ICE 4の車内(1等車)

記事上部注釈
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2000年代から長らく増備されたICE3。2010年後半にICEにもモデルチェンジの波がやってきました。それがICE4です。そんなICE4の1等車の車内を見てみました。

写真1. フランクフルト空港駅に到着したICE 4

復習:ICEとICE 4の概要

いきなりICE4の車内と言われてもピンとこないでしょう。ICEとはドイツの高速列車のことを指します。ここでのポイントは「高速列車」ということです。「高速列車が走る線路」ではありません。日本では新幹線と在来線が厳然と分けられ、新幹線の線路を走るのは新幹線列車と決まっています(いわゆるミニ新幹線は別)。一方、欧州の高速列車は、一部区間のみ高速新線を走り、ほかの区間は通勤列車の走る線路を通ります。

日本でいうと、東海道新幹線が武蔵小杉-名古屋で建設され、そこを走る東京発大阪行きや、千葉発天王寺行きが走っている格好です。

欧州の高速列車は在来線との直通が可能なので路線ネットワークが充実します。一方、全国(場合によっては国外)に直通する以上、車両は汎用性を重視した仕様になります。したがって、日本の東北新幹線と東海道新幹線のように、路線によって専用の車両を投入されるということもありません。

国によって高速列車にはブランドが付けられ、ドイツはICE、フランスはTGV、スペインはAVEというように高速列車グループに名称があります。細かいこと(※)を抜きにすると、「ドイツで高速列車に乗る」とは、「ICEに乗る」ことに相当します。

※ドイツ国内であってもオーストリアのレイルジェットやフランスのTGVが乗り入れるので、話は難しいです。

そのICEにはいくつかタイプがあります。

  • ICE 1:最も初期のICE車両。機関車けん引方式の14両編成(両端が機関車、客車は12両)。最高速度280km/h
  • ICE 2:分割併合可能なICE車両。機関車けん引方式の8両編成(片側が機関車、客車は7両)。最高速度280km/h
  • ICE 3:電車方式を採用したICE車両。基本は8両編成。最高速度320km/h(ドイツ国内では300km/h、320km/hを出すのはフランス国内)
  • ICE T:振り子方式を採用したICE車両。7両編成と5両編成が存在し、線形の悪い路線に重点を置いた設計。最高速度230km/h(320km/hの誤植でないよ!)
  • ICE 4:電車方式を採用したICE車両。最高速度250km/h(一部249km/hもあり)。12両編成と13両編成が存在。経済性を重視し、ICE 3より最高速度が抑えられた

2023年現在の現役形式を並べました。ICE4は2017年12月から営業運転を開始しています。このときのダイヤ改正でベルリンとミュンヘンの間で高速新線がある程度完成し、最短で4時間足らずで結び始めました。今後のICEの基本となる形式といえましょう。

ICE4の1等車の車内を眺める

では、実際にICE4の車内を眺めましょう!

写真2. 1等車の全景

1等車の全景です(写真2)。一般に欧州の列車の2等車は2+2の横4列配列、1等車は1+2の横3列配列です。「新幹線なのに1等が横3列は広々として素晴らしい!」と思ってしまいます。しかし、ICE4の横幅は2850mm程度であり(手元の図面には2852mmとあります)であり、ICE4の横幅は日本の在来線車両の2950mmより狭いです。ICE3は横幅2950mmでしたので、それより100mm程度小さくなっています。これは車両の長さを長くしたためです。それであれば、車両長さをそのままにして編成両数を増やせば良かったのでは?

写真3. 座席の様子

4人がけの座席の様子です(写真3)。欧州の列車は座席が固定されているのは当たり前で、ドイツ鉄道の列車は前向き(後ろ向き)の座席とボックス席がランダムに組み合わさっています。

写真4. 座席の様子

座席の様子をやや上の角度で撮影しました(写真4)。荷棚の下に照明があり、天井に照明が設置されていません。日本の特急車とは異なる配置です。

写真5. 4人がけの座席の様子

4人がけの座席の様子です(写真5)。テーブルが大きく、その点は快適そうです。回転機能が省略されたためか、座席下の空間がすっきりしています。

写真6. 2人がけの座席

通路の反対側に2人がけの座席が配置されています(写真6)。当たり前のように窓割と座席割が一致していません。新車だから座席割と窓割を合わせる、そのように考える気遣いはありません。標準的な車体があり、それに座席を配置したらこのようになった、というシナリオなのでしょう。日本人の私は前向きに座席を配置し、それに合う窓割の車体を標準にすれば良いと思うのです。ただし、ここは欧州であり、日本の常識は通用しません!

写真7. 車内全景

別の場所の車内全景です(写真7)。明度と彩度の低い青系の座席、黒系の床、白系の壁、そしてデッキの木目調の壁が良い調和を産み出しています。

写真8. 車内全景

車内全景です(写真8)。ガラス扉の向こうに見えているのは、食堂車です。

写真9. 2人がけの座席

2人がけの座席です(写真9)。左に現地の人(と思う)が座っていますが、窮屈そうです。1等なのに狭いように見えます。それもそのはず、手元の図面にはシートピッチ930mmと書かれています。日本の新幹線は狭苦しいように見えますが、普通車でもシートピッチが1040mmあり、日本の新幹線のレベルの高さを改めて実感します。

写真10. 座席横に予約状況が書いてある

座席横に予約状況が書かれています(写真10)。ggf. freigebenとは「予約されているかどうかわからない」ということです。この直後、ここに予約済の人が現れました。どちらが窓側かは分かりやすいですね!

写真11. デッキの様子

1等のデッキの様子です(写真11)。木目調の壁が良い感じですね!デッキと客室の仕切扉がガラス張りであり、開放感があります。

写真12. デッキの扉付近

デッキの扉付近にはイカした感じのダウンライトがあります(写真12)。

写真13. デッキの段差

欧州の駅と列車には段差が当たり前のようにあります(写真13)。関わる国が多いとはいえ、ホームのかさ上げによって段差を解消し、乗降時間短縮という考えはないようです。効率を重視する日本との違いを感じさせます。もっとも、最近の車両は低床車が増えています。

写真14. デッキの段差(別の角度から撮影)

このような角度でもデッキの段差が実感できるでしょうか(写真14)。

写真14. ドア窓下辺は意外と高い

ドア窓の下辺は低いように見えますが、ドア窓下辺は電光掲示板が格納されています。そのため、ドア窓の下辺は高いです。立ちが生じるのですから、もう少し下辺を低くして開放感を演出するべきでしょう。

ICE 4の図面

本文で「ICE 4の図面」と述べましたが、ドイツ鉄道サイトに掲載されていた図面の一部を紹介します。

図1. ICE4の図面(1等車)

図2. ICE4の図面(1等車と食堂車の合造車)

図3. (参考)ICE3の1等車

なお、中欧地区の列車編成については、趣味者さんのサイト(vagonWEB、おそらくチェコ人のサイトさん)に掲載されています。参考にされてみてください。

ICE 4に乗ってみて

写真15. 晴れているハレに停車中のICE 4(フランクフルトからここまで立ち!)

ICE 4に乗ってみました。その車内はそれなりに快適なもので、着席している間は快適な移動空間を楽しめました(すぐに座席を追い出され、3時間の立ちと対峙するのですが、それは別の話です)。ただし、「ゆとりのある欧州の列車」というのは必ずしも正しくなく、シートピッチなど日本の新幹線・特急のほうがゆとりある面も否定できません。

欧州・アメリカ・日本は先進国としてくくられますが、それぞれに異なった特徴があります(私はアメリカには行ったことはありませんが…)。列車の設備は違いの1つに過ぎません。そう、欧州の列車は欧州に合致しているのでしょう(見知らぬ人でも話している場面をよく目撃しました)!ここでは辛口気味になりましたが、それぞれの違いを楽しみたいものです。

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