上野東京ラインについて考える~将来的な外的要因の変化と対応策案

記事上部注釈
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では、将来は上野東京ライン周辺で何が起こり、それに対して何をすべきなのか?

上野東京ラインに大きな影響を与えるものは、以下の通りだと私は考えます。

1) 北海道新幹線、北陸新幹線の延伸
2) 東京‐大阪間のリニア開業
3) 圏央道を中心とする郊外‐郊外の道路網の発達(私はこれについてはあまり詳しくありません)
4) JRの羽田直結構想

それでは、それぞれの変化が上野東京ラインにどのような影響をもたらすのか、軽く見ていきましょう。
※ここでは整備新幹線や道路網の整備など外的要因の議論はいたしません。あくまでも「建設された後の影響を占う」という観点から述べるに留めます。

新幹線延伸の影響

E5系、新青森
写真1.北海道新幹線に使用されているE5系

「どうしてこれが上野東京ラインに影響するの?」、そう思った読者さま、さすがです。私のブログを読みすぎて疑うことを覚えてしまったのですね。
※そりゃあ、私の書くことが信用できない、それは当然です(書いていて自分で悲しくなりました)。

例として、北海道新幹線で取り上げましょう。現在、北海道新幹線は道南地区まで伸びています。道南地区は人口が少なく、絶対的な需要は少ないです。これが人口の多い道央地区(札幌地区)まで直結したら、若干ながら航空機から新幹線にシフトするでしょう。

ここで上野東京ライン的に重要なのは、新幹線の根元の需要が増えるということです。私の試算では、毎時200人~毎時400人相当となります。

では、毎時200人~400人の乗客を新たに受け入れる余地はあるのでしょうか?おそらく難しいと思います。大宮以南では2系統が合流するため、増発に限界がありますし、増結するにも北海道新幹線は10両編成以上にはできません(敢えてやるとすれば盛岡以南でE7系を併結した17両にするとかでしょうか)。
じゃあ、「満席お断り、よろしく!」とするのでしょうか?それでは何のために新幹線を延伸させたのかがわかりません。
1つの手法が近距離利用を不便にして、遠距離利用の受入枠を確保するという方法です。つまり、近距離利用の毎時200人~400人を排除することで、遠距離利用の毎時200人~400人の乗客を新たに受け入れるということです。新幹線から近距離利用の毎時200人~400人を排除すると書きましたが、そんなことができるのでしょうか?在来線を有効活用すれば緩やかな誘導は可能と見ています。

東京‐宇都宮の移動を在来線に誘導できるか

新幹線と在来線を比較して、「在来線が使える」と思わせることができれば、在来線にシフトしますね。そのたmに、新幹線と在来線を比較しましょう。

a) 現状把握

ものの教えによると、まず行うべきことは現状把握である、そう言われます。その教えに従い、現状の東京‐宇都宮の所要時間を見てみます。

(新幹線)
東京‐宇都宮 所要時間50分~53分 毎時3本
(在来線)
東京‐宇都宮 所要時間110分程度 毎時1本程度(直通の普通利用)
これでは話になりません。逆に言うと、小さな改善でも効果があるのかもしれません。
東京に停車中の宇都宮線
写真2.東京に到着する普通電車(イメージ)

改善提案

では、在来線に改良を加えましょう。現在、湘南新宿ライン直通の快速を運転していますが、これを東京方面にも設定し、東京‐大宮でも快速運転したらどうでしょうか?16年3月時点でのダイヤでわずかながら東京直通の快速ラビットが存在します。この所要時間は94分です。これを日中時間帯に設定すると、移動時間が110分程度から94分まで短縮します。実際には上野‐宇都宮でもう3分早い便も存在しますから、91分で走破することができます。

目的は東京‐宇都宮の新幹線乗客を在来線に誘導することですから、宇都宮線自体の乗客は増加することになります。そのため、総本数は増加させることが可能であり、本数を維持するために末端区間各駅停車にこだわる必要はありません。したがって、小山‐宇都宮をノンストップあるいは石橋のみ停車とすると、4分ほど短縮します。また、全区間で120km/h運転を行えば、1km当たり2秒の所要時間短縮(※)としても、200秒、すなわち3分短縮できます。これらの合計が7分短縮という数字になり、東京‐宇都宮の所要時間84分が可能となります。
※100km/hから120km/hまで速度を向上させると、本来は1km当たり6秒短縮できます。

このような快速電車(東京-宇都宮を高速運転する速達列車。この際、名称は何でも構いません)を30分間隔で運転すれば、新幹線の乗客のうちの一部は在来線に移るはずです。確かに新幹線と比べて30分余計にかかりますが、新幹線自由席約2400円を節約できます。ちょうど、現在の普通電車110分、改善後快速電車80分、新幹線50分と、現行の在来線と新幹線の中間程度の所要時間となるのです。こうすれば、北海道新幹線延伸で増加する乗客を輸送できることになります。

原則的に、このような高速運転する快速電車は宇都宮折り返しで良いと思いますが、休日の朝下りと夕方上りは例外的に黒磯直通としても良いでしょう。休日の朝下りと夕方上りの新幹線は混雑するためです。

今回は北海道新幹線について述べましたが、北陸新幹線も同様の議論が成立するでしょう。

東京‐大阪間のリニア開業

リニア開業の影響

速い列車の象徴500系
写真3. 速い列車のイメージ(500系)

ここでも北海道新幹線と同様、リニアについての是非は論じません。JR東海や日本国の意図で決められたからそれは変えられないという前提で考えます(これを議論の単純化というのでしょう、私は単純な人間なのです)。リニア開業で東京‐名古屋‐大阪の乗客の大半はリニアに移行するでしょう。「新幹線よりリニアのほうが高いのでは?」という指摘もありますが、交通論の教科書によると値段よりも所要時間を選択するようです(とどこかのサイトで拝見しました)。そのため、ある程度の乗客はリニアに移行すると考えられます。

では、リニアに移行したら既存の東海道新幹線はどうなるのでしょうか?おそらくのぞみ号を減少させて、ひかり号を増加させることでしょう。ひかり号を増加させる、それは途中駅の利便性が向上することを示します。

東海道新幹線の途中駅の利便性向上 = 在来線の乗客が奪われる ことが想定されます。JR東海管内では自社の在来線から自社の新幹線に移行するだけで問題はありません。JR東海的には収入が増えて結果オーライということです。ただし、東京‐熱海ではそのようにはいきません。在来線はJR東日本、新幹線はJR東海と別会社です。ここで、乗客を新幹線誘導しては損になってしまいます。これらの要素を考慮しますと、東海道線は新幹線よりも便利にしなくてはなりません。

リニア開業の影響の具体化と対応策

小田原への所要時間の現状

さきほど、私は所要時間が重要と述べました。ここでは、新幹線停車駅であり神奈川県西側の主要駅である小田原に焦点を絞ります。

(新幹線)
東京‐小田原 所要時間35分 毎時2~3本
(在来線)
東京‐小田原 所要時間74分 毎時1本(快速アクティ、その他毎時4回程度所要時間80~90分程度の普通電車が存在)

これでは、はるかに見劣りしてしまいます。

小田原への所要時間短縮の可能性

まずは、現状以上の所要時間にできないか考察しましょう。例えば、120km/h運転を行えば、大船‐小田原で2分短縮できます(120km/h運転を行っている湘南新宿ライン特別快速は大船‐小田原で快速アクティよりも2分早いのです)。また、211系時代には東京‐横浜で24分で結んでいたのにも関わらず、現在は26分も掛けています。これを120km/h前提のダイヤとすれば、23分で結べるでしょう(これだけで3分の短縮です)。横浜‐大船でも1分短縮できるでしょう。これらの合計で6分短縮が実現できます。

次に、停車駅の再考です。例えば、国府津に停車する必要はあるのでしょうか(何も知らない私は両隣の快速停車駅の平塚と小田原よりも大幅に駅前の発展度合いが違うように見えてしまいます)?そのように停車駅を厳選すれば、5駅通過で7分程度所要時間を短縮できます。

これらの努力で現状から13分短縮できることが分かりました。このような快速電車を毎時2本運転すれば、以下のようになるでしょう。

(新幹線)
東京‐小田原 所要時間35分 毎時3~4本
※小田原停車のひかり号が毎時1本増加すると仮定しています。
(在来線)
東京‐小田原 所要時間61分 毎時2本(その他に新宿直通の速達列車は存続させると仮定します)
所要時間の差が26分で料金差が1730円であれば、それなりに在来線を選択する利用者もいることでしょう。

圏央道を中心とする郊外‐郊外の道路網の発達

高速道路の驚異

圏央道の開通によって、白岡久喜JCT~茅ヶ崎海岸までの所要時間は約85分とされています。
※私は道路事情には疎いので、ネット上の情報を鵜呑みにしています。こんなもんとご理解ください。

鉄道に対応するとしたら、久喜~茅ヶ崎ですね。
所要時間を見てみましょう。高速道路(正確を期すなら圏央道は自動車道なんですよね)の所要時間は渋滞のない日中時間帯なのでしょう。そのため、鉄道側も日中時間帯で考えます。

(上野東京ライン開業前、所要時間118分) 久喜11:26→戸塚13:01/13:08→茅ヶ崎13:24
(上野東京ライン開業後、所要時間111分) 久喜11:40→茅ヶ崎13:31

上野東京ライン開業で乗り換えなしになりましたが、所要時間は110分程度と言えましょう。高速道路を経由した場合の所要時間は85分程度です。鉄道のほうが25分も遅いのです。

現実問題として、久喜~茅ヶ崎を移動する人の割合はそう多くないでしょうし、渋滞が生じることも多々あるでしょう。そのため、この結果を必要以上に大きく捉える必要はないと思います。それでも、首都圏で有数の高速運転を行う幹線の所要時間が高速道路に惨敗したことは事実です。首都圏は3000万人が暮らし、経済活動も活発です。結局、交通は人口と経済規模に依存しますから、首都圏の東京以外-東京以外の輸送も多いことでしょう。
※以前、朝から吉川で用事がありましたが、朝方の南浦和→南越谷の流動の多さに驚きました(ラッシュの逆方向です)。

そのため、これからは郊外-郊外の輸送も考える時期に来ていることでしょう。だからといって第二山手線(23区外縁部分を結ぶ路線)や第二武蔵野線(圏央道的ルートを経由する路線)を建設せよとは考えません。この流れが東京メガループ(横浜線、南武線、武蔵野線、京葉線)の活用なのでしょう。

話が脇に逸れてしまいました。本題の上野東京ラインに戻しますと、郊外から郊外への輸送も考える時にきているでしょう。では、具体的な方策は何でしょうか?私なりには、以下のことが考えられます。

郊外-郊外を結ぶ速達快速の設定

郊外の宇都宮と小田原を移動することを考えてみましょう。現在のダイヤでは、以下の通りです。

宇都宮11:36→大宮12:41/12:43→小田原14:44 (所要時間188分)
参考までに、宇都宮IC(東北道)から小田原IC(西湘バイパス)までは通常時165分のようです。

もしも、速達快速を設定したら、東京-小田原は61分、東京-宇都宮は84分となっていますから、東京での停車時間が2分だとしても、147分となります。高速道路利用の場合と比較しても早いです。
これはあくまでも一例です。郊外の都市同士の移動がたやすくなるのです。もちろん、上野東京ラインで直結した都市間しか適用できませんが、それでも効果は大きいでしょう。

b) 大宮などでの接続改善

「大宮駅改良」について構内の配線改良について記しました。ここでは様々な方策を行うことにより、同一ホームでの高崎線と宇都宮線の相互接続を可能にするというものでした。どうしても郊外と郊外を結ぶ特定の系統の本数は満足できるものではないでしょう。それを克服する1つの対策は、要乗り換え列車も含めて本数を確保するというものです。また、戸塚での接続を確保するというダイヤ上のテクニックもあります。速達列車の相互接続に重点を置いたダイヤ構成で速達列車の効力を効果的に波及させるのも1つの手法でしょう。

これらは、従来の方策(といっても私がほざいでいるだけですが…)と矛盾しないことから、その点も好都合と言えます。9/5の夕方の上りに小山→赤羽間で乗車しましたが、夕方の上りにも関わらず長距離(少なくとも小山-池袋)を乗り通している方が多く見受けられたように感じます。やはり、長距離を結ぶ快速列車の設定はそれなりに理に適っていると言えましょう。

JRの羽田直結構想

ここまでのダイヤ案を見た人ならば、「常磐線を無視しているのでは?」「羽田直通を無視しているのでは?」と感じたことでしょう。ここでは、これらについて述べましょう。
常磐線の主力E531系

写真2. 常磐線に使用されるE531系電車(水戸線で撮影したことは秘密)

羽田直通について

基本的な知識と意義について最初に記しています。まずはご確認ください。

a) 羽田直結の中身

現在羽田空港(正式には東京国際空港ですが、このように呼びます)に直結している鉄道路線は東京モノレールと京浜急行です。これに追加してJRが自腹(かな?)で東京や新宿に直結させるという計画です。

羽田直結新線の概要

図1. 羽田空港アクセス線の概要

「西山手ルート」は新宿方面に伸び、「東山手ルート」は東京方面に伸び、「臨海部ルート」はお台場方面に伸びるとされています。上野東京ラインに関する内容は「東山手ルート」ですので、今回はそこにスポットを当てましょう。
東山手ルートは羽田空港から何らかの方法で田町付近まで建設または活用し(無責任な書き方ですね)、田町から北側は既存の東海道線に入るというものです。羽田空港から東京まで行く際は、新橋・東京の両駅は既存の東海道線ホームに着くというのがミソです。

b) 羽田直結の必要性(私見)

話は変わりますが、今の日本は「海外からの訪問客を呼んで、日本の魅力を感じてお金を落としてもらおう」という方向に動いています(この政府の方針についてここでは論じません)。海外から来た金づる訪問客の多くは航空機で来日することでしょう。訪日客が空港に着いて、「ここから中心駅にはどうすれば良いのか?」と不安になることでしょう(私もドイツで同様の感想を抱きました)。私のようなマニアであれば何とでもなりますが、初めて日本にきた人は乗り換え前提であれば何とかならないかもしれません。そのため、東京の中心地の東京駅や新宿駅に直結する路線が必要なのです。

簡単に言うと、「東京に初めてお越しいただいた訪日客が迷わない」ようにするために必要ではないか、というのが私の考えです。

羽田直結のダイヤ

ここまで長々と羽田アクセス新線について述べました。いよいよ、具体的なダイヤ論に入りましょう。
※誰もそんなダイヤ論に期待していない、そんな声は例によって黙殺します。

結論から申し上げると、羽田直結の系統は常磐線と高崎線特急に充当したほうが良いと考えます。その根拠は以下の4点です。

ⅰ) 赤羽や大宮は埼京線でもカバー可能なため
ⅱ) 大宮方面から羽田空港アクセスを便利にしてしまうと、東北新幹線や北陸新幹線に悪影響が出るため

どうしても大宮方面への速達輸送が欲しいというニーズに応えるために、上野発着の高崎線特急(現在は本数が限られていますが、草津方面・前橋直通とも毎時1本欲しいところです)を羽田空港まで延伸するのです。また、常磐線の中距離電車も毎時4本羽田空港に直通させるのです。普通電車は新橋には停車させるが、特急列車は新橋には停車させない、そのような運用としましょう。
北側の観点から見ると、羽田空港行きも品川行きも東京・新橋両駅を通るので、品川行きを羽田空港行きに振り替えても品川駅そのものに行かなくなるだけです。そのため、利便性が極端に変化することもないでしょう。

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