近年開発の進む武蔵小杉。ここの通勤経路のメインといえば横須賀線です。その横須賀線は新車は普通車オールロングシートです。それほど混雑が激しいのでしょうか。実際に夕方のラッシュ時下りの混雑状況を現場で調べました。
写真1. 15番線から発車する横須賀線下り
調査区間の選定
今回は混雑する区間である、品川-西大井で実際の列車1本1本の混雑を調査しました。具体的には、品川発車時点での混雑です。各列車の混雑を調査しますが、さらに各車両ごとの調査をしています。ここまでやる人はマニア多しといえども、そこまで多くありません。そのような意味では貴重な調査です。
混雑状況のまとめ
本文を読むのが面倒な人のために、簡単に読める要約を書きました(やさしー)。
・18時台は混雑しており、吊革が埋まる程度の混雑が見られます。ただし、圧迫が生じるほどではありません。
・混雑のピークは18時台、混雑の激しい車両は3号車(グリーン車)です。
・5分続行の列車は混雑が分散します。
実際の混雑状況
実際の調査結果を示します。
調査方法と調査結果
弊サイトでは混雑ポイントという概念を導入しております。その概要を示します(表1)。
表1. 混雑ポイントの概要
せっかくなので、120ポイント~160ポイントの様子をご覧いただきましょう(写真2-4)。いずれも個人情報を守ることを目的に、画質を落としています。
写真2. 混雑ポイント120ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)
写真3. 混雑ポイント140ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)
写真4. 混雑ポイント160ポイントの様子(写真3と異なり、ドア部分が圧迫されていることがわかります)
実際の混雑状況の生データ
それでは、実際の混雑状況を示します(表2)。
表2. 品川発17時台と18時台(17:00~19:00)の混雑状況生データ
※増1号車は進行方向先頭側、11号車は進行方向後ろ側
東海道線と比べて余裕があると感じるほどの混雑です(東海道線は東海道線夕方の混雑状況(品川→川崎、現場120分調査結果)をご参照ください)。どの車両でもドア部分に軽い圧迫が生じるようなことはありませんでした。詳細な分析は後で実施します。
横須賀線(夕方ラッシュ下り)の混雑状況分析
それでは、混雑状況を分析してみましょう。時間ごとの混雑状況、穴場となる列車、穴場となる号車、そして並行する東海道線との混雑の比較です。
時間ごとの混雑状況
時間ごとに混雑状況を層別してみましょう(表3)。ここでは品川時点で30分ごとに分類しています。
表3. 時間ごとの混雑状況の一覧
・17時台前半は吊革のほとんどが埋まっていない状態です。
・17時台後半になると、急に混雑が激しくなり、吊革の3/4が埋まっています。
・18時台は吊革が埋まる程度の混雑になっています。その中で、18時台後半が混雑のピークです。
混雑する列車と空いている列車
それでは混雑した列車と空いている列車を見てみましょう。「空いた」「混んだ」の判断基準は、前後の列車との比較にします。
・17:13発普通は明らかに空いています。これは、ラッシュ時には早い時間であることと、15両編成であるためでしょう。
・18:24発普通は前後よりも空いています。これは、5分続行の3本目のためでしょう。これと同様の傾向が18:52発普通にも見られます。
※2本目がそれなりに混んでいるのは、5分前の列車をあえて見送った人がそれなりにいたためと推定します。
・前後と比べて明らかに混んでいる列車はありません。
号車ごとの混雑状況分析
次に、号車ごとの混雑状況を分析します(表4)。
表4. 号車ごとの混雑状況分析
・9-11号車が空いています。E217系のクロスシート車がこの位置であることは納得できます。
・3号車が一番混雑しています。編成中央にあり、隣がグリーン車であるためです。
東海道線との混雑状況比較
では、横須賀線は東海道線よりも空いているのでしょうか。それとも、武蔵小杉開業で混雑は逆転したのでしょうか。同じ時間帯の東海道線と比べてみましょう。
表5. 横須賀線と東海道線の混雑状況比較
どの時間帯でも明らかに東海道線よりも空いています。混雑率にして30%ほどの違いです。では、なぜここまで東海道線と横須賀線の混雑に違いがあるのでしょうか。その理由として以下のものが考えられます。
・東京、新橋のホーム位置の違い。東海道線は比較的街に近い地上(高架)ホームに発着するのに対し、横須賀線は街から遠い地下ホームに発着するという違いです。
・品川-大船での所要時間差。東海道線は直線的に川崎、横浜、戸塚にしか停車しませんが、横須賀線は品川-横浜で大回りする他、4駅に停車しています。そのため、横須賀線は所要時間が長く、どうしても東海道線を選びます。
・路線の奥の深さ。横須賀線は久里浜までの路線です。横須賀市内は京急が輸送の主力ですから、実質的には逗子までの乗客が多いです。一方の東海道線は(一般的な通勤圏では)小田原までと距離が長いです。また、沿線人口も東海道線のほうが多いことも見逃せません。つまり、横須賀線だけを利用できる人の多さよりも、東海道線だけを利用できる人のほうが多いのです。
まとめると、東海道線のほうが利用できる人も多く、両方を利用できる人も東海道線を選ぶために、東海道線のほうが混雑率にして30%程度混んでいるのです。
横須賀線のダイヤを考える
横須賀線は、湘南新宿ラインや各種ライナーと線路を共用する関係上、横須賀線ファーストのダイヤを組めません。実際に、間隔が開いている箇所を確認してみましょう。
・17:47と18:02の間は横須賀線系統の湘南新宿ラインがあります
・18:02と18:14の間は東海道線系統の湘南新宿ラインがあります
・18:24と18:35の間は横須賀線系統の湘南新宿ラインがあります
・18:35と18:47の間は東海道線系統の湘南新宿ラインがあります
このように、湘南新宿ラインの列車が間に入るせいで横須賀線の間隔が開くという現象が生じています。現在、湘南新宿ラインのほうが横須賀線よりも混雑している以上、これは仕方ありません。また、将来的には、相鉄直通も見込まれています。このような状況で、横須賀線の増発を望むのは酷でしょう。
ラッシュ時の混雑を現場で調査して、ダイヤについても考察しています。
・東海道線夕方の混雑状況(品川→川崎、現場120分調査結果)
この調査と同等の時間帯について調査しました。横須賀線よりも混雑が激しいことがわかります
・【夕方ラッシュ】湘南新宿ライン(横浜方面)の混雑状況【現場90分調査】
新宿方面から横浜方面への帰宅時間帯の混雑を調査しました。ドア部に圧迫が見られますので、横須賀線よりも混雑が激しいことがわかります。
横須賀線(混雑基本データ)
今までは特定の駅での定点観測という「狭くて深い」情報でした。ここでは、混雑率などの公式データをまとめました。いわば「広くて浅い」情報です。
私は別項(上記リンク参照)で湘南新宿ラインや東海道線の増発を要望しました。経営資源に限りがある以上、横須賀線そのものの増発よりもこれらの増発を優先するのが筋でしょう。ただし、18時台に11両編成があるのは15両編成にするべきでしょう。11両編成でも15両編成でもダイヤ上のスジを消費するのは確かだからです。
また、成田エクスプレスが空いていることも確認できました。成田エクスプレスをライナーのように利用できるように制度を変更して、ライナーの乗客を転移することも考えるほうが良いと感じました。こうすれば、ライナーの本数を減らしても着席定員は変わりません。このように空いた線路容量を通勤電車の増発に向けることも必要です。