現在増備されているJR北海道の通勤電車は3ドアロングシートです。しかし、JR初の通勤電車の721系電車は3ドア転換クロスシートで登場しました。その721系は15年に渡って配備されたので、多くの形態の車内があります。今回は、その多様性を見てみましょう。
写真1. 721系の先頭
原型0番台
1988年に登場したのは0番台といいます。当時加速力が低く、冷房なし、そして2ドアの711系に親しんだ札幌の人々にとって衝撃の車両だったことでしょう。その0番台の車内を見てみましょう。
写真2. 独特の色使いのデッキ
写真3. 独特の色使いのデッキ
721系の車内に入る際に独特の色使いのデッキに気づかされます(写真2-3)。冬が寒いにも関わらず、寒色系の内装なんです。当時からデンマーク国鉄の影響を受けていたのでしょうか。
写真4. デッキと客席の間の仕切扉
デッキと客席の間に仕切扉があります(写真4)。JRになってから登場した通勤電車では唯一の形式です。
写真5. 運転台仕切部分
運転台仕切部分にはある程度窓があります(写真5)。後に登場する731系以降の電車だと中央の貫通扉以外には窓がありませんので、接客面でやや後退した感じは否定できません。
写真6. 客席内部の様子
客席内部の様子です(写真6)。私は2018年GWにウィーンに行きましたが、ウィーンの通勤電車(Sバーンといいます)も同じような色使いです(写真7)。
(参考)写真7. ウィーンの通勤電車の車内
写真8. 転換クロスシートが並ぶ
721系に話を戻しましょう。転換クロスシートが並びます(写真8)。ドアとドアの間に7列あり、ドアよりの1列は1人がけ、他の5列は2人がけです。昔はシートモケットが赤い車両がありましたが、現在はその車両でもモケットは茶色になっています。青いデッキと赤い座席とはだいぶ異なりますね。
写真9. 整然とした天井
天井を見てみましょう。整然としており、カバー付きの蛍光灯が貫いています(写真9)。赤い矢印と青い矢印があり、新千歳空港で矢印で進行方向を案内していたことを思い出しました。
写真10. 窓も開く仕様
窓も開きます(写真10)。私はこのとき721系に手稲から乗りましたが、手稲発車時点ではがら空きでした。そのため、走行音を味わうために窓を開けていました。徐々に人が乗ってきたので、窓を閉めました。後で登場する731系以降の電車では窓が開きませんので、これは大きな差です。
写真11. 通常の0番台はこの配色
実は、青色のデッキは珍しいです。水色のデッキ部分の車両のほうが多数派です(写真11)。このため、青いデッキの車両は個人的に当たりだと思いました。
4200番台、5200番台の車内
721系の増備は1990年代に1回終わりを告げました。731系が登場したためです。しかし、2002年に転機が訪れます。711系の置き換えのために、中間車だけが増備されました。その際は、デッキなしで出入口周辺だけロングシートという座席配列となりました。そのため、721系はオール転換クロスシートと認識するのは間違いです。
写真12. 721系4200番台、5200番台の車内
このくらいしか写真はありませんが、これがデッキなしの721系の車内です。出入口付近にロングシートがセットされていることがわかります。付随車が増備された形式を4200番台、電動車と付随車が増備された形式を5200番台といいます。車内だけ着目する限り、4200番台と5200番台の区別の必要はありません。あれ?5000番台と言わないんだ…。
長距離利用も短距離利用も対応するこの車両が今後の標準になると思いました。しかし、現実にはオールロングシートの735系や733系が登場することになるのです。
レア車両!モハ721-5001との遭遇
上記の4200番台や5200番台は3両編成に中間車をつなげて6両編成にすることが主眼で登場した車両です。しかし、世の中はそううまくいきません。このような増備をしていくと、先頭車だけ2両余ることになりました。そこで、その2両にも中間車をつなげて3両編成を完成させました。この車両はデッキ付きで登場しています。デッキなしにすると、浮くからかな?721系と733系の連結運転が当たり前のようにある現状からすると、無駄な心配にも思えてしまいますが、そこは気にしないことにしましょう。
写真13. モハ721-5001が連結されている証拠F-5001の表示
写真14. モハ721-5001の車両番号
当該の車両はモハ721-5001だけです(写真13-14)。デッキ付きの721系でロングシートが配置されている唯一の(形式ではなく)車両です。編成番号はF-5001です。これを覚えておけば、レア車両に当たったことがすぐにわかるようになります。
写真15. 端部側のデッキ部分
端部のデッキ部分です。2000年代に増備された車両のカラーリングでありながら、デッキの仕切扉があることがわかります。
写真16. 車両中央側のデッキ部分
写真17. 車両中央側のデッキ部分
車両中央のデッキ部分をよく見ると、出入口付近はロングシートが設置されていることがわかります(写真16-17)。
写真18. 客席全体を眺める
客席を眺めてみましょう(写真18)。クロスシートが5列あることがわかります。写真ではわかりくいですが、ドア付近はロングシートです。従来の1人がけシートの部分を2人がけロングシートに置き換えていますから、座席定員は従来の721系よりも増えています。
写真19. デッキの扉越しに客席を眺める
デッキの扉越しに客席を眺めます(写真19)。デッキなしの4200番台と5200番台とほとんど同じ座席配列ですが、デッキなしという点だけ異なります。窓割と座席割が一致していないことが問題です。
まとめにかえて
721系は同じような外観でありながら、さまざまな内装の車両があることがマニア心をくすぐられます。731系以降の車両がロングシート車であることと比較すると、中距離用にはこの車両がぴったりのように思えます。特に、2000年代に増備された車両はデッキの扉がなく、出入口付近がロングシートであることから、短距離利用と中距離利用のバランスが取れた車両です。これをステップレスにすることで、各扉の収容力が増加します(従来のステップにも立てるようになるため)。このような車両を今後の標準にすることも良さそうです。というより、オールロングシートは感心しません。朝の混雑について言うのであれば、まずは8両編成か9両編成にしましょう。
721系はJR発足当初の車両です。同期の車両に811系、311系、221系などが挙げられます(JR東日本は205系や211系を増備していました)。国鉄型ほど古くなく、最新型ではないこともあって脚光を浴びない車両群です。それでも、新しい会社を前面に出すようにするために斬新な外観や内装を採用した意味では、興味を惹かれる車両群です。この記事がこれらの車両への興味のきっかけになるようになれば、望外の喜びです。
さて、前後ではどこに行ったのでしょうか?
721系の車内を見てみる(レア車両もしっかり観察!)←今ココ!
★今回の旅行の全体的な計画~まとめは以下のページに記載しています。
北海道鉄道旅行の計画とまとめ(19年GW)
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