京阪特急(2階建て車両、ダブルデッカー)に乗る

記事上部注釈
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数多くの速達列車が活躍する民鉄路線。そのなかでも料金不要な列車種別のなかで豪華さをほこるのが京阪特急です。そんな京阪特急の目玉の車両の2階建て車両に乗りました。

写真1. 存在感の大きい2階建て車両

復習:京都と大阪の競合関係

京都と大阪の間は3つ巴の争いがあるといいます。その関係性を改めて整理します。

表1. 3つ巴の優劣関係

JR阪急京阪
大阪側の駅大阪梅田淀屋橋
京都側の駅京都京都河原町祇園四条
所要時間28分42分47分
運転間隔15分10分15分
運賃580円410円430円

3者をまとめました。表だけを眺めると早さのJR、安さの民鉄に見えます。しかし、京都駅は京都の中心街から南に外れており、その点で不利な戦いを強いられます。

その点で有利な鉄道は阪急電車と京阪電車です。阪急の京都河原町と京阪の祇園四条はほぼ同じ位置にあります。私が歩いた感じではこのあたりが京都の中心街であり、比較する場所はこの両駅にしました。

とはいえ、阪急電鉄、京阪電鉄ともにターミナル駅が複数あります。阪急は烏丸、京阪は七条、三条と出町柳と特急停車駅はいくつかあります。JRが京都駅だけに限っている点と対照的です。

図1. 京都中心部の駅の位置関係(Excelで作成…、京都は省略、祇園四条の上側に三条、下側に七条が位置)

京都駅から地下鉄烏丸線で四条まで4分です。つまり、JR利用の場合は、京都駅での乗りかえ時間を除くと四条まで32分、ただし乗りかえ時間0分というのは非現実的で、実質的には40分以上です。したがって、JR利用であっても民鉄利用時と所要時間は同等か少し長いのが実態でしょう。

大阪側はJRが大阪駅、阪急が大阪梅田駅、京阪が淀屋橋駅です。JRの大阪駅は梅田に位置し、両者はほぼ同一地点とみなしても差し支えありません。一方、京阪のターミナル駅は淀屋橋と別の位置です。淀屋橋はビジネス街であり、梅田とは性質が異なります。京阪にはこのほかにもターミナル駅があり、独自のアクセスが可能です。

ここまで京都や大阪のターミナルについて長々と記しましたが、京都や大阪の目的地によって3つの鉄道を使い分けるのが得策であり、とりわけ京阪電車はターミナルの位置がほかの2つと異なる点が特異的です。後知恵ですが、難波に直結する路線があれば最強でした!

京阪電車はもともと速度が出にくい線形です。そのため、京阪間の所要時間が長いです(一般には淀屋橋-三条の所要時間50分のイメージが強いでしょう)。それを逆手に取り、京阪特急は豪華さで勝負しています。それが民鉄の無料特急で最も豪華な車両を保有している理由の1つです。もっとも、京都観光を意識したという側面もありましょう。

その特急のシンボル的な車両が2階建て車両です。特別料金が不要な列車では、日本で唯一の2階建て車両(中央線で暫定運用中のグリーン車用車両や臨時列車等を除く)でもあります。もっとも、欧州に行くと2階建て車両は当たり前のように走っています。

現在の京阪特急や阪急特急は京都と大阪の行き来ばかりではなく、途中駅の利用もターゲットとしています。そのような利用では乗り降りのしやすさが重視されます。京阪特急は豪華さと相反する側面も満たさなければならず、そのような難しさもかかえています。

京阪特急の2階建車両の車内

京阪特急の2階建車両の車内を少しだけ紹介します。京阪特急は基本的に8両編成ですが、2階建て車両は4号車です。

写真2. 2階建ての2階席を眺める

出入口から2階席を眺めます(写真2)。高級感のある配色です。

写真3. 2階席の様子

2階席の様子です(写真3)。

写真4. 転換クロスシートが並ぶ

転換クロスシートが並びます(写真4)。

写真5. 端部の席は固定式

端部の席は固定式でした(写真5)。いくら豪華な特急とはいえ、無料列車です。

写真6. 座席も高級感がある

座席も高級感があります(写真6)。2000年代後半以降の京阪電車の車内は独特の配色です。

写真7. 2階席からドア付近を眺める

2階席からドア付近を眺めます(写真7)。車端部はロングシートが配置されています。

写真8. 照明がおしゃれ

照明がおしゃれです(写真8)。

写真9. 車端部はロングシート

車端部はロングシートです(写真9)。格子状の床がおしゃれです。隣の車両と照明の色が変えられており、2階建て車両は京阪特急のシンボルということが伝わります。昔はこの区画も転換クロスシートでしたが、乗降性を重視し、ロングシートに変更されています。

写真10. 車端部から隣の車両を眺める

車端部から隣の車両を眺めました(写真10)。

京阪特急の2階建て車両に実際に乗る

さて、実際に乗ってみましょう。今回は三条を夕方に出る便で大阪に向かいました。

写真11. プレミアムカーの空席状況

プレミアムカーの空席情報です(写真11)。直近の便には空席がなく、座席指定を確定したければ、少し待つ必要があります。

写真12. 先発は3ドアの快速特急、次発は2ドアの特急

先発は3ドア、次発は2ドアですので(写真12)、次発に乗ることにしましょう。

写真13. ホームにはプレミアムカーの券売機がある

ホームにはプレミアムカーの券売機があります(写真13)。このような有料座席に乗るかどうかは直前に決めますから、このように衝動買いさせる仕組みは重要に思います。

写真14. 快速特急がやってきた

快速特急がやってきました(写真14)。3000系は3ドアクロスシートであり、「民鉄急行型」ともいえる座席配列です。停車駅が増えた京阪特急、このような車両のほうが合致しているでしょう。

写真15. 先発の快速特急は座席がそこそこ埋まる

先発の快速特急は座席がそこそこ埋まっていました(写真15)。快速特急はパターン外の列車として運転され、京都市内の七条から大阪市内の京橋までノンストップです。午前中の出町柳行き、夕方の淀屋橋行きが各4本運転され、観光客へのニーズに応えています。

写真16. 2ドアの特急がやってきた

2ドアの特急がやってきました(写真16)。停車駅の少ない快速特急に3ドア、停車駅の多い特急に2ドアというのは、ちょっとちぐはぐでは?

写真17. 4号車は2階建て

4号車は2階建て車両です。プレミアムカーは平屋の車両に連結されており、2階建て車両は特別料金は不要です。

写真18. 祇園四条に停車!

祇園四条に停車しました(写真18)。こちらで乗る人も多く、祇園四条の拠点性を実感します。つまり、特急で着席チャンスを高めるには三条で乗ると良いということです。

写真19. 地上に出てきた

七条を過ぎ、地上に出てきました(写真19)。京阪電車は京都市内の南側を通ります。

写真20. 奈良線を越える

奈良線をオーバークロスします(写真20)。京都と城陽の間は複線化が完了し、日中でも15分間隔が約束されています。

写真21. 住宅街を走る

住宅街を走ります(写真21)。

写真22. 車内は満席!

車内は満席とよべる盛況でした(写真22)。

写真23. 近鉄京都線をオーバークロス!

近鉄京都線をオーバークロスします(写真23)。昔からの京都と奈良のメインルートです。

写真24. 丹波橋に停車!

丹波橋に停車しました(写真24)。ここは京都市南部の拠点でもあり、京都駅-京阪電車、京都市中心部-近鉄京都線の流動がクロスするということもあり、全列車停車します。近鉄側もここを重視しており、特急しまかぜも停車します。

写真25. 住宅街を走る

住宅街を走ります(写真25)。

写真26. ほどなくして中書島に停車!

ほどなくして中書島に停車します(写真26)。宇治方面への連絡駅です。似たような場所に2回停車するのは所要時間の面でも乗りかえの利便性(宇治方面から京都へは乗りかえ2回になる)からもベストではありません。宇治線との乗りかえ駅が伏見桃山であり、桃山御陵前と合わせて総合駅であれば、このあたりの利便性も向上していたでしょう。

写真27. 中書島を発車!

中書島を発車しました(写真27)。

写真28. 工場も見える

工場も見えます(写真28)。古都、京都とは異なる京都の1つの姿でしょう。

写真29. 高架区間を走る

高架区間を走ります(写真29)。

写真30. 車両基地がある

車両基地があります(写真30)。

写真31. 川を渡る

川を渡ります(写真31)。

写真32. 住宅街を走る

住宅街を走ります(写真32)。

写真33. 住宅街を走る

住宅街を走ります(写真33)。

写真34. 樟葉に停車!

樟葉に停車します(写真34)。特急停車駅で、多くの人が待っています。樟葉は途中駅で速達列車の始発列車がないため、座席に座ることも難しく、淀屋橋まで27分と立って乗るにはややつらいです。そのようなことから、プレミアムカーのターゲット層ともいえましょう。

沿線外の眼からすると、快速急行が15分間隔で運転されていれば、特急停車は不要にも思えます。しかし、快速急行と特急の双方を15分間隔で運転するまでもないというのが京阪側の判断なのでしょう。京都と大阪の直行客が多いと想定される時間帯は快速特急が運転され、それでフォローするのが京阪側の答えなのでしょう。利用者の速達列車志向と混雑均等化の両立は難しいように思えます。

写真35. 住宅街を快走!

住宅街を快走します(写真35)。

写真36. 住宅街を走る

住宅街を走ります(写真36)。

写真37. 枚方市に停車!

枚方市に停車します(写真37)。

写真38. 枚方市では多くの人が特急を待つ

枚方市では多くの人が特急を待っています(写真38)。

写真39. 2階建て車両にも立ちが発生!

土曜日の夕方なためか、枚方市では2階建て車両にも立ちが発生しました(写真39)。この特急の前に快速特急が露払いしているとはいえ(枚方市通過でもあり)、枚方市断面では前の特急発車から16分経過し、かつ先行の準急は枚方市から淀屋橋まで先着しない、という要因からここまで多くの人が溜まっているのでしょう。

写真40. 枚方には拠点性がある

枚方には拠点性を感じます(写真40)。

写真41. 住宅街を走る

住宅街を走ります(写真41)。

写真42. 複々線に入る

複々線区間に入ります(写真42)。京阪電車は複々線の延伸で輸送力を増強してきました。しかし、枚方市まではそれは伸びておらず、ダイヤ作成の大きな制約になっています。京橋-枚方市が複々線区間であれば、準急や急行もそれなりの速度で走れ、混雑も平均化されたのでしょう。

写真43. 複々線区間を快走!

複々線区間を快走します(写真43)。

写真44. 守口市を通過!

守口市を通過します(写真44)。

写真45. 複々線区間を走る

複々線区間を走ります(写真45)。住宅密集地ですが、そこを走る京阪本線の普通は意外と空いています。近くに地下鉄谷町線が通り、その谷町線が梅田に直結しているため、京阪本線に乗る理由が少ないのでしょうか。

写真46. 住宅街を走る

住宅街を走ります(写真46)。

写真47. 大阪環状線を越える

大阪環状線をオーバークロスします(写真47)。

写真48. 京橋で多くが下車する

京橋で多くが下車します(写真48)。梅田に向かうにはここから大阪環状線に乗りかえたほうがショートカットでき、それが利用率に現れた形です。

写真49. 大阪都心のビル群が見える

大阪都心のビル群が見えます(写真49)。

写真50. 大阪市内には川が多い

大阪市内には川が多いです(写真50)。

写真51. 天満橋に停車!

ここから地下区間に入り、天満橋に停車しました(写真51)。中之島線が開業し、急行線と中之島線が直結される配線を組みましたが、利用客の淀屋橋志向は変わらず、その配線はあまり活用されていません。

その中之島線に通じる線路は写真の奥側の2線です。京橋までは方向別複々線でしたが、天満橋は線路別複々線なのです。

写真52. 淀屋橋に到着!

淀屋橋に到着しました(写真52)。

写真53. 2階建て車両は盛況!

すぐに折り返しの特急出町柳行きに変わります(写真53)。再び多くの乗客を迎え入れ、人気ぶりがうかがえます。

京阪特急の2階建て車両に乗ってみて

写真54. 速達列車以外だとガラガラ(三条で撮影)

今回、京阪特急の2階建て車両に乗りました。曜日や時間帯の影響はあれど、けっこう混雑しており、特急の人気ぶりがうかがえました。ただし、2階建て車両は現代の京阪特急に必ずしも合致しておらず、停車駅と車両設計の整合性を取る難しさも感じられました。

このように盛況な特急(準急の大阪側も盛況)の一方、普通(京都側の準急も含む)は空いており、利用のかたよりがあるのも事実です。利用客の速達列車志向は当然であり、速達列車の混雑緩和は重視されます。他方で、普通の運転本数を削減し、「地元の足」としての機能を放棄することも問題です。

はためには、京阪電車は大阪側のターミナルに恵まれず(梅田か難波に直結していない関西の民鉄は京阪だけ)、「定期外」の乗客は他の路線を選択するように思われます。これを埋めるのがインバウンドを含む観光需要です。ただし、そのインバウンド需要は不安定要素も大きく(2022年10月までの訪日観光客受け入れの拒絶など)、利益が一気に吹き飛ぶのも事実です。

私のような鉄道マニアはダイヤや車両に気が向いてしまいますが、鉄道で最も重要なことは「目的地に駅が近いかどうか」です。目的地は鉄道会社の裁量でどうにかなるものではありません。京阪特急に乗った後はそのようなことも考えてしまいました。

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