休日午前中の小田急小田原線(小田急線)の混雑状況(下北沢-世田谷代田、現場調査結果)

記事上部注釈
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2022年の減便ダイヤ改正後、混雑が騒がれている小田急小田原線。ただし、当該の時間帯はそれなりに混雑対策がなされているのも事実です。快速急行とそれ以外の混雑差についても考察しました。

写真1. 快速急行新宿行きは立ちが発生した状態で下北沢を発車した

休日午前中の小田急小田原線の混雑状況のまとめ

休日午前中(11時台)での最混雑区間の下北沢断面での混雑状況は以下の通りです。

  • 上りの快速急行の混雑率は110%台と吊革が埋まる程度の混雑である
  • 上りの急行の混雑率は60%台と吊革の1/4程度が埋まる程度の混雑である
  • 下りは快速急行でも座席が埋まる程度の混雑であり、急行や各駅停車はもっと空いている
  • 上下とも小田原よりの車両(1号車)が空いている

詳細は以下に記します。

混雑調査の概要

今回の混雑調査の方法を紹介しましょう。この記事では、定点観測を行い、一定時間の全列車を対象にして各車両の混雑を目視で確認しています。これはプロも行っている調査方法です。

簡単に調査方法を紹介しましょう。一部の個人サイトでは混雑状況を書いているところもありますが、調査方法や混雑指標の言及がないのでう~んと考えてしまうところがあります。そのようなことを踏まえて、弊サイトではきちんと方法を示します(さすがー)。

弊サイトでは混雑ポイントという概念を導入しております。その概要を示します(表1)。

表1. 混雑ポイントの概要

乗車ポイントの概要

せっかくなので、120ポイント~160ポイントの様子をご覧いただきましょう(写真2-4)。いずれも個人情報を守ることを目的に、画質を落としています。

混雑ポイント120ポイント相当

写真2. 混雑ポイント120ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)

混雑ポイント140ポイント相当

写真3. 混雑ポイント140ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)

混雑ポイント160ポイント相当

写真4. 混雑ポイント160ポイントの様子(写真3と異なり、ドア部分が圧迫されていることがわかります)

今回は最混雑区間の下北沢-世田谷代田(上りでいうと下北沢到着直前、下りでいうと下北沢発車直後)の混雑を確認しました。

休日午前中の小田急小田原線の混雑状況の生データ

写真5. 千代田線直通は急行であっても各駅停車ホームに発着する(この電車は準急だが)

まず、休日午前中の小田急小田原線の混雑状況の生データを示します(表2と表3)。速達列車と各駅停車の時刻が20分ずれているのは、下北沢でのホームが異なる階にあり、一気に確認できないためです。

表2. 休日午前中の小田急小田原線の混雑状況(下北沢-世田谷代田)

表3. 休日午前中の小田急小田原線の混雑状況(下北沢-世田谷代田、各列車混雑率視覚化)

時間帯の影響か、下りよりも上りのほうが混雑する傾向にあり、とりわけ快速急行が混雑しています。

休日午前中の小田急小田原線の混雑状況の解析

写真6. 下北沢で多くの乗客が降りる(井の頭線乗りかえか下北沢に向かうか?)

生データだけ示しても不親切ですから、私なりに解析いたします(やさしー)。

復習:小田急小田原線のダイヤ

列車の混雑状況はダイヤによって決まります(逆にダイヤ作成時には混雑状況も考慮されます)。そこで、小田急小田原線のダイヤパターンを簡単にまとめます。

小田急小田原線は20分サイクルパターンダイヤを採用しており、1サイクル当たりの内訳は以下の通りです。

  • 特急ロマンスカー:1本(新宿-箱根湯本が多いがそうとは限らない)
  • 快速急行:2本(新宿-小田原、新宿-藤沢が各1本)
  • 急行:2本(新宿-唐木田、千代田線-向ヶ丘遊園が各1本)
  • 各駅停車:2本(新宿-本厚木2本)

乗客の多い、代々木上原-向ヶ丘遊園は快速急行急行各駅停車が各10分間隔で運転されます。それに特急ロマンスカーが加わります。急行の半数は千代田線直通であり、新宿-代々木上原は20分間隔です。また、急行は半数は多摩線に入り、もう半数は向ヶ丘遊園で折り返します。したがって、新百合ヶ丘以西は急行は運転されません。多摩線に入る急行は下りは新百合ヶ丘での接続はなく、上りは新百合ヶ丘で快速急行と待ち合わせます。

新百合ヶ丘以西は快速急行と各駅停車がそれぞれ10分間隔で運転されます。快速急行の半数は江ノ島線に入りますので、相模大野以西は速達列車は20分間隔でしか運転されません。これでは輸送力が不足し、乗車チャンスも減りますので、相模大野以西には急行が20分間隔で運転(町田発着が多いが相模大野発着のこともある)され、快速急行とあわせ10分間隔で運転されます。

ここまで10分間隔と表現しましたが、特急ロマンスカーが入る関係上、完全な10分間隔からずれることがあります。

なお、休日の午前中(代々木上原到着断面で10:00~12:00)の上りについては、千代田線直通急行が新宿行きにシフトし、新宿発着急行が10分間隔で設定されます。千代田線直通については向ヶ丘遊園始発の準急がカバーします。町田から新宿まで20分間隔で速達列車が増発されている格好です。

種別ごとの混雑状況

まず、種別ごとの混雑状況をまとめます(表3と図1)。

表3. 休日午前中の小田急小田原線の混雑状況(下北沢-世田谷代田、種別ごと)

図1. 休日午前中の小田急小田原線の混雑状況(下北沢-世田谷代田、種別ごと視覚化)

いずれの方向も混雑率は快速急行 > 急行 > 各駅停車です。ここで新しい概念として分担率という考えかたを導入します。全体の輸送量に対してその種別がどれだけ輸送しているかを測定する概念です。分担率は比の計算ですので、(各駅停車に8両編成が混ざるという点を無視すれば)それぞれの種別の混雑率の比を出すだけです(上りの準急は本数が半分なので、足す際には半分にする必要あり)。その計算結果を示します(表4)。

表4. それぞれの種別の分担率

下り [%]上り [%]
快速急行49.243.9
急行30.326.1
準急7.7
各駅停車20.522.3

本数が半数の準急以外は分担率は、分担率の比と混雑率の比は同じと考えて差し障りありません。快速急行の分担率は急行の1.62倍(下り)、1.68倍(上り)です。快速急行の分担率そのものは上りのほうが下りより低いですが、この差が準急の効果と評価できます。

快速急行は遠方から集客し、新宿に向けて徐々に混んでくることが読み取れます。

上り急行が新宿行きなことの効果は、下りの混雑率を見るとわかります。下りの快速急行と急行の混雑率の平均は38.5%です。新宿発着が続行する2本は双方が均等に乗っているのに対し、千代田線直通が入る時間帯は快速急行が混雑率が10%上がり、急行の混雑率が10%下がります。つまり、新宿発着よりも千代田線直通は選ばれず、結果として近い時刻に設定される快速急行が混んでいるのです。

千代田線-小田急線の利用者にとっては、あえて千代田線直通を選ぶ動機が少ないのでしょう。千代田線も小田急線も本数が多く、代々木上原での乗りかえも苦にならないためです。一方、新宿利用者は千代田線直通を使っても新宿に向かいません。これが千代田線直通の利用率が悪い理由です。

車両ごとの混雑状況

写真7. 1号車からは下北沢のメインの出口へは不便

では、車両ごとの混雑状況はどうでしょうか。全体的な傾向を探るために20分1サイクルの全体の平均を集計しました(表4と図2)。

表5. 休日午前中の小田急小田原線の混雑状況(下北沢-世田谷代田、号車ごと)

図2. 休日午前中の小田急小田原線の混雑状況(下北沢-世田谷代田、号車ごと、視覚化)

新宿の出口が10号車寄りということもあり、反対の1号車が空いています。ただし、代々木上原で接続する千代田線の関係か、中央よりもそれなりに乗っています。また、新宿の再開発が進み、新宿の出口も10号車よりばかり目指されない点も指摘できましょう。

(新宿で不便な1号車よりが空いているのはともかくとして)それなりに分散しているのは、相互直通運転の隠れた効果です。相互直通運転先の地下鉄路線はカリスマ的な代表駅に多くの人が目指すのではなく、多くの駅に分散します。地下鉄の駅には制約が多く、便利な出口は先頭よりだったり最後尾だったりとそれぞれの駅で異なります。したがって、一般に地下鉄の場合は多くの車両に分散します。小田急の場合、千代田線への乗りかえ駅は代々木上原で、乗りかえには階段がありません。このため分散しやすいのです(思考実験として代々木上原の乗りかえが階段を通ることが必要で、階段が1号車にしかないとしたらと考えるのです)。

休日午前中の小田急小田原線の混雑状況からダイヤを考える

写真8. 千代田線からの急行向ヶ丘遊園行きは空いている

休日午前中の小田急小田原線の混雑状況からダイヤを考えます。まず、快速急行への乗客集中を改善することです。このためには、多摩線や相模大野以西からの有効列車が快速急行であることを何とかすることです。現在の設定本数で可能なことは、新百合ヶ丘での急行と快速急行の連絡を放棄することです。このことで多摩線から新宿への所要時間が6分伸びます(9分遅く着くが3分遅く発車できるので差し引き6分)。ただし、現在は登戸で特急待ちが生じています。これを向ヶ丘遊園-登戸の走行中に処理する、向ヶ丘遊園始発と入れ替えるなどのテクニックを駆使すれば、3分は帳消しできます。

さらに、上り快速急行が向ヶ丘遊園手前で各駅停車に追いつき、減速を強いられます。この原因は新百合ヶ丘で各駅停車を追い抜いていないことに理由を求めることができ、さらなる理由は快速急行と急行の接続にあります。この点からも多摩線からの急行と快速急行の接続を放棄することは重要です。

さらに、小田原方面からの急行が町田行きなために、海老名方面から着席した乗客がこぞって快速急行に乗りかえる点も指摘できます。また、町田の引上線が6両編成対応なために当該の急行は6両編成を強いられ、相模大野以西でも混雑してしまいます。このためには当該の急行町田行きを新宿行きに延長し、快速急行を続行運転する手法もあります(急行は従来通り向ヶ丘遊園始発で運転)。ただし、これだと続行便は空いていて全般的な混雑緩和には難しく、ダイヤも組みにくいという欠点があります。

総じて現在のダイヤは(減便される2022年ダイヤ改正と比較し)混雑よりも速度に力点が置かれたダイヤです。「立たせても短時間」という考えもありましょう。そうであれば、駅停車時のオペレーション改善(ホームに減速して入線せずにトップスピードから一気に停車)などで「立たせる」時間をより短くし、乗客のトータルの不快感を軽減させてもらいたいものです。

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小田急線(混雑基本データ)

このページでは小田急小田原線の混雑状況について基本的なデータをまとめています。また、私が実際に現場で調査した結果へのリンクも記しています。
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