2019年3月16日にダイヤ改正が行われる東武東上線。川越特急の設定や土休日の終電繰り下げなどに湧いていますが、その影でひっそりと姿を消すものがあります。そのものについて追ってみました。また、単に「さよなら」で終わらず、新旧ダイヤの変化点も探っています。
写真1. 川越市に到着する快速
夕方の上り快速の存在
時は2013年3月ダイヤ改正にさかのぼります。このダイヤ改正時に東急東横線と地下鉄副都心線の相互直通運転が開始されました。それと時を同じくして突然快速の運転が開始されました。快速は川越市以北の拠点駅のスピードアップを目的とした種別で、日中時間帯を中心に運転されました。そう、日中時間帯「中心」です。夕方に上り2本だけ快速の運転がありました。その後2回ダイヤ改正がありましたが、大きく時刻が変動することはありませんでした。せっかくなので、その履歴についてまとめましょう。
1) 2013年4月ダイヤ改正(設定当初)
小川町17:10 → 川越17:48 → 池袋18:19
小川町18:13 → 川越18:48 → 池袋19:20
2) 2015年1月ダイヤ修正
小川町17:10 → 川越17:46 → 池袋18:19
小川町18:11 → 川越18:47 → 池袋19:20
3) 2016年3月ダイヤ改正
小川町17:11 → 川越17:48 → 池袋18:19
小川町18:13 → 川越18:48 → 池袋19:19
ダイヤ改正前と比較して変化点のある箇所については、下線で示しています。2015年1月ダイヤ改正ではATC化に伴うスピードダウン、2016年3月ダイヤ改正では地下鉄直通急行の設定や上りTJライナーの設定がありました(そしてスピードダウンぶんより気持ちスピードアップしています)。しかし、いずれも夕方上り快速には大きく手を加えられていません。特に、18:19着の快速については2013年の設定開始直後から全く到着時刻は変わっていません。このように、夕方の上り快速は6年間ほぼ無風でした。
川越特急の設定
そのような無風状態にあった夕方の上り快速ですが、ついに2019年3月16日ダイヤ改正でメスが入ることになりました。川越以南で主力速達列車である急行と同等の役割を担い、川越以北で速達輸送を担うという快速の役割は(ダイヤ設定上は使いやすいものの)やや中途半端だったためでしょう。今回のダイヤ改正で川越と都心をスピーディーに結ぶ川越特急の設定で、夕方の上り快速は役割を終えました。この時間帯に設定される川越特急の池袋到着時刻は18:19と19:19で、ダイヤ改正前の快速の池袋到着時刻と全く同じです。
なお、川越特急の設定で川越特急通過駅はサービスダウンが見込まれますが、フォローがあるか確認しましょう。
川越以北:川越特急が通過する快速停車駅は若葉だけなので、特になし(細かなフォローは後述します)
川越以南:川越特急が通過する快速停車駅は多いものの、準急や急行の増発はなし
このように、川越特急を設定することによる通過駅のフォローはありません。この時間帯の急行は定員着席という程度ですので、増発には踏み切らなかったのでしょう。余談ですが、この時間帯は快速急行と川越特急が交互に、そして両者合わせてほぼ30分間隔でやってきます。川越以南で両者に共通の途中停車駅はありませんので、乗り間違いがやや心配です。
川越特急の設定に伴う時刻の変更
2016年3月ダイヤ改正と同じノリで時刻変更箇所をまとめましょう。列車本数の少ない川越以北を対象として、全列車が停車する坂戸で考えることにします。坂戸断面で17時台と18時台でまとめています。
表1. ダイヤ改正前後の坂戸発車時刻比較
急行の時刻が変わらないこと、快速がそのまま川越特急に置き換わっていることがわかります。また、18時台の快速急行に接続する普通が設定されたこと、川越特急に接続する準急が設定されたこともポイントでしょう。全体的に通過駅のフォローが手厚くなっているように感じます。なお、川越特急の直前の普通はふじみ野まで先行します。川越市断面でもう1本後の電車を接続電車にすると、川越以北の各駅から池袋までの所要時間が短縮されます(※)。これをやらないのは、川越市以北で当該の普通を急行の続行運転にすることにより、川越市で川越特急にあまり乗らせずに、川越から川越特急に乗る人に座席を提供しようというものでしょう(※)。
※例えば、川越特急に接続するのは坂戸17:34発普通です。当該の普通を川越市始発に短縮し、かわりに次の準急を森林公園始発にする(17:37発準急に振り替える)と、川越以北の通過駅から池袋までの所要時間は3分短縮します。こうすると、当該の接続電車の乗客の数は単純計算で1.5倍になってしまい(前列車間隔が6分から9分になるため)、川越市で乗りかえる乗客も1.5倍になってしまうということです。そうすれば、川越からの乗客がありつける座席の数も減ってしまいます(川越観光の起点は川越市駅ではなく、川越駅です)。
このように、華々しい川越特急のデビューを前にして、夕方の上り快速は時代の隙間にうもれていくのです。このダイヤ改正が沿線で勤務する人だけでなく、川越観光のウエイトもある程度無視できないことを示すものになっていくのでしょう。このように、鉄道は少しずつその役割を変えていき、時代の変化に適応するのです。