お座敷車両「華」への乗車:お座敷桃源郷パノラマ号

記事上部注釈
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団体専用車両である「お座敷車両」。しかし、このような車両が一般に解放される機会があります。今回はその貴重な機会であるお座敷車両を使用した臨時快速「お座敷桃源郷パノラマ号」に乗る機会に恵まれました。その道中の様子とお座敷列車の内装を紹介することにしましょう。

お座敷車両「華」の前面

写真1. お座敷車両「華」の美しい前面

お座敷車両華との対面

私は臨時列車が運転される1か月前に最寄駅のみどりの窓口に行きました。気合をいれて9:00ごろ申込用紙を持って並ぼうと思いました(※)が、「9:45ごろに来てくださいね!」とあしらわれてしまいました。そこで、9:45ごろに再びみどりの窓口に赴き(さっきのあいつかと思われたことでしょう)、10:00ちょうどに発券してもらいました。後で確認したところ、発売当日の午後には空席はありませんでした。また、運行前日の夕方に確認したところ、1席だけ空席はありました。

※私の最寄駅を含めて山手線の駅では「事前受付」をしていません。あくまでも10:00に並んでいたら、「10時に近い時間で発券する」というものです。(うるう年ではない限り)2月と3月は同じ曜日ですので、(仕事が休みで)10時にみどりの窓口に並べるのです。

そのような苦労をした挙句、錦糸町に向かいました。千葉始発で新宿の前の停車駅が錦糸町なのです。せっかくなので、新宿の前から乗ろうと思ったのです。

写真2. 錦糸町での臨時列車表示

写真3. 錦糸町での臨時列車表示

錦糸町の表示にはありがたみは感じられません(写真2-3)。快速小淵沢6両という情報しかありません。これでは、お座敷車両を使用した全車グリーン席(扱い)の快速であることが伝わりません。新宿に向かう人が乗ってしまうかもしれません。ただし、ホームでは繰り返し「全席指定なので指定券を持っていないと利用できない」という旨の案内がありました。

お座敷車両「華」の前面

写真4. お座敷車両「華」の美しい前面(写真1と同じ)

このように美しい485系の車両が錦糸町に姿を見せました(写真4)。先頭の6号車に入って、展望席で総武線快速-総武線各駅停車-中央線快速の転線を眺めようと思いましたが、先客がいっぱいで断念しました。

お座敷車両華の車内

先に車内の探索をしましょう。ファンの多くが新宿から乗りこむので、錦糸町から乗って車内探索をしようという魂胆です。私の行動の都合上、別区間で撮影したところもありますが、先に車内の雰囲気を味わっていただきましょう!私の都合でページを構成するのではなく、読者さまのご都合に合わせる、私が人格者であることを示す1つのエピソードですね!

華の出入口付近

まず乗客の目に触れるところは出入口です。出入口から入るので、当然ですよね。

華のマーク

写真5. 華のマーク(甲府で撮影)

華のデッキ近くには「華」と書かれています。これはこれでワクワク感を高める仕掛けですね。

華の出入口

写真6. 華の出入口

出入口付近を眺めましょう。ステップがある出入口の他に傘立てが目立ちます。確かに和室には傘を持ち込めませんからね。

華の出入口

写真7. 華の出入口

このような冷蔵ショーケースも目立ちます。公園にある明らかにもとの価格より高いアイスクリーム屋にありそうな品物ですね。

華の出入口

写真8. 華の出入口

お座敷者車両の座席配置は独特です。単純に山側をA、海側をBとして席番を決めればよさそうですが、テーブルが主役ということなのでしょう。

華の出入口

写真9. 華の出入口

洗面所やトイレも見えます。トイレは洋式です。団体利用の場合は、お酒の飲み過ぎに注意して、あまりお世話にならないようにしたいものです(私はこのときはお茶を飲みました)。

お座敷部分の紹介

次は、多くの人が長い時間過ごすお座敷部分を紹介します。

華のお座敷部分

写真10. お座敷部分の全体

お座敷部分の全体を見てみましょう。団体利用を想定した車内です(写真10)。宴会場をそのまま鉄道車両に移植してきた、そのような感触があります(写真10)。

華のお座敷部分

写真11. 1号車の車内(この写真は塩山ですね)

華のお座敷部分

写真12. 3号車の車内

他の車両も見てみましょう(写真11-12)。宴の車内とは異なり、屋根が低くなっている箇所はありません。つまり、どの部分も均一なお座敷になっていて格差はありません。全員同じサービスが求められる団体車両にはこのような改善は重要でしょう。この1点を見ても、華は宴の改良版ということがわかります。2019年春現在宴が引退し、華が引退していないのは、このような改良の有無がその理由の1つでしょう。

華のお座敷部分

写真13. 荷物収納スペース

お座敷車両は床が高い(堀ごたつのため)ために、網棚を設けると天井が低くなってしまいます。そのため、網棚はありません。では、荷物はどうするのでしょうか。答えは、そのようなスペースがあるというものです(写真13)。

華のお座敷部分

写真14. 美しい照明

白色の照明が車両全体を覆っています(写真14)。旅館の宴会場という風情の照明です。でも、もう少し雰囲気のある照明にはできなかったのでしょう。ただし、華が登場したのは90年代です。街の照明も今ほどに工夫されていなかったように思えます。鉄道車両といえども街の延長線上にありますので、設計・製造時の街の雰囲気に左右されることじたいは仕方ありません。

華のお座敷部分

写真15. 堀ごたつのお座敷

これが堀ごたつの部分です(写真15)。どの席に座っても堀ごたつなのは安心感があります。

華のお座敷部分

写真16. 時代を感じさせるモニター

今や時代を感じさせるモニターです(写真16)。今やブラウン管のテレビジョンを見る機会が減ってしまいました。

華のお座敷部分

写真17. ジョイサウンド

そのモニターにはジョイサウンドが付いています(写真17)。カラオケの細かな機種についてはわかりませんが、カラオケが付いていることは事実です。団体利用時はカラオケを使えるのです。でも、今の宴会はそこまでカラオケをするのかな?

華のお座敷部分

写真18. 一部車両はモニターだけ新しい

2号車のモニターは壊れたのでしょう。新しいモニターになっていました(写真18)。デジタル世代のモニターですね。カラオケをする人にとっては曲が入っていること、ちゃんと音が出ることが重要で、モニターについてのこだわりはないでしょう。そのため、入手時点での標準品を使用することは全く問題なく、他の車両と異なることも問題ありません。

フリースペースの紹介

お座敷だけでは飽きるでしょうし、団体旅行の場合は幹事が打ち合わせする必要もありましょう。ここでは、そのようなスペースを紹介しましょう。

先頭ラウンジ

先頭部分はラウンジスペースになっています。私は錦糸町から新宿までここで前面展望を満喫しようとしましたが、先客の多さに断念しました。別の区間で行くことにしました。

華の先頭ラウンジ

写真19. 先頭ラウンジからお座敷を眺める

先頭のラウンジは定員8名です。ただし、往々にして9名以上の乗客で埋まっており、撮影は困難です。私も何回か撮影を試みましたが、どうしても自分の姿が入ってしまいました…。

華の先頭ラウンジ

写真20. 前面展望を満喫!

とにかく、前面展望を満喫できます(写真20)。きっと高尾あたりからは遮光幕が閉じられるのでしょうが、その時間帯は6号車(小淵沢より先頭)には行っていないのでわかりかねます。

華のお座敷部分

写真21. 先頭のラウンジをお座敷から眺める

ラウンジ部分はこのように、お座敷から眺めることができます。写真11の使い回しであることは気にしないようにしましょう。

先頭ラウンジの内線電話

写真22. 内線電話も付いている

団体で利用している際に、呼び出しの機会もあることでしょう。そのために内線電話があります。社会人であれば内線電話の重要性はわかることでしょう。

ミーティングルーム

団体旅行ではミーティングも重要でしょう。そのような部屋もあります。今回のような臨時列車の場合でも気分転換スペースとして機能しています。

華のミーティングスペース

写真23. ミーティングスペースの全体像

ミーティングスペースは7名程度の人が集まれるようになっています。2人+3人+3人の合計8人です。窓と直角に2人座れます(写真23)。

華のミーティングスペース

写真24. ミーティングスペースの全体像

窓を背に3人座れるようになっています(写真24)。

華のミーティングスペース

写真25. ミーティングスペースの全体像

角には造花が置いてあります(写真25)。無機質になりがちな空間に彩りを添える役割です。

華のミーティングスペース

写真26. ミーティングスペースの全体像

もう片方には3人が座れるようになっています(写真26)。

華のミーティングスペース

写真27. ミーティングスペースはカーテンも閉められる

ミーティングスペースはカーテンも閉められるようになっています。このときは私以外に人がいなかったので、カーテンを閉めてみました(写真27)。

華のミーティングスペース

写真28. ミーティングスペースはカーテンも閉められる

カーテンは2人がけのほうから引き出しますが、室内全体を覆うようになっています(写真28)。ただし、足までは隠れません。ここは身をひそめるための隠れ家ではないのです。余談ですが、すぐにカーテンを開きました。

華のミーティングスペース

写真29. ここにも内線電話!

ここにも内線電話がありました(写真29)。

美しい車窓の堪能

さて、お座敷に座って(一部区間では別の場所に座って)美しい中央線の景色を堪能しましょう。

写真30. 秋葉原周辺を走る

今回走行する経路は都心をほとんど走りませんが、唯一秋葉原付近で都心を走ります。秋葉原あたりは千代田区なのです。せっかくなので、都心の光景を掲載しましょう(写真30)。

写真31. 中央線が近づいてくる

秋葉原を通過して、御茶ノ水に近づきます。それにともなって中央線も近づいてきました(写真31)。

写真32. 新宿-大久保で山手線と並走(普段はあちらに乗る)

眠らない街新宿で乗り降りが済むと、山手線と並走します(写真32)。あちらには「眠らない街」で夜中を過ごした人も乗っているのでしょうが、こちらはじゅうぶんに寝たあとに早起きしている集団が乗っています。新宿で車掌が交代したようです。ここからの車掌さんは「ご案内」というワードを多用する人でした。「全てグリーン席としてご案内しております」「車内販売なしとしてご案内しております」などのフレーズを覚えております。また、「青春18きっぷではご利用いただけない(※)ため、乗車券も拝見しております」とも言っていました。

※青春18きっぷで使えるのは、普通列車のグリーン車自由席です。今回はグリーン車指定席のため、青春18きっぷでは乗れないのです。

写真33. 複々線区間の終焉、三鷹に近づく

前面展望を満喫しているころ、三鷹に近づきます(写真33)。

写真34. 多摩川を渡る

後述のソビエトシステム誕生のため、立川過ぎまでは車窓を撮影できていません。中央線の東京-高尾はビル街か住宅街を走るのですが、その中で1つの癒しが多摩川を渡る箇所でしょう(写真34)。

写真35. 相模湖付近で車窓が額縁のように見える

その高尾を過ぎると自然が広がります。東京都から離れて、今回の走行経路では唯一の政令指定都市に入っても、自然の多さは変わりません。緑区という名称は実態にあっていますね!

写真36. 南側の斜面では太陽光発電も!

車窓を眺めていて、何となく写真を撮ってみました。後で写真を見返して気づいたのですが、太陽光発電が設置されていることに気づきました(写真36)。

写真37. 四方津(「しおつ」と読みます)でコスモタウンへの斜行エレベーターが見える

山梨県に入ると四方津という駅があります。駅前には住宅はそこまでありませんが、山の上に住宅街があると聞いています。その住宅街と駅を結ぶエレベーターです。鉄道アナリストの川島先生はここに住んでいると著作に著していました(現在はどうなのかは知りません)。

写真38. 鳥沢を過ぎると絶景が広がる

中央線の白眉の1つが鳥沢-猿橋の新桂川橋梁でしょう。ここは有名な撮影ポイントですし、車窓も美しいです(写真38)。周囲の乗客よりも先に車窓撮影の準備をしていた自分とは一体何なのでしょう?

写真39. 大月で富士登山電車と並走

お座敷桃源郷パノラマ号は大月を通過します。大月から河口湖方面に向かう人は、特急富士回遊号を利用しろということでしょう。また、ホリデー快速ビューやまなし号も魅力的でしょう。その大月では富士登山電車と並走しました。こちらのほうが速度は速いです。そのため…

写真40. 富士登山電車の顔を撮影

先頭部分も撮影できました。私は乗り鉄と撮り鉄を同時にこなす上級者なのです。

写真41. 大月を過ぎても美しい小川がある

大月を過ぎても美しい小川があります(写真41)。

写真42. 再び美しい小川を眺める

日本は水が豊かな国です。小川がまた現れます(写真42)。

写真43. 勝沼ぶどう郷で機関車とご対面!

勝沼ぶどう郷では機関車とご対面します(写真43)。

写真44. 勝沼ぶどう郷付近では甲府盆地が広がる

再び車掌さんからご案内がありました。勝沼ぶどう郷では晴れていれば甲府盆地が一望できること、桃のシーズンにはまだ早いことです(注.この日は曇っていました)。

写真45. 勝沼ぶどう郷付近では甲府盆地が広がる

これが曇っている甲府盆地です(写真44-45)。

写真46. 塩山で特急列車に抜かれる

塩山で5分停車し、特急に抜かれます(写真46)。車掌さんから「ご案内」があり、5分停車するので、タバコタイムにどうぞというものです。喫煙所はホーム前方にあるにも関わらず、ホーム後ろ寄りにも乗客がタムロしていました。その正体はこれです(写真46)。

写真47. 甲府に到着!

このようにして列車は甲府に到着したのです。

お座敷列車で発生したアクシデント

さて、お座敷列車ではノーアクシデントというわけにはいきませんでした。私が見たアクシデント(というほどのものではありませんが)が2つありましたので、簡単に紹介します。

ソビエトシステムの誕生

私は新宿到着直前から三鷹到着時までは先頭部分に行きました。先頭部分ではそれなりに平和な時間を過ごせましたが、自席に戻ったときに事件が起こりました。見ず知らずの人が私の席を占領しているのです。これは不法行為です。彼らは8人(かな?)の団体でしたが、席を一まとめに取れていませんでした。しかし、それに気づかずに誰かの近くに集まっていたようです。

私としても団体の中に放り込まれるのは不本意ですし、彼らとしても団体外の人を間にはさむことも不本意でしょう。そこで、私は取引を持ちかけました。そう、座席交換です。JR側としては定員通りの乗客を輸送し、その乗客からしかるべき収入を得たいのが優先です。乗客どうしが納得して座席を交換することは「どうぞご自由に」というのが本音でしょう。座席の交換は以下の手順でなされました。

1) とりあえず、JR側から割り当てられた座席通りに団体さんにお座りいただく
2) 団体・私と関係ある席、関係ない席を明らかにする(第三者の座席については今回の対象にしてはいけません)
3) お互いに都合良い席を交換する(具体的には団体さんの端部の席と私の席)
4) 交換対象の席の座席指定券を交換する
5) 何食わぬ顔でお互いの旅行を続行する

私はこのことをソビエトシステムと命名することにしました。ソビエト連邦の庶民はモノ不足・貨幣への信用不足(政府高官は敵国の通過「ドル」を欲しがっていた!)から、貨幣を介さずに物々交換で生活をまかなっていたためです。今回は座席指定券という現物を交換したので、物々交換なのです。

余談ですが、先述の団体さんは他の人とも同様の取引を成立させていました。規則に縛られずに臨機応変に対応することの重要性を改めて実感しました。

スリッパ事件

お座敷列車はお座敷がメインです。当然ながら、メインのお座敷部分は土足厳禁です。そのため、乗客は靴箱にそれぞれの靴を入れます(私の乗った3号車は靴箱が埋まっていました…)。そうはいっても、ミーティングスペースへの移動などで、履物を履いて移動する場面があります。その移動の際、いちいち靴を履くのも面倒です。そのため、車内で移動するためにスリッパがあります(トイレ用のスリッパは別にあります)。

私が1号車の展望ラウンジでくつろいでいた時のことです。1人の人が車掌室のドアを叩きました。車掌さんは1回目に気づかずにそのままその乗客は立ち去りました。これは大したことではない事案だったと思ったのですが、次に別の人がまた車掌室のドアを叩きました。ようやく車掌さんが気づいて、接客していました。どうやら、誰かがスリッパを自動ドアにはさんでしまったようです。早速、検札役の車掌さんが修理に向かっていきました。5分もかからず修理は終了して、車掌さんは最後尾に戻っていきました。これをスリッパ事件と命名することにしました。

今回のまとめ

今回は、お座敷車両に乗ってのんびりと移動しました。本来の目的に合う客層である団体さんが乗ったり、家族連れの姿が見えたりと、ファン以外の人も目立つ列車でした。また、通常の椅子をつかった車両よりものんびり過ごしたのも事実です。また、見ず知らずの人が仲良く話す光景にも出くわしました(私はそのようなことは無理ですが)。これも宴会用車両がなすものです。

ただし、もったいないことは比較的「コア」な人しかこのような車両に乗れないことです。なぜならば、定員が少なく運転日が少ないことから、比較的早く座席が埋まってしまうためです。また、見ず知らずの人が話す場面もそう多くありませんでした。そのため、お座敷車両の運転日を増やして、「コア」な人で座席が埋まる確率を減らすことが必要でしょう。また、少人数向けの座席配置の車両の導入によって、少人数の家族連れ、友人旅行、アベック旅行のニーズへの適応なども必要です。このようにして、レジャー移動として自動車にはない「鉄道ならではの楽しみ」を自動車利用層にRPする1つの起爆剤として有効活用してもらいたいものです。

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