札幌から日帰りで行ける観光地である小樽。その道中に興味を示す人は多くありませんが、私は列車(鉄道)をおすすめします。その理由は美しい海岸線を堪能できるからです。では、実際にその道中を紹介しましょう。実用的な案内も兼ねています。
写真1. 海岸線を列車とすれ違う
札幌と小樽の移動方法概論
まずは、やや不正確であってもわかりやすくするために、札幌と小樽の鉄道(電車)で移動する概略を箇条書きで示しましょう。
・路線名:函館本線
・所要時間:32分(快速エアポート)~39分(区間快速)
※朝夕は普通列車による移動で46分
・運賃:640円
※この区間は特急などの運転はなく、エアポートの指定席以外は運賃のみで利用できます
※Kitaka、Suica、PASMOなどの交通系ICカードも利用できますが、同額です(JR北海道にはIC運賃はありません)
・運転本数:1時間に4本
・拠点駅:札幌駅と小樽駅
札幌駅基準で10:00~19:30、小樽駅基準で9:30~19:10を中心とした時間帯についてまとめました。札幌発毎時13分と43分に快速エアポートが発車し、毎時28分と58分に区間快速いしかりライナーが発車します。いずれも小樽行きです。17:00を過ぎると区間快速の発車時刻が変わりますが、小樽行きか倶知安行き(快速ニセコライナー)を選べば間違いありません。小樽駅基準で毎時00分と30分に快速エアポートが発車し、毎時10分と40分に区間快速いしかりライナーが発車します。小樽からは札幌行きは本数が少なく、多くは新千歳空港行きや江別行き、岩見沢行きです。いずれにせよ、10分~20分待てば列車が来るので、地方としては便利なほうです。快速の所要時間は32分、区間快速は39分と大きな違いはありません。
重要
2020年3月にダイヤ改正があり、区間快速が廃止されました。快速エアポートは札幌を毎時13分と47分ごろに発車します。このほかに普通が毎時25分ごろと50分ごろに発車し、小樽まで先着します。平均して1時間に4回の乗車チャンスは維持され、地方にしては本数は多いほうです。
逆に小樽を快速エアポートは毎時00分と35分に発車します。この間の毎時18分に普通が発車しますが、これは札幌まで先着します。毎時49分の普通は手稲で快速を待ちます。そのため、乗車チャンスは1時間に3本です。地方都市圏としては標準的でしょうか。
運賃は640円です(2019年10月から750円です)。ただし、2019年10月の消費税増税とタイミングを合わせて、運賃値上げが予定されています。往復2000円あれば足りるレベルですね。なお、特急列車は運転されていませんので(ただし稀に1日1往復程度臨時特急が運転される)、特急料金は必要ありません。Kitakaが使用可能です。SuicaやPASMOなどの交通系ICカードを利用することも可能です。その場合も運賃は変わりません。IC運賃を導入しているのが首都圏、仙台と新潟だけなのです。
拠点駅は札幌駅と小樽駅です。札幌の観光地や繁華街に近いJRの駅は札幌駅ですし、小樽の観光地や繁華街に近い駅は小樽駅です。小樽運河も北一ガラスもみんな小樽駅ですね。ウィングベイ小樽ですか?行きたい人は行けば良いと思いますが、1回つぶれている時点でおすすめしません。
写真2. 721系電車の車内
写真3. 201系気動車の車内
札幌から小樽の電車の車内を簡単に紹介します。私のようなマニアにとっては6種類ありますが(721系前期、721系後期、731系、733系、735系、201系気動車)、そうでない人にとっては2種類でしょう。721系電車のような旅人向きの車両(写真2)と、そのほかの地域住民向けの車両(写真3)に分けられます。残念ながら、両者は共通で運用されていますので、何時何分発がどのような内装の車両かはわかりません。地域住民向けの車両に当たってしまった場合は、仲間うちで横に並んで旅の計画などを話せば良いでしょう。
最後にバスとの比較を示します(表1)。
表1. JRとバスの比較
JR | バス | |
---|---|---|
所要時間 | 32分~50分 | 50分~60分 |
運賃 | 750円 | 680円 |
運転本数 | 毎時3~4本 | 毎時3本程度 |
※高速バスの時刻表は北海道中央バスの公式サイトから確認できます。
札幌から小樽の移動
では、実際に移動しましょう。私は朝早く乗ったたので、快速列車ではなく普通列車での移動です。GWなので、観光客が大挙して押し寄せる前に小樽観光を処理するという意図です。側面の窓ガラスが汚れていたので、先頭部分に乗りました。しょうがなくですね。
写真4. 札幌駅を発車
札幌駅を発車します(写真4)。特急ライラックが停車しています。
写真5. 桑園を過ぎて学園都市線が分岐
札幌を出て最初の駅が桑園です。その桑園では、学園都市線が分岐します。実際には桑園の少し先まで併走しています(写真5)。
写真6. 時速60kmにしか達しない
札幌都市圏の電車で気になることがあります。それはスピードの遅さです。かつての時代(30年以上前)より駅は大幅に増えていますが、桑園-琴似は2.2kmあります。山手線でいうと、田町-品川並みの駅間距離です。山手線は90km/h出すのに、こちらは60km/hです(写真6)。直線ばかりなのだし、加速性能も良い車両が多いので、100km/h程度まで出すべきです。
写真7. 琴似に停車中
琴似に停車します(写真7)。琴似は札幌の西に位置するそれなりに重要な拠点です。そのため、快速も停車します。
写真8. 高架線から山々が見える
高架線から山々が見えます(写真8)。この山にはスキー場があったりします。札幌市民の重要な憩いの場なのでしょう。
写真9. 踏切が見えてきた
踏切が見えてきました(写真9)。札幌から続く高架区間は琴似でおしまいです。琴似からは地上におります。
写真10. 札幌市郊外の住宅街を行く
写真11. 札幌市郊外の住宅街を行く
琴似から手稲までは札幌市郊外の住宅街を行きます(写真10-11)。この付近は発寒といいます。発寒と発寒中央と似た駅があるので、注意が必要です。
写真12. 稲積公園に停車中
もう1回高架に上がり、稲積公園に停車します(写真12)。
写真13. まもなく手稲
稲積公園を出ると、手稲です(写真13)。手稲は地味な駅ですが、ずっとJR北海道で第2位の乗降客数を誇っていました。現在は新千歳空港に2位の座を譲り渡し、3位となっています。もちろん、快速停車駅です。
写真14. 稲穂と星置の間を走る
稲穂と星置という札幌市の住宅街の駅を通ります(写真14)。
写真15. 星置周辺
星置に停車します(写真15)。この光景を見ると山の中を走っているように見えますが、右手の防風林の向こう(北側)は住宅街が広がっていますし、左手の斜面の向こう(向こう)は国道と住宅があります。
写真16. ほしみに停車
札幌市最後の駅、ほしみに停車します(写真16)。ほしみを出てすぐに小樽市に入ります。
写真17. 110km/h近くの速度を出す
ここから駅間距離が開きます。そのため、時速110km近くまで飛ばします(写真17)。ただし、ほしみの次の銭函からは海岸線をくねくねと走りますので、そこまでスピードは出ません。
写真18. 銭函が近づいてきた
銭函が近づいてきました。それなりに住宅街が広がっていることがわかります(写真18)。ほしみ行きも銭函まで運転しますが、銭函では中線に停車するので、銭函駅利用者は乗れません。
写真19. 銭函に停車中
銭函に停車中です(写真19)。ここはニシン漁で栄えた場所です。
写真20. 美しい日本海が見える
写真21. 美しい日本海が見える
写真22. 美しい日本海が見える
銭函から小樽築港までは海が眺められる区間です。とりわけ、銭函から朝里は海岸線ギリギリを走り、特に景色の良い区間です(写真20-22)。
写真23. 快速ニセコライナーとすれ違う
ただし、私のようなマニアはどうしてもすれ違う列車に目が向いてしまいます。すれ違ったのは、1日1往復の快速ニセコライナーです(写真23)。快速といっても、小樽築港から倶知安まで各駅にとまります。
写真24. 美しい日本海が見える
写真25. 美しい日本海が見える
写真26. 美しい日本海が見える
写真27. 美しい日本海が見える
写真28. 美しい日本海が見える
また美しい日本海沿いを走ります(写真24-28)。夏場には海水浴をする人を見かけます。たまに線路に立ち入ることも…。
写真29. 朝里に停車
銭函と朝里の間は8.8kmもあります。この区間は道路も国道1本しかなく、札幌と小樽の間は実は限られたルートしかないことがわかります。朝里あたりからは小樽の市街地に入ります。といっても、朝里駅そのものの近くには民家は少なく無人駅です(写真29)。
写真30. 小樽の街と海のコラボレーション
朝里を過ぎると、小樽の街と海を同時に眺めることができます(写真30)。
写真31. 小樽の市街地に入ってきた
銭函から朝里までとは異なり、建物が多くあります。小樽は坂の町で平地があまりなく、斜面に建物が建っているという独特の光景が広がります(写真31)。
写真32. 小樽築港に停車
小樽築港に停車します(写真32)。ここは手稲を出て初めての快速停車駅です。小樽市の駅では珍しく、駅の両方に出られます。再開発に合わせて駅舎も建て替えられています。でも、ここの近くのウィングベイは前の建物(マイカル)の持ち主が経営破綻したといういわく付きの商業施設です。
写真33. 小樽の市街地を走る
小樽の市街地を走ります(写真33)。札幌と比べて古い建物が多いように思います。それもそのはず、小樽の歴史は古いのです。北海道開拓のために小樽港が開設されてのが小樽の発展がスタートしました。戦後は日本海の向こうが「東側」のソ連になっていたので、小樽の重要性が低下してしまいました。そのため、小樽は衰退しました。ただし、衰退したがゆえに観光地として脚光を浴びています。世の中、何が幸いするかわかりません。
写真34. 南小樽の駅近くの桜が美しい
小樽の手前は南小樽です。桜が美しいですね(写真34)。
写真35. 最後の1駅を走る
南小樽から小樽に向かう際に左に曲がりますが、これを直進すれば、手宮に向かいます。その手宮までの路線は廃線になっています。最後の1駅はゆっくり走ります(写真35)。
写真36. まもなく小樽!
ゆっくり走って、小樽に到着します(写真36)。
写真37. 小樽に到着
このように小樽に到着しました(写真37)。721系が使われていました。旅人向けの車両です。
写真38. 後ろは733系だった!
その721系は最新の通勤電車の733系が連結されていました(写真38)。733系は旅人向けというより、地元向けの車両です。
小樽駅の観察
さて、小樽に着いたら、小樽駅の観察です。
写真39. きれいに改装されたコンコース
写真40. きれいに改装されたコンコース
小樽駅は観光の拠点として利用されていて、整備もされています。観光客向けにレトロ調の内装に改装されています(写真39-40)。
写真41. 4、5番線に向かうエスカレーター
小樽駅は駅舎に近いほうが4番線と5番線として命名されています。一方、駅舎から遠いほうが1番線と2番線と命名されています。一般的に駅舎に近いほうが1番線なので、感覚と現実が合わないです。これは、列車運行の都合です。
写真42. 改札口周辺の天井が高い
写真43. 各種窓口も備わっている
改札口の周辺も見てみましょう(写真42-43)。駅にはみどりの窓口があります。また、改札口周辺は天井が高くなっています。開放的な空間だと居心地も良いことでしょう。
写真44. 駅舎を眺める
駅舎を外から眺めます(写真44)。上野駅に似た駅舎です。上野駅が北の玄関として整備されたことが大いに関係しそうです。このようにして、札幌から小樽までのショートトリップは幕を閉じたのです。
さて、前後ではどこに行ったのでしょうか?
札幌から小樽までの海岸沿いの列車旅(19年GW)←今ココ!
(次)函館本線(山線)の旅(小樽→長万部、19年GW、車内や混雑は?)→
★今回の旅行の全体的な計画~まとめは以下のページに記載しています。
北海道鉄道旅行の計画とまとめ(19年GW)
※それぞれ別ウィンドウで開きます。