リレーかもめとかもめの旅(鳥栖→長崎)

記事上部注釈
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2022年に開業した西九州新幹線。福岡と直結しておらず、途中で乗りかえる必要があります。新幹線区間はもちろん、在来線区間も堪能しました。

写真1. 長崎に到着した西九州新幹線「かもめ」

復習:西九州新幹線と福岡へのアクセス

最初に西九州新幹線の概要と福岡へのアクセスについて紹介します。

西九州新幹線の概要

  • 区間:武雄温泉-長崎
  • 距離:69.6km
  • 所要時間:25分~30分
  • 本数:毎時1本(一部時間帯は毎時2本)
  • 途中駅:嬉野温泉、新大村、諫早
  • 列車名:かもめ

図1. 西九州新幹線の区間(googleマップより引用)

西九州新幹線の位置を示しました(図1)。博多や新鳥栖(九州新幹線の停車駅)にはつながっておらず、飛び地のように存在しています。これは以下の政治的な経緯があったと聞いています(外部サイトに関連記事あり)。

  1. 佐賀県はもともと県内を横断する新幹線に意欲的ではなかった(地方自治体が建設費を相応に負担するスキームであり、佐賀県としては建設費を負担するほどのメリットはないと判断)
  2. フリーゲージトレインの技術開発が始まり、佐賀県内は在来線活用・佐賀県外は新幹線活用(佐賀県としては佐賀県外の形態は「勝手にどうぞ」というスタンス)
  3. フリーゲージトレインの技術的課題が大きく、即時の採用は困難と判断。よって武雄温泉で線路が途切れる
  4. 佐賀県としては新幹線建設に意欲的でない姿勢は変わらず、武雄温泉で乗りかえとなる

金銭負担や在来線の処遇という問題があり、政治的に新幹線建設に反対している地方自治体があり、線路が途切れた格好です。地方自治体は管轄地域の最適化を目指すところであり、このようなケースが出てくることもやむを得ません。

現実問題として線路が途切れている以上、博多と武雄温泉を結ぶ列車が必要になり、現実にはその列車を活用しています。

博多と長崎の移動の概要

  • 概要:博多-武雄温泉(リレーかもめ)と武雄温泉-長崎(かもめ)の乗りかえ
  • 所要時間:1時間30分前後
  • 運賃+料金:6050円(ただし4200円の設定あり)
  • 本数:毎時1本(一部時間帯は毎時2本)、かもめと同等
  • 注意:みどり(リレーかもめ)も該当

武雄温泉で乗りかえることで、博多と長崎の移動を確保しています。在来線の特急はリレーかもめと、かもめに連絡することが明確になっています。一部の特急は佐世保に向かう特急みどりがリレーかもめを兼ねていますが、兼ねる列車についてはみどり(リレーかもめ)と併記されています。

JR九州はこの点はそれなりに良心的で、営業的には以下の方策をとっています。

  • 武雄温泉は同じホームの乗りかえで、乗りかえ時間は3分とロスタイムや歩く距離は短い
  • 上記乗りかえを利用する場合、新幹線と在来線の料金は通しで計算

途中で乗りかえが入るものの、営業的にはあたかも1本の列車であるかのように扱います。

写真2. 長崎駅では「武雄温泉行き」ではなく「博多行き」と表示される

駅の表示も武雄温泉という文言は発生せず、博多という表示です(写真2)。

通常の運賃+特急料金の合計額は6050円(通常期の普通車指定席)ですが、かもめネットきっぷが存在し(JR九州への会員登録が必要)、4200円で利用可能です。受取前で出発前なら何度でも変更できるのがポイントです。このほかに7日前や3日前までに購入すればもう少し割安になります。

所要時間は1時間30分程度であり、九州急行運行の高速バスよりも30分~1時間程度速いです。新幹線開業前の在来線特急かもめは所要時間2時間前後でしたから、30分程度スピードアップしたことになります。

表1. 新幹線経由と高速バスの比較

JR九州九州号
所要時間1時間30分程度2時間25分程度
費用4200円~6050円2250円~2900円
本数毎時1本程度毎時1本程度

※九州号はスーパーノンストップ便の博多バスターミナル-長崎駅前で掲載。天神だと17分程度短い

それぞれの概要を示しました(表1)。乗りかえがあれど高速な新幹線、乗りかえなしで安い高速バスという格好です。余談ですが、高速バスのスーパーノンストップ大村停車便がありますが、スーパーノンストップという文言と実態が合っていないのでは?

リレーかもめとかもめの車内

リレーかもめとかもめの車内を紹介します。リレーかもめは3種類の車両が使われますが、今回は乗車した787系の車内を紹介します。

リレーかもめの車内

普通車の車内です。

写真3. モノトーンな車内

モノトーンな車内です(写真3)。明るさが抑えられ、大人な雰囲気な車内です。

写真4. 天井の様子

天井の様子です(写真4)。進行方向のスリット、間接照明もあり、独特な雰囲気です。

写真5. 座席の様子

座席の様子です(写真5)。

写真6. 座席背面の様子

座席背面の様子です(写真6)。

写真7. テーブルを開くと車内案内がある

テーブルを開くと車内案内があります(写真7)。

写真8. テーブルの様子

テーブルの様子です(写真8)。一般的な背面テーブルです。

写真9. 読書灯(補助照明)がある

読書灯があります(写真9)。全体的に暗めの車内ですから、このような補助照明が有効に活用される場面もあるでしょう。ただし、(私が乗った際に眺めた限りですが)このような設備は知られていないのか、あまり活用されません。

写真10. デッキの様子

デッキの様子です(写真10)。デッキ部分は電球色の照明を活用しており、客室本体と雰囲気が異なります。

写真11. デッキの様子

デッキの様子を別の角度から撮影しました(写真11)。この車両が787系というのはドアを見たらわかるでしょう。JR九州は管理するためのツールである形式番号さえブランドに変貌させるのです。

写真12. トイレも清潔

トイレも清潔です(写真12)。787系はデビューして約30年経過していますが、新しい車両と比較し、見劣りしません。製造当時に日本で一番の特急列車を創るという思いがあり、それが残っているのです。

西九州新幹線かもめの車内

西九州新幹線のかもめの車内です。2020年代の車両だけあり、新しさを感じました。西九州新幹線にはグリーン車の設定はありません

指定席は横4列配列、自由席は横5列配列と指定席のほうがグレードが高いのが特徴です。

写真13. 指定席車内

指定席の車内です(写真13)。木材が使われ、それ以外の部分も木を感じさせる配色です。

写真14. 座席背面は木!

座席背面は木材です(写真14)。クッションはしっかりしており、木だからといって座席がかたいと感じることはありませんでした。

写真15. 座席の様子

座席の様子です(写真15)。2人がけの中間に位置するひじかけが立派です。

写真16. テーブルが内蔵されている

テーブルが内蔵されています(写真16)。テーブルが2人がけの中間にあるのは、4人で向かい合わせた際にテーブルが中央にくるようにしているのでしょうか。

写真17. デッキの様子

デッキの様子です(写真17)。このあたりの仕様は東海道新幹線のN700系シリーズに似せています。というよりも基本設計がN700S系です。いつか西九州新幹線の線路がつながり、山陽新幹線につながった際も違和感なく溶け込めそうです。

写真18. デッキの様子

デッキの様子です(写真18)。

写真19. 自由席の様子

自由席の様子です(写真19)。東海道新幹線の車両を座席カラーだけ変えたという印象です。

写真20. 荷物棚もある

荷物棚もあります(写真20)。

写真21. 座席の様子

座席の様子です(写真21)。

リレーかもめとかもめに実際に乗る

実際に乗りましょう!日程の都合で(博多でなく)鳥栖から乗りました。

ステージ1. リレーかもめ(鳥栖→武雄温泉)

写真22. 鳥栖に入線するリレーかもめ

鳥栖にリレーかもめがやってきました(写真22)。メタリックな車体が特徴な787系電車です。

写真23. 着席時の視線からの車内

着席時の視線から車内を撮影しました(写真23)。

写真24. 鳥栖を発車!

鳥栖を発車しました(写真24)。

写真25. 鹿児島本線を越える

鹿児島本線をまたぎます(写真25)。今でこそ鹿児島本線は特急の本数は少ないですが、かつては九州の南北軸として重要な路線でした。そのため、主要路線との交差は立体交差なのです。

写真26. 鳥栖市内を走る

鳥栖市内を走ります(写真26)。

写真27. 新鳥栖に停車!

新鳥栖に停車します(写真27)。九州新幹線と連絡する駅で、長崎本線の特急は全列車停車します。私が乗ったのはリレーかもめ33号(博多13:54発、新鳥栖14:20発)ですが、鹿児島からのさくら556号から乗りかえが可能です。このように熊本方面と長崎方面のジャンクションなのです。もっとも、車内にそこまでの動きはありませんでしたが。

写真28. 古い家が多い

西日本地区は関東地区よりも古い家が多いように見えます(写真28)。

写真29. 肥前麓を通過!

たまたま風景をとっていたら、駅名標を撮影できました(写真29)。

写真30. 田園風景を走る

田園風景を走ります(写真30)。

写真31. 麦畑が広がる

麦畑が広がります(写真31)。なかなかの速度です。

写真32. 都市らしい光景

都市らしい光景に入ります(写真32)。

写真33. 高架線に上がる

高架線に上がります(写真33)。

写真34. 高い建物が見える

高い建物も見え、都市らしさを感じます(写真34)。

写真35. 佐賀に停車!

佐賀に停車します(写真35)。

写真36. 佐賀を発車!

佐賀を発車します(写真36)。

写真37. 麦畑をブンブン走る

麦畑をブンブン走ります(写真37)。このあたりは佐賀平野であり、比較的線路はまっすぐです。

写真38. ブンブン走る

ブンブン走ります(写真38)。

写真39. ブンブン走る

佐賀平野をブンブン走ります(写真39)。

写真40. 山が迫ってきた

平野の端に徐々に近づき、山が近づいてきました(写真40)。

写真41. 里山と麦畑の競演

里山と麦畑の競演です(写真41)。5/2に乗っていますが、この時期に稲が黄金色になることはなく、これはまさに麦です。

写真42. 江北に停車!

江北に停車します(写真42)。西九州新幹線開業時に肥前山口から改称しています。肥前山口でなく江北と呼ぶのはもはや常識レベルでしょう!

写真43. 江北で白いみどりとすれ違う

ここ江北で白いみどりとすれ違います(写真43)。西九州新幹線開業後は白い885系電車が佐世保線にも入り、特急みどりにも白い車両が使われるようになり、白いみどりという一見わかりにくい案内がなされることになりました。形式番号をブランド化するJR九州ですから、いっそのこと「885系で運転」と表記したほうがわかりやすいのでは?

写真44. 佐世保線は単線

佐世保線は単線です(写真44)。

写真45. 単線を走る

単線を走ります(写真45)。佐世保線に入ったとはいえ、江北以西の長崎本線より線形は良く、西九州新幹線開業に合わせ、高速化工事もなされています。そのため、スピードは衰えません。

写真46. 長崎の到着時刻も示される

長崎の到着時刻も示されます(写真46)。

写真47. 複線区間に入る

西九州新幹線開業に備え、佐世保線は部分的に複線化されました(写真47)。新幹線接続路線として、ダイヤ乱れの要素を極力排除したいのでしょう。

写真48. 複線区間を走る

複線区間を走ります(写真48)。

写真49. のどかな風景を走る

のどかな風景を走ります(写真49)。

写真50. 住宅が多い

住宅が多いです(写真50)。

写真51. 再び単線区間!

武雄温泉の手前の高橋から単線区間です(写真51)。

写真52. 高架区間に入る

高架区間に入り(写真52)、武雄温泉に到着です。

ステージ2. 武雄温泉での乗りかえ

線路がつながっていない以上、武雄温泉での乗りかえは必須です。その様子を簡単に記します。

写真53. 足早に客席を立つ乗客群

乗りかえ時間が少ないことをわかっているのか、到着前に席を立っています(写真53)。

写真54. ドアに群がる乗客群

皆さん慣れているのか、ドアに群がります(写真54)。

写真55. 大荷物をかかえて乗りかえる乗客群

大荷物をかかえていても同じホームですので、非常に楽ですし、特定の階段に乗客が集中することもありません(写真55)。

写真56. 前の乗客に続き乗車!

前の乗客に続いて乗車します(写真56)。

写真57. 新幹線への乗りかえ成功!

こうして新幹線への乗りかえに成功しました(写真57)。デジカメの撮影記録を見ると、リレーかもめのデッキ通過が15:10:13、かもめの客席突入が15:10:44です。したがって、リレーかもめのデッキからかもめのデッキまで31秒で移動できたことになります。乗りかえ時間の3分というのはそれなりにゆとりを持たせた時間ということです。

ステージ3. 西九州新幹線かもめ

乗りかえに間に合った余韻に浸る暇もなく、すぐに発車します。

写真58. 武雄温泉を発車!

武雄温泉を発車します(写真58)。

写真59. 佐世保線が分かれる

佐世保線が西に、新幹線が南西に分かれます(写真59)。

写真60. 山間部を走る

山間部を走ります(写真60)。

写真61. 大村湾が見える

大村湾が見えます(写真61)。嬉野温泉の通過にも気づかず、いつの間にか長崎県に入っています。

写真62. 新大村に停車!

新大村に停車します(写真62)。せっかくの新駅ですから、大村線と西九州新幹線を同じホームにセットし、乗りかえを便利にし、ネットワーク性を確保すると良いと思いました。

写真63. 市街地が広がる

市街地が広がります(写真63)。大村は人口9万人程度を有する都市です。

写真64. まもなく諫早に停車!

トンネルを抜けると、次の停車駅の諫早です(写真64)。

写真65. 諫早に停車!

諫早に停車します(写真65)。諫早に寄るぶん線路は曲がっていますが、長崎県第3の都市であり、どん詰まりの新幹線ですから、ここに寄る重要性は高いのでしょう。

写真66. 諫早を発車!

諫早を発車します(写真66)。

写真67. トンネルに入る

トンネルに入ります(写真67)。もともとの長崎本線もこの区間は長いトンネルで貫いています。新幹線となればその傾向は一層強くなります。

写真68. まもなく長崎!

まもなく長崎です(写真68)。

写真69. 長崎本線が見える

長崎本線が見えます(写真69)。電化されているように見えますが、西九州新幹線開業で非電化に変えられています。電化路線のほうが車両の融通は楽に思えますが、設備維持費用のほうがかさむのでしょうか。

写真70. 折り返しのかもめ博多行き

長崎に着きました。車両はすでに折り返しの表示です(写真70)。

写真71. 長崎駅は余裕を持たせた設計

長崎駅は余裕を持たせた設計です(写真71)。港町らしく海も見えます。

折り返しに必要な時間を25分(降車5分+整備15分+乗車5分)とすると、交差支障も含め、1つの線路から発車できるのは30分間隔と見積もられます。1面2線であれば、30分に2本の処理となり、毎時4本が上限です。現段階で西九州新幹線は毎時3本もあれば足りますが、新大阪に直結した場合、需要が増えることを想定すると足らないかもしれません。そのために2面4線としたのでしょう。

写真72. 折り返し待ちのかもめ

折り返し待ちのかもめの様子です(写真72)。

西九州新幹線を使ってみて

写真73. 長崎駅は日本最西端の新幹線駅

西九州新幹線開業で、肥前山口-諫早の輸送上のネックだった区間が解消され、乗りかえがあるにも関わらず、20分以上も短縮しました。さらに、乗りかえも実質31秒で完了し、数ある乗りかえでも考えられているほうでした。

また、西九州新幹線の車両はデザイナーの自己満足の車内ではなく、木のぬくもりを感じさせつつ、機能や快適性を失わない車内でした。

ただし、乗りかえが発生することにより、心理的な負担が増すことも事実です。本来ならば乗りかえが発生しないのがベストです。何とかして乗りかえを排除するのが望ましいです。その方策は主に3つあります。

  1. フリーゲージトレインを採用し、在来線区間は狭軌、新幹線区間は標準軌で走らせる
  2. 新幹線区間に4線軌条を採用し、狭軌の在来線列車を新幹線を走らせる
  3. 在来線区間に4線軌条を採用し、山形新幹線と同様にミニ新幹線列車を走らせる

1は技術的困難があり、いくらお金を積もうとできることではありません。やるとすれば、博多までの直通と割り切り、現在よりも低速で走行するしかありません。また、スイスでの非動力車での軌間変換が難しく(スペインは標準軌と広軌なので台車内の機器類の置き場で有利)、低速で走行することさえも難しい可能性を指摘できます(スイスの例は高速走行しません)。

2は狭軌での最高速度や曲線通過速度に懸念があります。電車運転での狭軌での最高速度は170km/hとも180km/hとも伝えられており、狭軌電車が西九州新幹線を走行した場合、新幹線区間でのスピードダウンも懸念されます(国土交通省の資料だと200km/h)。

3は線路改良が必要ですが、新幹線区間では320km/h運転も可能です。現時点では最も拡張性が高い方策です。ネックは新鳥栖周辺ですが、新幹線の新鳥栖-在来線の肥前麓の短絡線を整備すれば何とかなるでしょう。さらに、改良区間は新鳥栖-武雄温泉に留まることや、トンネルが少なく、施工が容易なこともポイントです。

この場合は、博多-新鳥栖の所要時間が現行の30分から13分に減少し、(3分の乗りかえ時間がなくなることを除いても)17分ものスピードアップが可能な点も大きいです。博多でのホーム不足も懸念されますが、毎時1本~毎時2本であれば九州新幹線と共用の1面2線で足りるでしょう。

新線建設の目途が立たない以上、乗りかえを排除するような工夫を考慮いただきたいものです。

前後を読みたい!

果たして前後はどこに行ったのでしょうか?

(←前)特急ゆふいんの森の乗車記(由布院→鳥栖)

リレーかもめとかもめの旅(鳥栖→長崎):現在地

ホテルエイチツー長崎の宿泊記(→次)

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