写真1. 下りの田園都市線準急と大井町線急行が到着
接続風景とは
異なる路線だけれども、関係が深い2路線。これらの路線の結節点ではどのような接続が行われているのか(あるいは直通しているのか)、それを探るシリーズが「接続風景」です。この2路線、そしてジャンクションの選定は私が実施いたします。
田園都市線と大井町線の関係
田園都市線は東急でも混雑の激しい路線です。その田園都市線の混雑を少しでも緩和すべく、田園都市線沿線から都心への乗客の一部を自社線に横流しをするために、大井町線の強化を行いました。そのため、大井町線は田園都市線のバイパス機能も背負っているのです。「え?大井町?」という声もあるでしょうが、大井町はりんかい線との接続駅-お台場(臨海副都心)方面への玄関口-であり、田園都市線沿線からお台場方面への連絡を考えた場合、大井町線は重要な中継路線といえます(図1)。
図1. 東急の路線網一覧
そんな機能を持たせた大井町線のこと、田園都市線との接続は重要な存在意義です。そこで、田園都市線と大井町線の接続風景を時刻表から探ってみましょう。
溝の口での接続風景を時刻表から解析する
平日日中時間帯の接続状況
ここで簡単に両線のダイヤを述べます。
田園都市線のダイヤパターン
30分サイクルのパターンダイヤです。渋谷断面で急行が15分間隔、急行の間に2本の各停が挿入されます。また、30分間隔で準急が挿入されます。準急が存在する際は、準急の直後の各停(上りは直前)が渋谷始発に変更されます。このほかは、全て半蔵門線直通です。
渋谷断面で急行の直前(上りは直後)の各停は溝の口-渋谷の間(桜新町)で急行に抜かれます。この他、鷺沼、長津田で速達列車と各停の接続がなされます。なお、準急は急行に抜かれることはありません。
大井町線のダイヤパターン
15分サイクルのパターンダイヤです。15分間隔で急行が1本走り、その間に各停が2本走ります。各停の半数は大井町-溝の口を逃げ切ります。もう半数の各停は旗の台で急行に抜かれます。
溝の口での接続状況を確認する(平日ダイヤ)
それでは、溝の口での時刻を見てみましょう(表1、表2)。下りは大井町線→田園都市線の乗り換えを、上りは田園都市線→大井町線の乗り換えを、それぞれ重視した表のつくりにしています。
表1. 下り方向連絡表
表2. 上り方向連絡表
渋谷断面で15分間隔だった急行は、溝の口断面で等間隔になっていません。この理由は、準急が挿入されるサイクルの直後の急行(下りの場合、渋谷発15分)の2つ前の各停(渋谷発08分発)との間隔が短く、当該の急行が遅く走るためです。もう一方の急行については遅く走らないため、所要時間に差が生じ、結果として溝の口断面で間隔が少しだけばらつくのです。
さて、本題に入り、接続状況を観察しましょう。
・上り・下りともに急行どうしの接続は良好です。
・30分間隔で走る準急は旗の台待避の各停に接続しています。
※大井町まで行く際にはこの各停は戦力とはなりませんが、大岡山(目黒線接続)ならば戦力となりますから、それなりに機能しているといえます。
・大井町-溝の口を逃げ切る各停は、おおむね鷺沼待避の各停に接続していますが、上りの半数は接続していません。
急行どうしの接続は良好であるものの、その他の接続は良好とはいえない(少なくとも東横線・目黒線並みの利便性は確保していない)というのが、平日日中時間帯の現状といえましょう。ただ、接続していない組み合わせについても、よくみると大きな役割を演じていない(「鷺沼待避の各停」と「大井町線内逃げ切り各停」の組み合わせは受益者が少なさそう-急行の接続で大半の利用客が利用しそう-など)ため、接続していないことによる問題点は少ないでしょう。
溝の口での接続状況を確認する(休日ダイヤ)
田園都市線の休日ダイヤは平日と異なります。平日ダイヤと休日ダイヤが異なることは多いですが、たいていは日中時間帯はほとんど同じということが多いです。一方、田園都市線の休日ダイヤは日中時間帯でも平日ダイヤと異なります。その特徴は、以下の2点です。
1) 大井町発着急行が設定される(大井町-長津田、中央林間ではない)
2) 急行も南町田に停車する(平日でも準急は停車しています)
特徴2)は末端部分ですし、今回の接続風景とは関係ないので、省略します。今回の記事的には1)が重要な点です。それでは、両線のダイヤパターンについておさらいします。
田園都市線の休日ダイヤを確認する
30分サイクルのパターンダイヤです。渋谷断面で急行が15分間隔、急行の間に2本の各停が挿入されます。また、30分間隔で準急が挿入されます。準急の直後の各停(上りは直前)が渋谷始発に変更されるほかは、全て半蔵門線直通です。
この他に、(溝の口-長津田で)準急と15分間隔となるように、大井町-長津田の急行が30分間隔で設定されます。
渋谷断面で急行の直前(上りは直後)の各停は溝の口-渋谷の間(桜新町)で急行に抜かれます。この他、鷺沼、長津田で速達列車と各停の接続がなされます。なお、準急は急行に抜かれることはありません。
大井町線の休日ダイヤを確認する
30分サイクルのパターンダイヤです。15分間隔で急行が1本走り、その間に各停が2本走ります。各停の半数は大井町-溝の口を逃げ切ります。もう半数の各停は旗の台で急行に抜かれます。なお、急行の半数(30分間隔)は田園都市線に直通し、長津田発着です。この急行は二子玉川の南側で田園都市線の線路に転線します。つまり、長津田発着の急行は二子玉川-溝の口は田園都市線を走行するのです。
休日溝の口での接続状況を確認する
それでは、溝の口での接続パターンを見てみましょう(表3、表4)。下りは大井町線→田園都市線の乗り換えを、上りは田園都市線→大井町線の乗り換えを、それぞれ重視した表のつくりにしています。
表3. 下りの接続パターン
表4. 上りの接続パターン
下りの07分着、08分発の急行、上りの20分発の急行は枠で囲っていますが、これは同一列車であることを示しています。
この表を解読してみましょう。
・両方向ともに、田園都市線準急と大井町線急行の接続は良好
※休日の二子玉川-中央林間は急行も準急も停車駅は同じですから、急行どうしの接続と同等機能
・対となる急行は直通
・上記の他は接続はそれほど考慮していない
・大井町-長津田の急行は二子玉川で田園都市線各停に接続
※下りでは11分発の各停、上りでは17分発の田園都市線各停は二子玉川で大井町-長津田の急行に接続します。つまり、渋谷方面からも大井町発着の急行を利用できるのです。これは、大井町-長津田の急行が渋谷方面への準急と同等の機能を果たしていることを意味します。
このように、大井町線から田園都市線に入る急行が存在し、速達列車による直通サービスが提供されているのが休日ダイヤのポイントです。また、直通していない組み合わせでも速達列車どうしのリレーもしっかりしているのも重要でしょう。休日はお台場への需要が多いため、このように直通サービスが実施されているのでしょう(田園都市線沿線からお台場まで1回の乗り換えで動けます)。
二子玉川で実際の光景を観察する
東急田園都市線と東急大井町線が分岐する二子玉川。ここで接続の様子を観察しました。
※今までは溝の口で考察していましたが、ここでは実際に分岐する二子玉川の様子を観察しています。
休日上りの接続風景を観察する
写真2. ホームから河川敷が確認できる
どのようなダイヤで接続しているかをわかりやすく示すために、まずは簡単な時刻表を示すことにしましょう(表1)。
表1. 休日ダイヤの両線の発車時刻(30分間のみ収録)
写真3. 14:10に大井町線各停が到着後、発車
写真4. 14:13に田園都市線各停が到着後、発車
まず、大井町線の各停が3番線に到着し、接続をとらずに発車します(写真3)。今度は田園都市線の各停が4番線に到着し、発車します。これに接続する大井町線の各停はありません(写真4)。
写真5. 14:15に田園都市線急行が到着、発車
田園都市線各停が出発してまもなく、田園都市線急行がやってきます(写真5)。この急行は桜新町で前の各停(写真4の列車)を追い抜きます。
写真6. 14:17に大井町線各停が到着
この急行の後を追いかけるように、大井町線の各停が到着します(写真6)。この各停は溝の口から二子玉川までノンストップですから、急行と所要時間差は生じません。
写真7. 14:19に田園都市線各停が到着
この直後に田園都市線各停が到着します(写真7)。この各停は半蔵門線直通ではなく、渋谷までです。やはり接続をとらずに発車します。
写真8. 14:22に田園都市線準急と大井町線急行が到着
今回の接続の白眉です。田園都市線準急と大井町線急行が到着します(写真8)。準急は二子玉川から下り方向は急行と同等の機能を有します。つまり、田園都市線の主要駅から大井町線-ひいてはお台場-への速達リレーが実現しているのです。大井町線急行は溝の口始発です。
写真9. 大井町線急行から眺めた田園都市線各停
この後は接続に意欲的ではない両線の各停が到着します。14:37ごろに長津田からの大井町線急行が到着します。この急行の直前に田園都市線の各停が4番線に到着しています。長津田始発の大井町線急行から田園都市線の各停に接続できるようになっています(写真9)。これによって、準急と同等の列車が設定されたことにもなります。
休日下りの接続風景を観察する
今度は下りの接続風景を眺めてみましょう(全て上りホームから観察)。どのようなダイヤで接続しているかをわかりやすく示すために、まずは簡単な時刻表を示します(表2)。
表2. 休日ダイヤの両線の発車時刻(30分間のみ収録)
写真10. 14:11に大井町線各停が発車
写真11. 14:12に田園都市線各停が発車
14:11に大井町線各停が(写真10)、14:12に田園都市線各停がそれぞれ発車します(写真11)。この例は大井町線→田園都市線の接続が考えられているパターンです。
写真12. 14:15に田園都市線急行が到着
各停が発車するとすぐに田園都市線の急行が到着します(写真12)。休日の速達列車の接続の主役は田園都市線準急ですから、田園都市線急行は蚊帳の外といえます。そのため、この急行に接続する大井町線の列車は存在しません。
写真13. 14:18に田園都市線各停が発車
写真14. 14:19に大井町線各停が発車
写真15. 大井町線各停は田園都市線の線路に転線する
田園都市線各停が14:18に、大井町線各停が14:19にそれぞれ発車します(写真13-14)。大井町線各停は二子玉川を出るとすぐに田園都市線の線路に転線します(写真15)。二子新地と高津に停車するための措置なのですが、この両駅を通過すれば、溝の口で田園都市線の各停に接続するのにもったいない…。この各停が両駅を通過するとしたら、14:11発の各停が両駅に停車しなければならないのでしょうが、この各停の直後には田園都市線の各停が迫っています。それならばやむを得ませんね…。あくまでも各停どうしの接続は重視されていないのでしょう。
写真16. 大井町線からの急行長津田行きが到着
写真17. 田園都市線各停が到着し、大井町線からの急行と並ぶ
今回の接続劇のもう一つの白眉、田園都市線の各停から急行長津田行きのリレーです。先に大井町線からの急行が到着します(写真16)。その後、田園都市線の各停が到着し、両者がホームに並びます(写真17)。この接続により、大井町線からの急行が「大井町方面-お台場の玄関口-から田園都市線主要駅への直通輸送」と「田園都市線の準急の機能」を両立させることができるのです。
写真18. 大井町線からの急行長津田行きが発車
接続をとった後に急行長津田行きが発車します(写真18)。この急行は転線していることがおわかりでしょうか。溝の口までノンストップであるにも関わらず、ここで転線してしまうのです。そのため、各停が急行と同時発車できません。この各停が1分余計に停車するせいで、後の急行の足を引っ張ってしまうのです。
写真19. 大井町線急行と田園都市線準急が並ぶ
この後は各停どうしが接続してそうで接続していないダイヤで運行します。写真16-18の15分後に大井町線急行と田園都市線準急の接続劇が展開します(写真19)。このようにして、お台場から田園都市線主要駅への速達列車どうしのリレーが実現しているのです。
田園都市線と大井町線の接続まとめ
田園都市線の混雑緩和には、大井町線に田園都市線の乗客の一部を横流しすることが重要です。肝となる接続が行われており、田園都市線の乗客の一部を大井町線に横流しすることに重点を置いたダイヤとなっていることを改めて実感できました。