宇都宮線、高崎線の利便性向上を握る大宮駅での相互乗りかえ。これに対し、現場を調査して、改良案をまとめてみました。
現状の大宮駅の欠点
以前の記事で上野東京ラインのダイヤ案を提案いたしました。
そこで、私は以下の概要の記述を行いました。
[私の説明]
下線で示した列車は大宮で相互接続を取ります。
※例えば、東京方面-宇都宮線の列車と新宿方面-高崎線の列車を(ほぼ同時に)大宮駅の同一ホームに到着させ、相互に接続をとり、(ほぼ同時に)発車させることを行います。このことによって、この場合では直通しない東京方面-高崎線の移動や新宿方面-宇都宮線の移動が可能になります(現状では直通の場合のみに限定されていることが多いです)。
[ご指摘の想定]
大宮駅では、新宿方面からの電車(高崎・宇都宮とも11番線)と東京からの電車(8・9番)は別ホーム(階段を上り下りする必要)なので、相互接続は現実的ではありません。
確かに、これではいけませんね。しかし、私には秘策があるのです!
大宮駅改良(小規模案)
大宮駅の現状把握
まずは現状把握です。まずは大宮駅の配線図を簡単に描いてみましょう(図1)。
※と言いますけど、作図するほうは大変なんですよ。「どうせExcelでやっつけ仕事で作図したんでしょ?(正解です!)」なんて言った人は誰ですか?
図1. 現状の大宮駅(宇都宮・高崎線のみ掲載、一部の配線は省略)
同一ホームの同時発着の可能性を探る
この配線では、同一ホームで同時発着できません。簡単にまとめてみましょう。
1) 下り
配線図を見ると、下りの場合は新宿方面からの電車は9番線に入線し、東京方面からの電車は8番線に入線することになります。そのため、「新宿方面→宇都宮線」と「東京方面→高崎線」は同時発着可能です。
2) 上り
上りは高崎線から3,4番線にそもそも入れませんし、宇都宮線からは6番線に入れますが、7番線到着の高崎線に干渉します。そのため、どの組み合わせでも同時発着は不可能です。
小規模な改良案
ポイント増設による改良案概要
ポイントを増設することで同一ホームの同時発着が可能な配線になります。それを示しましょう(図2)。
図2. 改良後の大宮駅(赤線が増設部分)
(以下、2019年1月4日追記)
写真1. 下り線はこの中央の線路と右端の線路の間にポイントを設置
下り線は9番線から10番線への渡り線を設置します(写真1)。この写真では右端の線路(9番線)から中央の線路(10番線)への渡り線を設置するということです。
写真2. 上り線は中線(5番線)から4番線への渡り線を設置
上り線の上り方は5番線から4番線への渡り線を設置します。これで、高崎線からの列車は宇都宮線からの列車と同じホームに着くことができます。しかし、これでは高崎線からの東京方面行きと、宇都宮線からの新宿方面行きは同時に発車できません(逆の組み合わせなら可能です)。
写真3. 上り線の上り方は4番線から6番線への渡り線を設置
そこで、上り線は4番線から6番線への渡り線を設置します。この写真は4番線から6番線を眺めたものです。無線切替の看板の手前から6番線を目がけてポイントを設置します。すると、3番線から発車した宇都宮線→新宿方面の列車を避けて東京方面に向かうことができます。
(以上、追記終了)
干渉の状態の考察
すると、以下のように、東京方面-宇都宮線の列車と新宿方面-高崎線の列車の組み合わせ(図3)であっても、東京方面-高崎線の列車と新宿方面-宇都宮線の列車の組み合わせ(図4)であっても、同時発着が可能です。紫色が東京方面への経路、赤色が新宿方面の経路とお考え下さい。双方の図に各色2本ずつ線があるのは、上りと下りを同時に図示したためです。
図3. 東京方面-宇都宮線の列車と新宿方面-高崎線の列車の組み合わせ
図4. 東京方面-高崎線の列車と新宿方面-宇都宮線の列車の組み合わせ
図3、図4とも平面交差が生じず、そして同一ホーム(下り8、9番線、上り3、4番線)に発着していますね。
小規模改良に関する質疑応答
ここで、恒例の質疑応答コーナーです。読者の疑問点に先回りして答える、さすが私です(頭いいー)。
Q. 配線変更のスペースはあるのか?
A. 前面展望の動画を見る限り、そのスペースがありそうです。そこから可能と判断し、今回執筆いたしました。
→上の記述に写真を掲載しましたので、そのスペースがあることがお分かりいただけると思います。
Q. 朝ラッシュ時(上り)はどうするのか?
A. 朝ラッシュ時上りは多くの列車が運行されているため、相互接続はなくとも良いでしょう。そのため、高崎線からの列車は6,7番線に発着させてホーム上の混雑を緩和することを想定しています。
Q. 相互接続を行うとダイヤ乱れが広がりやすくなるが、どう考えるか?
A. 相互に接続する際は、接続時間を1分くらい取るとともに、到着と発車を30秒程度変えれば、小規模なダイヤ乱れには対応できるでしょう。ダイヤがある程度乱れたら、元々線路を共有している以上、ダイヤ乱れは波及するので、腹をくくるしかありません。
Q. 乗り間違いはどうするの?
A. 現状の11番線や上りは行き先ごとに番線が分かれていません。現状で番線ごとに方面が分けられているのは、8番線(高崎線)と9番線(宇都宮線)のみです。図3では8番線から宇都宮線、9番線から高崎線が発車しており、現状と比較して乗り間違いの危険性は上がります。しかし、別ホームから発車することが減る(ホームを探す手間が省ける)ため、乗り間違いしやすくなる利便性低下と相殺されるでしょう(今回の検討で最も懸念している点です)。
人間という生き物は「慣れる」という得意技があります。だから「9番線からの高崎線がある」(あるいは8番線からの宇都宮線がある)という意識が利用者に根付けば何とかなるでしょう。
→この解決策は後述します。
Q. さっきの答えは最後がうやむやだが?
A. そんな回答に慣れてください。
大宮駅の大規模改良
さっきの案の場合は、大宮駅そのもので発車ホームが異なるという問題点がありました。これに関して、さらなる設備改良を実施すれば、解決します。
大宮駅南側改良による下り発車番線の統一
大宮駅南側の配線を改良した場合、下り列車の誤乗車を防止しやすくなることに気づきました。以下、その概要をまとめます。
その配線図を簡単に描いてみましょう(図5)。
図5. 大宮駅南側を改良した場合の配線図(赤色が新設部分)
小竹向原と同様に、立体交差で双方の線路を入れ替えます。このようにすれば、北側にポイントを設置する必要はなくなります。立体交差にするためにはスペースが必要ですが、大宮駅南側の旅客線下りと貨物線下りの間には2線ぶんの空間が存在するため、問題なさそうです。
このようにすると、当初案の弱点の1つである誤乗という問題点(9番線からの高崎線、8番線からの宇都宮線という組み合わせが発生し、同じ番線から別の方向の列車が発車する)が解消できます。始発駅はともかくとして、宇都宮線は9番線、高崎線は8番線と固定できるのです。
大宮駅北側改良による上り発車番線の統一
しかし、この案では上りの発車番線は固定できません。そこで、上り回送線を本線として宇都宮線の上り本線を廃止し、そのスペースに高崎線の上り線を設置するということも可能です(図6)。
図6. 上下線ともに大宮駅手前で振り分けて発車番線を統一する配線図
発車番線は以下のようにできます。
3番線:(宇都宮・高崎線)東京方面
4番線:(湘南新宿ライン)新宿方面
6番線:(高崎線のみ) 東京方面 ※朝の上りのみ
7番線:(湘南新宿ライン)新宿方面 ※朝の上りのみ
8番線:(高崎線) 高崎方面
9番線:(宇都宮線) 宇都宮方面
11番線:予備ホーム(主に新宿方面からの列車が使用)
この場合、朝ラッシュ時の上りを除いて、以下のことを実現できます。
・ホーム統一:東京方面は3番線、新宿方面は4番線、高崎線は8番線、宇都宮線は9番線
・各系統の乗り換えも同一ホームで可能:例えば、東京方面-高崎線の列車と新宿方面-宇都宮線の列車が接続可能
・平面交差なし:どの組み合わせであっても同時発着が可能。これにより、ダイヤ乱れの波及が最小限
工事費は最大となりますが、最も利便性が高い案でしょう。
コメント
貨物列車について全く検討されていない!!
却下!!
やり直し!!
貴重なご指摘ありがとうございます。
私案ではポイントを増加させており、減少はさせていません。そのため、現状の進路構成は可能となっています。貨物列車に対する詳細な検討は実施していませんが、現状の進路構成で貨物列車が運行できていますので、問題ないと認識しております。
現状、5番と10番は貨物列車の有効長ギリギリなんで、ポイント増設は無理です。繁忙期の貨物列車の長さをご存知無いようで。あと信号回路も考慮しましょう。
名無しの回送列車さま、コメントありがとうございます。
貨物列車の長さという観点はありませんでした。そのような観点からのご指摘感謝いたします。ただし、大宮で待避しなければ、有効長の話は全く関係ないことです。
やはり、大宮の配線は貨物列車全盛期に適正化された配線であることを実感いたしました。私の改善策にこだわるつもりはありませんが、朝ラッシュ時を除いた時間帯の対面乗りかえと、発車ホーム統一を行ってもらって、さらに便利になってほしいですね(これで損する利用者はいないですよね)。
配線の複雑な大宮駅にこだわらなくても、浦和駅前後で東北本線北行きと湘南新宿ライン南行きの線路を立体交差で入れ替えて浦和駅4番線に湘南新宿ライン南行き、浦和駅5番線に東北本線北行きを入線させれば接続できるのでは?
スペース的にも北浦和付近とか南浦和、蕨付近の任意の場所で立体交差させればいいので。
匿名さま、コメントありがとうございます。
おっしゃるように、大宮以外でもそのようなことはやろうとすればできると思います。しかし、大宮では立体交差の新設なしに乗りかえ利便性向上が可能です。そのため、本記事では大宮に着目させていただきました。
これからもごひいきのほど、お願いいたします。
おかげで大宮駅の配線がよくわかりました。ありがとうございます。
ポイントを増設(小規模改良)したとしても、(湘南新宿or上野東京)×(宇都宮or高崎)という4種類のルートをさばく設備が上り下りともに「駅を出た方向にしかない」ということなんですね。
欧米のように右側通行だったら設備はこのままで両方向とも発車ホームを固定できる、と考えると惜しい…
kさま、コメントありがとうございます。そして、返信が遅れて申し訳ありません。
おっしゃるとおり、ポイントが「駅を出た方向にしかない」というのは難点です。確かに、ドイツのように右側通行だと良いですよね。
なお、欧州でも左側通行の国は多くあります。スイス、フランス(ドイツ時代に複線化された東部を除く)、ベルギーなどです。
湘南新宿は全て宇都宮線へ、上野東京は全て高崎線へというパターンなら大宮駅同時乗り換えの配線は大幅に楽になりそうかと思いますがどうですかね?
東京行きたいのに、新宿方面来て結局大宮で、乗り換えるはめになる(その逆もあり)、そんなことが多いダイヤなので、この際だからダイヤ乱れ対策もかねてと進行方向の統一もありかなと思うのですが…
結局乗り換えさま
コメントありがとうございます。
・湘南新宿ラインの設定本数が物理的に限られる
・歴史的に上野発着が定着しており(東京直通も上野発着の上位互換です)、それを廃止するわけにはいかない
・宇都宮線と高崎線の扱いを同等としたい
ということから系統別に経由地を固定するのは難しそうに感じます。
したがって、乗りかえを容易にし、有効本数を増やすのが正道と考えます。