広島で最も新しい軌道系交通機関、アストラムライン。広島市の中心部から北西部の住宅街までを結ぶ交通機関です。可部線と異なり、市内中心部に直結する強みがあります。そんなアストラムラインを楽しんでみました。
写真1. 6000系電車が走る
アストラムラインの概要
まず、アストラムラインの概要を紹介します。
・区間:本通-広域公園前
※本通-県庁前の1駅だけは地下鉄扱い
・距離:18.4km
・所要時間:37分程度
アストラムラインは本通-広域公園前の路線です。本通は広島市中心部の紙屋町交差点(=紙屋町東、紙屋町西)のやや南側に位置します。距離は18.4kmで、途中、新白島や大町でJR線と連絡しています。
図1. 本通駅の位置(googleマップより引用)
本町は広島中心部に位置しており(図1)、JR線よりも中心部にアクセスしやすいです。その裏返しなのか、運賃は高く、本通から広域公園前まで490円もします。広島電鉄で同じ距離を乗っても270円、JRだと330円なので、運賃が高いと考えてしまいます。
※本通付近の交通結節点の様子は広島中心部の交通の結節点を眺める(紙屋町、21年GW)に収録しています
また、18km程度の距離を37分程度もかかるのはややストレスになるかもしれません。開業当初はそのことも考えて急行運転をしていましたが、運転取り扱いの煩雑さや広域公園前から都心部への直通バスの運転という背景があり、現在は普通のみの運転です。
都心よりの本通-新白島は地下区間、新白島-広域公園前は高架区間です。おおむねJR山陽本線よりも南側が地下、北側が高架と考えて差しさわりありません。
実際に乗ってみる
さて、実際に乗ってみましょう。
写真2. 県庁前駅の様子
地下駅の県庁前の様子です(写真2)。人があまりいないように見えますが、本通行きが到着したときにはそれなりに降りる人がいました(このときは午前中なので都心に向かう電車のほうが利用されています)。
写真3. 発車時刻表
時刻表も示されています(写真3)。日中時間帯は10分間隔で運転されています。ただし、土曜・休日の長楽寺以遠は20分間隔になる時間帯もあります。
写真4. ホーム上の路線図
ホームに路線図がありました(写真4)。アストラムラインはフルスクリーンタイプのホームドアが完備されています。1990年代の鉄道雑誌を読んで、「広島には未来の交通機関がある」と思ったものです。
写真5. 車内の様子
車内の様子です(写真5)。ロングシートが配置されていますが、アストラムライン開業時のゆりかもめ(新交通システムの仲間)はクロスシートだった記憶があります。そのような意味で珍しい形態かもしれません。もっとも、通勤路線としてはロングシートが良いでしょう。
そして意外に思ったのが、運転席があるということです。私が住んでいる東京都の新交通システムはゆりかもめと日暮里舎人ライナーですが、いずれも自動運転で、運転席はありません。そのため、私の脳内では新交通システム=自動運転という公式が根付いていました。しかし、現実は自動運転ではない新交通システムもあるのです。視野を広く持つ重要性を確認したのです(鉄道ばかり乗っていて視野が広いのか?)。
写真6. 新白島を出て高架に出る
新白島を出ると地下区間が終わり、高架区間に入ります(写真6)。団地群でしょうか。
写真7. 団地が並ぶ
団地が並びます(写真7)。
写真8. 川がある
広島は三角州に発達した都市です。そのため、広島を移動するとすぐに川が見えます。これは旧太田川です。なお、このあたりに白島(はくしま)駅がありますが、広島電鉄の白島停留場とは場所が異なります。
図2. 2つの白島(googleマップより引用)
その2つの白島の距離を示します(図2)。どちらも「白島地区」なので、このような駅名を付けたのでしょうが、後発のアストラムラインは白島ではなく、「白島中央」などのような駅名を付けて、紛らわしさを発生させないようにすべきだったのでしょう。
写真9. 高架を走る
前面展望が可能な席が空きましたので、前面展望を満喫します(写真9)。
写真10. 新興住宅街を走る
新興住宅街を走ります(写真10)。山があるという明確な違いはありますが、日暮里舎人ライナーに乗っているような錯覚もあります。
写真11. 不動院前に停車!
不動院前に停車します(写真11)。この先の祇園新橋で太田川を渡ります。祇園というと京都を思い出せますが、広島の祇園は風流な場所ではなさそうです。そう、広島の人々が暮らす地なのです!
写真12. いよいよ太田川を渡る
太田川を渡ります(写真12)。
写真13. 太田川を渡る
太田川を渡ります(写真13)。ただし、前面展望中だとあまり実感はありませんね。
写真14. 列車とすれ違う
本通行きとすれ違います(写真14)。私はこのように乗り鉄とともに撮り鉄も実行いたします!これぞ上級趣味者の1つの姿ででしょう(そんな区分などない!)。
写真15. 住宅街を行く
住宅街を走ります(写真15)。広島市は平野部が狭く、その狭い平野部に多くの人が集中しています。これは鉄道に有利な形態です。国鉄末期に本数が大幅に増えた都市は広島と静岡ですが、双方ともに平野部が狭く鉄道沿線に人口が集中しているという共通点があるのは偶然ではないでしょう。
写真16. 西原に停車!
西原に停車します(写真16)。このあたりは太田川沿いにJR可部線、JR芸備線が通り、その間にアストラムラインが通っています。
写真17. 中筋のホームドア
中筋のホームドアを撮影することができました(写真17)。このホームドアはどの駅でも共通のカラーです。昔の鉄道雑誌にアストラムラインのデザインについて書かれており、ホームドアを筆頭に多くの施設を同じカラースキームで統一したと書かれています。
写真18. ロードサイド的な風景
ところで、アストラムラインは広い道路の上を通っています。現代の日本では広い道路上の周囲にファミリーレストランなどのチェーン系飲食店、娯楽施設などが広がっています。アストラムラインはその上を走るので、必然的にロードサイド的な風景が展開することになります(写真19)。
パチンコ店の表示が一部隠れていて、違う意味合いに取れますね!
写真19. 本通行きとすれ違う
先ほどの駅のホームドアと同様の色合いの車両とすれ違います(写真19)。開業当初の車両も最新車両もデザインは一定しています。新白島や大町で連絡する路線とは大きな違いです。
写真20. まもなく大町に停車!
まもなく大町に停車します(写真20)。ここは可部線と連絡する駅です。
写真21. 可部線が見える
可部線も見えます(写真21)。この辺りは20分間隔で運転されていますが、列車の姿は見えません。
写真22. 折り返し用の設備がある
折り返し用の設備もあります(写真22)。以前の急行は直前の普通を大町どまり、大町で始発の普通を発車させることで追い抜きを行っていましたが、無理のあるオペレーションでした。そうであれば、本通-大町の区間運転の普通と組み合わせ、本通-大町で通過駅を設定する急行運転はどうでしょうか。
写真23. 大町を発車
大町を発車しました(写真23)。ここからは住宅が少ないように思います。
写真24. 毘沙門台に停車!
毘沙門台にとまります(写真24)。山の上にも出入口があります。
写真25. 本通行きとすれ違う
本通行きとすれ違います(写真25)。
写真26. 住宅街を走る
住宅街を走ります(写真26)。やはり、大町までよりも住宅の数は減っています。特に、商店が少ないことに気づかされます。山が近くにあり、商圏が狭いのでしょうか。
写真27. 安東に停車中
安東に停車中の様子です(写真27)。安東は「やすひがし」と読みます。
写真28. 上安に停車
上安に停車します(写真28)。ここはかつて急行がとまっていましたが、利用者は隣の安東のほうが多いです。
写真29. 山が近い
山が近くに迫ってきました(写真29)。山の中腹まで住宅が埋まっている様子は私にとっては新鮮な光景です。
写真30. 長楽寺に停車
長楽寺に停車します(写真30)。だいぶ住宅が減ってきたように思います。
写真31. 線路が合流する
長楽寺を出ると、車庫への線路が分岐しますが、その線路から本線への渡り線もあります(写真31)。
写真32. 6000系とすれ違う
6000系とすれ違います(写真32)。私の中ではアストラムラインといえばこの車両のイメージです。
写真33. 建物が少ない
建物が一段と減ってきました(写真33)。それもそのはずです。もともとアストラムラインはこの区間を建設する計画はありませんでした。軌道系交通を建設しない計画ということは、それほど住宅も少なく、採算性が悪いということです(広域公園前まで建設されたのは、アジア競技大会が広域公園前周辺で開かれたためです)。
写真34. 伴中央に停車中
伴中央付近の景色です(写真34)。線路の上をまたぐ道路は山陽自動車道と中国自動車道を結ぶ道路でしょうか。
写真35. 山の上にマンションがある
山の上にマンションがあります。このあたりの地図を眺めると、線路から離れた場所に新興住宅街があります(図4)。西風新都という地区のようです。
図4. 伴中央付近の住宅街(便宜上スーパーマーケットに焦点を当てています、googleマップより引用)
写真36. 大塚に停車!
大塚に停車します。東京には有名な山手線の駅がありますが、そことは異なり、おおづかと読みます。
写真37. 山陽自動車道をくぐる
山陽自動車道をくぐります(写真37)。
写真38. まもなく広域公園前
そうしているうちに広域公園前に近づきます(写真38)。
写真39. 広域公園前から先にも線路が伸びる
広域公園前から先にも線路が伸びています(写真39)。現在は引上線として活用されています。
アストラムラインに乗ってみて
アストラムラインは駅数が多い印象を抱きました。18.4kmに22駅あり、平均駅間距離は1.0kmを切っています。高速電車としてではなく、速いバスというのが正直な実感でしょう。そして、坂が多く、新交通システムを採用したのは納得できます。
午前中の郊外方向ということで空いていましたが(反対側はそれなりに混んでいました)、親子連れ、若い女性などの多彩な客層が乗っていたことも印象に残っています。
ただし、広域公園前から本通まで40分近くかかるのはどうかと思います。最高速度が60km/hというのも低すぎです。せめて70km/hにするべきでしょう。また、急行運転を復活するのも手です。本通-大町で県庁前、新白島、中筋、古市のみに停車することで、6駅通過し、5分程度の所要時間を短縮できます。広域公園前あたりからは市内まで有料道路でショートカットするバスも運転されています。このバスに対抗することも考えるべきでしょう。
なお、アストラムラインは広域公園前から西広島駅周辺まで路線を延長し、ネットワークが拡充されます。ネットワークの拡充は公共交通の要です。アストラムラインは「あす」への希望を名称に入れた路線です。アストラムラインの明日が明るく輝くものになってほしいものです。
さて、前後ではどこに行ったのでしょうか?
←(前)広島城の観光(紙屋町からのアクセスも収録、21年GW)
アストラムラインを楽しむ(前面展望も収録、21年GW)←今ココ!
可部線の前面展望(21年GW)(次)→
※それぞれ別ウィンドウで開きます。