東急田園都市線の混雑状況(朝ラッシュ時、池尻大橋→渋谷、現場調査結果、2025年追記)

記事上部注釈
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首都圏でも混雑が激しいというイメージの強い東急田園都市線。そんな田園都市線の2020年代半ばの実態を確認しました。

写真1. 渋谷で下車し、ハチ公改札に向かう人々の列

東急田園都市線の混雑状況のまとめ

  • 最混雑時間帯は渋谷断面で7:41~8:40と見積もられ、その混雑率は144%である
  • 7:51~8:20の30分間の混雑が特に激しく、列車によっては混雑率160%も存在する
  • 車両や種別による混雑の差はそこまで大きくない

詳細は以下に記します。

混雑調査の概要

今回の混雑調査の方法を紹介しましょう。この記事では、定点観測を行い、一定時間の全列車を対象にして各車両の混雑を目視で確認しています。これはプロも行っている調査方法です。

簡単に調査方法を紹介しましょう。一部の個人サイトでは混雑状況を書いているところもありますが、調査方法や混雑指標の言及がないのでう~んと考えてしまうところがあります。そのようなことを踏まえて、弊サイトではきちんと方法を示します(さすがー)。

表1. 混雑ポイントの基本的な概念と混雑率

120ポイント~160ポイントの様子をご覧いただきましょう(写真2-4)。いずれも個人情報を守ることを目的に、画質を落としています。

写真2. 混雑ポイント120ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)

写真3. 混雑ポイント140ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)

写真4. 混雑ポイント160ポイントの様子(写真3と異なり、ドア部分が圧迫されていることがわかります)

今回は山手線接続駅の渋谷到着断面で確認しました。

東急田園都市線(池尻大橋→渋谷)の2025年4月の混雑状況生データ

写真5. 都会のエアポケットのように人々がいなくなったハチ公改札の瞬間

まず、実際の混雑状況の生データを示します(表2)。

表2. 東急田園都市線(池尻大橋→渋谷)の朝ラッシュ時の混雑状況生データ

また、各列車の混雑状況を視覚化しました(表3)。

表3. 東急田園都市線(池尻大橋→渋谷)の朝ラッシュ時の混雑状況(各列車混雑率視覚化)

東急田園都市線の朝ラッシュ時混雑状況の解析

写真6. 田園都市線の渋谷は副都心線方面(左側)、繁華街方面の改札(ハチ公改札)が異なり、混雑分散に役立つ

生データだけ示してもわかりにくいでしょう。そこで、多くの観点から混雑状況を解析します(やさしー)。

復習:東急田園都市線の朝ラッシュ時ダイヤ

混雑状況はダイヤに依存します(逆にダイヤを作成する際に混雑状況も勘案します)。そこで、東急田園都市線の朝ラッシュ時のダイヤを紹介します。

基本的には平均約2分10秒程度の間隔で運転され、各駅停車準急の交互運転です。すなわち、4分~5分間隔で各駅停車準急が運転されるということです。2000年代半ばまでは朝ラッシュ時にも急行が運転されていましたが、桜新町で急行各駅停車の通過追い抜きが発生するために急行に混雑が偏っていました。その対策として、急行を東京都内の各駅に停車する準急に変更されています。

なお、準急は長津田を出ると、藤が丘、江田と梶が谷で先行の各駅停車を追い抜きます。逆にいうと、溝の口から渋谷までは全列車が先行します。

ただし、近年は最混雑60分間の前後に急行が運転され、速達列車志向客を最混雑60分間以外にシフトしようという意向が見えます。

また、朝ラッシュ時には大井町線直通はありません。2025年3月ダイヤ改正直後時点では、二子玉川断面で6:30の次が11:56です。大井町方面は同一ホーム乗りかえ可能な溝の口で乗りかえるということでしょう。

最混雑60分間の推定

一般的に混雑状況の統計は最混雑60分間でなされます。では、今回の調査結果から最混雑60分間の時間帯を推定します。

10分ごとに区切りました(表4)。

表4. 東急田園都市線(池尻大橋→渋谷)の朝ラッシュ時の混雑状況(10分ごと層別)

10分ごとに区切った混雑率から見ると、7:41~8:40が最も混雑している60分間とわかります。念のため、7:36~8:35や7:46~8:45を確認すると同様の混雑率143.9%と見積もられ、同等でした(7:41~8:40はその前後の区切りより0.01%高かったです)。よって、この区切りは妥当と判断しました。

今後の解析はこの60分間を対象とします。

また、このデータを混雑率に変換し、表(表5)と視覚化(図1、図2)しました。

表5. 東急田園都市線(池尻大橋→渋谷)の朝ラッシュ時の混雑状況(10分ごと層別)

図1. 東急田園都市線(池尻大橋→渋谷)の朝ラッシュ時の混雑状況(10分ごと層別、車両別)

図2. 東急田園都市線(池尻大橋→渋谷)の朝ラッシュ時の混雑状況(10分ごと層別)

種別や車両ごとの混雑状況

種別や車両ごとの混雑状況をまとめました(表4、図1)。

表4. 東急田園都市線(池尻大橋→渋谷)の朝ラッシュ時の混雑状況(種別/車両ごと層別)

また、イメージしやすいように視覚化しました。

最混雑60分間でならすと、車両や種別による違いはあまりありません。種別ごとに混雑状況があまり異ならないのは、急行を準急に変更した施策が功を奏したと表現できます。また、車両ごとの混雑状況があまり異ならないのは、渋谷の出口が3か所に存在し、かつ地下鉄半蔵門線内の出入口が多くの号車に散っている点が大きいでしょう(写真7)。

他方、時間帯ごとによる違いはそれなりにありますので、混雑を避けたい場合は車両や種別の工夫でなく、電車に乗る時間帯の工夫のほうが重要ということです。

(参考)写真7. 半蔵門線の各駅の便利な乗車位置

田園都市線の混雑状況からダイヤを考える

写真8. 中目黒の日比谷線の引上線は3線あるが

2025年現在、微妙な遅れが生じていることを考慮すると、運転間隔、所要時間ともに「限界値」で運転していると読み取れます。また、大井町方面へのシフトを期待して朝ラッシュ時に急行大井町行きを設定することは、二子玉川→渋谷の輸送力削減を意味しており(例えば溝の口始発渋谷行きを設定することは困難)、これによる改善も困難です。

大井町シフトをやるとするならば、梶が谷→溝の口を複々線化し、急行大井町行きと梶が谷→渋谷方面の別途運転することです。ただし、これは複々線化を伴いながらも、二子玉川→渋谷の輸送力は増えないというコストパフォーマンスに優れない点を指摘できます。きっと、空いた梶が谷始発と混雑する前後列車という情景が実現し、かえって悪化しそうです。

やるとすれば、渋谷駅の2面3線化(中線は上下共用で朝ラッシュ時は上り、夕方ラッシュ時は下り、日中時間帯は渋谷折り返し用)です。これにより、渋谷の停車時間がネックの最小運転間隔を短縮でき(上り先行列車停車中に後発の電車が交互発着可能)、遅れの抑制や多少の増発を期待できます。こうすれば、全体的なキャパシティを増強できますから、速達列車が各駅停車を追い抜く回数を増やすことで速達列車の速達性を維持できます。

また、別の方策として日比谷線を三軒茶屋に延長し、港区方面の流動を渋谷を通さないように誘導することも考えられます。大井町線への誘導と同様の考えです。現在の大井町線への誘導は臨海部へは有効ですが、港区(品川駅を除く)への誘導はいまいちでしょう。そうであれば、六本木地区への通勤需要を日比谷線に誘導し、三軒茶屋→渋谷の混雑を緩和するということです。もちろん、このような計画は皆無です。

現実には、本当に混雑する30分間を避けながら急行を注意深く設定し、この30分間の混雑を緩和する程度の方策しかありません(ただし前後の時間帯の種別ごとの混雑のムラが生じます)。多くの人口を田園都市線1つで運ぶには限界が迫っており、(大井町線シフトという改善策が施されていますが)何かしらの改良が必要になっているのです。

東急田園都市線の混雑データ

ここまで特定の時間帯という狭くて深い情報を示しました。一方、弊サイトでは公式データなどをまとめた、浅くて広い情報も記しています。そのような記事を紹介します。

東急田園都市線(混雑基本データ)

このページでは東急田園都市線の混雑状況について基本的なデータをまとめています。また、私が実際に現場で調査した結果へのリンクも記しています。

2020年時点の混雑状況

以下、2020年時点での混雑状況も資料として示します。

東急田園都市線の朝ラッシュ時の混雑状況まとめ

以下、長い本文を読みたくない人のために、概要をまとめます。

・最混雑時間帯の1時間は7:40~8:39の60分間である
 ※最ピークは8:00~8:09の10分間で、8:10~8:29もそれに近い混雑

・上記60分の混雑率は122%程度である
 ※いいかたをかえると、座席前の吊革が埋まるものの、ドア付近での圧迫は生じない程度

・準急と各駅停車ではあまり混雑に違いはない
 ※やや各駅停車のほうが混んでいる

・2号車が空いていて、4号車と5号車が混んでいる傾向である

復習:東急田園都市線の朝ラッシュ時のダイヤ

混雑状況を分析するには、ダイヤに関する基本的な理解が必要です。朝ラッシュ時は2分10秒程度の間隔で運転され、うち半数が各駅停車、もう半数が準急です。準急は中央林間から長津田までは各駅に停車、長津田から二子玉川までは通過駅があり、二子玉川から渋谷までは再び各駅にとまります。

もともと準急という種別はありませんでした。急行が桜新町(二子玉川と渋谷の間にある駅です)で各駅停車を抜かしていました。しかし、それでは急行に乗客が集中します。急行への乗客集中を軽減するために、桜新町での追い抜きをなくしました。追い抜きがなくなると各駅で乗客を集める各駅停車に乗客が集中します。そのため、当該の急行を二子玉川から渋谷まで各駅にとめることにしました。それが準急の存在意義です。

朝ラッシュ時の田園都市線の上り電車は1本の例外もなく、渋谷から半蔵門線に直通します。半蔵門線内は最低でも清澄白河までは運転されます。以前は半蔵門(大手町の手前)しか向かわない電車があり、混雑に偏りが生じる原因になっていました。今は半蔵門行きは延長され、どの電車でも清澄白河まで行くようになりました。これで、混雑の偏りが軽減します。

東急田園都市線の平日朝ラッシュ時の混雑状況の生データ

写真9. 池尻大橋でも多くの乗客が乗りこむ

東急田園都市線の混雑状況の生データを示します(表6-1)。

表6-1. 東急田園都市線の朝ラッシュ時混雑調査結果(池尻大橋→渋谷、生データ)

東急田園都市線の朝ラッシュ時混雑調査結果(池尻大橋→渋谷、生データ)

人通りの多い朝の渋谷駅に立って混雑状況を確認することが困難と予想し、池尻大橋発車時の状況を確認しています。渋谷着でも池尻大橋発でも同じものを見ているので、そのような意味では問題ありません。ただし、渋谷到着時刻のほうが親しみやすいでしょうから、以下の記述は渋谷到着時刻で書いています。

単純には混雑率は114%ですが、一般に最混雑60分に限って分析します。そのため、次の章で詳しく分析します。

東急田園都市線の平日朝ラッシュ時の混雑状況の分析

生データだけ見てもわかりにくいです。どの種別や号車が混んでいるのか、空いているのか、という傾向を分析したほうが親切というものでしょう。そこで、私なりに混雑状況を分析します。

最混雑時間60分の推定

では、どの時間帯が最混雑の60分なのでしょうか。10分ごとに解析します(表6-2)。

表6-2. 東急田園都市線の朝ラッシュ時混雑調査結果(池尻大橋→渋谷、10分ごと層別)

東急田園都市線の朝ラッシュ時混雑調査結果(池尻大橋→渋谷、10分ごと層別)

10分ごとに混雑率を算出しました。これを見ると、7:40~8:39がピーク60分として考えると良さそうです。その混雑率は122%です。2018年度の混雑率は182%を基準とすると33.0%の減少です。調査日は9月上旬で、都営地下鉄の減少率もだいたいその程度ですから、一般的な傾向でしょう。

この10分間の区切りが適切かどうかという議論もあるでしょう。念のため5分前にずらした7:35~8:34で集計しても混雑率は121.6%と同じ結果がでました。ここでは、急行があまり含まれない(=ラッシュピーク時のダイヤが採用されている)7:40~8:39としました。

最ピークは渋谷着で8:00~8:09です。ただし、8:10~8:29もほぼ同等の混雑です。混雑を避けたければ、渋谷着8:00~8:29を避けるのが得策です。

写真10. 東急電鉄が公表しているデータ(だいたいこの記事と矛盾しないでしょ?)

種別ごとの分析

次に、種別ごとの混雑状況を見てみましょう(表6-3)。この分析は先のピーク60分間に絞ったものです。

表6-3. 東急田園都市線の朝ラッシュ時混雑調査結果(池尻大橋→渋谷、最混雑1時間、種別ごと層別)

東急田園都市線の朝ラッシュ時混雑調査結果(池尻大橋→渋谷、最混雑1時間、種別ごと層別)

ラッシュピークに運転されない急行は、ラッシュピーク時に運転される準急や各駅停車よりも混んでいます。とはいえ、ここで集計されている急行は1本だけであり、「指名客」の存在で例外的に混んでいる可能性を指摘できます。現に、(この分析の対象ではない)他の急行はここまで混んでいません。

最混雑時間帯の主役は準急と各駅停車です。準急のほうがやや空いています。これは正直、意外な結果でした。一般的に各駅停車よりも速達列車のほうが混むためです。この理由を考えてみます。

鷺沼で準急は各駅停車を追い抜きます。この後の追い抜きはありません。準急はこの間の5駅を通過します。各駅停車はこの5駅の乗客も乗せますが、準急は乗せません。このため、各駅停車のほうが近距離区間で多くの乗客を集客し、結果として混むのでしょう。

また、鷺沼以遠の乗客が全員準急を選ぶこともなく、(長津田-鷺沼の準急通過駅の)乗客の多くが鷺沼で準急に乗りかえないのかもしれません。

車両ごとの分析

では、空いている車両や混んでいる車両はあるのでしょうか。各駅停車と準急で混雑率がそう変わりませんので、種別ごとの集計ではなく、全種別の集計です(表6-4)。

表6-4. 東急田園都市線の朝ラッシュ時混雑調査結果(池尻大橋→渋谷、最混雑1時間、車両ごと層別)

東急田園都市線の朝ラッシュ時混雑調査結果(池尻大橋→渋谷、最混雑1時間、車両ごと層別)

だいたい混雑は平均化されていますが、2号車が空いていて、4号車と5号車が混んでいる傾向にあります。かつて6ドア車が連結されていたのは4号車、5号車と8号車ですが、8号車の混雑はそこまでではありません。6ドア車が運転されていたのは2000年代後半~2010年代前半のことです。2010年代後半から渋谷の再開発が進められてきました。このため、渋谷の目的地が微妙に変わり、混んでいる車両が変わったのでしょう。

混雑状況から田園都市線のダイヤを考える

写真6-5. 現在も「古豪」8500系が活躍する

さて、混雑状況からダイヤを考えてみましょう。

混雑率はだいたい120%で、「超満員」とはほど遠いです。そうであれば、現在のような混雑の分散を意図して、速達性を犠牲にする必要性は薄いです。

たとえば、準急を急行に変更することも手です。準急から急行に変更すると2分強スピードアップできます。一方、各駅停車は桜新町で待避するために1分強のスピードダウンとなります。それでも、全体としてはスピードアップです。

また、池尻大橋での停車時間が長い電車も散見されました。混雑率180%であれば乗り降りに時間がかかりますが、混雑率120%ではそこまで乗降時間は必要ありません。そのため、停車時間が余っていたのです。これからは停車時間を削減し、そのぶんスピードアップが可能です。渋谷よりの各駅の停車時間を各駅5秒削減すると、二子玉川から渋谷までの所要時間は30秒削減できます。このスピードアップは各駅停車だけでなく、急行にも及びます。

スピードアップそのものは鉄道会社側の「労働時間の削減」、「保有車両の削減」にもつながり、会社側にとっても悪い話ではありません。今後は(多くの車両と人員を必要とする)混雑緩和よりも(利用者も会社側も喜ぶ)スピードアップのステージへと移行することでしょう。

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