のと鉄道。能登半島の中部に位置する路線です。この路線では標準的な気動車が活躍しています。そんな気動車(NT200形)の車内を観察しました。
写真1. 穴水に停車中のNT200形
復習:NT200形の概要
まず、NT200形の概要を紹介します。
- 車体:普通鋼
- 車両:2ドアセミクロスシート
- 製造初年:2005年
- 運用範囲:のと鉄道中心(七尾-穴水)
NT200形はのと鉄道で活躍する車両です。前身の車両は全長16.5mでしたが、この車両は全長18.5mに延長されています。車体長を長くすることはコストアップの要因となりますが、16.5m車3両で運用されていた列車を2両編成にするための措置であり、全体としてコスト削減を考慮した設計であることがうかがえます。
同時期にデビューしたローカル線向けの車両と類似しているように見え、地方鉄道向けの車両として標準的な仕様であることがうかがえます。地方向け車両の輸送状況はある程度似ている部分があり、標準化を進めることによりコスト削減するのは全国的な潮流であり、むしろ良いことでしょう(その「標準」の質が良いかどうかは別問題です)。
のと鉄道NT200形の車内を観察する
御託はこの程度にして、実際に車内を観察します。
写真2. 車内全景
車内全体の様子です(写真2)。4人掛けボックス席が車内中央に配置され、出入口付近にロングシートが配置されています。
写真3. 車内全景
もう少し引いたアングルから撮影しました(写真3)。ロングシート部分とボックス席の間に出っ張りがありますが、排気用の設備です。
写真4. ドアの位置が異なる
排気用の設備の有無で左右で寸法が異なります。これをどのように解決しているのでしょうか。答えはドア付近のスペースを調整していました(写真4)。これであれば座席の幅を確保できますね!
写真5. ロングシート側からドアを眺める
ロングシート側からドアを眺めました(写真5)。進行方向右側のドア付近は座席がせり出していますが、運転席がなく、そのぶん立ちスペースを確保できます。したがって、ドア付近の空間は左右どちらも確保できています。ものすごい工夫と感じました。
写真6. ロングシートの様子
ロングシートの様子です(写真6)。5人掛けとわかるように、2+3で分割され、弱いながらも座席区分もあります。座席の袖仕切りは低いです。
写真7. ロングシートの様子
別の角度からロングシートを撮影しました(写真7)。明度が低く彩度の低い床、明度が高く彩度の高い壁、彩度の高い座席というモダンな配色です。このような配色は2010年代以降に主流となりましたが、2000年代に採用した先見性を感じさせます(てっきり2010年代の登場と勘違いしました)。
写真8. 七尾寄りの様子
七尾寄りにはトイレもあります(写真8)。私が見た限り多くが2両編成でしたので、各車両に運転席とトイレが付いているのもある意味無駄とも感じてしまいました。トイレ前は2人掛けのボックス席が配置されています。
写真9. ボックス席の様子
ボックス席の様子です(写真9)。座席の柔らかさは硬すぎず柔らかすぎずの適切な範囲と感じました。シートピッチは1620mmです。これくらいシートピッチが広ければ、転換クロスシートにしても良さそうに思います。
写真10. ボックス席の様子
ボックス席の様子です(写真10)。床をよく見ると模様が入っています。模様無しよりも価格は上がることが想像できますが、このようなところにお金をかけ、居心地の良い空間を目指したのでしょうか。
写真11. ボックス席の様子
ボックス席の様子です(写真11)。白い壁のおかげで車内は明るく、圧迫感はありません。車体幅を広くできない車両の場合、このような(ある意味)小手先のテクニックが重要です。セオリー通りなのですが、このようなセオリーを守り、空間を演出していることが伝わります。
写真12. ボックス席の窓枠
ボックス席の窓枠です(写真12)。飲み物を置けるようになっています。もともとはテーブルがあったのでしょうか。撤去した跡が見えます。
写真13. ドア付近はステップあり!
ドア付近はステップがあります(写真13)。混んだ車内だと思わず落ちそうです。
写真14. ドアはステンレス製
ドアはステンレス製で、内側に化粧板などはありません。簡素さを感じます。
写真15. ドア窓は単板ガラス
ドア窓は単板ガラスです(写真15)。冬の厳しさを考慮すると、複層ガラスが欲しいところです。
写真16. 運転席付近の様子
運転席付近の様子です(写真16)。地方向けの車両らしく、運転席は片側に寄っています。もう反対側は前面展望を満喫できそうです。ただし、ずっと立っていると降車の邪魔になり、奨励される行為ではないでしょう。
のと鉄道NT200形の車内を眺めてみて
写真17. かつての金沢直結列車に使われていた車両(パノラマ席もあり「乗ってみたい」と思わせる要素もある)
今回、NT200形の車内を眺めました。地方向けの車両としては必要な設備は整っており、最低限のサービスは提供できていたように感じます。また、色づかいも2010年代に主流となる「白系+黒系+彩度の高い色」のモダンな配色を先駆けて採用しており、先進性も感じました。
ただし、長距離輸送の車両としては落第点ぎりぎりです。能登半島の観光活性化のために観光列車が導入されていますが、本来は金沢と能登半島先端を早く快適に結ぶことです(観光列車は速度が遅く移動手段としてはやや機能が落ちてしまします)。
地域輸送向け車両としてはかなり満足できる車両です。しかし、視点を変えるともったいなく感じます。少し南に目を向けると、金沢に多くの観光客が来ています。その金沢からのアクセスが良くなれば能登半島も活性化します。今後はこのような視点で輸送をデザインし、そのデザインにかなう実用的で快適な車両も望みたいものです。
果たして前後はどこに行ったのでしょうか?
(←前)輪島から穴水へのバス旅
NT200形の車内(のと鉄道):現在地
★この旅行のまとめ:23年夏能登・金沢旅行のまとめと振り返り
(参考)この日の旅程は以下の通りです。
出発地 | 発時刻 | 手段 | 到着地 | 着時刻 |
---|---|---|---|---|
羽田空港 | 8:55 | ANA747 | 能登空港 | 9:50 |
能登空港 | 10:41 | 北鉄バス | 輪島駅前 | 11:41 |
能登の街歩き観光 | ||||
輪島塗会館 | 14:15 | 北鉄バス | 穴水此の木 | 14:55 |
穴水此の木 | 15:57 | 北鉄バス | 穴水駅前 | 16:03 |
穴水 | 16:18 | のと鉄道 | 和倉温泉 | 17:02 |
和倉温泉で宿泊 |