社会事情の変化もあり、終電が繰り上げられた首都圏各線。その影響が最も大きいとされるのが中央線です。そんな中央線の時刻変化を探りました。
写真1. 夜間の中央線の様子(2019年に撮影)
本記事の概要
中央線の終電が繰り上がるとともに、快速電車では以下の変化が生じています。
・早朝と22時台については増発も減便も発生していない
・23時台はむしろ増発している
・終電の大幅な繰り上げに伴い、0時台は減便されている
早朝・深夜の変化を探る:発車時刻表から
写真2. 夜間の四ツ谷駅(2019年に撮影)
「終電が早くなる」ということはニュースや大手サイトさんでも取り上げられています。では、実態はどうなのでしょうか。一部の「始発の繰り下げ」も言われていますので、早朝と深夜についてダイヤ改正前後で発車時刻を並べて比べてみましょう。
ここでは、都心の拠点として御茶ノ水を、都心の端部として中野を選びました。
表1. 発車時刻の比較
※青字は中央特快や青梅特快を示す
御茶ノ水(下り)、中野(上り)ともに早朝(4時台~6時台)の増減はありません。終電の繰り上げのみならず初電の繰り下げも実施する路線もありますが、中央線の都心よりではそのようなことはありませんでした。ただし、初電の繰り下げをするかわりに、終電の繰り下げを今より10分程度緩和する手もありました。
「終電の繰り下げ」をする理由については述べていましたが、「初電の繰り下げではなく終電の繰り上げ」を選択した理由はもう少し詳細にプレスリリースに掲載してもらいたかったです。
さて、深夜時間帯については変更点が見られます(以下は御茶ノ水下りで述べています)。
・22時台は変更なし
・23時台は1本増発、ただし、23時台後半の中央特快は快速に格下げ
・0時台は4本減便、0時台に設定の中央特快は快速に変更
深夜時間帯の乗客が減少するなか、22時台の本数が維持されたことは素晴らしいの一言に尽きます。また、終電繰り下げによる深夜時間帯の乗客集中に備えて、23時台についてはむしろ増発していることも素晴らしいの一言に尽きます。
せっかく本数を維持するのであれば、23時台の中央特快を維持するという手もありました。当該の電車は高尾行きの最終電車です。最終電車を中央特快にするのは不適切と考えたのでしょうか。最終電車の終着駅到着時刻を早めつつ、都心のターミナル駅発車時刻を遅らせる手段として、深夜時間帯の中央特快というのがあります。そうすれば、23:54発を中央特快高尾行きに設定し、ダイヤ改正後の時刻よりも5分遅い時間帯に高尾行きを設定でき、八王子や高尾への終電を5分遅らせることができました。
0時台は2本しかなく、早じまいという印象です。武蔵小金井までの最終が0:09とはかなり早く感じます。最後の1本だけでも高円寺・阿佐ヶ谷・西荻窪を通過して0:12発に3分後ろ倒しすることも手です。ただし、このようにすると運行形態が複雑になることや、高円寺・阿佐ヶ谷・西荻窪から武蔵境・東小金井・武蔵小金井の最終電車が早まるということがあり、このような「配慮」はなされなかったのでしょう。
終電時刻の変化を探求する
写真3. 深夜の東京駅の様子(東京発着の各駅停車が健在の時期に撮影)
ここまで、0時台の変化が大きいことがわかりました。では、最終電車の時刻はどのように変わったのでしょうか。表にまとめてみましょう。
表2. 各ターミナルからの終電時刻
区間 | 東京 | 御茶ノ水 | 新宿 | |
---|---|---|---|---|
中野~武蔵小金井 | 改正前 | 0:35 | 0:39 | 0:50 |
改正後 | 0:05 | 0:09 | 0:20 | |
国分寺~豊田 | 改正前 | 0:25 | 0:29 | 0:40 |
改正後 | 23:56 | 0:00 | 0:11 | |
八王子~高尾 | 改正前 | 0:15 | 0:19 | 0:30 |
改正後 | 23:45 | 23:49 | 0:00 | |
(参考)高円寺~三鷹 | 改正前 | 0:35 | 0:43 | 1:01 |
改正後 | 0:05 | 0:18 | 0:35 | |
(参考)中野 | 改正前 | 0:35 | 0:43 | 1:01 |
改正後 | ※0:26 | 0:36 | 0:52 |
※山手線利用の上、秋葉原で乗りかえ(乗りかえ時間4分)
中野~高尾までのどの駅でもおおむね30分程度も繰り上がっていることがわかります。特に、八王子、西八王子、高尾へは0:00前に最終電車が発車してしまいます(新宿も改札口からホームまでの移動時間を考えると0:00前と考えて良い)。これは大きな改悪です。八王子については京王線が0:18発の準特急が運転されていますので、京王を活用することも手です。
武蔵小金井から先の最終電車も東京発23時台であることに注意が必要です。最終電車は車庫のある武蔵小金井までの運転です。
また、各駅停車の最終電車がそこまで繰り上がっていないことから、中野までであれば最終電車はそこまで繰り上がっていません。ただし、中央線経由で御茶ノ水まで向かうことができない時間帯ですので、秋葉原まで山手線で移動する必要があります。
ここでもったいないのが、各駅停車三鷹行きに接続する山手線の東京発が0:05であることです。最終の各駅停車三鷹行きは秋葉原を0:18に発車します。この後の山手線は東京発0:12(秋葉原0:17発)と乗りかえが厳しく、京浜東北線も東京発0:03と0:13と山手線とほぼ同時の運転です。もしも山手線と京浜東北線が交互にやってくるダイヤであれば、東京0:11頃→秋葉原0:15頃という設定が可能であり、三鷹までの最終は30分も繰り下がらずに済みました。
中央線の2021年3月ダイヤ改正のまとめ
乗客が減少傾向にある中、23時台までは本数が維持されたダイヤ改正でした(本文には書いていませんが、朝ラッシュ時の毎時28本運転は維持されています)。これは素晴らしいの一言です。また、23時台についてはむしろ増発がなされています。これも素晴らしいの一言です。
ただし、終電の繰り上げについては(そのことじたいがしょうがないとしても)、細かなフォローに欠けていてやや残念な印象を抱きます。高尾行きの最終を快速から中央特快に変更し、都心のターミナル駅を発車する時刻を少しでも維持することや、最終の各駅停車三鷹行きに連絡する山手線・京浜東北線の時刻の工夫などです。
とはいえ、(私も含めて)終電付近の利用が大幅に減少しているという側面もあります。鉄道は社会の中にあり、社会が変われば鉄道の役割も変化する、そんないわば当たり前ともいえる事実を改めて実感いたしました。
コメント
杉並3駅を扱うなら土休日の深夜の減便についてもふれればよかったじゃん。
> 23:54発を中央特快高尾行きに設定し、ダイヤ改正後の時刻よりも5分遅い時間帯に高尾行きを設定でき、八王子や高尾への終電を5分遅らせることができました。
で?東海道新幹線からの連絡は新横浜乗り換えで到達できるし、東北・上越新幹線からの連絡は大宮連絡ですでにできるから、いらないよね?
というか、大宮→南浦和→武蔵野線西国分寺連絡中央線高尾方面利用の乗り換え回数を減らすために最終の高尾行きは中央特快ではなく快速なのではないかと。
ぷぷぷの星さま、コメントありがとうございます。
>東海道新幹線からの連絡は新横浜乗り換えで到達できるし、東北・上越新幹線からの連絡は大宮連絡ですでにできるから、いらないよね?
私は新幹線からの接続という観点ではなく、東京や新宿のようなターミナルの滞在時間という観点で考えておりました。そのような観点はなく、勉強になりました。おっしゃる通り、途中駅からの終電のことを考慮して、最終電車を中央特快ではなく快速として設定したのだと思います。