新幹線の多くの列車に連結されているグリーン車。一定程度以上の居住性が確保され、快適に移動することができます。特にE5系のグリーン車は居住性が高いです。そんなグリーン車をやまびこ号で堪能しました。

写真1. ゆったりしたグリーン車の空間
やまびこ号のグリーン車の要点
本記事の要点は下記の通りです。
- やまびこ号は東北新幹線の準速達列車を示す列車群(各駅にとまる列車もある)
- グリーン車は横4列と東北新幹線の通常の普通車の横5列より広い空間であり、普通車より3500円以上価格は高い。ただし、制限(14日前までに予約、直前の変更は不可能)を受け入れれば、えきねっとで普通車指定席並みの価格で乗ることが可能
- グリーン車は9号車に連結され、車内は落ち着いた空間である
- 需要がある程度あり、供給がじゅうぶんであれば、多様なサービスを継続的に提供いただきたい
詳細は以下に記します。
復習:やまびこ号の概要とグリーン車の概要
最初に簡単にやまびこ号やグリーン車の概要を紹介します。
東北新幹線とやまびこ号
東北新幹線は東京-新青森の路線です。やまびこ号は盛岡以南で運転される、停車駅の多い、自由席付きの列車群のことです。
参考までに東北新幹線(大宮以南の上越新幹線列車と北陸新幹線列車を除く)は以下の通りです。
- はやぶさ:最速達列車群、基本的に大宮-仙台ノンストップであり、盛岡以南では乗車区間に応じ、追加料金が加算される、原則全席指定制
- はやて:全席指定席の列車群。かつては最速達列車の代名詞であったが、最近ははやぶさの陰に隠れ、出番は少ない
- やまびこ:自由席付きの列車群。郡山以北を含めて運転される。準速達列車という位置づけだが、東京-仙台間を各駅に停車する列車もある
- なすの:やまびこのうち、東京-郡山で完結する列車群。通過駅はない
東海道新幹線と比べ、列車群の定義があいまいです。これは、東北新幹線は東京から遠ざかるにつれて徐々に乗客が減るという輸送実態があり(途中で入れ替わりがありつつ東京地区-近畿地区でまんべんなく混んでいるのぞみ号と異なります)、全線で通過駅のある列車と全駅停車の列車をはっきりと分離することは合理的でないためです。
はやぶさ号は大宮-仙台間をノンストップで運転し、最高速度320km/hを誇ります。その速度に対し、追加料金が必要な列車群です。JR東日本はこのあたりは律儀で、政令により最高速度が260km/hの盛岡以北や、そもそも新幹線らしい速度を出さない大宮以南では追加料金はかかりません。
はやて号ははやぶさ号が登場する前の最速達列車でした。2011年までの東北新幹線のフラッグシップトレインということもあり、全席指定制です(はやて号登場時は従来の8両編成を10両編成に増強し、「指定席券が取れない」という事態をある程度防ぎました)。ただし、2011年以降、最速達列車は320km/hを出すこともあり、はやぶさ号の陰に隠れています(準速達列車として設定しようにも、全席指定制という定義が足かせとなる)。現在は通常盛岡以北のみの運転です(盛岡以北であれば320km/hを出さず、はやぶさ号の定義を適用できないため)
やまびこ号は準速達列車としての設定が多いです。ただし、仙台以北では各駅に停車することが基本です。また、「やまびこ号は通過駅がなければならない」ということもなく、一部は後述のなすの号の延長運転というダイヤもあり、東京-仙台間各駅停車のやまびこ号も存在します。基本的に大宮-仙台で、宇都宮・郡山・福島に停車します。
なすの号は東京-郡山(一部はもう少し運転区間は短い)で完結する各駅停車型の列車群です。日中時間帯は各駅停車型は2時間間隔で設定され、その1時間前後には東京-郡山を仙台まで延長したやまびこ号に名称を変更します。近距離タイプと遠距離タイプで列車名を分けるというJR東日本の方針により、同じ停車駅でもなすの号とやまびこ号と名称が分けられているのです。
これらの停車駅、座席指定、最高速度でそれぞれ分類し、該当する列車名を割り当てました。
表1. 東北新幹線で完結する列車群の列車名対象一覧
大宮-仙台の停車駅 | 座席指定 | 最高速度 | 列車名 |
全駅 | 自由席あり | 320km/h未満 | やまびこ なすの |
全駅 | 指定席のみ | 320km/h未満 | 設定なし (定義上ははやて) |
全駅 | 自由席あり | 320km/h | 該当なし |
全駅 | 指定席のみ | 320km/h | 設定なし (定義上ははやぶさ) |
主要駅 | 自由席あり | 320km/h未満 | やまびこ |
主要駅 | 指定席のみ | 320km/h未満 | 設定なし (定義上ははやて) |
主要駅 | 自由席あり | 320km/h | 該当なし |
主要駅 | 指定席のみ | 320km/h | 設定なし (定義上ははやぶさ) |
ノンストップ | 自由席あり | 320km/h未満 | 設定なし (定義上はやまびこ) |
ノンストップ | 指定席のみ | 320km/h未満 | 設定なし (定義上ははやて) |
ノンストップ | 自由席あり | 320km/h | 該当なし |
ノンストップ | 指定席のみ | 320km/h | はやぶさ |
東北新幹線のグリーン車
JRにはグリーン車と普通車があるのが原則であり(多くの列車にはグリーン車が連結されていないものの制度上の話として)、新幹線も例外でありません。
東北新幹線は全列車にグリーン車が連結されています。グランクラス登場時には話題になりましたが、グリーン車は引き続き連結されています。山陽新幹線や九州新幹線はグリーン車が連結されていない列車もありますが、東北新幹線を含む、東京駅にやってくる新幹線列車の全列車にグリーン車が連結されています(一部ではグリーン車は事前予約なしで車内発売限定の列車はありますが)。
グリーン車は簡単にいうと、金銭と引き換えに上級な空間を手に入れることです。フル規格の新幹線の場合、普通車はたいてい横5列、グリーン車は横4列と座席が広いです。また、グリーン車は座席のみの適用ではなく、空間に対する料金ですので、グリーン車に立ち入るだけでもグリーン料金が必要です。


写真群1. 普通車(左側)とグリーン車(右側)
これを深度化したのがグランクラスです。グリーン車よりさらに広い座席、そして列車によっては軽食サービスもあります(軽食有無でグランクラス料金が異なります)。
なお、今回乗車した区間の各等級の料金を示しました(表2)。
表2. 東京地区から福島までの価格(通常期)
普通車指定席 | グリーン席 | グランクラス | |
東京 | 9110円 | 12770円 | 15920円 |
上野 | 8900円 | 12560円 | 15710円 |
大宮 | 8570円 | 12230円 | 15380円 |
東北新幹線の場合、グリーン車を9号車、グランクラスは10号車です。11号車との通り抜けが懸念されますが、現実には10号車と11号車との通り抜けができないので、グリーン車はホームの中ほどにありながら、通り抜けがないという絶妙な位置です。
実際にグランクラスに乗っています。
特急や新幹線は普通車でも座席が立派です。一方、普通列車にもグリーン車が連結されており、この座席も立派です。しかし、建付けとしては両者は別のものに料金を支払っています。特急や新幹線は早さに対する料金、普通列車グリーン車は空間に対する料金です。建付けとしては、特急用の車両の設備は普通列車と同等でも良いのですが、慣例的に特急用車両は上級な空間となっています。あくまでも制度上は両者は異なるものに料金を支払っているのです。
グリーン車乗車のお得な方法
参考までに、東北新幹線のグリーン車を安く乗る方法を紹介します(対象区間:福島→上野、4/20に5/11を検索)。安く乗る方法は、いずれもえきねっと限定です。
入手方法 | 価格 | 備考 |
紙のきっぷ | 12,770円 | 乗車券のカスタマイズ可能 |
新幹線eチケット | 12,570円 | 乗車券セット、直前まで変更可能 |
トクだ値30%off 新幹線eチケット(トクだ値14) | 8,780円 | 14日前までの申し込み必要 |
乗車券がセットとなり、通しの乗車券にならないというデメリットはありますが、新幹線eチケットは200円引きです(閑散期、繁忙期など関係なく対応する同一列車の紙のきっぷから200円引きです)。都市区内は適用されませんが、新幹線から降車後に200円以内の乗車券しか使わないのであれば、これが安いでしょう。また、乗り遅れの場合は特急券は無効となり(通常の紙のきっぷであれば後続列車の自由席利用可能)、その点は注意が必要です。ただし、この点については出発時刻の4分前までなら変更可能であり、後の列車に空席がある限り、致命的な弱点となりません。
トクだ値は14日前までの申し込みであり(普通車指定席の場合は別の商品も設定され、価格も多様)、変更も14日前までです。
14日前までに予定が確定し、その列車から変更しない場合は、トクだ値を適用し、30%割引がコストパフォーマンスに優れるということです。
今回は自由度を重視し、乗車券と特急券は別に購入(乗車券部分は週末パスを利用)、特急券はえきねっとで直前に購入しました。乗り遅れを意識して駅に早めに向かい、駅で対象列車まで待つ(直前購入の場合は駅に着くころに列車を選べるため、駅で待つ必要がありません)タイムロスを考慮したためです。
東北新幹線やまびこ号(E5系)のグリーン車車内
では、東北新幹線やまびこ号のグリーン車の車内はどのようなものでしょうか。主力のE5系の車内を紹介します。

写真2. グリーン車の全景
グリーン車の全景です(写真2)。
デッキなどの共用部分
グリーン車に入って最初に立ち入る、デッキなどの共用部分を紹介します。

写真3. グリーン車のデッキ部分
グリーン車のデッキ部分です(写真3)。落ち着いた茶色の壁面、白色と黒色を取り入れ、高級感ありながらくどくなく、現代的な空間を演出しています。

写真4. 洗面台がある
洗面台があります(写真4)。

写真5. お手洗いもある
お手洗いもあります(写真5)。鉄道ファンには比較的知られていますが、(若干のE2系使用列車という例外はありますが)東北新幹線のグリーン車ははやぶさ号でもやまびこ号でも共通です。そのため、「はやぶさ号のあこがれのグリーン車」の車内は、やまびこ号でも味わえます。

写真6. グランクラス側のデッキ部分
グランクラス側のデッキ部分です(写真6)。意外なことに車両間の仕切は9号車側にはありませんが(10号車がグランクラス)、騒音はデッキ部分に漏れるのであり、客室内に影響しないという判断でしょうか。

写真7. 客室との仕切扉
客室との仕切扉です(写真7)。デッキと客室は視覚的に区切られ、客室内に落ち着きを演出しています。

写真8. 荷物置き場も用意!
荷物置き場もあります(写真8)。乗ったときは2月ということもあり、使われていませんでした。私のように国内旅行は日常のかばんで移動する者だらけであれば、このような空間は不要になるのですが、そうもいかない人も多いのでしょう。

写真9. 車内の雰囲気
グリーン車は横4列配置であり、ゆとりを感じます。荷棚にはある程度荷物があり、やはり目線の範囲内に荷物を置きたいという気持ちが伝わります。

写真10. 室内の雰囲気
室内の雰囲気を角度を変えて撮影しました(写真10)。窓枠からの照明がおしゃれに見えます。

写真11. 壁面を見る
壁は白色でくどい印象を払拭します(写真11)。これに電球色の照明による空間演出がなされます。奇をてらわない上品な空間です。

写真12. 座席の様子
座席の様子です(写真12)。やや明度の高い茶色系の色のシートです。上下に動く枕が心地よいです。

写真13. 座席背面に座席の使いかたが明記される
座席背面に使いかたが明記されています(写真13)。このようなことは親切と思います。

写真14. 背面テーブルを出す
背面テーブルを出します(写真14)。

写真15. インアームテーブルを出す
インアームテーブルを出します(写真15)。これは向かい合わせにした際に有効活用できます。

写真16. リクライニングや読書灯の操作ボタンがある
リクライニングや読書灯の操作ボタンがあります(写真16)。一時期のJR東日本の特急車にあった座面スライド機能はありません。足あてがグリーン車ならではの設備です。

写真17. 可動枕を上下に調整
可動枕を上下に調整できます(写真17)。私は一番上がちょうど良かったかな?

写真18. 読書灯を点灯!
読書灯を点灯しました(写真18)。グリーン車はやや暗めであり、必要に応じ補助照明を使うことで、作業に必要な照度を確保します。

写真19. ひざかけがある
ひざかけがあります(写真19)。寒いと思ったら自由に使って良いのでしょうか。いずれにしても普通車にはないサービスです。
重要座席の広さを求めるのであれば、つばさ号(たいていはやまびこ号に連結)やこまち号(たいていははやぶさ号に連結)のグリーン車を避けたほうが得策です。つばさ号やこまち号は在来線規格の路線を通るために車両の幅が狭いです。しかし、横4列と同じなため、1席当たりの横幅は狭いです。
実際に福島から上野に向かう
さて、実際に福島から上野に向かいましょう。

写真20. 福島の下り線に入線してきた!
福島の下り線に入線してきました(写真20)。山形新幹線列車と連結するため、上り列車でも下り側のホームに入るのです。

写真21. 福島を発車!
福島を発車しました(写真21)。1時間26分の旅のスタートです。

写真22. 田園風景を走る
田園風景を走ります(写真22)。

写真23. 市街地が見えてきた
市街地が見えてきました(写真23)。

写真24. まもなく郡山!
まもなく郡山です(写真24)。福島よりも交通の要衝という感じがあります。

写真25. 郡山に停車!
郡山に停車します(写真25)。

写真26. 市街地を走る
市街地を走ります(写真26)。

写真27. 建物が減ってきた
建物が減ってきました(写真27)。

写真28. 275km/hに到達!
現時点でのやまびこ号の最高速度の275km/hに到達しました(写真28)。つばさ号の最高速度は長らく275km/hでしたが、新型車両は300km/hです。そのうち、やまびこ号の最高速度も300km/hになるのでしょう。そうすればはやぶさ号などとの速度差も縮まり、ダイヤも組みやすくなります。

写真29. 住宅が多い
住宅が多いです(写真29)。

写真30. 那須塩原付近を走行中
那須塩原付近を走行中です(写真30)。

写真31. 那須塩原を通過!
那須塩原を通過しました(写真31)。

写真32. 地面が少し白い?
地面が少し白いような気がします(写真32)。

写真33. やはり地面が白い
福島県内よりも地面が白かったです(写真33)。これは珍しい経験かもしれません。

写真34. 市街地が広がる
市街地が広がります(写真34)。

写真35. 宇都宮の市街地が見える
宇都宮の市街地が見えます(写真35)。もともとの市街地は駅の西側にありますが、近年は宇都宮駅の東側も発展も著しいと聞きます。

写真36. 宇都宮に停車!
宇都宮に停車します(写真36)。宇都宮から東京までは50分、グリーン車に乗るにはちょっともったいない時間かもしれません。

写真37. 住宅が多い
宇都宮以南は首都圏ともいえる範囲で、住宅が多いです(写真37)。

写真38. 150km/hまで減速
150km/hまで減速しています(写真38)。何なのでしょう?

写真39. 小山を通過!
小山を通過します(写真39)。

写真40. 関東平野を走る
関東平野を走ります(写真40)。

写真41. 大宮に停車!
グリーン車でくつろいでいたら、大宮に停車しました(写真41)。

写真42. 大宮の繁華街を眺める
大宮の繁華街を眺めます(写真42)。

写真43. 埼京線電車と並走!
埼京線電車と並走します(写真43)。大宮以南の最高速度はそこまで高くなく、新幹線らしくない速度で走ります。

写真44. 都内に入った!
都内に入りました(写真44)。

写真45. 都内の風景
都内の風景です(写真45)。このあたりは東側が平坦、西側が起伏がある地形です。

写真46. まもなく地下に入る
上野は地下駅であり、その手前の風景です(写真46)。

写真47. 上野に到着!
上野に到着しました(写真47)。東京まで乗ると特急料金が高くなるので、私は手前の上野で降りました。それをケチと表現するか、賢いと表現するか…。

写真48. E8系が連結されている
E8系が連結されていました(写真48)。少年が記念撮影していました。
東北新幹線のグリーン車に乗ってみて
今回、ゆとりを前面にグリーン車を選択しました。新幹線の普通車指定席でもだいぶ快適で、それより3500円以上かけてグリーン車にするのは悩みました。しかし、それなりの価値があり、じゅうぶんに休めた1時間26分でした。ただし、現代のやまびこ号において人的なサービスはありません。これを味気ないと思うか、過度な干渉がなくて良いと思うかは、人それぞれでしょう(私は後者よりの考えです)。
グリーン車の価値の1つはシートの広さ、もう1つが静かな空間です(繁忙期はそうはいかないでしょうが)。これらの価値と価格を比較し、グリーン車を使うか否かを選択すれば良いと思います。今回は旅の最後ということもあり、このような選択をしました。
ある程度の需要があり、供給もじゅうぶんな場合、このような選択肢は移動を豊かにしてくれます。今後もある程度の選択肢を与えつつ、需要に応えていただきたいものです。