JR鹿児島本線と西鉄天神大牟田線のライバル関係を探る

記事上部注釈
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福岡市から南側に伸びる鉄道路線は2つあります。1つがJR鹿児島本線。もう1つが西鉄天神大牟田線。これら2路線は長い間ライバルどうしとして切磋琢磨してきました。その実態を近距離区間で探りました。

写真1. 静かな福岡(天神)駅

復習:JR鹿児島本線と西鉄天神大牟田線の関係

まず、JR鹿児島本線と西鉄天神大牟田線の関係を簡単に紹介します。

概要

  • 区間:福岡市-大牟田
  • ターミナル駅:博多(JR)と福岡天神(西鉄)
  • 主要な経由地:二日市、久留米

図1. 福岡と大牟田の位置関係(googleマップより引用)

概要を簡単に示しました(図1)。福岡県南部の大牟田に向かい、福岡市から2つの路線が伸びています。1つがJR鹿児島本線、もう1つが西鉄天神大牟田線です。もともと長距離列車が行きかっていたという歴史的経緯からJR鹿児島本線は長距離輸送を重視し、西鉄天神大牟田線は都市圏輸送を重視してきたという経緯があります。

ここで特徴的なことは福岡側のターミナルJRは博多西鉄は天神と異なることです。そのため、長い間、両者で棲み分けがなされてきました。ただし、地下鉄空港線や七隈線で天神地区と博多地区が結ばれたことや両者の中間の場所の存在感が出てきたことから、競争がより激化したという情報も聞きます。

福岡側のターミナルから主要駅の比較は以下の通りです(表1)。いずれも日中時間帯のものです。

表1. 福岡から各地への比較表

二日市久留米大牟田
運賃(JR)280円760円1310円
運賃(西鉄)370円640円1050円
所要時間(JR)17分29分82分
所要時間(西鉄)15分31分64分
有効本数(JR)5本3本2本
有効本数(西鉄)6本4本2本

大牟田への速達性はJRが大きく劣りますが、毎時1本程度の九州新幹線を使うと博多から新大牟田までの所要時間は32分程度と駅の位置と価格で折り合えば、とんでもない速達性を誇ります。このことを踏まえると全般的に速さのJR、利便性の西鉄という印象です。

東京や大阪を基準にすると、福岡都市圏はそこまで広くありません。そのため、輸送需要は福岡から近いほうに限定されています。したがって、JR、西鉄ともに福岡に近い区間を充実させています。

特に西鉄は大橋や春日原に特急を停車させ、かつての福岡-二日市ノンストップ時代と様相を変えています。また、西鉄は薬院に全列車を停車させており、薬院から博多へのルートも意識していることがわかります。このほか、2024年には桜並木を開業させるなど、利用客の呼び起こしも考慮しています。

JRは減便続きですが、二日市以北の減便を最小限に留めるなど、やはり近距離だけでも輸送体系を整える努力はしているように見えます。(減車や減便の影響を最小限にするためという裏事情は大いにあると思いますが)近年はJRもクロスシート車をロングシート車に置き換えるなど、近距離輸送に最適な車内設備に変えています。

実際に両者に乗る

御託はこの程度にして、実際にJRと西鉄に乗ってみましょう!今回は近距離輸送に焦点を当て、福岡から二日市までとしました。

Stage1. JR鹿児島本線(博多→二日市)

まず、JRで博多から二日市に移動しました。

写真2. 博多駅の指定席券売機も行列!

博多駅を利用しましたが、指定席券売機も行列ができています(写真2)。せっかくインターネット予約をしていても、指定席券売機に並ぶことで時間を浪費します。大手民鉄の有料特急はインターネットで予約するとチケットレスで乗車できます(乗車券は広く普及しているICカードを利用すれば問題ない)。

指定席券売機に並ぶために駅に早く来ることは旅客の時間を奪っています。異なる表現をすると、大金を掛けて1分単位でスピードアップした効果が台なしということです。ただし、JR九州管内ではこのような行列ができるのは博多程度であり、小倉、大分、長崎などでは待ち時間なしで買うことができることは付け加えます。

写真3. 自由席特急券の自動券売機がある

自由席特急券の自動券売機があります(写真3)。実は二日市には最低でも毎時1本の特急が停車します。二日市であれば特急の時刻に合わせ駅に行くことはありませんから、「たまたまやってきた特急に乗る」という行動パターンは容易に想像できます。そのため、「たまたまやってきた特急」に直前でも乗れるようにホームに自動券売機があることは非常に重要なことです。

このような取り組みは地味ながら重要であり、JR九州はこのような取り組みに長けている印象があります。

写真4. ホームに並ぶ人々

ホームに並ぶ人々です(写真4)。なぜか10時台に博多に着く下り普通が1本少なく(そのせいで30分のダイヤホールが存在)、その影響で博多からの電車も本数が少ないです。

写真5. 区間快速鳥栖行きがやってきた

区間快速鳥栖行きがやってきました(写真5)。JR九州の(広い意味でいう)通勤電車は前面に種別表示がなく、わかりにくいです。

区間快速は二日市より南側で各駅にとまる種別です。

写真6. 車内は混んでいる

休日の午前中といえば都心方向に向かう需要が多く、逆に都心方向からの需要は少ないはずです。それでもこのように立ちが生じています(写真6)。この光景を見ると、南福岡まででも毎時6本に復元いただきたいものです。

写真7. 線路が多い

もともと長距離輸送を担い、かつ拠点駅の博多付近ということもあり、線路が多いです(写真7)。

写真8. 竹下に停車!

竹下に停車します(写真8)。手元の時刻表を見ると、土曜・休日の区間快速は竹下に停車します。ららぽーとを見込んだ停車なのでしょうか。現にかなり多くの乗客が降りました。

写真9. 西鉄をくぐる

西鉄をくぐります(写真9)。このあたりに南福岡があり、かつては雑餉隈(ざっしょのくま)という駅名でした。雑餉隈を南福岡に改称したことで、「雑餉隈という昔の駅名がなくなった」という人は早とちりです。そう!雑餉隈は西鉄に存在するのです。

写真10. 大野城に停車!

大野城に停車します(写真10)。ここに近い西鉄の駅は白木原(しらきばる)ですが、急行や特急は通過します。このあたりは興味深いことに、JRと西鉄で速達列車の停車駅が異なります(表2)。

表2. JRと西鉄の速達列車停車駅の比較(近接駅は地図で判断)

JR西鉄
竹下大橋
笹原井尻
南福岡桜並木
春日春日原
大野城白木原
水城下大利
都府楼南西鉄二日市
二日市

太字で示した駅は速達列車停車駅

写真11. 大野城出発後の車内

大野城でそれなりに降り、ほぼ座席定員程度に混雑が緩和しました(写真11)。やはり都市圏輸送は福岡よりが肝心で、場合によっては南福岡で本数差をつけて良いように見えました。

写真12. 郊外の風景

郊外の風景です(写真12)。鹿児島本線の快速は速度は出ています。

写真13. まもなく二日市!

まもなく二日市です(写真13)。

写真14. 二日市を発車する区間快速

二日市を発車しました(写真14)。区間快速はここ二日市からは各駅に停車します。博多出発時点では混んでいた車内も二日市発車後はかなり空いていました。やはり二日市以北の輸送体系を整えることが重要なようです。

Stage2. 西鉄天神大牟田線(西鉄二日市→福岡(天神))

二日市から福岡(天神)まで西鉄を使いました。

写真15. 西鉄二日市駅前は民鉄らしい駅前

西鉄二日市駅前は民鉄らしい駅前が広がっています(写真15)。

写真16. 普通電車が停車中

普通電車が停車中です(写真16)。二日市から福岡(天神)へは日中時間帯でも普通10分間隔、速達列車10分間隔とJRよりはるかに高い利便性を誇ります。

写真17. 特急に乗る人は多い

このとき特急は7両編成でしたが、特急を選ぶ乗客も多く、それなりに混んでいます(写真17)。最後尾は天神で乗りかえが不便なためか、全員着席レベルではありました。

写真18. 二日市発車時点での混雑

二日市発車時点での混雑です(写真18)。なぜか前の席の人は後ろ向きにしており、風景はなかなか撮影できません…。

写真19. 高架線を走る

福岡近郊の高架線を走ります(写真19)。

写真20. 鹿児島本線をまたぐ

鹿児島本線をまたぎます(写真20)。無料列車の本数はこちらが勝りますが、あちらは毎時3本程度の特急列車が走り、福岡地区以外との行き来にはJRのほうが便利かもしれません(例えば長崎方面の特急の一部は二日市に停車し、長崎地区と二日市地区の行き来はJRが便利)。

写真21. 大橋でも乗車率は変わらない

大橋でも乗車率はそう変わりません(写真21)。大橋から天神まではすぐであり、「立っても6分」ですから、空いている後ろ寄りの車両よりも便利な前寄りの車両を選ばれるのかもしれません。

私は大橋で向かい合わせではない席に移りました。この事実は、大橋で特急から降りる人がいるという事実であり、久留米側から大橋までの利用者があるという事実でもあります。

大橋では緩急結合があります。ここから停車駅の差は2駅しかなく、天神-二日市で先着できないのでしょうか…。

写真22. 福岡の市街地を走る

福岡の市街地を走ります(写真22)。

写真23. 福岡の市街地を走る

福岡の市街地を走ります(写真23)。このあたりは普通でも10分間隔が維持され、都市内交通として最低限の利便性を確保しています。鉄道が不便で人口が流出したら西鉄の収入が減るでしょうから、人口維持のため利便性を維持する面もありましょう。

写真24. 福岡の市街地を走る

福岡の市街地を走ります(写真24)。

写真25. 都心に入る

都心の繁華街のような風景が展開し、福岡の都心部に入ったことがわかります(写真25)。

写真26. 福岡(天神)に到着!

福岡(天神)に到着しました(写真26)。多くの乗客が吐き出されました。

写真27. 普通も到着!

大橋で追い抜いた普通も到着しました(写真27)。

写真29. 特急があわただしく発車!

折り返しの特急があわただしく発車しました(写真29)。特急は遠方への列車ということもあり、クロスシートが重点的に充当されているように見えました。急行や普通は近距離輸送が主体でロングシート主体に見えました。

かつては特急用に2ドアクロスシート車がありましたが、近距離輸送の割合が高まった現代にはややそぐわないレイアウトで、3ドアクロスシートというのはバランス型と見えました。

JRと西鉄のライバル関係を見てみて

写真30. JR九州は独特の感性の車両が多い

今回はあえてJRと西鉄をライバル関係として見てみました。しかし、実際には両者を選択できる乗客は多くないでしょう。例えば、JRのサービス水準が多少悪くなったところで、大野城駅前から博多駅前まで西鉄をわざわざ使う人はいないでしょう。

このことを前提としてみても、明らかに西鉄のほうがサービス水準は高く、利便性は格段に異なることを実感しました。片や20分間隔が基本、片や10分間隔が基本ですので、その差は火を見るよりも明らかです。また、西鉄は駅が多く、駅までの距離が短い点も見逃せません。

このようなライバル関係が生じる理由は、ひとえに福岡市の南側に山地が迫り、平野部が狭いことです。狭い平野部に2つの路線が集中しているのです。このことで都市部の人口密度が高く、鉄道向きの地勢が形成された点も見逃せません。

これからもともに便利な輸送サービスを提供いただき、鉄道駅を中心ににぎわう沿線となってもらいたいものです。

前後を読みたい!

果たして前後はどこに行ったのでしょうか?

(←前)ソラリア西鉄ホテル福岡の宿泊記

JR鹿児島本線と西鉄天神大牟田線のライバル関係を探る:現在地

福岡から羽田への航空機での移動(JAL利用)(→次)

★今回の旅行の全体像は24年GW旅行の振り返りに記載しています。

★この日の主な移動手段の時刻は以下の通りです。

JAL320便福岡16:00→東京/羽田17:50
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