8月ですが、6月~9月であれば問題ありません。

表9. ベルリン(ドイツ)の気温

ベルン(スイス)の気温

ベルン(スイス)の気温分布です(表10)。ベストシーズンは6月~9月です。先ほどのベルリンより南に位置し、温暖そうですが、実際にはベルリンよりも寒冷です。これはベルンの標高が500mほどあるためです。また、スイスの有名観光地は山であり、標高2000mとするとこれより5℃~10℃低い点に注意が必要です。

表10. ベルン(スイス)の気温

ウィーン(オーストリア)の気温

ウィーン(オーストリア)の気温分布です(表11)。ベストシーズンは7月、8月ですが、5月中旬~9月であれば問題ありません。ベルリンより南に位置するだけあり、ベルリンより過ごしやすそうです。

表11. ウィーン(オーストリア)の気温

プラハ(チェコ)の気温

プラハ(チェコ)の気温分布です(表12)。ベストシーズンは8月ですが、6月~9月であれば問題ありません。

表12. プラハ(チェコ)の気温

ワルシャワ(ポーランド)の気温

ワルシャワ(ポーランド)の気温分布です(表13)。ベルリンと緯度はほぼ同じですが、ベルリンより寒冷です。これはより東側になると大陸性気候の性格が強くなる1つのデータと思います。ベストシーズンは6月~9月です。

表13. ワルシャワ(ポーランド)の気温

リブリャナ(スロベニア)の気温

リブリャナ(スロベニア)の気温分布です(表14)。スロバキアではありません。7月~8月がベストシーズンですが、5月中旬~9月であれば問題ありません。

表14. リブリャナ(スロベニア)の気温

東ヨーロッパ地区

本記事ではクロアチア、ブルガリア、ロシアを取り上げます(バルト三国は北ヨーロッパの分類としました)。同じ緯度の西ヨーロッパや中央ヨーロッパよりも過酷な気温の傾向です。

ザグレブ(クロアチア)の気温

ザグレブ(クロアチア)の気温分布です(表15)。6月~8月がベストシーズンです。

表15. ザグレブ(クロアチア)の気温

ソフィア(ブルガリア)の気温

ソフィア(ブルガリア)の気温分布です(表16)。6月~9月がベストシーズンです。

表16. ソフィア(ブルガリア)の気温

モスクワ(ロシア)の気温

モスクワ(ロシア)の気温分布です(表17)。ロシアは寒いイメージがありますが、モスクワに限れば、意外と常識的な気温です。ただし、東側や北側に向かうと桁違いの気温ですので、あくまでもロシアのなかで特別に温暖な場所とご認識ください。ベストシーズンは6月~8月です。

表17. モスクワ(ロシア)の気温

北ヨーロッパ地区

本記事ではスウェーデン、フィンランド、ラトビアを取り上げます。

ストックホルム(スウェーデン)の気温

ストックホルム(スウェーデン)の気温分布です(表18)。北欧諸国は寒いイメージがありますが、意外と常識的な気温です。ただし、北欧諸国は首都が国の南側に位置し、国土の大半はこれ以上に寒いとご認識ください。ベストシーズンは7月下旬~8月上旬です。

表18. ストックホルム(スウェーデン)の気温

ヘルシンキ(フィンランド)の気温

ヘルシンキ(フィンランド)の気温分布です(表19)。北欧諸国は寒いイメージがありますが、意外と常識的な気温です。ただし、北欧諸国は首都が国の南側に位置し、国土の大半はこれ以上に寒いとご認識ください。ベストシーズンは7月下旬~8月上旬です。

表19. ヘルシンキ(フィンランド)の気温

リガ(ラトビア)の気温

リガ(ラトビア)の気温分布です(表20)。ベストシーズンは7月下旬~8月です。

表20. リガ(ラトビア)の気温

気温面で考えるベストシーズン

写真7. 夏のベルギー(ディナンで撮影)

実際の旅行では特定の都市に滞在するのではなく、多くの場所を訪問する周遊旅行となるでしょう。そのため、1か所だけに注意して訪問期間を選ぶことは得策でありません。全体最適を考慮して考えるほうが良いでしょう。では、いつがベストシーズンでしょうか。先述の20の都市のうち気温の傾向が似ている場所についてはまとめました。

表21. 欧州の体感のまとめ

時期ごとに見ると、快適と判定された場所+涼しいと判定された場所を集約すると、6/1~7/1が最も良いことがわかります。では、全20都市の集計結果はどうでしょうか。快適と判定された場所+涼しいと判定された場所を集計しました(表22)。

表22. 涼しいと判定された場所と快適と判定された場所の合計

気温の傾向が大きく異なる北欧、南欧は別にカウントしました。この結果では7/15がベストシーズンです。表21と結論が異なりますが、これはピックアップした標本数が異なるためです。

いずれにしても6月~7月上旬が欧州旅行にはぴったりとわかります。

しかし、欧州旅行はある程度の休暇を取得する必要があること(往復の航空機で24時間以上必要)、会社員の長期休暇が年3回にまとまることを考えると、6月~7月上旬に照準を合わせられないことも事実でしょう。では、年3回の長期休暇(年末年始、ゴールデンウィーク、お盆)で考えます。ここでは年末年始は1/1の体感、ゴールデンウィークは5/1の体感、お盆は8/15の体感としました。

表23. 涼しいと判定された場所と快適と判定された場所の合計

最も快適な時期は8/15と算出されます。ただし、南ヨーロッパを相手にする場合は暑さ対策でゴールデンウィークとすることが重要です。

ここでもう1つのコツがあります。ゴールデンウィークは後半に向かうにつれて気温が上がります。他方、お盆は後半に向かうにつれて気温が下がります。ゴールデンウィークはやや寒く、お盆はやや暑い傾向にあります。そこで、少しでも快適にするためには、ゴールデンウィークは南から北に向かって周遊し、お盆は北から南に向けて周遊するのが気温面からベストです。

東西の移動はここまでのコツはありませんが、あえていえばゴールデンウィークは西から東に向かい、お盆は東から西に向かうと良いでしょう。

夏に欧州旅行するもう1つのメリットは、夏の日本の暑さを避けられる点です。お盆の欧州が暑いといっても、日本に比べれば快適です。そのため、南ヨーロッパ地区を相手にする場合でも、暑い日本国内から逃れるという意義は強いでしょう(表24)。

表24. 欧州旅行と日本での過ごしかたの組み合わせ

ゴールデンウィークお盆
パターンA欧州
→寒い場所が多い
日本
→暑い場所が多い
パターンB日本
→快適な場所が多い
欧州
→快適な場所が多い
→暑くとも日本より涼しい

欧州の気温をまとめてみて

写真8. 夏の運河クルーズ(2024年にアムステルダムで撮影)

本記事は気温だけに着目し、他の要因(クリスマスマーケットに行きたい、オーロラを見たい)は全て排除しています。このような季節限定のイベントが旅行の主目的であれば、暑さや寒さを克服してでも行くしかありません。

しかし、季節限定のイベントに特に注目しない場合、快適な気温の場所に行くことが旅行全体の満足度向上に直結します。例えば、有名観光地で屋外に並ぶという場面は、旅先で発生する典型的なイベントです。その待ち時間に寒い思いや暑い思いを回避できれば旅行の大きな不満を溜めずに済みます。

気温まで考慮して旅行期間を決めることはあまり聞きませんが、これから旅行の計画を立てる際には気温も視野に入れることも重要と思います。本記事が旅行全体の満足度向上につながれば望外の喜びです。