鉄路でいう能登半島の先端を占めるのと鉄道。その車窓には美しいものがあります。そんなのと鉄道を普通列車で堪能しました。
写真1. 和倉温泉に到着した七尾行き
復習:のと鉄道の概要
まず、のと鉄道の概要を紹介します。
- 区間:七尾-穴水
- 距離:33.1km
- 形態:単線非電化(七尾-和倉温泉は直流電化)
のと鉄道は七尾-穴水を運転する第3セクター鉄道です。かつては能登半島の先端の輪島や珠洲方面蛸島まで伸びていましたが、2001年に穴水-輪島、2005年に穴水-蛸島が廃止されています。高速道路の伸長や沿線人口の減少がその理由とされています。
現有路線は穴水以南であり、金沢方面から能登半島各地まで向かうには乗りかえが2回必要です。そのためか、輪島や珠洲方面には特急バスが運転され、のと鉄道はまさに地元のための交通手段になっています。輪島から特急バスに乗りましたが、1日10往復にも満たないバスが1台で充分であり、鉄道という輸送体系では難しい点も理解できました。
図1. 穴水と七尾の位置関係(googleマップより引用)
最後に、穴水と七尾の位置関係を示しました(図1)。穴水は能登半島の先端に近いことがわかります。
ここまで七尾がのと鉄道の南端という説明をさせていただきました。しかし、地図や路線図を眺めると、七尾と和倉温泉の間はJR線として描かれています。これはどういうことでしょう。
種を明かすと、七尾-和倉温泉はJR線とのと鉄道の共用区間です。では、運賃の取り扱いはどうでしょうか。このあたりの駅は(金沢方面)徳田-七尾-和倉温泉-田鶴浜-(穴水方面)と続いています。
- 徳田以遠-和倉温泉を利用する場合:全線JR線に乗ったものとして計算
- 七尾-田鶴浜以遠を利用する場合:全線のと鉄道に乗ったものとして計算
- 七尾-和倉温泉を利用する場合:いずれか安いほうを適用
- 徳田以遠-田鶴浜以遠を利用する場合:和倉温泉を境界として計算
首都圏の人には北千住-綾瀬のようなものと考えるとわかりやすいかもしれません。
ここでの注意点は金沢方面から普通列車で和倉温泉に向かう場合です。JR七尾線の特急以外は七尾発着であり、和倉温泉まで向かいません。七尾から和倉温泉まではのと鉄道の普通列車を利用することになります。のと鉄道としてはICOCAに対応していませんから、和倉温泉まで普通列車で向かう場合はICOCAは使えません。
穴水から和倉温泉まで実際に乗る
御託はこの程度にして、実際に乗ってみましょう。今回はNT200形の普通列車を利用しました。
そのNT200形の内装を取り上げています。
※新しいウィンドウで開きます。
写真2. NT200形による普通七尾行き
普通七尾行きが停車していました(写真2)。2両編成でしたので、後ろの車両を選びました。ワンマン運転で、前の1両で出入りし、和倉温泉ではすべてのドアが開くと予想(※)し、空いているであろう後ろの車両を選んだのです。
※和倉温泉駅は無人駅ですので、この予想は裏切られ先頭車両から降りることになりました。
写真3. 後ろの車両はラッピング車
後ろの車両はラッピング車です(写真3)。このようなラッピング車は全国に多すぎてもはや差別化にならず、ラッピング費用ぶんだけの負担が増すだけのようにも感じます(実際の収支はどうなのでしょう?)。
写真4. 穴水駅に保存されているパノラマカー
穴水駅にはパノラマカーが保存されています(写真4)。前面展望良好・大きな窓で乗りたいと思わせる車両です。運転席近くにドアがありませんから、ワンマン運転には非常に不向きです。第3セクターで同様の車両が早々となくなった理由の1つでしょう。
写真5. ボックス席として保存される
ボックス席として保存されていました(写真5)。晩年はボックス配置だったのでしょうか。転換クロスシートで運用したほうが一般の乗客受けは良さそうに思いますが…。
写真6. 穴水を発車!
穴水を発車しました(写真6)。海が見えます。なかなか加速が鋭く、最高速度の割には速さを感じます。
写真7. 海が美しい
海が美しいです(写真7)。ちょうど順光なのでより美しく見えています。
写真8. 海岸沿いの集落を眺める
海岸沿いの集落を眺めます(写真8)。
写真9. 美しい海を眺める
美しい海を眺めます(写真9)。
写真10. 能登鹿島に停車!
能登鹿島に停車します(写真10)。ここで親子が列車を眺めていたことが印象に残っています。
写真11. 海岸沿いを走る
海岸沿いを走ります(写真11)。
写真12. ちょっとした高台を走る
ちょっとした高台を走ります(写真12)。
写真13. 再び集落が現れる
再び集落が現れました(写真13)。
写真14. 西岸に停車!
西岸に停車します(写真14)。駅名標には全く異なることが書かれています。これは特定の作品に寄り添ったものです。このようなコンテンツで集客しても良いと思いますが、駅名の誤認識につながるようなこのような駅名標というのは大きな誤りです。駅名を伝えるという基本を捨てており、鉄道会社自らが嘘を付いているといっても過言ではありません。
写真15. 田園風景を走る
田園風景を走ります(写真15)。輪島から穴水まで路線バスに乗ったときよりも沿線人口が多いように見えます。
写真16. 田園風景と海のコラボレーション
田園風景と海のコラボレーションも展開します(写真16)。素朴な田舎という印象です。
写真17. 田園風景を走る
田園風景を走ります(写真17)。里山らしい光景ですが、別のいいかたをすると、能登半島であることを実感する風景でもありません。
写真18. 集落が出現!
集落が出現しました(写真18)。
写真19. 能登中島に停車!
能登中島に停車します(写真19)。穴水から和倉温泉の中間地点を過ぎています。
写真20. 田園風景を走る
田園風景を走ります(写真20)。
写真21. 川を渡る
川を渡ります(写真21)。
写真22. 田園風景を走る
田園風景を走ります(写真22)。やや遠くに彩度の高い家もあり、緑の田園風景と好対照をなしています。
写真23. 田園風景を走る
田園風景を走ります(写真23)。
写真24. 笠師保に停車!
笠師保に停車します(写真24)。
写真25. 海が見える
再び海岸沿いを走ります(写真25)。
写真26. 田園風景を走る
とはいえ、ずっと海岸沿いを走るわけではありません。再度、田園風景を走ります(写真26)。
写真27. 田鶴浜に停車!
田鶴浜に停車します(写真27)。
写真28. 田園風景を走る
田園風景を走ります(写真28)。
写真29. 田園風景を走る
田園風景を走ります(写真29)。
写真30. 和倉温泉に到着!
和倉温泉に到着しました(写真30)。和倉温泉は都市郊外の住宅地に位置する印象です。
写真31. 和倉温泉の駅名標
和倉温泉の駅名標です(写真31)。ここの管理はJR西日本であることがわかります。
のと鉄道に乗ってみて
写真32. 海岸線を走る
今回、のと鉄道に乗ってみました。海岸線沿いに走る区間があり、風光明媚な路線ともいえます。また、里山を感じさせる風景も展開しました。観光鉄道として活性化を図る姿勢を見ました(特定の作品の世界観を演出したこともその一環でしょう)。
ただし、鉄道の本文は輸送のはずです。のと鉄道の輸送は地元の地域利用とごく少数の観光利用に見えました。能登半島は派手でないものの、輪島などの観光資源があります。そして能登半島の根元には北陸の中心都市で観光都市である金沢があります。であれば、金沢に向かった観光客などを誘致することも必要でしょう。
現状は輪島方面の輸送は特急バスが担っています。しかし、その本数は少なく不便です。不便な理由の1つに能登半島への動線が鉄道とバスに分散している点も指摘できます。
そのようなことを考えると、能登半島への動線を穴水までの鉄道と穴水からのバスに統一することも手です。そして、金沢から穴水まで高速化し、穴水までの所要時間を1時間半以内にし、その本数も毎時1本とすれば能登半島の交通は確実に変わります。
これからバス運転手の確保も難しくなるでしょう。このような集約と高速化も視野に入れ、総合交通体系を実現してもらいたい、そんなことも今回の旅行で考えました。
果たして前後はどこに行ったのでしょうか?
(←前)NT200形の車内(のと鉄道)
のと鉄道の乗車記(穴水→和倉温泉):現在地
★この旅行のまとめ:23年夏能登・金沢旅行のまとめと振り返り
(参考)この日の旅程は以下の通りです。
出発地 | 発時刻 | 手段 | 到着地 | 着時刻 |
---|---|---|---|---|
羽田空港 | 8:55 | ANA747 | 能登空港 | 9:50 |
能登空港 | 10:41 | 北鉄バス | 輪島駅前 | 11:41 |
能登の街歩き観光 | ||||
輪島塗会館 | 14:15 | 北鉄バス | 穴水此の木 | 14:55 |
穴水此の木 | 15:57 | 北鉄バス | 穴水駅前 | 16:03 |
穴水 | 16:18 | のと鉄道 | 和倉温泉 | 17:02 |
和倉温泉で宿泊 |
コメント
昨年金沢から輪島に行ったことがある者です。
往路が輪島特急、復路を路線バス+のと鉄道で行きましたが、断然輪島特急が快適でした。
復路は乗り換え2回かかったほか、バスの渋滞でのと鉄道に接続できなかったため、もともと1時間増しのところさらに1時間多くかかりました。
輪島特急も減便傾向で厳しいのはわかりますが、和倉温泉~金沢が特急70分+穴水~和倉温泉が30分と考えるとアクセス的にも厳しいですし、のと鉄道はIRいしかわ鉄道開業までノウハウを持たせるとの政治的な目的は達成できています。輪島特急の存廃より、のと鉄道の存廃議論のほうが先に来てしまいそうな気がします。
ちばらきさま、コメントありがとうございます。
さて、ご指摘の通り、現状では輪島特急のほうが快適だと思います(今回部分的に利用しているので何となく理解できます)。では、金沢-穴水の直通特急(あるいは全車指定席快速)に需要を集約するとどうでしょうか。それが私の書きたかったことです。
ご指摘の通り、穴水以南の廃止も議論に上りそうに思います。