西武池袋線の通勤急行の実態

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西武池袋線の停車駅案内を見ると、通勤急行の停車駅が特異であることに気づきます。通常の急行の停車駅を通過し、通過駅に停車します。この理由はあるのでしょうか。実際に乗って確認しました。

写真1. 所沢でやってくる通勤急行

復習:西武池袋線の通勤急行の概要

西武池袋線の通勤急行の停車駅がどう特殊で、どうして特殊なのでしょうか。

西武池袋線の通勤急行の停車駅の特殊性

西武池袋線の通勤急行の概要を見てみましょう。

西武池袋線の通勤急行の概要

  • 停車駅:所沢までの各駅、東久留米、保谷、大泉学園、石神井公園、池袋
  • 運転時間帯:平日朝上りのみ
  • 運転間隔:約15分間隔

西武池袋線の通勤急行は平日朝ラッシュ時のみに15分間隔で運転されます。所沢から池袋までの所要時間は33分前後と、同じ時間帯の急行の31分前後とそう変わりません。

では、停車駅はどうなのでしょうか。急行や快速と比べてみましょう!

図1. 西武池袋線の停車駅一覧(西武鉄道公式サイトより)

○の数が停車駅の数です。急行よりも停車駅が多く、一見すると「通勤急行は急行停車駅をカバーする」と思います。しかし、よく見てみましょう!急行停車駅のひばりヶ丘を通勤急行は通過します。また、快速停車駅のひばりヶ丘、清瀬、秋津を通過するので、一見すると「通勤急行は快速停車駅をカバーする」ように見えますが、快速は通勤急行停車駅の大泉学園と保谷を通過します。

通勤急行を除くと、快速と急行の序列は明らかですが、通勤急行の停車駅は通常の西武池袋線の種別の序列に従いません

では、快速、通勤急行、急行のとまる石神井公園であれば安心というわけではありません。これらよりも停車駅の多い通勤準急は石神井公園を通過します。通勤準急の停車駅も特殊です。

これらの「特殊」な停車駅の種別は平日朝のみの運転です。一見さんの多い昼間には運転されず、平日の夕方ラッシュ時でさえ運転されません(以前は平日夕方に通勤準急が運転されていましたが、現在は準急に変更されています)。

通勤急行が成立する理由

鉄道会社も好きで多くの種別を設定しているわけではありません。昼間などは通勤急行や通勤準急なしの(朝ラッシュ時に比べて)単純なダイヤを採用しています。平日朝ラッシュ時だけ設定する理由がありそうです。その理由を探ってみましょう(鉄道会社に聞いても「お客さまの要望にお応えし…」としか返答がないでしょう)。

昼間は急行が主要駅にとまり、そこで各駅停車に接続することで、利便性と速達性を両立させています。しかし、朝ラッシュ時にそれをやると急行停車駅のホームが人であふれてしまいます。急行停車駅とそれ以外の駅で乗降客に大きな差がある場合はそこまで問題になりませんが、急行通過駅でも乗降客が多い場合は問題になってしまいます。

ここで、石神井公園-所沢から池袋方面の定期客の人数を見てみましょう(表1)。

表1. 所沢-石神井公園から池袋方面に乗る定期客の人数(都市・地域交通年報から引用)

定期上りの乗車人員急行通勤急行
所沢34500
秋津12762××
清瀬18079××
東久留米13088×
ひばりヶ丘16652×
保谷17791×
大泉学園21393×
石神井公園21591

朝ラッシュ時上りということで、これらの各駅から池袋方面への乗車客をカウントし、なおかつ定期券利用に絞りました。

※元文献は1年合計なので、1日平均にするために365で割り算出。定期の下り着を定期の上り発と読み替え

これを見ると、ひばりヶ丘から石神井公園は乗車客がほぼ均等で、どの駅にも停車させる必要があることがわかります。清瀬やひばりヶ丘より乗車人数の少ない東久留米に通勤急行をあえてとめる理由がわかりにくいかもしれません。これは、直前の準急をひばりヶ丘で追い抜くためです。ひばりヶ丘の手前の東久留米に停めれば、準急から通勤急行に乗りかえることができるのです。

通勤急行と急行の停車駅を分散させることにより、利用が多い駅から池袋まで速達列車で乗りかえなしで行けるようにし、特定の速達列車や駅に乗客が集中しないようにしているのです。

実際に通勤急行に乗る

御託はこの程度とし、実際に通勤急行に乗ってみましょう!今回は通過駅のある区間である所沢から乗りました。

写真2. 池袋線池袋方面は3番ホームから発車

所沢で池袋線池袋方面は3番ホームから発車します(写真2)。ちょうど先発が通勤急行でした。

写真3. 通勤急行が来る

通勤急行がやってきます(写真3)。通勤急行は飯能始発なので、所沢から着席するのは難しいでしょう。着席したければ、次発の通勤準急に乗るのが良いでしょう。ただし、多くの通勤準急は小手指始発です。

写真4. 通勤急行を待つ乗客

池袋線の主要駅の所沢から池袋までは15分間隔の急行、15分間隔の通勤急行を利用でき、15分に2回の乗車チャンスが確保されています。急行の2分後に発車する副都心線直通の快速に乗り、練馬で乗りかえると通勤急行の2分前に着くことができます。これもカウントすると、15分に3回の乗車チャンスです。

写真5. 所沢を発車!

所沢を発車します(写真5)。所沢発車時点では乗車率90%程度でした。

3分前に準急新木場行きが先行しており、この準急は石神井公園までは各駅にとまります。

写真6. 清瀬手前を走行中

清瀬手前を走行中です(写真6)。前の準急に追いつきつつあり、前方の信号機が減速現示です。右に見える車両は下り、その左にある車両は清瀬始発です。東急車であることから、副都心線直通でしょう。

写真7. 清瀬を通過!

清瀬を通過します(写真7)。ここにとまっているのは、通勤急行の先行となる準急ではなく、その4分後に発車する清瀬始発の各駅停車です。乗っている通勤急行はその間を走ります。

写真8. 先行の準急も見える

先行の準急が見えます(写真8)。朝の通勤路線らしく、本数が多い様子がわかります。

写真9. 東久留米に停車!

東久留米に停車します(写真9)。多くの人が通勤急行を待っています。東久留米から池袋までの先着列車は通勤急行のほかに通勤準急+急行の組み合わせもあります。1本で行けることのできるこちらのほうが人気でしょうか。秋津や清瀬から池袋へは準急+通勤急行の組み合わせも可能で、これら2駅を利用する人も東久留米のホームを利用します。

東久留米では先頭部分の混雑率は115%程度まで上がりました。

写真10. ひばりヶ丘で準急新木場行きを抜く!

東久留米の次のひばりヶ丘で準急新木場行きを追い抜きます(写真10)。ひばりヶ丘は急行や快速急行がとまる主要駅ですが、通勤急行は通過します。このため、この準急から池袋に行きたい人は、手前の東久留米で乗りかえる必要があります。

3番ホームで待っている人たちは後の急行を待つ人なのでしょうか(準急で練馬まで行き、練馬で各駅停車に乗りかえるほうが早いのですが)。

写真11. 保谷に停車!

東久留米を発車すると、ひばりヶ丘を通過し、次の保谷に停車します(写真11)。保谷断面では4分前に各駅停車が、2分前に快速が続いており、注意信号が現示されています。

保谷では乗車率130%程度まで上がりました。

写真12. 大泉学園に停車!

保谷の次は続けて大泉学園に停車します(写真12)。保谷と同等の乗車があり、混雑率は140%程度になりました。保谷と大泉学園では、池袋までの速達列車として通勤急行と通勤準急があります。大泉学園から池袋までの停車駅は通勤急行が石神井公園、通勤準急が練馬です。両者で所要時間は1分しかありません。停車駅をばらけされることで、どの乗り継ぎパターンでも所要時間がほぼ均一です。

写真13. 石神井公園が近づく

石神井公園が近づきます(写真13)。石神井公園では各駅停車からの接続はありません。それもそのはず、緩急結合をするべき対象の駅の保谷と大泉学園の両方に通勤急行がとまります。

写真14. 石神井公園に停車!

石神井公園に停車します(写真14)。石神井公園から池袋までは通勤急行と急行があります。通勤急行は3駅連続停車で芸がないように見えてしまいます。しかし、ここを通勤急行が通過すると、乗りかえなしの速達列車が15分に1本と少なくなるので、それはできないのでしょう。

石神井公園で先頭車の混雑率は150%強に達しました。幸いなことに私が乗っている通勤急行は30000系で全幅は2975mmとやや広く、圧迫感はそこまでありません。

写真15. 複々線区間を走る

複々線区間を走ります(写真15)。快走すると思いきや、90km/h程度しか出しません。

写真16. 各駅停車を追い越す

ここで各駅停車を追い抜きます(写真16)。複々線の特長を生かしている印象があります。

写真17. 1本前の副都心線直通各駅停車を追い抜く

1本前の副都心線直通各駅停車を追い抜きます(写真17)。さっきの各駅停車の4分前をすぐに追い抜くのは不思議なのですが、写真17の各駅停車は中村橋から練馬まで4分かかっています。直前に副都心線直通快速が走り、この快速に進路を譲るためです。それならば、始発の石神井公園から中村橋まで1~2分繰り下げれば良いのに…。

写真18. 練馬で各駅停車を追い抜く

練馬で各駅停車を追い抜きます(写真18)。とはいえ、この各駅停車と乗っている通勤急行は線路を全く共有しません。

写真19. 桜台を通過!

桜台を通過します(写真19)。ここからは池袋まで直前に各駅停車が先行します。

写真20. 東長崎の手前

東長崎の手前で各駅停車の姿が見えました(写真20)。この各駅停車は練馬で副都心線直通の快速と接続し、快速停車駅から池袋まで連絡する役割を担っています。近距離区間の待避なしを実現する目的か、朝ラッシュ時で東長崎で待つ各駅停車はありません。

このため、練馬に8:11に通過した通勤急行は、池袋までの6.0kmまで11分30秒もかかります。先行の豊島園始発の各駅停車を区間準急(練馬から池袋まで江古田のみ停車)とすれば、1分程度スピードアップするでしょう。

写真21. 急行とすれ違う

複線区間を走ります。急行とすれ違います(写真21)。すれ違う40000系の車体幅は2848mmであり、わが30000系より127mm狭いです。L&C車であれば、車内の通路幅はさらに狭くなり、混雑する時間帯の電車には充当するべきではないでしょう。

写真22. まもなく池袋!

まもなく終点の池袋です(写真22)。

写真23. 池袋に到着!

池袋には1番ホームに到着します(写真23)。10両編成の場合は1番ホームに到着するイメージはないのですが、朝ラッシュ時は異なるのですね!

写真24. 池袋で降りる人々

終点の池袋で全員が降ります(写真24)。降車をスムーズにするためか、1番・2番ホーム双方から降りていました。1番ホームに到着するということは、池袋駅南側は最後尾の車両が便利です(他のホームだと南側への改札は不便です)。このような小さなテクニックは通勤客の時短につながり、人知れず(あるいは職場の奥義として)ノウハウとして積み重なるのでしょう。

通勤急行に乗ってみて

停車駅が異色の通勤急行。それは単に路線図をにぎやかにする、西武鉄道の趣味というものではなく、多くの駅から池袋から1本で行けるようにするための策です。追い抜き駅の1駅手前にあえて停車して、速達性を広い範囲に波及させている様子もわかります。

このように西武池袋線の特性や周辺のダイヤと合わせて設定されている事実を改めて実感いたしました。ただし、手放しで称賛するわけではありません。練馬から池袋までの鈍足ぶりは目を覆うばかりの遅さです。可能であれば、東長崎付近を線増して走行中に追い抜きができるのがベストです。ただし、独立採算が基本の日本の鉄道であれば、それはできないでしょう。現実には通勤急行の先行の各駅停車を速達化する程度でしょう。

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