東京から北に向かい、埼玉県と北関東への大動脈となっている宇都宮線(東北線)。対になっている高崎線や直通先の「上野東京ライン」を含めてダイヤパターンをまとめました。
写真1. 浦和に停車中の様子
ダイヤパターンとは?
都市鉄道のパターンダイヤを簡単にまとめたものです。都市鉄道ではダイヤは繰り返し単位になっており、そのようになっているダイヤをパターンダイヤと称します。また、パターンダイヤの周期をサイクルと呼びます。本記事はダイヤの繰り返しの単位とその内訳から、その路線のダイヤの骨格を理解することを目的としています。
例えば、20分に急行1本と各駅停車2本ならば、「20分サイクルのパターンダイヤでその内訳は急行1本と各駅停車2本」と表現できます。原則をつかむために、基本的には朝ラッシュ時上り、日中時間帯、夕方ラッシュ時下りについて述べます。
なお、厳密には大きいサイクルで論じるべき部分もありますが、厳密さを無視すると小さなサイクルで論じることができる場合もあります。この場合、小さなサイクルを疑似サイクルと称します。先の例だと、実は急行が1時間間隔で遠方に向かう場合、厳密には60分サイクルです。しかし、遠方に直通するか否かがあまり重要視されない場面だと、20分サイクルと考察することも可能です。このような場合、疑似20分サイクルと称するということです。
宇都宮線・高崎線の運転系統
宇都宮線と高崎線の運転系統は難しいものがあります。このことを理解するために、私なりに解説します。
宇都宮線と高崎線の運転系統概要
図1. 宇都宮・高崎線に関連する路線の運転系統(wikipediaより引用)
以下の要領で理解するのがわかりやすいと思います。
- 宇都宮線は東京から大宮を経由して、宇都宮方面に伸びている。
- 途中の大宮で高崎線が分岐していて、高崎方面に伸びている。宇都宮方面と高崎方面は対等の関係。
- 新宿方面のニーズがあるので、大宮から南側で新宿方面の運転系統が分岐していて、それを「湘南新宿ライン」と呼ぶ
- 東京から先は東海道線に直通していて、これを「上野東京ライン」と呼ぶ
簡単にまとめると、東京と新宿を都心側のターミナルとしており、大宮から先の郊外よりは宇都宮方面と高崎方面に分岐するというものです。ただし、東京-上野は常磐線の列車も行きかいますから、全ての列車を東京発着にはできません。そのため、一部の列車は上野発着です。また、東京や新宿で折り返すことも設備上不可能です。したがって、東京や新宿の南側にも直通しています。
この直通には別の効果があります。例えば、神奈川県で働いていて、埼玉県に住宅がある人にとっては非常に便利です。上野東京ライン開業直後に「東京からの東海道線に座れない」という声がありましたが、これを別の側面からとらえると、「東京駅を乗りとおす需要がそれだけ大きい」ということです。
直通先の発着駅について
2015年3月14日以降、宇都宮・高崎線は「上野東京ライン」開業に伴い、東海道線と直通運転を始めました。また、湘南新宿ラインは原則として東海道線や横須賀線と直通しています。
しかし、宇都宮・高崎線の利用者の大多数は東京より南の発着駅がどこかは関心ないことでしょう。そこで、本記事では南側の終着駅を記さないことにします。
宇都宮線・高崎線の停車駅
宇都宮線と高崎線は東京-大宮では停車駅が絞られています。では、この間の輸送はどのように担うのでしょうか。答えは京浜東北線が担うというものです。
その停車駅一覧をご覧いただきましょう(図2)。
図2. 京浜東北線と宇都宮・高崎線の関係(wikipediaより)
東京-大宮で京浜東北線が並行し、京浜東北線の主要駅に宇都宮・高崎線が停車していることがわかります。その中で微妙に経由地が異なる日暮里-赤羽でも、宇都宮・高崎線は尾久にしかとまりませんから、この区間でも宇都宮・高崎線は速達性に優れています。
その宇都宮・高崎線でも快速が運転されています。おもに、大宮-小山、大宮-熊谷で通過駅があり(尾久とさいたま新都心も通過)、遠方の速達性を確保しています。
宇都宮・高崎線の朝ラッシュ時のダイヤパターン
写真2. 上野東京ラインとして上野に停車中(2018年に撮影)
基本的に宇都宮線からの上野東京ライン、高崎線からの上野東京ラインがそれぞれ12分間隔で運転され、宇都宮線からの上野行きがほとんど設定がなく(ラッシュ時60分では上野着7:49と8:44のみ)、高崎線からの上野行きはおおむね12分間隔です。3者が重なる大宮から上野までは4分間隔であり、上野から南側は常磐線からの品川行きが挿入されます。
このほかに、湘南新宿ラインも設定されます。新宿断面で7:51~8:50に8本運転され、宇都宮線、高崎線両方から4本ずつ運転されます。湘南新宿ラインと上野東京ラインを上手に組み合わせ、大宮断面で10分以上間隔が開くことはありません。
なお、朝ラッシュは普通のみの運転です。
朝ラッシュ時のパターン変更案
湘南新宿ラインは池袋以南で埼京線と線路を共有するので、湘南新宿ラインの増発は困難でしょう。それでも、むさしの号やしもうさ号を各1本ずつ設定し、朝ラッシュ時上りだけでも蓮田や上尾始発で運転し、最混雑区間の土呂→大宮(宇都宮線)、宮原→大宮(高崎線)の混雑を少しでも緩和するべきでしょう。
また、上野→東京で2分間隔運転を実現(これには東京駅南側に引上線設置が必要)し、上野行きを東京まで延長することも必要です。この東京行きの直後に(比較的空いている)常磐線からの品川行きを運転すれば、宇都宮・高崎線から東京・新橋・品川への乗車チャンスが12分に1本から12分に2本に倍増し、便利になります。
また、朝ラッシュ直前や直後には本数が減ります。それで列車は混んでいます。そうではなく、ラッシュ前とラッシュ後に快速を運転し、「ラッシュ時からずらせば職場まで短い時間で向かえる」という意識を付けることも重要です。
宇都宮線・高崎線の日中時間帯のダイヤパターン
写真3. 大宮に到着した宇都宮線上り
日中時間帯は宇都宮線、高崎線ともに、毎時5本の運転です。快速列車の種別名こそ異なりますが、基本的なパターンは同じです。
- 普通(上野東京ライン):毎時3本
- 普通(湘南新宿ライン):毎時1本
※高崎線の場合は新宿-大船間快速運転なので、快速と呼ぶこともあります - 快速(湘南新宿ライン):毎時1本
※高崎線の場合は特別快速と呼んでいます
日中時間帯は上野東京ラインが10分間隔で運転され(上野や大宮で時刻調整があります)、宇都宮線と高崎線それぞれ20分間隔で運転されます。その間に30分間隔の湘南新宿ラインが挿入されます。湘南新宿ラインが毎時3本ではないので、どこかで20分のダイヤホールが生じそうですが、上野や大宮で時刻調整を行い、上野東京ラインが20分以上開く箇所に湘南新宿ラインを挿入し、湘南新宿ラインが挿入されない箇所は20分以内になるようにしていて、20分以上のダイヤホールが生じないような工夫がなされています。
速達列車は湘南新宿ラインに設定されていることが興味深いです。昔は上野発着の快速ラビット(宇都宮線)と快速アーバン(高崎線)が設定されていましたが、これが新宿にシフトした形です。
湘南新宿ラインは毎時2本ずつ運転されています。宇都宮線に2本、高崎線に2本です。大宮まではそれぞれ30分間隔で運転されています。そして、新宿発の横浜方面行きを15分間隔で運転させるために、大宮発の新宿方面行きもほぼ15分間隔で運転されています。ただし、新宿発の大宮方面行きは15分間隔ではなく、10分間隔と20分間隔の交互です。20分開いた後に宇都宮線系統が入ります。
新宿発の大宮方面行きが15分間隔ではないのは、横浜発で15分間隔に近づけること、宇都宮線系統は湘南新宿ライン内普通で所要時間がかかるためです。
残念ながら、大宮での上野・東京発着と湘南新宿ラインの連絡は取れていません。これは、大宮で同じホームで乗りかえられないという事情があります。
下りは緩急結合は行われておらず、上りの桶川(高崎線)と大宮(宇都宮線)だけです。上りの大宮での緩急結合はややもったいないように思えます。時刻調整を兼ねていると理解することにしましょう。
日中時間帯のパターン変更案
直通先の東海道線内は毎時6本では不足気味です。そうであれば、以前の上野発着の1本(高崎線と宇都宮線の合計で2本)を復活させ、これを東海道線に直通させることが自然です。となると、10分間隔ではなく、平均7.5分間隔が妥当です。また、大宮を相互乗りかえ可能な配線に変更します。つまり、大宮で「湘南新宿ライン-高崎線」と「上野東京ライン-宇都宮線」の相互乗りかえを可能にするということです(逆の組み合わせも同様)。
湘南新宿ラインは毎時4本運転されていますから、15分等間隔で運転できます。一方、上野東京ラインも15分に2本の運転です。上野東京ラインの2本に1本は大宮で湘南新宿ラインに接続できます。
たとえば、上野東京ラインを6分間隔-9分間隔の交互運転とし、宇都宮線と高崎線は9分続行(それぞれの線区では9-21分間隔の交互)とします。東京発着の時刻は(例えば)以下の通りです。
00分(高崎線、大宮で宇都宮線連絡)、09分(高崎線)、15分(宇都宮線、大宮で高崎線連絡)、24分(宇都宮線)
時刻はイメージしやすいように勝手に想定しました。高崎線利用者であれば、毎時00分、09分、30分、39分に発車します。これでは21分も間隔が開いてしまいますが、毎時15分、45分の宇都宮線も大宮で高崎線に連絡しますから、実際の最大待ち時間は15分です。15分足せば、宇都宮線も同様です。
夕方ラッシュ時下りのダイヤパターン
写真4. 夕方の赤羽の様子
夕方ラッシュ時は日中時間帯よりもやや本数は増えます。宇都宮線、高崎線ともに以下のパターンが基本ですが、完全なパターンではありませんので、実際にはずれます。
- 普通(上野東京ライン):毎時4本
- 普通(上野発着):毎時1本
- 快速(上野発着):毎時1本
- 普通(湘南新宿ライン):毎時2本
上野発着の快速が運転されることが日中との違いを感じます。また、上野東京ラインも毎時4本に増えています。
このほかに高崎線では30分間隔で特急あかぎ(2014年~2023年3月ダイヤ改正まではスワローあかぎ)が運転されます。高崎線の快適通勤のニーズに応えています。とはいえ、上野発着なのでそこまでニーズをつかみ切れていないようにも感じます。東京か品川発着のほうが良いでしょう。
夕方時間帯のパターン変更案
2017年に上野東京ラインの各駅で混雑状況を確認したところ、供給不足という感じを受けました。宇都宮線、高崎線ともに毎時6本の運転が必要でしょう。また、この他に30分間隔で東京始発の通勤快速を運転すれば、途中駅始発のニーズにも応えられます(上野始発よりも東京始発が効果が高いでしょう)。上野から各駅までの着席ニーズには応えられませんが、全体として混雑が緩和する方向に向かうので許容範囲内でしょう。
宇都宮・高崎線のダイヤパターンまとめ
宇都宮線、高崎線はJR化後、新宿・東京へのアクセスが向上した路線です。あらゆる場所に直通し、枝分かれの運転系統となりました。これはダイヤ作成上の難易度が高いです。このことに対し、多くの列車を普通として運転することで特定駅で本数が少ないということを避けることにしています。普通といえども、駅数が少なく速達性を確保できるからという背景があります。
とはいえ、大宮での連絡など現在の本数でもさらに便利にできます。朝ラッシュ時前後の速達列車の増発なども含めて、今後はこのような施策も考えてもらいたいものです。
過去のダイヤ改正の考察
過去のダイヤ改正について、改正前後の時刻を比べるなど詳細に解析しています。
(2021年ダイヤ改正)
(2020年ダイヤ改正)
2020年3月ダイヤ改正における上野東京ラインの変化を探る
(2019年ダイヤ改正)
(2018年ダイヤ改正)
(2017年のダイヤ改正)
上野東京ラインについて考える~2017年10月ダイヤ改正:宇都宮・高崎線ダイヤ解析
宇都宮・高崎線の過去ダイヤ
宇都宮線と高崎線の過去のダイヤパターンを簡単にまとめました。