夕方ラッシュ時の東上線の混雑状況(池袋-北池袋、現場調査)

記事上部注釈
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以前と比較して混雑が緩和している東武東上線。夕方下りは「長距離虐待」とも評されていましたが、現在はどうなのでしょうか。実際にターミナル駅である池袋の発車状況を観察しました。

東武50000系と10000系(池袋)

写真1. 池袋で発車を待つ急行と、上りの急行(折り返しは準急)

東武東上線の夕方ラッシュ時の混雑状況まとめ

長い本文を参照するのが面倒な人のために結論をまとめます。

・急行の混雑率はだいたい130%程度であり、座席前の吊革はすべて埋まり、ドア付近の立ちの密度が高い程度の混雑である
・準急と普通は首都圏としては空いている部類にあり、座席前の吊革は半分が埋まる程度の混雑である
・編成中ほどの5号車と6号車が混み、先頭よりの1号車と2号車が空いている傾向にある

混雑調査の概要

今回の混雑調査の方法を紹介しましょう。この記事では、定点観測を行い、一定時間の全列車を対象にして各車両の混雑を目視で確認しています。これはプロも行っている調査方法です。

簡単に調査方法を紹介しましょう。一部の個人サイトでは混雑状況を書いているところもありますが、調査方法や混雑指標の言及がないのでう~んと考えてしまうところがあります。そのようなことを踏まえて、弊サイトではきちんと方法を示します(さすがー)。

弊サイトでは混雑ポイントという概念を導入しております。その概要を示します(表1)。

表1. 混雑ポイントの概要

乗車ポイントの概要

せっかくなので、120ポイント~160ポイントの様子をご覧いただきましょう(写真2-4)。いずれも個人情報を守ることを目的に、画質を落としています。

混雑ポイント120ポイント相当

写真2. 混雑ポイント120ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)

混雑ポイント140ポイント相当

写真3. 混雑ポイント140ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)

混雑ポイント160ポイント相当

写真4. 混雑ポイント160ポイントの様子(写真3と異なり、ドア部分が圧迫されていることがわかります)

今回の調査は池袋発車時の列車について行いました。地下鉄が合流するのは和光市ですが、池袋発車時点が最も混雑していると聞いております。その最混雑区間で調査したのです。

混雑状況の分析

混雑状況の生データから細かく分析することにします。

生データを見る

まずは、生データをさらしましょう(表2)。

表2. 東上線夕方の混雑状況(池袋-北池袋)

東上線夕方の混雑状況(池袋-北池袋)

他の路線と比較して空いていることがわかります。18:04~19:03の1時間の平均混雑率は101%です。これは、座席前の吊革の3/4が埋まる程度の混雑です。ただし、急行は混雑していることもわかります。

混雑状況の分析

では、混雑状況の傾向はどのようなものでしょうか。普通と急行で混雑率に大きな違いがありました。そこで、普通、準急、急行でどの程度混雑状況が異なるか見てみましょう(表3)。

表3. 東上線夕方の混雑状況(池袋-北池袋、種別ごとまとめ)

東上線夕方の混雑状況(池袋-北池袋、種別ごとまとめ)

急行は混んでいて、座席前の吊革はすべて埋まり、ドア付近の立ちの密度が高いことがわかります。ただし、(混雑している車両はこの限りではありませんが)ドア付近であっても圧迫まではされません。最も混雑している急行でもこの程度の混雑で収まっていることから、他の路線よりも混雑はゆるいことがわかります。

急行といっても混んでいる急行と空いている急行があります。具体的には、18:51発と19:02発の急行が混んでいます。19:02発は直前に準急がないので、分散しにくいためです。成増や志木への乗客も当該の急行に乗ってしまうのです。18:51発は19:02発ほどではありませんが、混雑しています。これは、直後に準急がないため、「急行だと混むので準急でゆっくり帰ろう」という利用客も(19:08発の準急まで待たずに)当該の急行に乗るためです。

つまり、急行は直前に準急がないと混雑する傾向にあり、(直前だけでなく)直後に準急がないとやや混雑する傾向にあるのです。

準急と普通は座席前の吊革の半分程度しか埋まりません。これは、他の路線からすると相当恵まれているほうです。ただし、普通でも混んでいる普通と空いている普通があります。これは普通の運転間隔が一定ではないことを考慮すると簡単に説明できます。普通の前列車間隔と混雑率の関係をグラフに示しましょう(図1)。

東上線夕方の混雑状況(池袋-北池袋、普通の混雑率)

図1. 東上線の普通の運転間隔と混雑率の関係

みごとに運転間隔が開いていると混んでいることがわかります。

最後に、号車ごとの混雑傾向を分析します(表4)。

表4. 東上線夕方の混雑状況(池袋-北池袋、号車ごとまとめ)

東上線夕方の混雑状況(池袋-北池袋、号車ごとまとめ)

車両中央よりの5号車と6号車が混雑していて、先頭よりの1号車と2号車が比較的ゆとりがあります。これは池袋駅の構造を考えれば、容易に推定できます。池袋から東上線に乗る利用者の多くは地下鉄丸ノ内線やJR線からの利用客でしょう(方向は逆ですが私も当てはまります)。東上線の池袋駅はJRよりも北側に位置していて、北側に位置する車両(下りの先頭車両)だと乗りかえの距離が長くなります。丸ノ内線から便利なのは中央改札ですので、やはり中央が混んでしまいます。では、地図上では乗りかえ距離が短い南側に位置する車両(下りの最後尾車両)はなぜそこまで混まないのでしょうか。これも池袋駅の構造を考えれば説明できます。南側の改札からJR線に乗りかえるには、大回りする階段を利用するか、いったん隣接の商業施設の脇を通る階段(これも歩く)を通るしかありません。そのため、地図上で見るよりも大回りして不便なのです。

東上線池袋駅の構内図

図2. (参考)東上線池袋駅の構内図(東武鉄道より)

東上線の夕方ダイヤを考える

利用状況からダイヤを考えてみましょう。利用状況を鑑みると、普通と準急は(現在の首都圏としては)理想的な混雑状況ですので、特に改善の必要はありません。あえていえば、前の普通から10分開く普通の混雑が気になるところです。それでも、大山~ときわ台で多くの乗客が降りることでしょうから、若干混んでいても許容範囲内でしょう。準急も成増でそれなりに降りることから、これも許容範囲内といえます。

一方、急行の混雑は問題です。急行の混雑は川越付近まで続きます(私はよく下りの急行を眺めます)。となれば、急行の増発が常道です。現在、急行は1時間に5本運転されていますが、これを6本とするのです。現在の混雑率はだいたい130%ですので、(準急からのシフトがなければ)混雑率はだいたい105%にまで緩和されます。その6本をおおむね等間隔で運転すれば、他の路線よりも劣るフリークエンシー(頻度=待ち時間)も改善されます。

このことを考えると、以下のダイヤも一案です。試しに池袋発の時刻を示しました(表5)。

表5. 東上線 下りダイヤ案

東上線 下りダイヤ案

普通が速達列車の6分前に発車する場合は、上板橋まで逃げ切り、その他の場合は中板橋待避で考えています。現在、成増からふじみ野まで準急の後追いでスピードが出ない急行もありますが、その原因は準急の3分後に急行が発車しているためです。これをなくします。そうすると(間隔が開いているので今まで)準急を使っていた乗客が急行にシフトする可能性もあるでしょう。しかし、急行のキャパシティが1.2倍になることから、この程度の乗客を拾えるでしょう。また、準急の直前に設定する急行は和光市や志木で普通に接続しなければ、柳瀬川、みずほ台、鶴瀬に向かう乗客は準急を使います。

また、普通の最大運転間隔を9分として、極端に混雑する普通をなくしています。ただし、4分しか運転間隔が開かない普通があるので、当該の普通は空きすぎるという問題はあります…。

まとめにかえて

以前の「長距離虐待」の状態から速達列車を毎時1本増発(準急毎時1本の減便とTJライナー2本の増発)し、長距離利用客の便宜をはかっています。また、副都心線開業に伴う混雑緩和もあり、現在の東上線はそこまで混雑がひどくありません。これは、全列車10両化という地道な改善の効果もあることでしょう。複々線を完成させた東武伊勢崎線も含めて、地道な輸送改善に取り組んでいる東武鉄道の姿勢は称賛に値するものでしょう。

しかし、現在の東上線のダイヤは30分サイクルのTJライナーと12分サイクルの急行が共存し、運転間隔の不一致が生じています。このうち、12分サイクルの急行を10分サイクルに変更して、TJライナーとサイクルを合わせて便利にしてもらいたいものです。このように、さらに便利で快適な通勤状況を実現してもらいたいものです。

混雑基本データへのリンク

ここまで個人的な体験をベースに混雑状況をまとめてきました。では、客観的な公式データによるものをまとめたページはないのでしょうか。そのような声にお応えして、混雑基本データをまとめたページを作成しました。

東武東上線(混雑基本データ)

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