東武東上線2021年3月ダイヤ改正の考察

記事上部注釈
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朝ラッシュ時にTJライナーが増発された東武東上線。この一方で一般列車が減便されました。また、深夜時間帯の変化もあります。では、実際にはどのような変化が生じたのでしょうか。

東武50000系(北池袋)

写真1. 北池袋に停車中の普通

東武東上線のダイヤ改正の概要

2021年3月ダイヤ改正での東武東上線の変化は以下の通りです。

・朝ラッシュ時にTJライナーが2本増発
・朝ラッシュ時はその影で急行が2本減便(準急の本数は変化なし)
・最終の準急川越市行、普通成増行きが削減
 ※深夜時間帯はそれ以外の変化はありません

詳細は以下の章で述べます。

朝ラッシュ時ダイヤの変化点を探る

東武10000系(北池袋)

写真2. 北池袋を発車した普通

さて、実際にはどのような変化が生じたのでしょうか。まず、川越の発車時刻から考察し、その後もう少し広い視点で見てみましょう。

川越発車時刻からの考察

沿線の主要駅でもあり、多くの人が都心に乗りこむ川越でダイヤ改正前後の発車時刻表を比べましょう(表1)。

表1. 朝ラッシュ時の発車時刻の比較(川越駅)

川越発車時刻比較(21.03前後)

6:53発と8:19発のTJライナーが増発され、その付近で料金不要列車の本数が減少していることがわかります。具体的に目に付く点を列挙してみましょう。

6:50発の急行が削減され、それがTJライナーに変更されている
8:07発の急行が準急に変更され、7:49発の準急が削減されている

このような後ろ向きの変化が見られます。TJライナーは専用車両で運転されていますが、朝ラッシュ時には多くの編成が料金不要列車に使用されています。TJライナーに専用車両を2本使うということは、2本ぶんの料金不要列車を削減せねば車両の手当が付きません。また、TJライナーは速達列車です。同様の性格である急行を削減するのが手っ取り早い方策です。

念のため、6時台~8時台の急行と準急の本数の推移をまとめましょう(表2)。

表2. 朝ラッシュ時の準急と急行の本数の推移

東上線準急、急行の本数比較(21.03前後)

やはり急行が2本削減されています。急行は6:41~7:06に25分のダイヤホールが、7:54~8:22に28分のダイヤホールがそれぞれ生じており、無視できる状態ではありません。

巨視的に判断する

では、朝ラッシュ時の準急と急行の発車時刻はどうなのでしょうか。多くの列車の始発駅である小川町、森林公園の発車時刻を加え、池袋の到着時刻を掲載しています(表3)。

表3. 準急、急行とTJライナーの主要駅発車時刻

東上線準急、急行の発車時刻比較(21.03前後)

※川越断面で変化のある6:30~7:00と7:50~8:25を掲載

ダイヤ改正前に池袋に7:29に到着する急行はTJライナーに変更されたうえで、川越や森林公園からの所要時間は6分(森林公園からは7分)短縮されています。ただし、TJライナーに乗るには、別途料金が必要で毎日乗れるものではありません。

そのような人は(池袋到着時刻を維持するのが前提であれば)、6:44発の準急に乗らねばなりません。従来は6:50発の急行で間に合っていたものが、6:44の準急を利用せねばならず、6分の繰り上げになってしまいます。それでも、当該の準急はふじみ野での急行待避が解消されたことで、川越からの実質本数を確保しつつ、3分のスピードアップを達成しています。ここに最低限のマナーを感じことができます。

次に目立つのは、池袋に8:43に到着していた急行が準急に変更されたことです(表3では川越断面の時刻を重視したので1対では表記していません)。この場合は川越発車時刻は5分繰り上がり、池袋到着時刻は2分繰り上がっています。実質的には3分のスピードダウンにとどまっています。当該の準急は川越(8:02発)から池袋(8:51着)まで39分で走破しており、早朝・深夜の所要時間38分に迫る勢いです。急行から準急に変更されるということは表面上サービスダウンですが、スピードダウンをなるべく抑制しようという最低限のマナーを感じ取ることができました。

また、池袋着8:35の準急が廃止されています。その影響で、池袋着の速達列車の時刻が以下のように変更されています。

(改正前) 8:30(急行)、8:35(準急)、8:43(急行)、8:49(準急)、8:55(急行)
(改正後) 8:30(急行)、8:41(準急)、8:51(準急)、8:57(急行)

朝ラッシュのピークは7:30~8:30とされており、当該時間帯はラッシュピークには当たりません。それでもそれなりに乗客が多い時間帯であり、料金不要の速達列車が約10分間隔というのは、混雑の懸念材料です。ダイヤ改正前の8:43着の急行はかなり混んでいた(※)ので、ダイヤ改正後の8:41着の準急が混むことが予想できます。

東武東上線の混雑状況(平日朝ラッシュ現場調査、コロナ影響下、北池袋→池袋)で詳細に記しています。

一方、8:36着の普通は中板橋から池袋までは先行の普通の2分後に走行しています。速達列車の減便が問題になっていますので、この普通を速達列車に変更して速達列車減便のショックを和らげる手もありました。

なお、車両運用の関係で、池袋着8:56の普通はクロスシート車による運行になっています。これは車両の上手な運用というべきなのでしょうか。

深夜時間帯の変化

東武50000系と10000系(池袋)

写真3. 夕方の様子

2021年3月ダイヤ改正では、「終電の繰り上げ」が話題になっています。同時に、深夜時間帯の本数変更もなされている路線もあります。では、東武東上線はどうでしょうか。

22時台以降の池袋発車時刻と種別の組み合わせの変化はありません。唯一、最終準急川越市行きと最終普通成増行きが削減されています。わかりやすくするために、0時台の発車時刻表を示します(表4)。

表4. 池袋0時台の発車時刻表

東上線深夜

0時台のダイヤはある意味単純で、普通が成増までの各駅を、準急が成増以遠の各駅をカバーする形態です。最終の準急と普通が各1本削減されていて、北池袋~成増の最終電車は10分繰り上げ、和光市~川越市の最終電車は14分繰り上げられています。

なお、都内の主要駅からの最終電車は以下の通りです(表5)。

表5. 都内の主要駅からの最終電車一覧

成増まで 和光市~川越市
新宿
山手線
改正前 0:29 0:29
改正後 0:20 0:12※
渋谷
山手線
改正前 0:21 0:21
改正後 0:13 0:04※
東京
丸ノ内線
改正前 0:23 0:23
改正後 0:13 0:05

※副都心線利用であれば、渋谷0:08発、新宿三丁目発0:15も存在。当該の副都心線は池袋行き
※森林公園行き最終は0:02発のまま変化なし

接続の関係で、和光市~川越市に向かう新宿、渋谷、東京からの最終電車は15~20分繰り上げられています。また、成増までの最終電車は最大10分の繰り上げです。それでも、新宿、渋谷、東京の各駅で0時過ぎに出発すれば川越市まで到着できるのはそこそこ遅いほうです。比較的遅くまで営業運転していたとされる中央線快速の最終電車が東京発0:05(新宿発0:20)であり、川越市まではその中央線と同等の遅さになると考えると、その遅さが実感できるでしょう。

東上線2021年3月ダイヤ改正のまとめ

朝ラッシュ時のTJライナーの増発という明るい材料もありますが、その実態は急行からの振替です。確かに、前後の準急の所要時間を短縮し、急行から準急に変更してもそれほど所要時間は増加しない工夫は認められますが、急行が減便されたという事実は大きいです。

また、深夜時間帯は0時台の準急と普通が1本ずつ減便され、最終電車が10~14分繰り上げられています。それでも、東京や新宿の出発時刻は中央線快速と同等であり、そこまで悲観することもありません。なお、深夜時間帯はこの他に変化点はありません。

現在、東武東上線の普通の走りはおとなしいほうです。つまり、スピードアップの余地は大きいです。池袋-成増の普通で運用される車両を高加速の車両(9000系、30000系、50000系と制御機器を更新した10030系)を重点的に運用し、池袋-成増の普通やその後を走る速達列車をスピードアップすることで、(普通の後追いをする速達列車も含めて)池袋-成増の所要時間を短縮することを期待したいです。また、最高速度を100km/hから110km/hに向上して速達列車の所要時間を短縮することも期待したいです。そうすれば、乗客側にとっては所要時間短縮によるサービスアップ、会社側にとっては労働時間や所要車両数の減少によるコストダウンを実現できます。

新型肺炎ウィルスの脅威が語られて社会が変化し、駅停車時間も従来よりも短く済むようになっています。このようなときにこそ、このような方策によるサービスアップも考えてもらいたいものです。

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コメント

  1. ぷぷぷのほし より:

    > 新型肺炎ウィルスの脅威が語られて社会が変化し、駅停車時間も従来よりも短く済むようになっています

    が、ホームドア設置準備に伴い1駅あたりの停車時間が5秒ずつ長くなるので、結果相殺されます。

    • tc1151234 より:

      ぷぷぷのほしさま、コメントありがとうございます。

      確かに、ホームドアはダイヤ作成上は厄介な存在ですね。ホームドアの開閉のロスタイムをいかにして最小限にするかというのが今後は重要な観点になるのかもしれません。