小田急電鉄の2025年ダイヤ改正を解析する

記事上部注釈
弊サイトでは実際に利用したサービスなどをアフィリエイトリンク付きで紹介することがあります

2022年のダイヤ改正以来、速達列車の本数が不足している感のあった小田急電鉄。2025年ダイヤ改正ではその揺り戻しが行われました。そのダイヤを解析します。

写真1. 春の夕暮れの光景(2022年4月に新百合ヶ丘で撮影)

小田急電鉄の2025年ダイヤ改正の概要

写真2. 急行向ヶ丘遊園行きは一気にレアになった(2022年に和泉多摩川で撮影)

小田急電鉄によると、2025年ダイヤ改正のポイントは以下の通りです。

  • 快速急行の開成停車
  • 多摩線全駅を急行の停車駅に追加
  • 準急の経堂以西を各駅に停車(喜多見と狛江停車)
  • 日中時間帯の千代田線直通急行を多摩線に延長
  • 夕方ラッシュ時に千代田線から急行伊勢原行きを設定

それぞれの要点を以下に記します。

快速急行の開成停車

2019年ダイヤ改正以降、開成には急行が停車していました。ただし、日中時間帯の新松田以西には急行の運転はなく(2022年以降は町田発着急行が設定されていますが、新松田以西は各駅停車です)、急行停車には意味がありません。そのため、快速急行は新松田で急行に種別を変更していました(ごく一部は新松田以西も快速急行として運転し、開成は通過)。

これが正式に開成も急行停車駅に変更されます。いわば、急行への種別変更を避けるための快速急行停車であり、実質的には何も変わりません(図1)。

図1. 種別変更の概念図(小田急電鉄の告知ページより引用)

急行の停車駅増加

2020年ダイヤ改正から土曜・休日ダイヤの日中時間帯、2022年ダイヤ改正から平日ダイヤも含む日中時間帯について、急行は多摩線内を各駅に停車するようになりました。

これを終日実施に拡大するようになり、正式に多摩線各駅が急行停車駅に加わります。なお、2025年ダイヤ改正では快速急行通勤急行は適用されず、引き続き多摩線内でも通過運転です(図2)。

図2. 多摩線の停車駅の変化(小田急電鉄の告知ページより引用)

準急の停車駅増加

千代田線直通の準急はもともと停車駅が多く、速達列車といいがたい停車駅選定でした。これは世田谷区と千代田線の流動が大きいためと理解していますが、さらに停車駅が増やされます。いまや、東北沢、世田谷代田、梅ヶ丘、豪徳寺だけを通過する種別になりました。緩行線を通り、一部の駅だけ通過する強い動機も感じられません。各駅停車にしない理由がわからないくらいですが、都内の外縁部の各駅に速達感を提供するのが主目的なのでしょうか。

なお、朝ラッシュ時に運転される通勤準急は従前どおり、比較的通過駅が多いです。

図3. 多摩線の停車駅の変化(小田急電鉄の告知ページより引用、余談ですがこの告知ページでは西が左に配置されています)

もっともダイヤ改正後の準急の多くは成城学園前以東で完結するので、喜多見と和泉多摩川がその恩恵にあずかる機会はあまり多くありません。

夕方ラッシュ時の千代田線から急行伊勢原行きを設定

夕方ラッシュ時に運転されている準急急行に変更し、千代田線からの急行伊勢原行きを運転するように変更しました。

20分サイクルなのに、「18時台~20時台に5本」というのは勘定が合わないように見えます。これは(小田急電鉄側はプレスリリースに明記していませんが)もともと向ヶ丘遊園以西に運転する準急は20分間隔でなく、20分間隔と40分間隔の交互でした。それが継承されたためです。急行を20分間隔で運転すれば良いとも思いますが、60分間隔で千代田線からの特急が運転されるため、複線区間の本数に限界があるのです。

後述しますが、当該の急行伊勢原行きは相模大野まで快速急行から先着し、相模大野で快速急行藤沢行きを待ちます。いいかたを変えると、快速急行藤沢行きは相模大野で急行伊勢原行きに接続します。

小田急電鉄の2025年ダイヤ改正の日中時間帯の変化

写真3. 町田発着急行は存続

では、具体的に変更点を解析します。まず、日中時間帯の変更点です。

日中時間帯は千代田線-向ヶ丘遊園の急行を多摩線に延長します。かわりに多摩線内で20分間隔で運転されていた線内運転の各駅停車は廃止されます。いいかたを変えると、千代田線-向ヶ丘遊園の急行と新百合ヶ丘-唐木田の各駅停車を1本につなぎ、向ヶ丘遊園-新百合ヶ丘で20分間隔で増発されます。

表1. 日中時間帯の本数の変更点

改正前改正後
特急新宿-小田原方面新宿-小田原方面
快速急行新宿-小田原(※1)新宿-小田原
快速急行新宿-藤沢新宿-藤沢
急行新宿-唐木田(※2)新宿-唐木田
急行千代田線-向ヶ丘遊園千代田線-唐木田
各駅停車(2本)新宿-本厚木新宿-本厚木
  • ※1. 新松田-小田原は急行として運転、開成停車
  • ※2. 多摩線内は各駅停車として運転

日中時間帯の利用は快速急行に偏っており、それを延長運転する急行で多少吸収しようという意図を感じます。ただし、もともと利用の多い時間帯は千代田線直通の急行1本のかわりに、千代田線直通準急と、新宿-町田方面の急行が運転されており、その時間帯は変わりません。

町田-小田原の急行は6両編成であり、好ましい状況とは思えません。新松田以西が10両非対応であることから、新松田以西で各駅に停車する当該の急行は6両編成で運転せざる得ないという事情があります。千代田線直通急行を新松田に延長し、新松田-小田原は各駅停車を別途運転というのが利用客的にはベストシナリオに見えます。しかし、新松田での双方向の折り返しを軽減したいという理由からか、このシナリオは選択されませんでした。

さて、延長運転された急行付近のダイヤをもう少し詳細に解析します。

ダイヤ改正前の登戸-新百合ヶ丘は下記のダイヤでした。

  1. 各駅停車:登戸12:19→新百合ヶ丘12:29
  2. 千代田線直通急行:登戸12:23→向ヶ丘遊園12:24
  3. 快速急行:登戸12:27→新百合ヶ丘12:32

新百合ヶ丘断面で1と3の時間差は3分しかありませんでした。この隙間に2をねじこむと、2番ホームを連続で使用することになり、新百合ヶ丘でホームが詰まりです。しかし、当該の急行は唐木田行きであり、3番ホームを使えます。その隙間を狙い、下記の通り設定されました。

  1. 各駅停車:登戸12:19→新百合ヶ丘12:29(1番ホーム)
  2. 千代田線直通急行:登戸12:23→向ヶ丘遊園12:26→新百合ヶ丘12:31(3番ホーム)
  3. 快速急行:登戸12:27→新百合ヶ丘12:32(2番ホーム)

このようにして、後続の快速急行の所要時間を傷めることなく、急行の延長運転が可能になりました。このことによって、既存のバランスを大きく崩すことなく、千代田線→新百合ヶ丘~多摩線の乗客の一部を急行に誘導することができます。こうして、(2022年ダイヤで短縮された)所要時間を維持しつつ、快速急行の混雑緩和が可能です。

上りはどうでしょうか。

  1. 快速急行:新百合ヶ丘12:11→登戸12:17
  2. 千代田線直通急行:向ヶ丘遊園12:21→登戸12:23
  3. 各駅停車:新百合ヶ丘12:15→登戸12:25

上りは新百合ヶ丘での緩急結合(小田急では急緩結合と称する)はなく、向ヶ丘遊園→登戸が2線あります。

  1. 快速急行:新百合ヶ丘12:10→登戸12:17
  2. 千代田線直通急行新百合ヶ丘12:12→向ヶ丘遊園12:18→登戸12:22
  3. 各駅停車:新百合ヶ丘12:15→登戸12:25

新百合ヶ丘で快速急行の後に発車し、かつ各駅停車の前に発車するという制約があります。そのため、先発の快速急行を1分繰り上げ(新百合ヶ丘での停車時間は2分あったので、新百合ヶ丘到着までは基本的に時刻変更なし)、当該の急行は時刻調整を兼ねてゆっくり走る結果となりました。

日中時間帯の新宿/代々木上原と多摩センターの有効列車を確認します(表2、表3)

表2. 日中時間帯の新宿/代々木上原と多摩センターの有効列車(ダイヤ改正前)

新宿代々木上原多摩センター
快速急行+線内各停12:0112:0612:45
急行12:1212:1712:55

表3. 日中時間帯の新宿/代々木上原と多摩センターの有効列車(ダイヤ改正後)

新宿代々木上原多摩センター
快速急行+直通急行12:0112:0812:45
急行12:1112:1712:55

新宿発の急行唐木田行きが1分前倒しされており(代々木上原以降の時刻が変更なしなので秒単位の調整と推定される)、新宿からの平均所要時間が0.5分増えています。一方、代々木上原からは必ず急行を利用できるので、平均所要時間は1分減っています。

同様に上りについて確認します(表4、表5)。

表4. 日中時間帯の多摩センターと新宿/代々木上原の有効列車(ダイヤ改正前)

多摩センター代々木上原新宿
線内各停+快速急行11:1511:4811:54
急行+快速急行11:2611:5712:03

表5. 日中時間帯の多摩センターと新宿/代々木上原の有効列車(ダイヤ改正前)

多摩センター代々木上原新宿
直通急行+快速急行11:1611:4911:54
急行+快速急行11:2611:5712:03

上りは多摩線急行快速急行が新百合ヶ丘で接続しています。そのため、ダイヤ改正前より下りよりも所要時間が6分ほど短かったです。これはダイヤ改正後も継続され、線内運転の各駅停車の時刻変更や快速急行の秒単位の時刻調整によって所要時間が若干調整されているレベルです。

逆に、上りは多摩線との所要時間に責任を持つ必要がなく、急行の時刻調整も許容されるのでしょう。所要時間的には急行の増発は多摩線から都内の移動に意味はなく、あくまでも着席指向の人に向けたサービスと評価できます。

小田急電鉄の2025年ダイヤ改正の夕方ラッシュ時の変化

写真4. 夕方ラッシュ時の様子(代々木上原で撮影)

2018年の複々線完成時の夕方ラッシュ時は、速達列車は30分に快速急行が3本、急行が3本運転されていました。これらが7.5分に1本のペースで発車し、混雑する快速急行小田原行き、快速急行藤沢行きが発車するタイミングでは速達列車が2本連続で発車していました。このほか、千代田線からの急行伊勢原行きが30分間隔で設定されていました。

2022年ダイヤ改正で、新宿断面での速達列車の本数こそ変わりませんでしたが、快速急行急行ともに約10分間隔で運転されるように変更されました。同時に、2022年ダイヤ改正では千代田線からの直通も60分に8本から60分に6本に減便されました。このときに夕方ラッシュ時に千代田線からの急行は廃止されていました。すなわち、2022年ダイヤ改正で新宿断面で速達列車の本数は維持、30分間隔の千代田線からの急行が減便されています(多摩線への速達列車が30分間隔から20分間隔に増える一方、江ノ島線への速達列車は平均15分間隔から20分間隔に減便)。

2025年ダイヤ改正では準急の立替という形ですが、2022年ダイヤ改正で廃止された千代田線からの急行が復活しています。代々木上原断面で10分ごろ、30分ごろの設定はありますが、50分ごろの設定はありません。これは、50分ごろは特急が運転されるためです。表現を変えると有料列車か否かという違いはありますが、千代田線から約20分間隔で速達列車が運転されるということです。

急行伊勢原行きは相模大野まで後の快速急行藤沢行きより先着します。このことにより、千代田線から町田方面への有効列車として機能します。

代々木上原断面で急行小田原行きと快速急行藤沢行きの間に設定されます。ダイヤ改正以前は新百合ヶ丘断面で3分間隔でした(表6、図5)。これでは、急行を挿入できません。

表6. 千代田線直通急行前後の速達列車(ダイヤ改正前)

新宿代々木上原新百合ヶ丘
急行(小田原行き)18:2318:2918:51
快速急行(藤沢行き)18:3018:3618:54

図4. ダイヤ改正前の速達列車の関係(OuDiaSecondで作成)

快速急行の新宿発車時刻を1分後ろ倒しにすると、その直後の急行唐木田行きに支障します。では、どのようにこの課題をクリアしたのでしょうか(表7)。

表7. 千代田線直通急行前後の速達列車(ダイヤ改正後)

新宿代々木上原新百合ヶ丘
急行(小田原行き)18:2318:2918:51
急行(伊勢原行き)18:3018:53
快速急行(藤沢行き)18:3018:3618:55

図5. ダイヤ改正前の速達列車の関係(OuDiaSecondで作成)

快速急行の新百合ヶ丘到着を1分繰り下げ、急行伊勢原行きの挿入を可能にしました。また、快速急行は町田や相模大野で2分余り時刻を繰り下げています。

急行伊勢原行きを10分ずらし、急行唐木田行きの続行にする手も思い浮かびます。しかし、急行唐木田行きの直後には特急が迫っており、特急の時刻を変更せざるを得ません。特急を向ヶ丘遊園で待ったところで、今度は快速急行が迫ります。よって、急行小田原行きの続行とせざるを得ないのです。

他方、急行伊勢原行きが向ヶ丘遊園で快速急行藤沢行きを待ち、快速急行藤沢行きの所要時間を維持する手法もあり得ました(2018年ダイヤと同じです、表8)。千代田線から町田に先着させたいためか、このシナリオは採用されませんでした(急行伊勢原行きの視点では相模大野で待つか、向ヶ丘遊園で待つかの違い)。

表8. 千代田線直通急行前後の速達列車(向ヶ丘遊園待避ありの場合)

新宿代々木上原新百合ヶ丘
急行(小田原行き)18:2318:2918:51
急行(伊勢原行き)18:3018:55
快速急行(藤沢行き)18:3018:3618:53

図6. 向ヶ丘遊園待避にした場合の速達列車の関係(OuDiaSecondで作成)

場合によっては、現状の急行唐木田行きと急行小田原行きを交換し、町田までの速達列車を10分に2本を必ず確保することも手でしょう(図7)。

図7. 急行小田原行きと急行唐木田行きを交換した場合の速達列車の関係(OuDiaSecondで作成)(素案)

参考.快速急行の時刻

なお、スピードダウンしたといっても、快速急行藤沢行きの所要時間は2018年ダイヤより短縮されています(表9)。

表9. 快速急行藤沢行きの時刻の推移

新宿町田藤沢
2018年ダイヤ18:3819:1319:40
2022年ダイヤ18:3019:0219:28
2025年ダイヤ18:3019:0419:29

町田までの所要時間はかつての35分から34分に1分短縮、藤沢までの所要時間はかつての62分から59分と3分短縮です。2022年ダイヤの改良点を引き継いでいるかたちです。

補足.多摩線の本数

夕方ラッシュ時の多摩線の本数は維持されました。すなわち、20分間隔の急行と20分に2本の各駅停車です。新百合ヶ丘の乗りかえ時間を2分とすると、新宿から多摩センターへの有効列車は下記の通りです。

表9. 新宿からの有効列車時刻(ダイヤ改正前)

新宿新百合ヶ丘多摩センター備考
18:0118:25/18:2818:41快速急行利用
18:1018:34/18:3818:50急行伊勢原行きも可能
18:1318:54

ダイヤ改正前は約10分間隔の快速急行を利用した場合、新百合ヶ丘始発の各駅停車に接続していました。

表10. 新宿からの有効列車時刻(ダイヤ改正後)

新宿新百合ヶ丘多摩センター備考
18:0118:25/18:2818:40快速急行利用
18:0318:31/18:3518:47急行伊勢原行きも可能
18:1318:54

快速急行が有効列車になるのは半分しかなく、快速急行藤沢行きは有効列車ではありません。かわりにその前の急行小田原行きが有効列車になっています。従来40分だったものが44分かかるようになる(代々木上原からだと所要時間増加は1分少ない)のはサービスダウンです。このことによって、多摩線への乗客に直通する急行唐木田行きを使うように誘導しているのでしょうか。

小田急電鉄の2025年ダイヤ改正を見てみて

写真5. 快速急行に集まる乗客(大和で2023年に撮影)

今回、日中時間帯と夕方ラッシュ時のダイヤパターンの変更点を確認しました。いずれも2022年ダイヤパターンを大きく変えないなかで、快速急行への乗客集中を避けるような取り組みに見えます。

(参考)表10. 日中時間帯の快速急行への乗客集中の様子(小田急の休日日中時間帯の最混雑区間の混雑状況(下北沢-世田谷代田)より引用)

このような取り組みによって混雑が分散することは良いことです。それも現状のダイヤを基本としているため、2022年ダイヤの良さである「速さ」も維持して、かつ現状のダイヤに慣れた人にも負担が少ないです。

ただし、これでは改善策としても中途半端です。例えば、駅停車時の停車方法を変えること(減速した状態で走らずに一気に停車する)による各駅停車の若干のスピードアップ、これによる急行のスピードアップを実現します。

そうすると、日中時間帯において都区内-町田を急行が先着することが可能です。そうすると、千代田線直通急行を相模大野まで先着することができ、快速急行からのシフトを深度化できます。夕方ラッシュ時においても、各駅停車スピードアップによる線路容量増加を活用し、千代田線直通急行を20分間隔に増発させることも可能でしょう。

今後はそのような大胆な改善も期待しつつ、「改善」がなされた事実そのものを喜びたいものです。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

コメント

  1. 小田遅太郎 より:

    千代田線から千歳船橋、祖師ヶ谷大蔵への移動が不便になった。準急が急行になることで、経堂での無駄な待ち時間が増えた。年がら年中、小田急は遅延や運休があって、千代田線からの特急も運休することが多く、利便性を感じられない。今回のダイヤ改正、間違いなく改悪。