2022年3月ダイヤ改正における中央線(名古屋地区)の変化

記事上部注釈
弊サイトでは実際に利用したサービスなどをアフィリエイトリンク付きで紹介することがあります

中央線名古屋地区。ここの通勤電車は短編成をたくみに組み合わせ、需要に応じた長さの編成を組んでいた路線です。しかし、その歴史も2022年3月ダイヤ改正で終わり、全列車8両編成に統一されます。これは良い変化なのでしょうか、それとも悪い変化なのでしょうか。その明暗を探ってみました。

写真1. 10両編成も今回のダイヤ改正までの光景

全時間帯の発車時刻から増発・減便を探る

まず、全時間帯の発車時刻から増発基調なのか、減便基調なのかを探ってみましょう。ここでは、簡単のために平日の名古屋発車時刻の下りを取り上げています(表1)。

表1. 中央線(名古屋地区)の変化(名古屋発車時刻)

22.03 中央線(名古屋地区)の変化(名古屋発車時刻)

ここで目立つ変化点は以下の通りです。

  • 6:23発、7:02発と8:04発が増発されている
  • 4両編成や6両編成が主体の日中時間帯も減便なし
  • 日中時間帯や夕方ラッシュ時で発車時刻が繰り上げの列車がある
  • 終電が早まり、ホームライナーも大幅に減少している

今回、315系電車に置き換わる(注.ダイヤ改正後は置き換わりが完了せず)ことに合わせ、8両編成に統一されています。日中時間帯は6両編成や4両編成が多いなか、8両編成に置き換えるというのは、コスト増加を意味します。そのため、減便も心配されていました。しかし、JR東海は減便をせずに、本数を維持しました。

一般的に運転台付きの車両は製造コストがかさみます。315系電車投入の計画を立案する際に、多少の無駄を許容しても運転台を省略することを優先したと見られます。315系電車のエネルギー消費量は従来の35%減とされています。単純計算では211系電車の5両編成は315系電車の7.7両編成と同等のエネルギー消費量です。そのため、日中時間帯のコストアップは九州できると判断なされたでしょう。

朝時間帯の増発もなされています。深夜の終電付近の時間帯で1本減便されていますが、朝の増発3本で普通電車については、全体的にダイヤ改正前より増発されています。

以下、発車時刻から気になる2点を掘り下げましょう。

発車時刻の繰り上げ

写真2. 日中時間帯の列車(庄内川で撮影)

日中時間帯と夕方時間帯の一部で発車時刻を繰り上げています。日中時間帯では具体的には以下の3本が該当します。

  • 毎時38分発の普通高蔵寺行きが普通多治見行きに変更のうえ毎時37分発に1分繰り上げ
    ※毎時31分発の普通多治見行きは普通高蔵寺行きに変更のため、高蔵寺-多治見の本数は変化なし
  • 毎時46分発の快速中津川行きが毎時45分発に1分繰り上げ
  • 毎時53分発の普通高蔵寺行きが毎時52分発に1分繰り上げ

では、なぜ繰り上げるのでしょうか。普通・快速の最大待ち時間がダイヤ改正前の9分待ち(毎時53分と毎時02分)から、ダイヤ改正後の10分待ち(毎時52分と毎時02分)となることから、運転間隔の適正化が理由ではないことがわかります。これは後を走る特急しなのをスムーズに通すためでしょう。

毎時37分発は多治見まで特急しなの号から逃げ切りますが、多治見断面では特急の3分前です。これを実現するためには毎時38分では無理だったのでしょう。なお、この繰り上げで当該の普通高蔵寺行きを普通多治見行きに変更できました。これで普通多治見行きが名古屋発毎時09分発、31分発と22分間隔と38分間隔の交互から、普通多治見行きが09分、37分発の28分間隔と32分間隔の交互に変わり、等間隔に近づきました。上りは多治見発で毎時45分と07分発の交互で22分間隔と38分間隔の交互から変わっていません。

毎時45分発は高蔵寺で特急しなの号を待ちます。高蔵寺発車時刻は変わっていませんので、高蔵寺までの運転時間にゆとりを持たせ、若干の遅れが生じても特急しなの号を定時に通すための措置と理解できます。

毎時53分発は新守山で特急しなの号を待ちます。新守山発車時刻は変わっていませんので、新守山までの運転時間にゆとりを持たせ、若干の遅れが生じても特急しなの号を定時に通すための措置と理解できます。

上りも同様の傾向が見えます。上りは高蔵寺発の普通(高蔵寺発毎時33分)が新守山で特急しなの号に抜かれていますが、新守山から名古屋までの時刻を1分程度繰り下げています。上りの快速は多治見で抜かれますが、多治見での発車時刻は変わっていません。

現在のダイヤの基準は211系電車の最高速度110km/h(ダイヤ改正後も完全な置き換えまで1年程度残る)です。最高速度130km/hの315系電車に統一されたあかつきには、元の発車時刻に戻し、運転間隔をより平準化してもらいたいものです。

ホームライナーの減便

313系8500番台(千種)

写真3. 313系8500番台が使われるホームライナー

ホームライナーが減便され、毎時1本の合計5本体制から、2本に減便されています。確かにホームライナーは満席ではありませんが、減便するほどでもなさそうです。では、なぜ減便するのでしょうか。

その答えはどこにも書かれていませんが、ヒントを探ることはできます。ダイヤ改正前の下りホームライナーは17時台~19時台はグリーン車なし、20時台と21時台はグリーン車ありです。グリーン車があるのは383系電車(特急しなの用の車両)、グリーン車なしは313系8500番台(普通・快速にも使う車両)が使われます。一方、ダイヤ改正後はグリーン車なしのホームライナーは設定されていません。つまり、ダイヤ改正で313系8500番台を使ったホームライナーはなくなります。383系電車だけで回せるのが2本ということなのでしょう。

では、なぜ313系8500番台によるライナーの設定はなくなるのでしょうか。これも答えはどこにも書いてありませんが、313系8500番台の運用を追ってみるとわかります。313系8500番台は朝ラッシュ時には一般の普通・快速に運用されます。普通・快速用の車両が最も必要とされるのは、朝ラッシュ時です。現在は313系8500番台は中央線名古屋地区でじゅうぶんに活用されています。しかし、いずれ315系電車に統一されれば、313系8500番台は朝ラッシュ時には活用できない車両になります。

そうであれば、313系8500番台は他の路線で使うほうが得策です。他の路線で使うのであれば、中央線名古屋地区で使えません。全社的な車両需給の都合でホームライナーは大幅に減便されたのでしょう。やろうと思えば、増結用2両や4両を活用し、多治見までの区間運転を組み合わせて1時間間隔運転はできそうな気はしますが…。

朝ラッシュ時と夕方ラッシュ時の輸送力の考察

写真4. 夕方の6両編成の先頭は混雑する(千種で撮影)

さて、朝ラッシュ時と夕方ラッシュ時の輸送力はどうでしょうか。日中時間帯は4両編成や6両編成が主体で8両編成になるのは、サービス向上であることは事実です。では、10両編成で固められる朝ラッシュ時、8両編成や10両編成もある程度ある夕方ラッシュ時の輸送力はどうでしょうか。簡単に考えてみましょう。

朝ラッシュ時の輸送力の考察

まず、朝ラッシュ時の輸送力の考察です(表2)。ここでは、名古屋着7:00~9:59について比較しましょう。

表2. 中央線輸送量の変化(名古屋7時台~9時台)

中央線輸送量の変化(名古屋7時台~9時台)

315系電車投入のプレスリリースで「中央線名古屋-中津川は315系8両編成に統一します」という旨の記述がありました。これを見たとき、「10両編成で固められている朝ラッシュ時を8両編成に減車するのは暴挙」と感じたものです。その憤慨はダイヤ改正プレスリリースを確認し、安心に変わりました。8両編成にするかわりに増発すると発表したのです。

減車の輸送力減少と増発の輸送力増強を比較したのが上の表です。7:04着と7:08着(いずれも6両編成)が7:06着(8両編成)に統合され、6両ぶんの輸送力減少です。8時台は輸送力が2%弱減少していますが、中間運転台がなくなることにより、実際には輸送力は減少していないはずです。9時台はカタログスペック上の輸送力も維持されています。

10両編成の両端の車両が空いていて、中間の車両が混んでいる傾向がありますが、この混雑のかたよりが軽減するので、悪い話ではないでしょう。

夕方ラッシュ時の輸送力の考察

同様に、夕方ラッシュ時の輸送力についても考察しましょう。

表3. 中央線(名古屋地区)の変化(夕方の輸送力比較)

22.03 中央線(名古屋地区)の変化(夕方の輸送力比較)

夕方の輸送力として17時台~19時台を抽出しました(表3)。夕方は10両編成がそこまで多くなく、むしろ6両編成が主体です。本当であれば8両編成を主体としたいところですが、8両編成にも10両編成(朝ラッシュ時に必要)にも対応するには2両編成が必要です。しかし、現実には3両編成と4両編成を組んで10両編成を組むことが多いので、2両編成はあまりありません。そうすると、6両編成か7両編成が現実的な選択肢です。2012年ダイヤ改正の合理化の一環で7両編成は排除されています。そのため、6両編成が主体とならざるを得ないのです。

その6両編成が8両編成にかわるので、確実にサービス向上でしょう。現に輸送力は10%以上増えています。特に、6両編成の先頭車の混雑は激しいものがありましたので、8両編成化は利用者にとっては革命的なできごとでしょう。

そのほかの観点から

写真5. 日中時間帯の列車のイメージ(庄内川で撮影)

そのほかの観点からいくつか見てみましょう。

所要時間の比較

利用者の視点でいうと、鉄道は金銭と引き換えに速達性を得るものです。では、その速達性を簡単に確認してみましょう。ここでは、朝、日中、夕方の上下の1本ずつをランダムに選択し、所要時間の増減を探ることにします。

(朝・改正前)中津川7:00→多治見7:43→千種8:12→名古屋8:24
(朝・改正後)中津川6:59→多治見7:40→千種8:12→名古屋8:26

朝ラッシュ時からは通勤のピークとなる名古屋着8:30の直前の快速を選択しました。5分間隔から4分間隔に短縮された影響か、快速がそこまで飛ばせなくなり、多治見から千種まで3分余計にかかっています。金山から名古屋まで7分かかり(ほかの列車は5~6分です)、千種から名古屋まで2分のスピードダウンです。当該の列車は10番線到着で下り列車の出発と干渉することはないように見えますが、8:24に着けない理由はあるのでしょうか。

(朝・改正前)名古屋8:06→千種8:17→多治見8:42→中津川9:20 (多治見と中津川は着時刻)
(朝・改正後)名古屋8:02→千種8:12→多治見8:40→中津川9:22 (多治見と中津川は着時刻)

同様に下り快速を選択しました。この列車は6分ものスピードダウンで見逃せません。ダイヤ改正前までは8:02発は普通であり、この普通と同じ時刻で運転されています。これがスピードダウンの大きな要因です。多治見発時刻を考慮したうえでの時刻なのでしょうが、このようなことはやめてもらい、4分程度スピードアップしてもらいたいものです。

(日中・改正前)名古屋11:24→千種11:34→多治見11:59→中津川12:39 (多治見と中津川は着時刻)
(日中・改正後)名古屋11:24→千種11:34→多治見12:00→中津川12:40 (多治見と中津川は着時刻)

千種から多治見まで1分スピードダウンしています。この中を詳細に見ると、大曽根→高蔵寺で2分スピードダウンしています。乗客のわからない理由で時刻調整が必要なのでしょうが、可能であればこのようなことは次回のダイヤ改正で元に戻してもらいたいものです。

(日中・改正前)中津川12:20→多治見13:00→千種13:25→名古屋13:35
(日中・改正後)中津川12:17→多治見12:58→千種13:24→名古屋13:34

全体でみると、2分スピードダウンしています。中津川→多治見で1分、多治見→千種で1分です。

(夕方・改正前)名古屋18:07→千種18:17→多治見18:44→中津川19:24
(夕方・改正後)名古屋18:07→千種18:18→多治見18:44→中津川19:25

このパターンも同様にスピードダウンしています。ただし、18:48、19:48などの快速中津川行きは瑞浪での長時間停車を排除(後続のホームライナーを待たないため)し、4分のスピードアップを実現してます。

(夕方・改正前)中津川18:35→多治見19:17→千種19:46→名古屋19:57
(夕方・改正後)中津川18:35→多治見19:17→千種19:46→名古屋19:57

これは変化ありません。

全体的に1分~2分のスピードダウンが見られ、特に朝ラッシュ時は3分のスピードダウンも見られるなど、好ましいものではありません。これは最高速度110km/h前提の211系電車が排除され、最高速度130km/hの315系に統一されたときに画期的なスピードアップを期待いたします。

朝の岐阜行きの廃止

早朝時間帯に岐阜行きが2本運転されていました。これは車両を柔軟に運用し、少ない資源で効率的な輸送を可能にするためのものと理解しています。今回はその2本の岐阜行き(名古屋着7:04と7:21)が廃止されました。特に、名古屋着7:04は後続列車を含めた8両化に伴い、列車そのものが廃止になっています。

今回のダイヤ改正で安定輸送により重点を置いた形になるのでしょう。鶴舞以遠から枇杷島以遠への利用はそう多くないと推定でき、利用者的な不利益は少ないでしょう。

全体を通してみて

写真5. 8両編成に統一(金山で撮影)

基本的に8両編成に統一する、今回のダイヤ改正では大きな不利益がなく、夕方の6両編成の先頭車の混雑や朝の10両編成の混雑のむら、といった不利益が排除される利益のほうが大きいです。今回の輸送力増強は「編成両数を細かく調整する」ことと「多少の輸送力過剰に目をつむっても輸送力を細かくは調整しない」ことにシフトした結果ととらえることができます。別のいいかたをすると、大は小を兼ねるという考えです。

ただし、若干ながらスピードダウンするという負の側面も発生してしまいました。これは長距離列車も走る路線の特性上、遅れに対する余裕を確保するという意味もありましょう。また、中央線名古屋地区はもともと走りは良いほうです。そうはいっても、今回のスピードダウンは利用客にとっては不利益を被る結果となってしまいます。315系統一のあかつきには、スピードにも気を配ってもらいたいものです。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする