JR神戸線の夕方ラッシュ時の混雑状況(2025年、大阪→塚本、現場調査結果)

記事上部注釈
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関西地区を東西に貫くJR京都線とJR神戸線系統。とくにJR神戸線は目的地に人口が多い都市をかかえ、主力路線の印象があります。そんなJR神戸線の夕方ラッシュの混雑状況を実際に確認しました。

写真1. 大阪始発の新快速は夕方ラッシュ時に特有の設定

JR神戸線の夕方ラッシュの混雑状況のまとめ

JR神戸線の夕方ラッシュの混雑状況の概要は以下の通りです。

  • 利用者が多い時間帯は18:30前後であるが、新快速の本数や快速の両数から考慮すると、19時ごろが混雑する傾向にある
  • 全般的に普通が混雑し、新快速もそれなりに混雑する傾向にある
  • 快速はそこまで混雑せず、とりわけ12両編成の1号車と2号車空いている傾向にある
  • 17時台後半~18時台の混雑率は100%~120%程度が多く、これはおおむね吊革の8割程度が埋まる混雑である

詳細は以下に記します。

混雑調査の概要

今回の混雑調査の方法を紹介しましょう。この記事では、定点観測を行い、一定時間の全列車を対象にして各車両の混雑を目視で確認しています。これはプロも行っている調査方法です。

簡単に調査方法を紹介しましょう。一部の個人サイトでは混雑状況を書いているところもありますが、調査方法や混雑指標の言及がないのでう~んと考えてしまうところがあります。そのようなことを踏まえて、弊サイトではきちんと方法を示します(さすがー)。

表1. 混雑ポイントの基本的な概念と混雑率

120ポイント~160ポイントの様子をご覧いただきましょう(写真2-4)。いずれも個人情報を守ることを目的に、画質を落としています。

写真2. 混雑ポイント120ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)

写真3. 混雑ポイント140ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)

写真4. 混雑ポイント160ポイントの様子(写真3と異なり、ドア部分が圧迫されていることがわかります)

今回は大阪発車時点(大阪→塚本)の混雑状況を確認しました。

JR神戸線の夕方ラッシュの混雑状況の生データ

写真5. 丹波路快速も設定される

最初にJR神戸線の夕方ラッシュの混雑状況の生データを示します(表2)。

表2. JR神戸線の夕方ラッシュの混雑状況(大阪→塚本、生データ)

※換算混雑率は、神戸線快速は10両編成、宝塚線快速は7両編成に換算したときのもの

また、各列車の混雑率を視覚化しました(表3)。

表3. JR神戸線の夕方ラッシュの混雑状況(大阪→塚本、各列車混雑率視覚化)

※換算混雑率は、神戸線快速は10両編成、宝塚線快速は7両編成に換算したときのもの

普通電車と19時ごろの速達列車が混雑していることがわかります。

JR神戸線の夕方ラッシュの混雑状況の分析

写真6. 乗客の多い普通電車

生データを示すだけでは不親切でしょうから、混雑状況を簡単に分析します。

復習:JR神戸線の夕方ラッシュのダイヤパターン

混雑状況はダイヤによって左右されます(逆にダイヤ作成時には混雑状況も考慮されます)。そこで、JR神戸線の夕方ラッシュのダイヤパターンについて簡単に紹介します。

JR神戸線、JR宝塚線ともに15分サイクルで構成され、1サイクルの内訳は以下の通りです。

  • 新快速:基本的に1本(京都方面-大阪-姫路方面)だが、夕方ラッシュ時には大阪始発の姫路方面行きが1本追加で運転され、15分に2本の設定(18:45以降には設定されない)
  • 快速(神戸線):1本運転
  • 快速(宝塚線):大阪-三田方面で1本運転(丹波路快速も含む)。ただし特急が運転される時間帯は設定なし
  • 普通:高槻-大阪-新三田が1本、京都-大阪-西明石が1本の合計2本。新三田行きは尼崎で東西線からの西明石行きと相互連絡。よって、神戸線方面の有効列車は15分に2本

基本的に昼間の構成と類似していますが、大阪始発の新快速が15分間隔で挿入されるのが大きく異なります。また、JR宝塚線方面の輸送力確保のために東西線からの快速が15分間隔で設定されます(日中時間帯は東西線からの快速系は塚口折り返しのため、宝塚線快速は15分間隔。夕方ラッシュ時は宝塚線快速は毎時7本程度確保)。

神戸線の快速は神戸以遠まで先着し、明石へは新快速が先着します。

解析1. 種別ごとの混雑状況

最初に種別ごとの混雑状況を示します。まず、今回の調査時間帯全般について混雑状況を種別ごとに集計しました(表5、図1と図2)。

表5. 車両、種別ごとの混雑状況

図1. 車両、種別ごとの混雑状況

図2. 種別ごとの混雑状況

これらを見ると、以下の傾向に気づきます。

  • 普通は全車両でそれなりに混雑し、新快速も前2両以外はそれなりに混雑する
  • 快速は12両編成の先頭側2両、後ろ側2両が空いている傾向にある
  • 全般的に宝塚線快速は空いている

最初に気づいたことは、普通電車が混んでいることです。鉄道雑誌等で新快速についての記述は多いですが、普通電車についての記述が少なく、これは現地に立ってみて意外に感じました。しかし、少し考えるとそれも納得できます。日中時間帯と比較し、新快速は増発という対応がなされています。しかし、普通電車はそのような対応はなく、日中時間帯と同じ輸送力で対応しています。ただし、15分サイクルに合わせると5分間隔に増発することになり、そうすると平均乗車率が80%弱になります。

快速電車は両側の2両は空いている傾向があります。快速電車は8両~12両と編成両数がばらばらであり、8両停車位置以外にはとまらない可能性があり、利用者側が潜在的に避けていることが伝わります。12両編成がほぼ約束される(大阪始発は8両編成)ため、安心して12両停車位置で待っている点と異なります。

解析2. 時間帯ごとの混雑状況

次に、時間帯ごとの混雑状況をまとめます。ダイヤに合わせ、15分ごとに混雑状況をまとめました(表6、図3)。

表6. 時間帯ごとの混雑状況

図3. 時間帯ごとの混雑状況(視覚化)

18:15~18:29の利用が最も多いですが、混雑のピークはむしろ18:45~19:14にあります。これは、混雑を分散する大阪始発の新快速が18:37を最後に設定がないことや18:52発快速が8両編成であることがその理由です。同様に19:00発新快速の新快速は混雑が激しいです。

そのような影響を受けにくい普通西明石行きの混雑を確認します(表7、※)。

表7. 普通西明石行きの混雑状況

※快速電車や新快速は編成両数や大阪始発に影響され、普通新三田行きは直前の宝塚線快速の有無に左右されるが、普通西明石行きにはそのような影響はごく小さいと推定

18:23発が1つのピークであり、18:30を過ぎてくると空いてくることを改めて認識できます。

別の側面で確認すると、18:15発普通新三田行きが今回の調査した対象では最も混雑していました。混雑が激しい時間帯であることもありますが、本来は普通と1:1で設定されている宝塚線快速が直前に設定されず(18:10発は特急)、宝塚線への利用者がこの普通電車に集中した可能性を指摘できます。空いているように見える宝塚線快速といえど、設定の意味があることを感じます。

解析3. 車両ごとの混雑状況

写真7. 御堂筋口方面から5番のりばに移動する人たち(12号車は階段の背面に位置)

最後に車両ごとの混雑状況を解析します(図4)。

(再掲)図4. 車両ごとの混雑状況(視覚化)

1号車と12号車に相当する位置は空いています。これは、東側の12号車といえど御堂筋口から見ると、背面方向に位置していること、西側の1号車は再開発が進んでいないことが原因でしょう。3号車に相当する位置は桜橋口に近く、5号車~10号車に相当する位置は中央口、連絡橋口、御堂筋口のどれかに近く、それだけ選ばれる車両ということです。

大阪駅には多くの出口があり、それだけ乗客が分散しているのは良い傾向に感じます。また、大阪発着でなく、都心をスルー運転しているため、混雑分布は1つの駅構造だけに起因せず、分散しやすい傾向にあります。これは都心をスルー運転する路線の1つの隠れた強みです。

混雑状況からJR神戸線のダイヤ案を考える

写真8. 19:00発の新快速に多くの乗客が乗りこむ

混雑状況からJR神戸線のダイヤ案を考えます。個人的に気になるのは、19:00発新快速と18:15発普通新三田行きの混雑です。

19:00発新快速の混雑を緩和するには、19:08発新快速を設定(着席狙いの乗客はこちらに流れる)することです。西明石以西の複線区間のダイヤを傷めないようにするには、西明石行きとすることも手です。こうすれば、19時ごろの快速電車の混雑も緩和されましょう。

ダイヤを傷めないとするのであれば、18:52発、19:07発の快速電車を8両編成から10両編成に増結し、この時間帯の新快速から着席指向の乗客を快速電車にシフトさせるのも手でしょう。

また、18:15発普通新三田行きが混雑するのは、直前に宝塚線快速が設定されないために宝塚線の各駅に向かう人で混雑することと、神戸線各駅への有効列車であること、そして最混雑時間帯であることでしょう。これを改善するには、18:13ごろに大阪を発車する「露払い」の普通を設定することです。ただし、大阪の6番のりばの使用状況的には18:11発とせざるを得ず、露払いの効果は小さいです(5番のりばにも18:09に特急が到着するため6番のりばを使えない)。

別の方策として、特急福知山行きの直後に快速を走らせる手も考えられますが、4番のりばの空きがなく、3番のりばからの快速を設定する程度でしょうか。こうすれば、宝塚線方面に向かう乗客を一部シフトさせられます。

ともかく、ある程度完成したダイヤパターンであり、素人目には改善策はなかなか思い浮かびません。振り返ると、長い複々線や東西線開業による実質的な大阪-尼崎の線増という地道な輸送改善が前提の現在の状況なのでしょう。そのような意味で、鉄道輸送は小手先のダイヤだけでどうにかなる性質ではなく、長年のインフラに大きく依存することを再度実感したのです。

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