山手線の増発がうたわれた2025年のJR東日本ダイヤ改正。普段時刻表を意識する路線ではありませんが、その実態を探りました。

写真1. 夕方の新宿駅の光景
2025年ダイヤ改正での山手線のダイヤ比較

写真2. 休日の974G(池袋始発の内回り)は継続される
2025年ダイヤ改正前後の顕著な傾向は以下の通りです。
- 減便された時間帯はない
- 増発されたといっても2023年ダイヤ改正まで復帰していない時間帯が多い
全体的には、2024年ダイヤ改正で減便しすぎたぶんを見直し、一部を復帰している面が大きいです。
詳細は以下に記します。
2025年ダイヤ改正での発車時刻比較

写真3. 平日夕方の光景(池袋で撮影)
山手線は周回運転、全列車が各駅に停車ということもあり、特定の駅での発車時刻を比較すると全体的な傾向がみえるでしょう。そう考え、特定の駅での発車時刻を比較しました。参考に、特定の疫病で社会全体が影響される直前のダイヤ改正(2020年3月ダイヤ改正)、減便がスタートしたダイヤ改正(2021年3月ダイヤ改正)、2024年ダイヤ改正前の時刻(2023年3月ダイヤ改正)の時刻も示しました。
平日の外回り(東京)での比較
外回りの発車時刻を比べます。外回りは朝方の上野→東京の輸送が多いと考え、東側の拠点駅の東京を選択しました(表1)。
表1. 平日外回りの発車時刻の比較(東京)

2023年ダイヤ改正から2024年のダイヤ改正、2024年ダイヤ改正から2025年のダイヤ改正について1時間ごとに増減も示しました。
朝夕に増発がなされていることがわかります。1周68分で18運用なので平均運転間隔は3分47秒です。時刻表を見る限り、全般的に間隔を変更しているのではなく、ピーク時(東京断面で8:19~8:47)の運転間隔を詰めているように見えます。
カウントの関係で7時台と9時台に増発がカウントされていますが、簡単にいうと2周ぶんの増発ということです。とはいえ、24年ダイヤ改正で減らされたぶんを復帰しただけとも評価できます。
夕方ラッシュ時も増発されています。もともと新宿→新大久保の混雑に対応するためか、朝ラッシュ時より本数が多くなっており、10分に3本の運転が基本でした。これが一部の時間帯で間隔が短縮されています(9分30秒に3本に見える)。1周は67分で21運用で平均運転間隔は3分12分です。2024年ダイヤ改正前より本数は増え、近年ではピークだった2020年時点より本数は増えています。
ただし、2024年ダイヤ改正で本数が減った夜間は本数は復元されていません。夜間の混雑が問題になる金曜くらいは大崎から池袋までの臨時電車を設定して欲しいものです。
平日の内回り(新宿)での比較
内回りの発車時刻を比べます。内回りは朝方の池袋→品川の輸送が多いと考え、西側の拠点駅の新宿を選択しました(表2)。
表2. 平日内回りの発車時刻の比較(新宿)

朝ラッシュ時は増発されています。1周68分で21運用から22運用に増えています。平均運転間隔は3分15秒間隔から3分6秒間隔に縮んでいます。もともとピーク時は3分間隔、そのほかは3分30秒間隔に見えました。このピーク時適用範囲が広がり、一部は2分50秒間隔に縮んでいます。ホームドアのタイミングを各駅3秒短縮、各駅間の走行時間を3秒短縮して1周65分とすれば、どこでも3分間隔を実現でき、かつ新宿断面でピークの6本は2分50秒間隔にできるのにもったいなく感じます。
夕方ラッシュ時も増発されています。1周67分で15運用から16運用に増加し、平均運転間隔は4分28秒から4分12秒に縮んでいます。2024年ダイヤ改正で減ったぶんを復帰しただけではありますが…。
夜間は2024年ダイヤ改正で減ったぶんは復帰されていません。
平日の朝方は池袋→新宿→渋谷の輸送力を確保するために本数を確保していますが、東側では輸送力が過剰でしょう。それであれば、京浜東北線の秋葉原以北を快速運転し、京浜東北線の車両や人員の回転を向上させ、トータルとしてのコストダウンにも着目するべき段階でしょう。
土曜・休日の外回り(東京)での比較

写真4. 休日の上野駅の光景
山手線は昔から土曜・休日のほうが本数が多い特徴があります。そこで、土曜・休日ダイヤも記載します。平日と同様、外回りを比較します(表3)。
表3. 土曜・休日の外回りの発車時刻の比較(東京)

2024年ダイヤ改正では土曜・休日に革命が生じ、外回りは午前と午後で本数を変えるという新しい概念が導入されました。革命の思想は2025年ダイヤでも受け継がれ、京浜東北線と同じ5分間隔です。ただし、残念なのは京浜東北線と発車時刻が1分ずれており、田端での相互接続が期待できないことです。京浜東北線の運転時刻を若干シフトさせ、同じ本数であっても利便性を確保するべきでしょう。
午後は2020年~2024年ダイヤと変わらず、1周65分の17運用です。
夕方には毎時1本程度増発され、渋谷から池袋への流動に対応しています。この運転本数は東側ではやや過剰であり、京浜東北線の秋葉原以北を快速運転し、京浜東北線の運用削減とスピードアップを期待したいです。
土曜・休日の内回り(東京)での比較
内回りの発車時刻を比べます。平日と同様に新宿で比較します(表4)。
表4. 土曜・休日の内回りの発車時刻の比較(新宿)

昼間の増発が目立ちます。1周65分で従来の17運用から18運用に増やされました。従来の平均3分50秒間隔から3分37秒間隔に短縮されています。1周の所要時間を63分20秒に短縮し、19運用とすれば平均運転間隔は3分20秒(=10分に3本)になり、京浜東北線快速との接続も一定にできます。
17時以降は本数が徐々に減らされている点は変わりません。ここにも手を入れて欲しかったと感じます。
2025年ダイヤ改正での山手線の変更点を見て

写真5. 多くの駅にはホームドアが備わる(巣鴨で撮影)
2025年ダイヤ改正では本数が復帰しました。ダイヤ改正は1年以上の時間をかけて原案を作成すると聞きます。すなわち、2024年ダイヤ改正は2022年度に原案を作成、2025年ダイヤ改正は2023年度に原案を作成ということです。2020年度~2022年度は社会情勢に振り回され、輸送力を見極めるのが困難だったでしょう。これにはJR東日本に限らず各鉄道会社に同情します(余談ですが社会情勢をここまで混乱させた意味があるかどうかの総括をしないのは問題に感じます)。
これが見通すことが可能になり、本数を復元するという決断が可能になった側面がありましょう。それが今回のダイヤ改正と評価することができます。
従来は山手線のダイヤは独立していました。これが2022年ダイヤ改正で平日限定でありますが、京浜東北線快速と接続を考慮するダイヤになりました。これは、単独でダイヤを作成してきた山手線にとって革命的なできごとでした。
これを深度化させ、
- 平日朝夕や休日夕方の京浜東北線の区間快速運転(朝の秋葉原→田端、夕方の田端→秋葉原快速運転)という施策:所要時間短縮と費用削減
- 相鉄直通電車の埼京線新宿以北直通の恒常化(=池袋-渋谷方面の乗客を比較的空いている埼京線電車に流す)
などの輸送のトータルコーディネートの深度化もご考慮いただきたいです。
他方、かつては1周60分(日中時間帯)でした。そのころの車両に比べ、性能は向上しています。ホームドアの挙動を変更するなどして、この所要時間に復元させれば、同じ車両数や人員であっても運転間隔を短縮することが可能です。このような方策もご検討いただきたいです。
過去のダイヤ改正などへのリンク
山手線については、過去にも同様の記事を執筆しています。
また、山手線のダイヤについて簡単にまとめています。
このほか、山手線の混雑に関する基本的な情報をまとめました。