近鉄奈良線の混雑状況(平日朝ラッシュ時、今里→鶴橋、現場調査結果)

記事上部注釈
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近鉄でもメジャーな位置づけの奈良線。朝ラッシュ時には急行の運転がなく、かわりに快速急行が運転されます。では、その朝ラッシュ時はどのような混雑でしょうか。大阪環状線乗りかえ駅の鶴橋に到着する場面の混雑を確認しました。

写真1. 鶴橋に到着する快速急行難波行き

近鉄奈良線の朝ラッシュ時混雑状況のまとめ

近鉄奈良線の混雑状況の混雑状況の概要は以下の通りです。

  • 最混雑時間帯はおおよそ7:41~8:40である
  • 快速急行、準急の混雑が著しく、普通はそこまで混んでいない
  • その1時間の混雑率はおおよそ97%である

これらの詳細は以下に示します。

混雑調査の概要

今回の混雑調査の方法を紹介しましょう。この記事では、定点観測を行い、一定時間の全列車を対象にして各車両の混雑を目視で確認しています。これはプロも行っている調査方法です。

簡単に調査方法を紹介しましょう。一部の個人サイトでは混雑状況を書いているところもありますが、調査方法や混雑指標の言及がないのでう~んと考えてしまうところがあります。そのようなことを踏まえて、弊サイトではきちんと方法を示します(さすがー)。

弊サイトでは混雑ポイントという概念を導入しております。その概要を示します(表1)。

表1. 混雑ポイントの概要

乗車ポイントの概要

せっかくなので、120ポイント~160ポイントの様子をご覧いただきましょう(写真2-4)。いずれも個人情報を守ることを目的に、画質を落としています。

混雑ポイント120ポイント相当

写真2. 混雑ポイント120ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)

混雑ポイント140ポイント相当

写真3. 混雑ポイント140ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)

混雑ポイント160ポイント相当

写真4. 混雑ポイント160ポイントの様子(写真3と異なり、ドア部分が圧迫されていることがわかります)

今回は近鉄奈良線の鶴橋到着直前の混雑を確認しました。近鉄大阪線の乗客の一部は鶴橋で降車し、大阪環状線などに乗りかえるため、この区間が最も混んでいるのです。

朝ラッシュ時の近鉄奈良線の混雑データ

写真5. 普通に京都市営直通車がやってきた

まず、朝ラッシュ時の近鉄大阪線の混雑データを示します(表2)。

表2. 近鉄奈良線の混雑状況(朝ラッシュ時、今里→鶴橋、生データ)

近鉄奈良線の混雑状況(朝ラッシュ時、今里→鶴橋、生データ)

斜字で記したものは混雑率が確認できなかった車両で、前後の電車の混雑率から推定したもの

明らかに普通が空いています。準急と快速急行は混んでいます。

近鉄奈良線の混雑状況の分析

写真6. 朝ラッシュ時に阪神車が来ることは少ない

生データを示すだけでは不親切でしょう。親切で有名な私は、混雑状況を分析します(やさしー)。

復習:近鉄奈良線のダイヤパターン

混雑状況は鉄道ダイヤの影響を受けます(逆に鉄道ダイヤは混雑状況を考えて設定されます)。以下の考察でもダイヤパターンを理解していることを前提に記述します。そのため、近鉄奈良線のダイヤパターンを簡単に紹介します。

図1. 近鉄奈良線と阪神電車(近鉄直通電車のみ)の停車駅(近鉄公式サイトより引用)

近鉄大阪線の朝ラッシュ時は快速急行、準急、区間準急と普通が運転されています。急行のほうが停車駅をある程度増やせるので、主要駅の需要を拾いやすいです。しかし、朝ラッシュ時はあえて急行を運転せず、快速急行と準急の運転です。

日中時間帯は需要がそこまで多くないので、急行は8両編成で需要に対応できます。一方、ラッシュ時は10両編成が必要です。そのため、急行を10両編成に増結する必要があります。ですが、急行停車駅の布施や石切は8両編成しか対応していません。そのため、10両編成の急行ではなく、快速急行として運転するのです。言いかたを変えると、6両編成や8両編成では足らないので快速急行として運転し、10両編成に輸送力を増強するのです。

快速急行は停車駅を厳選していますので、通過駅をフォローするのが準急です。大阪府内の快速急行通過駅のうちの主要駅をカバーし、大阪府内の速達輸送と奈良県内の地域輸送を担います。

朝ラッシュ時はおよそ12分間隔に快速急行1本、準急1本、普通1本が基本ですが、1サイクルに2本の普通や快速急行が設定される時間帯もあります。また、行先は大阪難波が多いですが、快速急行はおおむね12分間隔で神戸三宮に直通し、普通は10分程度の間隔で尼崎に直通します。普通よりも準急のほうが需要が多く、都心を通り抜けるニーズも高そうですが、準急の尼崎直通はありません。これは、準急は8両編成が必要な一方、阪神線内の普通停車駅は8両編成に対応しておらず、尼崎行きは6両編成にする必要があり、その編成長に対応できるのが普通なためです。

なお、10両編成の快速急行はそのままでは神戸三宮には直通できませんが、尼崎で増解結することで、阪神線との輸送量を調整しています。

最混雑時間帯の分析

写真7. 復刻塗装車がやってきた

まず、最混雑時間帯を分析しましょう。普通~次の普通までを1つの時間帯とし、その時間帯の混雑率を算出しました(表3)。

表3. 近鉄奈良線の混雑状況(朝ラッシュ時、今里→鶴橋、時間帯別層別)

近鉄奈良線の混雑状況(朝ラッシュ時、今里→鶴橋、時間帯層別)

これを見ると、鶴橋断面で8:00~8:20が最も混んでいることがわかります。この20分間を含む60分間が最混雑時間帯と認識できます。

一般に朝ラッシュ時の混雑は最混雑時間帯60分間で語られることが多いです。では、どの時間帯が混雑するのでしょうか。

表4. 近鉄奈良線の混雑状況(朝ラッシュ時、今里→鶴橋、最混雑60分推定)

近鉄奈良線の混雑状況(朝ラッシュ時、今里→鶴橋、最混雑60分推定)

ここで2つの候補を挙げてみました。8:45の普通は空いているので、8:45が含まれる時間帯は最混雑時間帯60分に含まれないことでしょう。

7:41~8:40が該当し、その混雑率は97%程度です。ここが最混雑60分間として適切と判断しました。

種別ごとの混雑状況

では、その60分間で空いている種別や混んでいる種別はあるのでしょうか。種別ごとに混雑状況を分析してみました(表5)。

表5. 種別ことの混雑状況

近鉄奈良線の混雑状況(朝ラッシュ時、今里→鶴橋、種別ごと)

快速急行の混雑はもちろんですが、準急もそれなりに混雑しています。準急も10両編成で運転したいところですが、石切や布施が10両編成に対応していないので、準急は8両編成までです。ここには示していませんが、奈良よりの車両は特に空いています(10両編成の快速急行の場合は女性専用車両ですが)。

一方、普通は6両編成であっても、そこまで混んでいません。大阪府内の準急通過駅の需要はそこまで大きくないと読み取れます。

混雑状況からダイヤを考える

写真7. 特急ひのとりがやってきた

快速急行が10分以内の間隔、普通や準急が12分間隔というのはバランスが悪いように見えます。混雑状況から組めるダイヤは10分サイクルに快速急行2本、準急と普通各1本というものです。しかし、これでは増発になってしまい、会社側としては経費増加、乗客目線では所要時間増加(列車1本を追い抜くことによる所要時間短縮効果が小さくなるため)とメリットはあまりありません。逆に述べると、現在のダイヤはある程度バランスが考慮されているということです。

では、現在のダイヤで完璧なのでしょうか。普通が続行している箇所があり、そのぶん準急の運転間隔が開く箇所があります。若干の運転時刻変更を伴いつつ、一部の普通を準急に格上げする価値はあるように感じられます。また、全体的な利便性向上を考慮し、大阪難波行きの一部を桜川行き(大阪難波行きの一部は桜川まで回送される)に延長するのも手でしょう。阪神電鉄との精算面で面倒なことはありましょうが、人件費は変わりません(注.近鉄と阪神の乗務員交代は桜川です)。

おおむね利用実態に合ったダイヤとは思いますが、さらなる利便性向上やスピードアップにも目を向けてもらいたいものです。

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