2020年3月ダイヤ改正における札幌都市圏の変化

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念願のエアポート増発が行われる2020年3月ダイヤ改正。では、実際にはどのようなダイヤになるのでしょうか。脚光の浴びていない小樽方面、江別方面についても解析しました。

733系

写真1. 札幌近郊の主力、733系電車(2019年に撮影)

ダイヤ改正の概要

ダイヤ改正の概要は以下の通りです。

快速エアポートは毎時4本から毎時5本に増発
・函館本線の区間快速は廃止(減便ではなく廃止)
 →約半数の普通が増発となり、区間快速停車駅は減便、区間快速通過駅は増便
・札幌-小樽間の速達輸送確保の意味で、快速エアポートの運転時間帯拡大

なお、本記事で扱う範囲は、小樽、石狩当別、岩見沢、新千歳空港、苫小牧としますが、必要によってそれ以外の範囲についても取り上げます。

快速エアポートの増発は望まれていた内容です。JR北海道の稼ぎ頭であり、混んでいる新千歳空港-札幌の快速エアポートの増発がようやく実現したか、という思いです。新千歳空港駅開業以来、基本的に毎時4本ということは変わりませんが、4両の特急車(781系)については、5両の特急車(785系や789系)に置換し、その後は6両の通勤車に置き換えています。「毎時4本」という看板は変わらないものの、JR北海道は輸送力増強の努力をしてきたことは事実です。

ただし、経営環境の厳しいJR北海道のことです。快速エアポート増発に対して車両も増備していませんし、人員も限られています。では、どのように快速エアポートを増発するのでしょうか。答えは、区間快速の減便です。区間快速を小樽-江別で減便(※)することで、エアポート運転の人員に充当しています。ただし、単純な区間快速の減便ではイメージが悪いと考えたのか、半数は普通に格下げしています。

※実際は小樽-江別で快速運転する列車はありませんが、考えかたの整理という意味でこのような表現としました。

ただし、札幌-小樽の速達輸送は重要です。ダイヤ改正前は札幌発9時台には快速エアポートの快速運転はなく、区間快速による速達輸送が行われていました。区間快速がなくなると、この時間帯の速達サービスがなくなります。札幌発9時台の速達サービスを維持するために、快速エアポートの運転時間帯を拡大しています。

以下、各項目について解析いたします。

快速エアポートの増発

快速エアポートが増発されています。1時間に4本の15分間隔運転から、1時間に5本の約12分間隔を実現しています。また、一部の増発列車を特別快速として運転していて、空港輸送客と沿線利用客を分離しています。

721系快速エアポート

写真2. 現在も721系電車も使われる(2019年に撮影)

快速エアポートの増発

快速エアポートの増発はわかりましたが、実際はどのようなダイヤとなっているのでしょうか。以下にその実態を示します。

快速エアポートの運転時刻は以下の通りとなっています。

・新千歳空港発9:06~20:06までは完全12分間隔で発車
・札幌発9:00~19:23までは毎時00、11、23、35、47分に発車(ただし例外1-2分程度の時刻あり)

従来は必ず15分待たされることを考えると、最大14分待ちとなる新ダイヤはその点は改善です。ただし、札幌発も12分間隔に統一してほしかったという思いもありますが、貨物列車などが入る千歳線のことですから、この程度が精一杯なのでしょう。

ただし、所要時間が増加しているのは気になります。従来は37分で統一されていたのが、2分所要時間が伸びる列車も発生しています。

具体的に12時台のダイヤで見てみましょう。

札幌12:00→新千歳空港12:38(+1分)
札幌12:12→新千歳空港12:50(+1分)
札幌12:24→新千歳空港13:02(+1分)
札幌12:36→新千歳空港13:14(+1分)
札幌12:47→新千歳空港13:26(+2分)

新千歳空港12:06→札幌12:45(+2分)
新千歳空港12:18→札幌12:57(+2分)
新千歳空港12:30→札幌13:08(+1分)
新千歳空港12:42→札幌13:21(+2分)
新千歳空港12:54→札幌13:31(±0分)

新千歳空港行きで平均1.2分、札幌方面行きで平均1.4分所要時間が増加しています。せっかく平均待ち時間が7.5分から6.0分に1.5分短縮されていても、所要時間が1.0分以上増加してしまっては、トータルの移動時間はそこまで変わりません。これは増発の効果を削ぐものであまり良いものではありません。これは残念なことです。以前の恵庭に停車しつつの36分運転維持時代からみると後退しているように思えてしまいます(※)。

※当時は最高速度130km/h運転、現在は「安全性向上」のための120km/h運転という事情は理解しています。

増発ぶんは特別快速として運転して所要時間を短縮する手もありますが、後述する普通の減便という事情もあるので、その手は使えなかったのでしょう。

余談ですが、快速エアポートの号数設定は121号のように、時刻が反映されたものです。121号であれば、12時台の下り1本目という意味です。従来は、末尾が8や9の号数設定のエアポートはありませんでした(※)が、今回は史上初の末尾8と9の号数設定の快速エアポートが設定されます。つまり、129号のような設定が史上初ということです。

このように御託を並べましたが、毎時4本から毎時5本への増発、それによる混雑緩和は素直に喜びたいものです。

特別快速の設定

札幌-新千歳空港で新札幌と南千歳のみに停車する特別快速が設定されます。1日2往復の運転です。

札幌6:56→新千歳空港7:29
札幌8:02→新千歳空港8:37

新千歳空港20:46→札幌21:19
新千歳空港21:55→札幌22:30

最速33分、遅くとも35分で結び、どの列車をとっても史上初の所要時間です(今までは35分以下の所要時間の列車はない)。

日中時間帯の設定はなく、朝に札幌を出る2本と夜に新千歳空港を出る2本がその対象です。これだけ本数が少ないと、チャンピオンデータのための列車という気もします。本当に所要時間33分を実感してもらいたいのであれば、毎時1本は特別快速を設定するべきものでしょう。

区間快速の廃止

快速エアポートの増発の車両と人員はどこから持ってくるのでしょうか。答えは函館本線の区間快速を廃止することにありました。3両編成の区間快速を廃止して、6両編成の快速エアポートの増発に充てるという算段です。また、札幌から見ると区間快速の通過駅は4駅ずつしかなく、所要時間短縮の効果がそこまで大きくないというのもこの理由でしょう。

快速エアポートの増発ぶんをまかなうには、毎時1本の削減でじゅうぶんです。そうすると区間快速は毎時1本の運転です。毎時1本ではあっても利用しにくいです。そうであれば、残った毎時1本は普通に建て替えるというのが得策というものです。そのような理由なのか、毎時2本の区間快速を廃止して、毎時1本の普通を増発という流れになっています。逆にいうと、区間快速通過駅にとってみては増発となりました。

本数の増減を表にまとめます。まずは手稲方面です(表1)。

表1. 日中時間帯の運転本数(札幌-手稲)

種別 ダイヤ改正前 ダイヤ改正後
快速エアポート 2本 2本
区間快速 2本 0本
普通 4本 5本

区間快速が減少していて、札幌-手稲の速達列車は毎時4本から毎時2本に減少してます。また、快速エアポートはきれいな30分間隔から25分-35分間隔(時間帯によって前後あり)となっています。35分開くほうに普通を3本挿入、25分開くほうに普通を2本挿入していて、普通は15分以上の間隔が開かないような工夫はなされています。

残念なのは、毎時○分発と時刻が決まっていない点です。これだとちょっと利用しにくいです。札幌圏は車社会です。トータルの本数が減るのは仕方ないにしても、毎時○分発とパターン化していないのは車社会の中、鉄道が不便に感じられる1つの要素となりそうで不安です。

次に、江別方面です(表2)。

表2. 日中時間帯の運転本数(札幌-江別)

種別 ダイヤ改正前 ダイヤ改正後
区間快速 2本 0本
普通 3本 4本

区間快速が消滅することで、札幌-江別の速達サービスは消滅しました。では、どの程度所要時間に影響しているのでしょうか。具体的に1本の列車を取り上げて、解析します。

(改正前)札幌12:36→江別12:55
(改正後)札幌12:37→江別13:00

所要時間は4分の増加です。普通の所要時間は増減はあまりありません。札幌圏の電車の走りはそこまで速いものではありません(再加速はあまり見られません)。ここに手を加えることで、普通の所要時間を1分程度短縮し、少しでも速達サービスを維持することも可能でしょうが、遅れを考慮してそこまではしませんでした。この点はやや残念です。

残った普通はおおむね15分間隔で運転され、札幌-江別のどの駅でも15分程度待つことで利用できるのは改善点です。トータルでは減便となりますが、等間隔運転を目指していて最低限の利便性を確保(場合によっては利便性向上)しようという意図が伝わります。可能であれば、毎時○分発とパターン化して、車社会の中でも少しでも鉄道が便利に感じられる要素を増やしてもらいたいものです。

733系と735系

写真3. 733系と735系(よく見ると違いますね)

小樽方面の速達サービスの維持

江別方面の速達輸送は(岩見沢限定ですが)特急というサービスも提供されます。一方、小樽にはそれがなく、小樽が観光都市である以上、日中時間帯でも速達輸送が必要です。日中時間帯そのものは快速エアポートによる速達輸送が実施されていますが、朝に近い時間帯についてはそれがなく、区間快速による速達輸送が行われていました。しかし、今回はその区間快速がなくなりました。では、この時間帯の速達輸送は?

答えは快速エアポートの運転時間帯拡大です。従来、以下の区間快速が運転されていて、朝の時間帯の札幌-小樽の速達輸送を担っていました。

ダイヤ改正前 (区間快速)札幌9:26→小樽10:07
ダイヤ改正後 (快速エアポート)札幌9:12→小樽9:44
(快速エアポート)札幌9:44→小樽10:22

札幌9時台の速達列車が倍増し、なおかつ手稲-小樽も速達化がなされていますので、小樽に行く人にとっては便利です。特にこの時間帯であれば、小樽への日帰り観光には便利な時間帯です。ただし、片方の快速の所要時間が38分とダイヤ改正前の所要時間32分よりも増えているのが疑問です。このように所要時間が増えている例は他にもあります。スピードは鉄道の貴重な武器です。これをみすみす捨てるのはいかがなのものかと思います。

では、快速エアポート設定による小樽方面の普通の運転間隔はどうでしょうか。簡単に見ていきましょう。

(改正前) 9:03(手稲行)、9:10(小樽行)、9:19(手稲行)、9:32(ほしみ行)、9:40(小樽行)、9:48(手稲行)、9:55(ほしみ行)
(改正後) 9:03(手稲行)、9:16(小樽行)、9:26(ほしみ行)、9:38(ほしみ行)、9:49(小樽行)、9:56(手稲行)

手稲-小樽の全駅に停車する列車が3本(区間快速も含む)から2本に減っています。また、手稲までの各駅へは1本の減便となっていて、これは区間快速1本から快速エアポート2本に振り替えられたぶんを含めると、特に増減はありません。いいかたを変えると、快速エアポートに格上げしたぶん、通過駅の乗車チャンスは減少しているということです。ただし、手稲-小樽の快速通過駅の乗車チャンスを確保するために、小樽行きそのものは増発となっています(ダイヤ改正前3本→ダイヤ改正後4本)。

小樽方面へはこのほかに速達列車があります。快速ニセコライナーです。こちらはダイヤ改正前後で増発も減便もありません。蘭越発札幌行きと、札幌発倶知安行きが設定されていることには変わりありません。

朝に運転されている蘭越発札幌行きは以下のダイヤで運転されています。

蘭越6:16→倶知安6:58→小樽8:01/8:19→札幌8:57

他の列車が倶知安-小樽を70分以上かけて走るのに対して、この快速は停車駅が同じでも63分で走破するのは立派です。しかし、その俊足も小樽での18分停車で帳消しになってしまいます。小樽で増結するのであれば、この停車時間の多さもしょうがないでしょう。しかし、この列車は小樽では増結しません。そうであれば、小樽での停車時間は5分程度で充分です。そうすれば、小樽を8:06に出発、札幌に8:44に到着というダイヤが可能です。

かわりに小樽発8:08の普通を5分繰り下げます。こうすると小樽での普通の発車時刻は7:57、8:08、8:31から7:55、8:13、8:31と運転間隔が適正化され、利用しやすくなります。小樽発で5分繰り下げたところで、手稲からは現在の時刻で運転できます。小樽発7:57の普通は札幌まで快速ニセコライナーから逃げ切るために、2分繰り上げます。

ただし、ダイヤ改正前は小樽で21分も停車していて札幌到着は9:01でした。小樽停車時間を3分削減して、小樽から札幌の所要時間も1分短縮したことそのものは改善です。

夕方の快速ニセコライナーも健在です。ただし、ダイヤ改正前と同様に、札幌→小樽を39分もかけて走っています。また、小樽での停車時間がダイヤ改正前の9分から13分に伸びています。

(改正前)札幌17:50→小樽18:29/18:38→倶知安19:46
(改正後)札幌17:50→小樽18:29/18:42→倶知安19:49

この快速ニセコライナーは高性能な車両を使っています。そうであれば、札幌を18:00ごろに発車しても倶知安に同じ時刻に着けるでしょう。そうすれば、17:30退社の企業に勤める人であれば、ニセコライナーに乗ることができて自動車利用からシフトするかもしれません。

写真4. 朝の快速ニセコライナー

千歳線普通列車の変革

快速エアポートが毎時1本増発となると、千歳線普通にはどのような影響が出るのでしょう。答えは微妙な減便でした。札幌発10:00~16:00までの本数を数えてみましょう。

(ダイヤ改正前) 千歳行き10本、苫小牧行き6本
(ダイヤ改正後) 千歳行き9本、苫小牧行き6本

このように、微妙に減便しています。そして、発車時刻はそろっていません。これは使いにくいです。この中には札幌市内の駅もあります。札幌市内の各駅のうち苗穂と白石は、おおむね15分間隔の函館本線があるから問題なし、新札幌は快速エアポートが使えるから問題なし、というスタンスなのでしょう。

それでも、(厳密な発車時刻はそろっていないものの)発車時刻がそれなりにそろっている函館本線との格差には驚かされます。北広島までは1時間に3本、千歳までは1時間に2本、千歳からは毎時1本で毎時の発車時刻をそろえると(少なくともそろえようと努力すると)利用しやすくなるでしょう。

2020年3月のダイヤ改正のまとめ

以上、簡単に2020年3月ダイヤ改正について見ていきました。このダイヤ改正は快速エアポートの増発、函館本線の区間快速通過駅以外にはメリットはあまりないものです。また、快速エアポートの所要時間増加や、快速ニセコライナーの小樽停車時間拡大など、スピードという鉄道のメリットを(やむを得ない事情にせよ)捨て去る姿勢もかいま見えました。また、発車時刻がパターンから外れ、「ちょっと不便」とも思われる残念な側面も見えてしまいました。

車両も人も限られた環境で、快速エアポート停車駅と函館本線の札幌近郊という生き残れる分野に強みを特化させようとした結果なのでしょう。しかし、所要時間の増加(人も車両も使う=極端にいえば経営資源の浪費)をよしとしたのはやや理解できません。無駄な停車時間の削減や徐行運転の回避などで、車両や人という資源を節約しつつ、競争力増加にも目を向けてもらいたいものです。日本でも有数の大都市圏である札幌都市圏です。3大都市圏並みとまではいきませんが、それに近い利便性を確保してもらい、JR北海道の収益源としてさらなる利益を確保する体制を確立してもらいたいものです。

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