東海道新幹線のダイヤを2001年からまとめます。

写真1. 700系新幹線も昔の記憶に埋もれてしまった(2018年の夏に品川で撮影)
注意本記事で所要時間を記していますが、特記なき限り東京と新大阪の間のものです。
補足東海道新幹線の列車は下記の通りです。
- のぞみ:東京-新大阪の都市間輸送を担う列車。東京-新大阪の停車駅は品川、新横浜、名古屋、京都。2008年以前は品川、新横浜通過便もあり
- ひかり:上記のぞみが通過する主要駅にも停車する列車。
- こだま:各駅に停車する列車。
東海道新幹線の朝ラッシュ時のダイヤパターンの変遷
2001年時点では東京着で下記の時間帯は以下の構成でした。
- 7時台:こだま2本
- 8時台:こだま6本、ひかり3本、のぞみ1本
- 名古屋から最初の到着:東京8:24着
- 新大阪から最初の到着:東京8:42着
2003年10月には品川が開業し、のぞみ主体のダイヤになっていますが、朝の上りについては通勤客対応でこだま主体のまま据え置かれました。
- 7時台:こだま3本
- 8時台:こだま6本、ひかり2本、のぞみ2本
- 名古屋から最初の到着:東京8:16着
- 新大阪から最初の到着:東京8:30着
2008年には新横浜と品川に全列車停車となり、下記のパターンに変更されています。
- 7時台:こだま3本
- 8時台:こだま6本、ひかり2本、のぞみ3本(1本は臨時だが日曜以外はたいてい運転)
- 名古屋から最初の到着:東京8:20着
- 新大阪から最初の到着:東京8:26着
2012年には下記のパターンになっています。2008年と比較してのぞみが2本増えています。うち1本は名古屋始発です。
- 7時台:こだま3本
- 8時台:こだま6本、ひかり2本、のぞみ5本
- 名古屋から最初の到着:東京8:13着
- 新大阪から最初の到着:東京8:26着
2015年には最高速度が270km/hから285km/hに引き上げられ、下記の構成になっています。
- 7時台:こだま3本
- 8時台:こだま6本、ひかり2本、のぞみ6本(臨時1本)
- 名古屋から最初の到着:東京8:13着
- 新大阪から最初の到着:東京8:23着
2018年には名古屋発のひかり号の直後に臨時のぞみ号が設定され、運転日に限れば東京着は従来の8:13から8:07着に前倒しされました(非運転日は従前どおり8:13着)。
2020年には700系車両が引退し、高性能な車両に統一されました。
- 7時台:こだま4本
- 8時台:こだま6本、ひかり2本、のぞみ8本(臨時2本)
- 名古屋から最初の到着:東京8:12着
- 新大阪から最初の到着:東京8:23着
2018年から設定の名古屋始発の臨時のぞみ号も従前どおり設定されていますが、当該の列車を利用すると東京着は8:06と、これも1分前倒しされています。また、こだま号増発は地味ながら通勤客にはありがたい内容でしょう(東京7:06着の新設、直後の便も三島から東京まで4分短縮)。増発するのぞみ号の車両を三島の基地から東京に回送する副産物かもしれませんが、いずれにしても利用客にとってはありがたいことです。
2023年には下記の構成に変更されています。
- 7時台:こだま4本
- 8時台:こだま6本、ひかり2本、のぞみ8本(臨時2本)
- 名古屋から最初の到着:東京8:11着
- 新大阪から最初の到着:東京8:23着
従来は名古屋からの始発のひかり号は東京に定期列車ののぞみ号より先着(2018年から設定されたのは臨時列車)していましたが、定期列車ののぞみ号が設定され、東京にこちらが先着するようになりました。臨時列車が運転される日は東京到着8:03と従来より3分前倒しされています。
補足新幹線は政令により、原則として0時~6時まで運転されません。そのため、6時を過ぎたら下り列車が次々に発車します。では、東海道新幹線の下りの始発近辺はどうなのでしょうか。東京地区と静岡から新大阪に到着する始発列車をまとめました(表1)。
表1. 始発列車で新大阪に到着する時刻一覧
東京 | 品川 | 新横浜 | 静岡 | |
2001年 | 8:30 | - | 8:30 | 8:23 |
2003年 | 8:30 | 8:56 | 8:30 | 8:17 |
2005年 | 8:30 | 8:30 | 8:30 | 8:16 |
2008年 | 8:25 | 8:19 | 8:15 | 8:13 |
2015年 | 8:22 | 8:16 | 8:12 | 8:10 |
2020年 | 8:22 | 8:16 | 8:12 | 8:09 |
2023年 | 8:22 | 8:16 | 8:13 | 8:09 |
2001年時点では始発ののぞみ号は東京発で新横浜に停車し、新大阪到着は8:30でした。品川開業後も当該ののぞみ号は品川に停車しませんでした。そのため、新幹線だけで品川から新大阪に向かうと8:56着でした(山手線等で東京に移動すれば8:30到着は可能ですが)。2005年には品川に停車しつつ所要時間は維持されました。
ところで、政令での規制は「線路上を6:00以前に走行しない」という趣旨です。早朝の新幹線を東京始発にこだわる意味はありません。品川や新横浜を6:00に出発すれば、それだけ西側の目的地に早く到着します。
そこで、2008年には品川始発ののぞみ号や新横浜始発のひかり号が設定されました(小田原や静岡に停車させたいという意図がありのぞみ号でなくひかり号として設定されました)。そのため、2008年以降は東京、品川、新横浜からそれぞれ別の列車が設定され、より西に近い出発地だと関西地区に早く到着するようになりました。2015年、2020年とスピードアップし、新大阪到着時刻が前倒しされています。
これに変化があったのが2023年です。ダイヤ改正当日に東急電鉄と相模鉄道が新横浜まで路線を伸ばし、集客範囲が広がりました(渋谷や目黒はおろか新宿三丁目や溜池山王からアクセス可能)。これを受け、新横浜始発のひかり号に続行する形で臨時ののぞみ号を設定し、新大阪到着を8:06まで前倒ししました。ただし、ひかり号はのぞみ号を待ち合わせ、新大阪到着は1分遅くなっています。
東海道新幹線のダイヤパターンの変遷まとめ
東海道新幹線のダイヤパターンは2001年以降、下記の通りに変更されてきました(表2)。
表2. 東海道新幹線のダイヤパターン
主力 | 最大設定本数 | 標準所要時間 | 備考 | |
2001年 | ひかり | 毎時8本 | 2時間30分 | のぞみ約60分間隔 |
2002年 | ひかり | 毎時7本 | 2時間30分 | のぞみ毎時2本化 |
2003年 | のぞみ | 毎時7本 | 2時間36分 | 品川開業 |
2005年 | のぞみ | 毎時8本 | 2時間36分 | |
2008年 | のぞみ | 毎時8本 | 2時間36分 | 品川、新横浜全停車 |
2009年 | のぞみ | 毎時9本 | 2時間33分 | |
2014年 | のぞみ | 毎時10本 | 2時間33分 | |
2015年 | のぞみ | 毎時10本 | 2時間33分 | 最高速度向上 |
2020年 | のぞみ | 毎時12本 | 2時間27分 | 700系引退 |
詳細は以下に記します。
2001年時点では品川駅は開業しておらず、のぞみ号やひかり号では新横浜に停車しない列車もありました。1時間当たり下記の通りの構成でした。
- のぞみ:東京-博多1本(新横浜停車が基本)、東京-新大阪1本(新横浜通過が基本)
- ひかり:毎時7本の枠。定期列車は博多発着1本(正確には2時間間隔、2時間間隔で新大阪発着)、広島発着1本、岡山発着1本、新大阪発着1本が多い
- こだま:東京-新大阪1本、東京-名古屋1本
のぞみ号は全席指定席で毎時1本が基本でした。神奈川県と西日本地区の行き来の利便性のためか、新横浜停車が多く、東京-新大阪の所要時間は2時間34分でした。このほかこののぞみ号に近接する時間帯に東京-新大阪ののぞみ号が運転され、新横浜通過で所要時間2時間30分で結んでいました。
2001年時点での主力はひかり号でした。山陽新幹線の岡山、広島、博多に直通する列車が毎時1本設定されるのが基本ですが、博多直通は実際には2時間間隔で、もう半数は新大阪発着でした。博多直通が新大阪で折り返すパターンの場合、新大阪-博多はひかりレールスターが運転されていました。
- 博多発着(新大阪以西ひかりレールスターの場合も含む):新横浜に停車、名古屋-新大阪は各駅に停車するパターンで、名古屋-新大阪はこだま号のかわりの役割でした。東京-新大阪は3時間1分が基本。
- 広島発着:東海道新幹線をそれなりに停車駅をしぼり(新横浜、名古屋、京都のみ停車)、東京-新大阪を2時間57分で結びました。
- 岡山発着:静岡県内で2駅停車で、静岡は必ず停車し、浜松か三島に停車(2時間間隔)、所要時間は3時間2分。
- 新大阪発着:途中名古屋と京都のみに停車、所要時間は2時間54分。
このようにひかり号は速達型2本、停車型2本(岐阜羽島、米原停車と静岡県2駅停車)という構成が基本でした。多客期に増発されるひかり号は停車駅が少ないのが基本でした。同等の停車駅にもかかわらず、のぞみ号は2時間30分、ひかり号は2時間54分と所要時間に差がありました。これはのぞみ号は270km/h運転、ひかり号は220km/h運転と最高速度に違いがあったためです。一方で100系が残存しており、個室や食堂車という多様なサービスが提供されていた点も事実です。
こだま号は毎時2本設定され、半数は名古屋発着、毎時1本は新大阪発着でした。名古屋-新大阪の各駅は先述のひかり号がカバーします。
2002年時点では東京-新大阪運転のひかり号のうち毎時1本がのぞみ号に置き換えられました。これによりのぞみ号のダイヤホールは(臨時列車運転なし日では)従来の60分から33分に短縮されました。この時点ではのぞみ号は全席指定制でした。
2003年10月には品川駅が開業し、同時に270km/h運転可能な車両に統一されました。また、主力がひかり号からのぞみ号に変更されました。
すなわり、従来の速達型ひかり号は廃絶され、のぞみ号に変更されました。このときにひかり号に設定していた自由席をのぞみ号にも拡大し、ひかり号と同等の料金としました。これにより、のぞみ号移行にともなう値上がりという反感を最小限にしました。
2003年10月時点では下記の構成でした。
- のぞみ:毎時7本の枠。定期列車は博多発着1本(品川、新横浜停車)、広島発着1本(新横浜停車)、新大阪発着1本(品川、新横浜停車)
- ひかり:毎時2本。1つは静岡県内2駅停車(静岡に停車、もう1駅は三島か浜松、新横浜は通過)、もう1つは小田原または豊橋に停車、名古屋-岡山は各駅に停車、品川は通過)
- こだま:東京-新大阪1本、東京-名古屋1本
2001年時点と比較し、総本数は実は増えていません。しかし、減便することなく全体の所要時間を短縮しつつ、品川に停車した点は利便性は向上しました。臨時列車が運転されていなくとものぞみ号の待ち時間は最大23分まで短縮されました。
一方、東京-新大阪の2時間36分または2時間37分(臨時列車に2時間34分は存在)と、のぞみ号の「東京-新大阪の所要時間2時間30分」は早朝と深夜を除き放棄されてしまいました。2003年以前の特定の区間、時間であれば所要時間が早い状態から、総じてそれなりに早い、という均等化にシフトした瞬間でした。他方で100系電車が東海道新幹線の駅間から廃絶され、食堂車や個室という均質でないサービスも消滅した瞬間でした。
その後の2005年3月ダイヤ改正では新大阪発着ののぞみ号が岡山に延伸され、のぞみ号の約20分運転間隔は岡山まで延長されたうえ、臨時のぞみ号も毎時1本の枠ができ、のぞみ号は最大毎時8本運転が可能になり、輸送力は増強されました。
2006年3月ダイヤ改正では定期列車ののぞみ号のうち毎時1本が広島から博多に延伸され、東京と博多の乗車チャンスは毎時2回に増強されました。
2008年3月ダイヤ改正では、品川と新横浜に全列車が停車し、東京駅以外からの利用も便利になりました。従来より性能の向上したN700系車両が投入され、日中時間帯であってものぞみ号の東京-新大阪は毎時1本は2時間33分運転を維持しました。また、2時間に1回しかひかり号が停車していなかった浜松も毎時1本のひかり号が停車するようになりました。さらに、岡山発着の定期のぞみ号が広島発着に延長され、のぞみ号の毎時3本運転は広島まで伸びています。
2009年にはのぞみ号の最大運転本数を毎時9本とし、利用の多い時期の輸送力が増強されました。東京-新大阪は2時間36分が基本ですが、毎時1本は2時間33分となっており、スピードダウンすることなく増発を可能にしています。2010年には定期列車の山陽新幹線直通ののぞみ号がすべてN700系に変更されていますが、基本的なダイヤパターンは変えられていません。また、定期列車ののぞみ号で東京-新大阪の区間運転が毎時1本設定されています。
2011年には九州新幹線が博多まで開業し、山陽新幹線と直通しましたが、東海道新幹線との直通はなされませんでした。2012年には九州新幹線との直通が拡大し(1年間は博多乗りかえパターンが多かった、ひかりレールスターからさくらに変更)たものの、東海道新幹線のパターンは変わりません。
2014年にはのぞみ号の最大毎時10本運転(一部時間帯は2012年から順次実施)が開始され、ピーク時の輸送力はさらに増強されました。
2015年には東海道新幹線の最高速度が285km/hに引き上げられ(N700A系が対応)、日中ののぞみ号の東京-新大阪の2時間30分運転が毎時1本ながら12年ぶりに復帰しました。また、10本中7本が2時間33分運転と、2009年時点の日中時間帯の最速タイムが標準になっています(残り2本は所要時間2時間36分と2時間37分)。このパターンは2019年ダイヤまで続きます。
2020年には700系車両の引退により、N700系以上の性能を有する車両に統一されました。これにより、全のぞみ号の所要時間2時間30分以内が実現し、かつのぞみ号の毎時12本運転が実現しています。もっともこのダイヤ改正の直後は特定の感染症を重視した社会情勢となり、移動需要は激減し、直近でのぞみ号の毎時12本運転は役立ちませんでした(実際の毎時12本運転は2020年8月7日、社会的距離を取るという当時の要請にかなった)。
表3. 2018年または2019年比の利用状況(基準や内訳は都度異なるため目安としてご活用ください)
年 | GW | お盆 | 年末年始 |
---|---|---|---|
2020 | 5% | 24% | 32% |
2021 | 27% | 32% | 78% |
2022 | 68% | 60% | 81% |
2023 | 91% | 84% | 94% |
2024 | 98% | 92% | - |
2022年の年末年始(2022年12月下旬~2023年1月上旬)以降は利用が回復しています(表3)。また、(おおむね)下記の順序で訪日観光客の受け入れを再開しています(個人的には1年前倒しでも良かったと思いますが)。
- 2022年7月:ツアー形式に限り、訪日観光客の受け入れ再開
- 2022年10月:ワクチン接種前提での検査・隔離なしの訪日観光客の受け入れ再開
- 2023年3月:マスク着用の個人の判断(諸外国の人の多くは日本人ほどマスクを好まない)
- 2023年4月29日:国籍問わずすべての隔離措置廃絶(5類の直前)(この日以前はワクチン接種をしていなければ陰性証明が必要だった)
徐々に訪日観光客の数は回復しているように見え、そのような意味でものぞみ号の毎時12本運転は非常に意味のあった施策でした。
東海道新幹線の夕方のダイヤパターンの変遷
2001年時点では以下の構成でした。
- のぞみ:東京-博多1本(新横浜停車)、東京-新大阪1本(新横浜通過)
- ひかり:毎時7本の枠で定期列車は5本
- こだま:東京-名古屋2本、東京-三島1本
基本的に日中時間帯と同様のパターンですが、日中時間帯で東京から新大阪まで速達型の停車駅のひかり号の一部が岐阜羽島に停車するなど、変則的なパターンも見られました。また、日中時間帯と比較し、通勤客対応としてこだま号が毎時1本追加されていました。
2002年には速達型のひかり号のうち毎時1本が新大阪までののぞみ号に変更され、夕方時間帯ものぞみが約30分間隔で運転されるようになりました。
2003年には品川駅が開業し、のぞみ主体のダイヤに変わりました。
- のぞみ:毎時7本の枠。18時台は3本が臨時列車(2本は運転日がかなり多い)
- ひかり:毎時2本。1つは静岡県内2駅停車(静岡に停車、もう1駅は三島か浜松、新横浜は通過)、もう1つは小田原または豊橋に停車、名古屋-岡山は各駅に停車、品川は通過)、19時台以降は名古屋から各駅に停車
- こだま:東京-名古屋3本(1本は臨時列車)
基本的に日中時間帯と同様のパターンでした。ただし、こだま号が追加で運転されるなど、通勤客対応という側面も見られました。
2005年時点ではのぞみ号が毎時1本追加されたほかに、臨時運転としていたこだま号を定期列車として運転のうえ、三島行きに短縮されました。通勤客対応に軸足を置いた格好です。
2008年時点では全列車が品川、新横浜に停車したものの、所要時間はおおむね維持されました。夕方時間帯のこだま号の運転時刻こそ変わりましたが、巨視的には維持されています。
2012年時点ではのぞみ号が毎時10本運転となり(終日毎時10本に可能になるのは2014年以降)、繁忙期の輸送力は強化されています。また、この時までに18時以降のひかり号が名古屋から各駅停車になっています。
2015年時点では285km/h運転を開始し、毎時1本だけですが所要時間2時間30分が復活しています。ただし、日中時間帯と同様に、所要時間が2時間37分の便もあり、所要時間差が大きい点も事実でした。
2020年ダイヤ改正で700系車両が引退し、のぞみ号の毎時12本運転が実現し、この能力は夕方ラッシュ時も適用されました。のぞみ号の全列車所要時間2時間30分以内を実現しています。
2024年ダイヤ改正では新横浜から豊橋までノンストップのひかり号が静岡にも追加で停車しました。夕方以降の静岡への乗車チャンスが毎時2回が確保される一方、同列車の東京から名古屋までの所要時間は1時間41分から1時間46分に増加しています。
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