長野県と新潟県を結ぶ飯山線。ローカル線でありながら、おいこっとのような指定席快速を運転するなどの営業努力が見える路線でもあります。そんな飯山線に乗ってみました。
写真1. 長野に入線するおいこっと
復習:飯山線の概要
まず、飯山線の概要を紹介しましょう。
・区間:豊野-越後川口
・距離:96.7km
・所要時間:3時間10分~3時間40分
・運転本数:1日7往復程度(戸狩野沢温泉-森宮野原)
飯山線は豊野と越後川口を結ぶ路線です。豊野が起点ですが、実際には長野が運転上の拠点です。長野-豊野はしなの鉄道北しなの線を走行します。
飯山線は人口のそう多くない場所を走ります。そのため、運転本数は多くありません。4時間も間隔が開くこともあります。したがって、行き当たりばったりで使うのではなく、計画を組んで利用する必要があります。
そんな飯山線には観光列車が走っています。この観光列車を使うと、比較的快適に飯山線に乗ることができます。その列車を次の章で紹介しましょう。
観光列車「おいこっと」の概要
飯山線で運転される、観光列車の「おいこっと」。この概要を紹介しましょう。
・区間:長野-十日町
・料金:指定席料金(530円)が別途必要
・所要時間:2時間30分~3時間
・本数:1日1往復(基本的に土曜・休日運転)
おいこっとは田舎を示す言葉です。おいこっとのどこが田舎?そう思う人もいるでしょう。日本の都会といえば東京でしょう。その東京はTOKYOと書きます。TOKYOを逆から書くと、OYKOTです。これを日本語流に読むと、「おいこっと」となります。列車名の由来は東京を反対から読んだものです。
おいこっとは全車指定席の快速です。指定席料金が別途必要です。快速列車の指定席券は閑散期は330円、それ以外は530円と規定されていますが、そもそも閑散期(土曜・休日は閑散期にはならない)には運転されないので、指定席料金は530円です。
1日1往復で、長野9:17→飯山9:57→十日町11:50と、十日町15:12→飯山17:23→長野18:07が運転されています。臨時列車扱いですが、基本的に土曜・休日運転と考えれば問題ありません。座席を事前に手配する際には列車名をおいこっと(ボックス)と選択する必要があります。列車名をおいこっとだけにすると、ロングシート部分が割り当てられます。これは駅員さんもなかなか気づかずにいた部分です。
なお、座席表は公式サイトにも掲載されています。
図1. おいこっとの座席表
おいこっとに乗る
さて、実際に快速おいこっとに乗ってみましょう。
おいこっとの内装
おいこっとの内装を見てみましょう!
写真2. 出入口から客席を眺める
出入口付近から客席を眺めます(写真2)。手前左側にトイレ、手前右側に車いすスペース兼業務スペースです。その奥にボックス席が並んでいます。千曲川側が2人ボックス席、反対側が4人ボックス席です。
写真3. 2人ボックス席
千曲川側の2人ボックス席です(写真3)。いくら田舎をイメージしたといっても、ボックス配列は指定席快速の設備としてはどうかド思います。よく見ると、おいこっとの座席配列は、一般車と同じです。つり革があることから、一般運用も考えているのでしょうか。
写真4. 2人ボックス席に座ってみる
2人ボックス席に座ってみます(写真4)。
写真5. 床面を見る
床面を見ます。木をイメージした床になっており、「田舎の居心地の良さ」を演出しているようにも見えます。
写真6. 4人ボックス席を眺める
4人ボックス席です(写真6)。1人で指定席を予約してこの席になり、3人組と同乗になったらきまずいですね。
写真7. ロングシート部分
ロングシート部分です。ロングシートというよりもソファというほうが合うかもしれません。
写真8. お手洗いの様子
お手洗いは車いす対応のものです(写真8)。
写真9. 手を洗う部分
ここで手を洗います(写真9)。
写真10. 水は飲めない
水は飲めません(写真10)。だいぶ直接的な表現ですね。
おいこっとの車窓から(長野→十日町)
さて、車窓を堪能しましょう。
写真11. 長野を発車!
長野を発車しました(写真11)。
写真12. 長野の車両基地が見える
長野の車両基地が見えます(写真12)。
写真13. 廃車待ちの車両が並ぶ
廃車待ちの車両が並んでいます(写真13)。
写真14. リゾート車両も並ぶ
リゾート車両も並んでいます(写真14)。飯山線のおいこっともこのような車両が良いと思います!
写真15. 北長野を通過!
北長野を通過します(写真15)。駅名標がJRのものではありませんが、この駅はしなの鉄道の駅です。
写真16. 長野電鉄をくぐる
長野電鉄をくぐります(写真16)。以前は飯山の近くの木島まで伸びていましたが、その路線は廃止されました。地方民鉄で複線電化なのは珍しいです。
写真17. 山が美しい!
反対側の窓を眺めたら、山が印象的でした(写真17)。
写真18. 豊野を通過!
豊野を通過します(写真18)。ここから再びJR線に入ります。飯山線は「並行在来線」扱いではないので、JRのまま残っているのです。同様の例は津軽線が挙げられます。
写真19. 千曲川沿いを走る
飯山線は千曲川(新潟県内は信濃川)沿いを通る路線です。その千曲川がさっそく姿を見せました。
写真20. 千曲川沿いを走る
千曲川沿いを走ります(写真20)。
写真21. 替佐に停車!
替佐に停車します(写真21)。ここで降りる人は見かけませんでした。
写真22. 田園風景が広がる
田園風景が広がります(写真22)。夏の田園風景は良いものです。
写真23. 千曲川が見える
再び千曲川を見える場所にやってきました(写真23)。この対岸が意外と人家が多い場所もあったりと、対岸に長野電鉄が伸びている理由も理解できた気がします。
写真24. おいこっと的な風景が展開する
おいこっとは田舎を指した名称です。そんな名称にふさわしい場所を通ります(写真24)。
写真25. 平地に降りてきた
今まで山と川のはざまを走っていましたが、平野部にやってきました(写真25)。
写真26. 速度を出す
ここまで速度は出ませんでしたが、平野部で線路のカーブが少なくなると速度を出します(写真26)。
写真27. 飯山に停車!
飯山に停車します(写真27)。もっとも長野から飯山まで北陸新幹線で11分か12分です。
写真28. 多くの人がいったん下車する
飯山で「からくり時計」が動作するとのことなので、多くの人がいったん下車します(写真28)。地元の農産物の販売も行われていました。このような観光列車は地元の活性化のきっかけになるのでしょう。
写真29. からくり時計が作動している
10:00などにはからくり時計が作動します(写真29)。
写真30. からくり時計の詳細
からくり時計の詳細が書かれていました(写真30)。
写真31. 逆側の先頭車を撮影
逆側の先頭車も撮影できました。色の塗り分けが異なりますね(写真31)。
写真32. 飯山の市街地を走る
飯山の市街地を走ります(写真32)。
写真33. 北飯山に停車!
北飯山に停車します(写真33)。ここにも停車するのですね!
写真34. 平野部を走る
平野部を走ります(写真34)。
写真35. スキー場が見える
千曲川の対岸にスキー場が見えます(写真35)。このあたりは雪も多く、スキーには向いていそうです。
写真36. 戸狩野沢温泉に停車!
戸狩野沢温泉に停車します(写真36)。飯山線の長野よりはそれなりに本数が多いです。その北限の駅がここ、戸狩野沢温泉です。いいかたを変えると、ここから本数が減るということです。
写真37. 再び千曲川が現れる
再び千曲川沿いを走ります(写真37)。戸狩野沢温泉までは平野部もそれなりにありましたが、ここからは山と川の間を走ります。
写真38. 美しい景色が広がる
美しい景色が広がります(写真38)。
写真39. 素晴らしい景色が広がる
千曲川の景色が広がります(写真39)。
写真40. 人気のない景色が広がる
人気のない景色が広がります(写真40)。このような場所であれば、1時間に1本も運行されていないのも仕方ないのかもしれません。
写真41. 上境を通過!
上境を通過します(写真41)。
写真42. 高い場所から千曲川を眺める
写真43. 別の角度で眺める
千曲川を眺めます(写真42、写真43)。このような場所を通るので、速度も上がりません。
写真44. 川を眺める
やはり人里離れた雰囲気です(写真44)。
写真45. 人家がある
しばらく走ると、人家がありました(写真45)。
写真46. 西大滝を通過
西大滝を通過しま(写真46)。
写真47. 農村風景が続く
農村風景が続きます(写真47)。
写真48. やや新しい家屋もある
新しい家屋もあります(写真48)。
写真49. 墓地がある
線路沿いに墓地がありました(写真49)。先祖と甲信する場所とされています。
写真50. 千曲川が見える
千曲川が見えます(写真50)。
写真51. 森宮野原に停車!
森宮野原に停車します(写真51)。長野県と新潟県の境に近く(森宮野原は長野県)、雪深い場所です。
写真52. 日本で雪が最も降った記録がある
戦時中に雪が観測史上の深さを観測したことがあります。その高さを示しています(写真52)。何でも記念にしてしまうのが日本らしいと思います。
写真53. 列車を撮影
森宮野原でも停車時間がありますので、車外に出てみます。素晴らしい角度でおいこっとを撮影できました(写真53)。
写真54. 森宮野原の駅舎
森宮野原の駅舎です(写真54)。日本らしい建造物です。ふと思ったのですが、ドイツの建物に似ているように思います。
写真55. 森宮野原を過ぎても風景は同様
森宮野原を過ぎても同じような風景が続きます(写真55)。日本の田舎というべき風景が続きます。
写真56. 信濃川と水田
信濃川と水田です(写真56)。もう新潟県に入りましたので、川の名前は千曲川から信濃川に変わっています。
写真57. 少し開けてきた
少し開けてきました(写真57)。
写真58. 越後田中を通過!
越後田中を通過します(写真58)。
写真59. 田舎の光景が広がる
田舎の光景が広がります(写真59)。信濃の国から越後の国に入っていますが、特段の違いはなさそうに見えます。
写真60. 津南付近の風景
津南付近の風景です(写真60)。多少開けていますね。
写真61. 信濃川が見える
川沿いの風景は何回も撮影していますが、夏の川は何度見ても良いものです(写真61)。
写真62. 発電所が見える
発電所がありました(写真62)。
写真63. 信濃川を渡る
信濃川を渡ります(写真63)。左側から合流しているように見える川は清津川です。ここから車窓の左手に川が見えます。逆にいうと、飯山線は千曲川や信濃川をここでしか渡りません。
写真64. 農村が広がる
農村が広がります(写真64)。津南以南のような険しい地形でないように見えます。
写真65. 越後田沢付近を走行中
越後田沢付近を走行中です(写真65)。十日町まで3駅です。
写真66. 平地が広がってきた
平地が広がってきました(写真66)。十日町は人口5万人前後で飯山線沿線では最も大きな都市です。
写真67. 十日町の市街地が近づいてきた
十日町の市街地が近づいてきました(写真67)。
写真68. 十日町に到着!
十日町に到着しました(写真68)。私の近くに乗っていたファングループはほくほく線に乗りかえるようでしたが、私はそのまま飯山線に乗ります。
写真69. 十日町の駅名標
十日町の駅名標です。十日町は東口側が市街地で、JR線は市街地側に駅舎があります。
飯山線北部の車窓から(十日町→越後川口)
十日町までやってきた私は、昼食をとってから乗りつぎの列車に乗りました。
写真70. 十日町に停車中の越後川口行き
越後川口行きは1両編成でした(写真70)。当然ワンマン運転であり、コストミニマムな運用がなされています。私が乗った時には座席が半分程度埋まる混雑でした。
写真71. 十日町を発車!
十日町を発車しました(写真71)。左手に見える高架橋はほくほく線です。1997年から2015年までは東京と北陸の主要ルートでした。北陸新幹線の金沢開業でローカル線に役割を変えました。つまり、ほくほく線の高規格さは18年しか有用でなかったことになります。後からの知恵ですが、信越本線の強化のほうがコストパフォーマンスは良好だったように感じます(ほくほく線建設当時は北陸新幹線の建設が不透明だった事情は存じています)。
写真72. 十日町の住宅街を走る
十日町の住宅街を走ります(写真72)。
写真73. 魚沼中条に停車!
魚沼中条に停車します(写真73)。越後中条という駅名でないのが不思議ですが、新潟県内に中条駅があったために旧国名の越後を冠しなかったためです。
写真74. 小川を渡る
小川を渡ります(写真74)。このような小さな川は信濃川に注いでいます。
写真75. 下条に停車
下条に停車します(写真75)。「げじょう」と読みます。駅舎の脇の建物が独特ですね。
写真76. 田園風景を走る
田園風景の中を走ります(写真76)。十日町以南よりも自然の険しさはやわらいでいるように感じます。
写真77. 越後岩沢付近の風景
越後岩沢付近の風景です(写真77)。一般に田舎と呼ばれる地域では古い民家が残っているように感じます。
写真78. 自然が豊かな景色
越後川口が近づいてきました。それでも風景は都会的にはならず、かえって自然豊かな風景に変わったように感じます(写真78)。越後川口は今でこそ長岡市の管理ですが、実態は川口町です。路線の分岐駅が必ずしも発展しているわけではないことを示す1つの実例といえそうです。
写真79. 魚野川を渡る
魚野川を渡ります(写真79)。この川を下ると信濃川に合流し、上ると越後湯沢方面に向かいます。
写真80. 越後川口に到着!
越後川口に到着しました(写真80)。私が乗っていた飯山線は越後川口に13:00到着、越後川口を出発する越後湯沢行きは12:57発車と接続を軽視したダイヤです。もっとも、長岡行きは13:07発とそれなりに接続が考えられています。十日町発車をあと5分早めるだけで接続はだいぶ改善されます。
飯山線に乗ってみて
飯山線に乗ってみて、予想外の田舎ぶりに驚きました。列車本数が少なくてもしょうがないという感覚を抱きました。また、長野側では全列車が長野に直通を継続していたり、サービス精神旺盛な快速列車を運転するなどの努力もみられます。ただし、越後川口で3分の差で不接続というのはサービス上落第点というしかありません。本数が少ないのはしょうがないですが、本数が少ないからこそ接続に気を配ってもらいたいものです。
本当であれば、交通弱者への支援という部分も含めて1時間間隔が理想です。そして、越後川口で乗りかえさせるのはJR側の都合に過ぎません。越後川口で乗りかえる人の多さ(写真81)を見ると、長岡への直通も当然という感想を抱きます。
写真81. 越後川口で飯山線から上越線長岡行きに乗りかえる人たち
現段階のサービスレベルは最低限のものがあり、外からの観光客を迎えるという意味でそれなりというものでしょう。それでも、より良いサービスを求めてしまいます。飯山線を通じてこのような難しい課題を感じてしまったものです。
さて、前後ではどこに行ったのでしょうか?
飯山線の乗車記(21年初夏、おいこっとにも乗車)←今ココ!
2階建て新幹線MAXとき号への乗車(浦佐→上野、21年夏)(次)→
※それぞれ別ウィンドウで開きます。