東武鉄道の21世紀初頭の通勤車のスタンダードな50000系電車。そのなかで伊勢崎線(スカイツリーライン)から地下鉄半蔵門線に直通する50050系の車内を観察しました。
写真1. 中央林間に停車中の51064Fと呼ばれる車両
本記事では車内ということもあり、色についても記述しています。色について簡単な知識をまとめたので、以下の記事もご覧ください(私は色彩検定2級合格者なので、それなりに信用して良いです!)。
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復習:東武の50000系電車
東武鉄道の50000系電車の概要を示します。
- 車体:アルムニウム製
- 車両:4ドアロングシート車(20m車)
- 編成:10両編成
- 系列:50000系(東上線の地上運用)、50050系(伊勢崎線の半蔵門線直通用)、50070系(東上線の地下鉄直通用)、50090系(東上線のTJライナーと地上運用)
東武鉄道の50000系列はアルミニウム製の通勤電車です。最もベーシックなのが50000系です。50000系は東上線の地上運用(地下鉄に直通しない運用)に充当されます(一部編成は50050系と同等の役割を担っています)。地下鉄直通用が50050系と50070系です。さらに東上線の座席指定列車のTJライナーとして50090系がデビューしました。50090系はL&Cシートですので、内装が大幅に異なりますが、そのほかは細かな寸法などが異なる程度であり、一見して見分けは付きません。
50000系列の初期ロットは座り心地の悪いシートを採用していましたが、後期ロットからは座席が改良され、座り心地が改良されました。しばらくは初期ロットの車両の座席はそのままですが、いつの間にか座り心地の良い座席に交換されました。
東上線も地下鉄直通運用も10両編成ですので、50000系列は10両編成しかありません。その後の60000系は東武野田線専用、70000系は地下鉄日比谷線直通用となっており、これから外れた東武伊勢崎線の地上運用は20世紀の車両だけです。
東武50050系の車内
今回は50050系の車内を紹介します。素人目には50000系や50070系と変わる点は見られません。編成により大きく異なる座席も統一され(座り心地の悪い座席は追放されました)、(50090系を除く)50000系列で同等の車内に見えます。
写真群1. 行先表示と号車表示の交互表示はわかりにくい
車外の表示です(写真群1)。行先表示と号車表示が交互になされ、行先を確認できないタイミングがあります。これは不便です。JR西日本の通勤電車のように号車表示を別枠に表示するのが良いでしょう(写真群2)。
(参考)写真群2. JR西日本の表示例(枠が大きい)
写真2. 50050系の車内全体
50050系の車内全体です(写真2)。青くて彩度の高い座席と彩度の低い床や天井が対照的です。全般的にアクのない車内です。この後に登場した60000系と雰囲気は同様です。
写真群3. 50050系と60000系の車内比較
このように並べると似た雰囲気であると感じます(写真群3)。
写真3. 50050系の7人がけの座席
一般的な4ドアロング車と同様、車両中央部は7人がけ、車端部は3人がけです。7人がけの座席の様子です(写真3)。適度なかたさとボールド感で座り心地は決して悪くありません。
写真4. 7人がけの座席
7人がけの座席を別の角度から撮影しました(写真4)。壁は光沢があり表面の凹凸は少ないのですが、座席の袖仕切りは光沢がなく、表面に凹凸があります。長い間使っているためか、座席の袖仕切りの凹凸部分に汚れが溜まってしまっています。これが光沢が高い壁面と同等のものであれば、汚れも溜まっていなかったかもしれません。
袖仕切りは東武30000系でも一部交換されていますが、なぜか光沢の低いままです。50000系列で交換があるとすれば、光沢の高いものに交換し、汚れが取れやすいように配慮いただきたいものです。
写真5. 7人がけの座席を眺める
7人がけの座席を別の角度から撮影しました(写真5)。
写真6. 車端部を眺める
車端部を眺めます(写真6)。3人がけです。
写真7. 車端部にもう少し近づく
車端部に近づきます(写真7)。改めて眺めると、袖仕切りのドア側はフラットです。
写真8. 車端部の優先座席
車端部の優先座席です(写真8)。忘れ物があります…。
写真9. 優先座席の様子
優先座席の様子です(写真9)。モケットの色相がやや緑よりになっており、車内イメージを崩さずに識別性を与えています。
写真10. 車端部のドア付近は空間が広い
車端部のドア付近は空間が広いです(写真10)。駅の光景は東急電鉄のもの(中央林間の表示)ですが、広告は東武沿線のものです。初期車は凝った手すりでしたが、(車外からつかまりやすいという特性から)結局このタイプに戻りました。
写真11. 客用ドアの様子
客用ドアです(写真11)。一般的な両開きドアです。化粧板付きの複層ガラス扉を採用しており、東武鉄道では1990年代に登場した30000系に続いての採用です。複層ガラスであれば、結露しにくく、洋服が濡れることもありません。
窓ガラスに複層ガラスを採用しないのは、関東の通勤電車に共通し、これはこれで改善してもらいたいのですが、ドア窓の複層ガラス採用は最低限の要件を満たす印象です。
写真12. ドア上の電光掲示板
ドア上に電光掲示板があります(写真12)。2000年代初頭に登場した車両であり、LCDモニタが一般化する前の登場でした。なお、50000系列であっても50070系の最終増備車はLCDモニタが設置されています。50000系列のLCDモニタは東上線用に登場ということです。
写真13. 電光掲示板のないドアもある
ドアは進行方向の左右にありますが、どちらかにしかついておらず、反対側には付いていません(写真13)。
写真14. ドアの複層ガラス
客用ドアの複層ガラスを撮影しました(写真14)。
写真15. 運転席仕切り壁
運転室との仕切り壁です(写真15)。窓の面積が小さく、お世辞にも前面展望は優れているとは言えません。
(参考)写真16. 相鉄20000系の運転席仕切り壁
参考に相鉄車の運転席仕切壁の様子を示しました(写真16)。窓面積がこの程度あると開放感に優れ、サービス上望ましいように感じます。
東武50050系の車内を眺めてみて
写真17. 東急の駅に東武車が乗り入れるのはもはや日常と化した(中央林間で撮影)
今回、東武50050系の車内を眺めました。4ドアロングシート車のなかでは、標準的な設備であり、ある意味可もなく不可もなく、という印象でした。とはいえ、座り心地の悪いシートを備えた初期ロットの車両も座り心地の良い座席に取り換え、「悪い」部分を消していたことは好感が持てます。
この特徴は続く60000系や、増備中になされる10000系列などのリニューアルに引き継がれ、近年の東武車の伝統に昇華しました。
われわれマニアがつべこべ言ったところで、多くの人にとって通勤電車は日々使う道具に過ぎません。東武50000系列や60000系はその点をよく承知しており、良い意味で「電車の特徴を意識させない」存在に特化した印象です。引退するその日まで道具としての役割を全ういただきたいものです。